デジカメドレスアップ主義:赤外魚眼のミラクルワールド

ライカM8 + MCゼニター-M 16mm F2.8
Reported by澤村徹

  • ボディ:ライカ M8(ブラッククローム)
  • レンズ:MCゼニター-M 16mm F2.8
  • マウントアダプター:レイクオール M42-L39 UV-IR
  • IRフィルター:B+W 092(40.5mm径)
  • ファインダー:リコー GRレンズ 21mm F3.5用
  • ストラップ:ヴァイヒィェ・ブリーゼ クオータースタッズストラップ

※この記事を読んで行なった行為によって生じた損害はデジカメWatch編集部、澤村徹および、メーカー、購入店もその責を負いません。また、デジカメWatch編集部および澤村徹は、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

 ライカM8は赤外線カットフィルターの効果が弱く、赤外線を受光してしまう。そのためUV/IRカットフィルターを装着して撮影するのが一般的だ。これは見方を変えると、IRフィルターで可視光線をカットすれば赤外線写真が撮れることになる。今回この特性を利用し、ライカM8で魚眼赤外という特殊撮影に挑戦してみた。

 現行ライカレンズのラインナップに魚眼レンズはない。そこでロシア製M42マウントのMCゼニター16mm F2.8を、マウントアダプター経由で装着する。レンジファインダーカメラの場合、レンズスワップはカプラー(距離計連動型のマウントアダプター)を使うのが一般的だ。ただし、魚眼レンズはパンフォーカス効果が高いため、距離計非連動型で目測撮影してもおおむねピントが合う。広角レンズはカプラーを使わなくても、距離計非連動アダプターで十分だ。

 さて、赤外線フィルターの装着だが、周知の通り、魚眼レンズは前玉にフィルター装着できない。MCゼニター16mm F2.8は後玉にフィルター用のねじ切りがあるものの、口径が小さいため、取り付け可能な赤外線フィルターが市販されていない。そこでキーアイテムとなるのが、レイクオールのM42-L39 UV-IRという製品だ。これはマウントアダプター内部にUV/IRカットフィルターを組み込み、レンズごとにフィルター装着する手間を省くアイディア商品だ。このアダプターに組み込まれているUV/IRカットフィルターを赤外線フィルターに交換すれば、魚眼レンズで赤外線撮影が可能になる。なお、M42-L39 UV-IRのフィルター交換は改造行為にあたるため、くれぐれも自己責任で作業してほしい。

MCゼニター16mm F2.8はロシア製の対角魚眼レンズだ。デッドストック品でも3万円程度ライカM8はAPS-H機なので、35mm判換算21mm相当となる。魚眼らしさが十分に感じられる画角だ
赤外線撮影する際は、被写体との距離を目測し、赤外指標(Rマーク)にピント位置を合わせるM8のブライトフレームは最大24mmだ。今回のレンズは21mm相当となるため、外付け21mmファインダーを装着した

 赤外線フィルターはB+W 092の40.5mm径を用いた。いわゆるR72フィルターに相当する赤外線フィルターだ。フィルター枠からガラスだけを取り外し、アダプター内蔵のUV/IRカットフィルターと交換する。光線漏れしないように慎重に作業しよう。ストラップはヴァイヒィェ・ブリーゼの幅広タイプを合わせてみた。約3cm幅のワイドストラップで、スタッズでワンポイントマークをあしらってある。重量のあるカメラを安心して携行できるストラップだ。

レイクオールのM42-L39 UV-IRは、3mの位置で距離計と固定連動する。実勢価格は1万6,275円アダプターからLMリングと底面のネジを外し、赤外線フィルターのガラスと交換している
碇のモチーフのクオータースタッズストラップは1万4,070円。9月下旬より発売予定だ極小スタッズでワンポイントマークが打ち込んである。碇の他、音符、ハート、ロゴなどのバリエーションがある

 R72相当の赤外線フィルターで撮影すると、若干可視光線がまじるため、赤みを帯びた画像になる。ここ数年、赤外線写真で流行っているのは、この赤い画像をカラースワップする表現手法だ。Photoshopなどでホワイトバランスを整えた後、Labカラーに切り替え、aチャンネルとbチャンネルを反転させる。こうすると空が青く、木々の緑がベージュがかった白になり、現実と虚構が混在したような不思議な画に仕上がる。魚眼レンズの歪曲したパースペクティブも相まって、見慣れた風景が別世界に変貌するところがおもしろい。なお、作例はRAWモードで撮影し、Photoshop CS5でカラースワップ処理を行なった後、Lightroomで色調とコントラストを整えている。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなしのJPEG画像を別ウィンドウで表示します。
  • いずれも左がRAWからストレート現像した画像、右がカラースワップ処理などを施した画像です。
M8 / MCゼニター-M 16mm F2.8 / 3,916×2,634 / 1/30秒 / F4 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 16mm
M8 / MCゼニター-M 16mm F2.8 / 3,916×2,634 / 1/15秒 / F4 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 16mm
M8 / MCゼニター-M 16mm F2.8 / 3,916×2,634 / 1/15秒 / F4 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 16mm
M8 / MCゼニター-M 16mm F2.8 / 3,916×2,634 / 1/11秒 / F4 / 0EV / ISO160 / WB:オート / 16mm

【2010年9月17日】記事初出時の「ライカM8はローパスフィルターが薄く」という記述を「ライカM8は赤外線カットフィルターの効果が弱く」に修正しました。



(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp

2010/9/17 00:00