伊達淳一が徹底解剖!「OM-D E-M1 Mark II」の先進性

【高画質編】前モデルE-M1から大幅に向上した画質性能

5軸シンクロ手ぶれ補正・高感度画質・4K動画……高画質を実現した要因とは?

OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II

オリンパスが満を持して投入したフラッグシップミラーレスカメラ「OM-D E-M1 Mark II」。一眼レフカメラに迫る高性能について、ユーザーでもある伊達淳一さんが開発陣に迫る連載の第2回になります。

前回の【高速性能編】に続き、今回は【高画質編】のインタビューをお届けます。

オリンパス株式会社の技術開発部門より、鎌田竜二氏、味戸剛幸氏、田中潔氏、細野兼矢氏の4名にお話を伺いました。

(編集部)

(左から)
オリンパス株式会社 映像開発本部 映像商品開発2部 鎌田竜二氏
オリンパス株式会社 画像システム開発本部 画像システム開発2部 味戸剛幸氏
オリンパス株式会社 画像システム開発本部 メカ制御技術部 田中潔氏
オリンパス株式会社 画像システム開発本部 画像システム開発3部 細野兼矢氏

さらなる進化を遂げた5軸シンクロ手ぶれ補正

伊達:手ぶれ補正についてお伺いします。OLYMPUS OM-D E-M1 Mark IIに搭載している「5軸シンクロ手ぶれ補正」はE-M1、PEN-Fに搭載されているものと比べてどのような進化を遂げているのでしょうか。

田中:基本的な構成は従来のものを踏襲しています。ただし、手ぶれ補正を構成する主要な3つの要素が進化しました。1つめは手ぶれを検出するセンサー系。2つめは実際に補正をするユニット。3つめはセンサーからの信号を受けて、ユニットの動作を指示する手ぶれ制御用の集積回路です。この3つのハードウェアが新しいものになっています。

オリンパス株式会社 画像システム開発本部 メカ制御技術部 田中潔氏

伊達:それらが新しくなることで、いろんな周波数のぶれを検知できたり、素早く応答できたりということもありますか?

田中:そうですね。センサーを含む検出系を新しくしたことで、手ぶれ検知の正確性が上がっています。新しい集積回路と補正ユニットで、より高速かつ高精度な補正ができるようになりました。

伊達:ほぼ同時に出ていたM.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PROとの組み合わせにおいて、6.5段の「5軸シンクロ手ぶれ補正」が可能と謳われています。最初は信じられず試していなかったのですが、2秒でも、いや4秒でも止まるぞとSNSで投稿する人がいて、本当か? と思ってやってみました。さすがに4秒は難しかったですが、2秒では止められましたし、1秒なら結構余裕で止まるな、という印象です。これはボディー内手ぶれ補正とレンズ内手ぶれ補正、どちらの進化によるものでしょうか。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO

田中:12-100mm IS PROとE-M1 Mark IIは並行で開発しています。両者とも新しいセンサーの採用とアルゴリズムの見直しにより、長い露光時間でも正確に手ぶれを検知できるようになっています。ボディーとレンズそれぞれで補正できる範囲には限界があるので、それらを組み合わせることで大きなぶれにも対応できる。なので、どちらが効いてるということではなくて、両者が組み合わさることでそれぞれの持つ能力が更に引き出されている、と捉えていただくと良いかと思います。

伊達:ちなみに12-100 mm IS PROとE-M1 Mark IIを組み合わせたとき、どういう構え方をすると、より成功確率が上がりますか?

田中:秒単位の話になると、手先の細かなぶれよりも体の揺れのほうが大きく影響します。一般的には(ファインダーを覗いて)こう構えるのがいいと言われていますが、長い間ファインダーがブラックアウトすると体が揺れてしまうので、実は体の手前で構えたほうが止まりやすいです。

伊達:1秒〜2秒だと人間もふらつきますから、その影響を避ける意味ではモニターも見ないほうがいいのでしょうか。

田中:モニターもブラックアウトしますが、周囲が見えていれば体の揺れは抑えられます。

伊達:構図だけ決めて、あとシャッターを切るときは被写体を見るとか。(首にかけた)ストラップをぐっと張るのはどうですか?

田中:そういう撮り方もいいかもしれないですね。あとは寄りかかれるところとか、手を置けるところがあれば、そこに置いてもらうとよいでしょう。

さらに磨きがかかった5軸シンクロ手ぶれ補正。通常はシャッター速度5.5段分、対応レンズでは最大6.5段分の補正効果が得られる。

伊達:メカシャッターよりも電子シャッターの方がぶれの影響は少なくなるんですか?

田中:手ぶれ補正の効果のことでしたら、メカシャッターの振動は気にされなくても問題ないです。

伊達:それよりも大きな手ぶれが起きてるわけだから。

田中:仰るとおりです。

伊達:三脚のときは、手ぶれ補正をOFFにしたほうがよいのでしょうか。三脚を使っていても地面とか望遠レンズの鏡筒が揺れますよね。

田中:基本的にはONのままでも大丈夫です。三脚に載せられたかどうかは、カメラの中で判断して適切な制御に切り替えています。三脚特有の細かい揺れに対して極端に弱いという訳でもないのですが、重いレンズをつけたときなど、三脚とカメラのバランスによってはこれらが正常に動作しない場合があります。すべての条件で、手ぶれ補正ONの状態で問題なく動くとは保証できないので、三脚使用時は手ぶれ補正OFFを推奨しています。

伊達:逆に三脚使用時に手ぶれ補正をONにすることで、風や地面の揺れ、例えば橋の上などのぶれに対してプラスに働くことはありますか?

田中:手ぶれに近い緩やかな揺れが発生するような状態であれば、手ぶれ補正はONにしていただいた方が良いこともあるかと思います。

伊達:そもそも300mmF4.0クラスになると、三脚では止まらないですよね。ライブビューを拡大すると揺れています。これがONにすることで止まってくれるとうれしいなと思います。

田中:三脚に固定して通常の手ぶれではない揺れが発生している状態は制御が非常に難しいのですが、今後の課題とさせていただきたいと思います。

伊達:では逆に、手持ちであれば……

田中:手ぶれ補正の性能がしっかり発揮できます。

伊達:もしかしたら、1/8〜2秒くらいの間なら手持ちの方が、下手に三脚に固定してスローシャッターを切るよりは、変なぶれが出ない可能性もありますね。人間が緩衝材になっているかのような。そういう可能性をこの手ぶれ補正に感じました。

オリンパスお得意のボディー内手ぶれ補正は、代を重ねるごとに進化している。
E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO / 絞り優先(1/320秒、F4、+0.7EV) / ISO200(撮影:伊達淳一)

ところで連写中の手ぶれ補正に、「連写速度優先」という設定がありますが、この設定はどう使い分ければいいのでしょうか。

田中:今回新しく開発したメニューです。通常、静止画撮影後には手ぶれ補正をリセットして、撮影中に動いたセンサーをセンタリングするのですが、「連写速度優先」にすると連写終了までそれが行われません。一方IS(手ぶれ補正)優先では、これが一コマごとに行われます。動きモノなどを撮る場面のような、コマ間の画角変化を抑えたいときや、連写速度を稼ぎたいときは連写速度優先を使っていただくとよいですね。停まっているものを長めのシャッター速度でかっちり止めて撮りたいときはIS優先が効果的です。

伊達:手持ち夜景の話ですが、ぼくは連写中にファインダー像がガクガク揺れるのが嫌いで、連写速度優先に設定しているのですが、手持ち夜景はだいたい秒1コマですよね。本来ならIS優先にするところですが、連写速度優先のまま撮っていることがあります。その場合、補正効果はIS優先に比べて悪くなることはありますか?

田中:補正効果が変わる可能性はあります。連写速度優先の場合、前のコマで補正中に動いたセンサーがセンタリングされず、次のコマ撮影へ移行するため、補正できるぶれの大きさが一定でなくなります。ただし仰るとおり、LV像の揺れは軽減できます。

伊達:1コマ目の動きは同じですか?

田中:はい、同じです。2コマ目以降で動いたセンサーのセンタリングを行なうか行わないかが、IS優先と連写速度優先の違いです。

伊達:単写を繰り返すような場合はどうなりますか?

田中:単写の場合は、1コマ撮影するたびにセンタリングが行われます。1枚撮るごとに撮影の一連の流れを終わらせるという考え方です。そのため単写を繰り返す場合は、実質IS優先で遅い連写を行っているような状態になります。

伊達:ではそれほど大きくは変わらないんですね。手持ち夜景のときは必ずIS優先にした方がいいというわけではないと。

田中:そこは難しいところですね。比較的手ぶれしにくい方が使われるときや、柵などで手を固定できるときは、像を安定させるため、連写速度優先の使用をお勧めします。ただし、手ぶれ補正の性能だけを考えると、IS優先を利用していただいた方が安定しやすいです。

伊達:もちろん、原理上はそちらのほうがいいんでしょうけど。どちらかといえば、連写速度優先は横に動くものを追っていくときの像の安定性が求められる場合に使うのでしょうね。流し撮りですが、ISオートと1、2、3の4モードありますね。オートがあれば他のモードは必要ないのではないでしょうか。

田中:他社レンズ対応としてこれらのメニューを残しています。

伊達:補正方向が全方向ですが、これは斜め方向も対応しているのですか?

田中:斜め方向にも対応しています。弊社ではロール(回転方向のぶれ)も補正するので、ロールの場合も回すと流し撮りとして検知します。「回転流し撮り」と呼ばれていますね。

伊達:回転をかけるスローシャッターですね。花火で時々やります。話は変わりますが、E-M5 Mark IIの頃からシャッター音がすごくマイルドになりましたよね。その頃と比べてE-M1 Mark IIのフローティングシャッター機構は進化していますか?

鎌田:今回は連写性能の向上に対応するためにシャッターユニット自体を新しくしており、それに合わせてフローティング機構もチューニングしています。

オリンパス株式会社 映像開発本部 映像商品開発2部 鎌田竜二氏

伊達:フローティングは、ボディーのぶれを抑える機構なんですか?

鎌田:シャッター幕の動きで発生する衝撃を抑える機構です。

伊達:シャッター音が静かなことは、動物などの撮影で有利です。メカシャッターでも静かだし、電子シャッターだと無音なので、野鳥も逃げないですね。一眼レフカメラとの差別化に繋がると思っています。

位相差AFセンサーを入れても高感度画質はさらに向上

伊達:いよいよ画質についてです。E-M1 Mark IIでは、初代E-M1と比べると絵作りの方向性が違っているように思うのですが、どういう思想で絵作りをしているのかを教えてください。

味戸:絵作りの思想に関しては、2,000万画素のセンサーを活かして、従来モデルよりも解像感を上げることが第一の目標でした。

オリンパス株式会社 画像システム開発本部 画像システム開発2部 味戸剛幸氏

伊達:E-M1の画質は個人的な印象として、ちょっとぎすぎすした感じでした。1,600万画素で最大限の解像感を出そうとすることで、偽色も出るし、シャープも欠けて見える場合もあったのに対して、E-M1 Mark IIは少しそれが和らいだ描写になっているように思います。必要以上に輪郭がぎすぎすしていないと感じる。その一方で、(鳥の羽毛など)モフモフしたものは、急激に解像がなくなるシーンもあって、その二面性のギャップに悩みます。羽毛がばきばきに解像するシーンもあれば、いきなり崩れちゃうシーンもあって。そのギャップが初代よりも大きいかなと感じます。

味戸:シャープネスに関しては、1,600万画素から2,000万画素に画素数を上げたときに、あまりエッジを強調しすぎない自然な解像感を目指しました。だからといって、ディテールを犠牲にしたつもりはありません。ただし、高感度になってくると、ノイズリダクションが作用することで、被写体の細部描写がやや甘くなってしまうというご意見も伺っています。

伊達:ベタっとした表現になるとか。

味戸:ノイズリダクションのチューニングによって、そう感じられることもあるかもしれません。その場合は「高感度ノイズ低減」」のメニュー設定によって、チューニングを変えられます。

伊達:高感度ノイズ低減は高、標準、弱、OFFとありますが、そのあたりはどういったチューニングの差になっているんですか? まあ、OFFは何もしていないのでしょうけど。

味戸:実はOFF設定時でも、解像度に影響しない程度の軽いノイズリダクションは有効になっています。なので、弱かOFFにしていると、より解像を優先することができます。

伊達:それは単純に強度を変えているのですか? 例えば色ノイズは積極的に抑えるが、輝度ノイズは低減を控えめにするなど、モードごとに調整が入っているのでしょうか。それとも均等にパラメータが高くなっていくだけなのでしょうか。

味戸:モードごとに調整しています。弱からOFFにかけては、輝度のノイズリダクションが弱まりますが、解像度が上がります。色ノイズのリダクションについては標準、弱、OFFいずれも、同様に作用しますます。

伊達:弱にすれば、輝度ノイズは増えるけれども、色ノイズは抑えられて、解像度が上がってくるわけですね。OFFにすればさらに輝度ノイズが出てくるが、ディテールも残ると。

味戸:さらに言うと、ISO3200〜6400の高感度に関しては、新しい画像処理エンジンのノイズリダクション処理によって、ノイズと解像度の両者の面で性能が上がっています。今回はISO-AUTOでのISO感度上限を6400としており、従来は潰れがちだった高感度帯の画質も、より細かく再現できるようになっています。

伊達:ISO-AUTOの上限がISO6400になっているときは、ISO3200ほどに抑えていましたが、夜の飛行機を撮ったときISO6400にしてみました。思いの外きれいだったんですよね。被写体が飛行機という硬質なものというのもあるんですが、それにしてもエッジが潰れていないし、モワモワしていない、変なまだら感もない。ISO6400でも使えるなと感じました。

ちなみに、同じ画素数であるPEN-Fと比べて高感度画質は向上していますか? 像面位相差センサーが入った関係で、画質向上はかえって厳しい気もするんですが。

味戸:高感度画質は向上しています。

伊達:それは画像処理エンジンの力なんですか?それともセンサー自体の世代が上がって、良くなったんですか?

味戸:両方ですね。

同じ画素数のPEN-Fにはなかった位相差AFセンサーを配置しつつも、さらに高感度画質が向上した。
E-M1 Mark II / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO / シャッター速度優先(1/40秒、F2.8、±0EV) / ISO6400(撮影:伊達淳一)

伊達:以前PEN-Fについて、「2,000万画素で位相差画素をたくさん積むのは難しい」と聞いたのですが、今回は数字がさらに増えていますよね。にも関わらず高感度性能は上がっている。どういうマジックがあったんだろうって思います。

味戸:新しい画像処理エンジンによるところが大きいです。今回は有効画素数に加え位相差センサーの画素数も増えていますが、いずれにも対応でき、かつ高感度の性能も高められるよう、エンジンの処理能力を格段に向上させました。

ハイレゾショットは動きのある被写体に対応

伊達:ハイレゾショットを実際に使ってみたのですが、雲の動きとか木のさざめきがあっても自然に写っている気がします。そのあたりは今までと比べてどのくらい進化しているのでしょうか。微小に動く被写体への対応が進化しているな、と思っています。

編集部注:ハイレゾショットは0.5ピクセル単位でイメージセンサーを動かしながら、8回撮影した画像をもとに高解像写真を生成する機能。

味戸:これまで、微小に動く被写体に対しては、合成の処理の影響でブツブツとした乱れが出てしまっていました。しかし今回、ハイレゾショットを風景写真で積極的に使っていただけるよう、合成処理能力を高め、動く被写体による乱れを無くすことに注力しました。実際に被写体が動いているのか、それとも画素をずらす過程で変化して見えているのかを見分けられるようになり、解像の向上効果を保ったまま乱れを抑えられるようになったのです。

伊達:それも画像処理エンジンの性能が上がったことで、高度な処理ができるようになったということですね。

味戸:仰るとおりです。

伊達:ハイレゾショットで露光するときはどのくらい時間がかかるんでしたっけ。

味戸:以前は1〜2秒とお伝えしていましたが、今回はもっと速くなっています。読み出しが速くなったことで、ハイレゾショット8回分の撮影全体の露光時間も短くなります。これにより、撮影中に生じる被写体の動きの量も少なく済むのです。

伊達:次はイメージセンサーのAR(Anti-Reflection)コートについてですが、効果は反射防止ですよね。

細野:そうです。ゴーストのみでなく、フレアも軽減できます。フレアはコントラストの低減につながるため、フレアを抑えることで、抜けのいいクリアな描写になります。

オリンパス株式会社 画像システム開発本部 画像システム開発3部 細野兼矢氏

伊達:これまで、フレアによって問題が起きたことがあるんですか?

細野:ありません。ですが、M.ZUIKO PROレンズのラインナップを増やしていく中で、フラッグシップ機がレンズの性能を最大限に発揮するために必要なものだと判断し、搭載に至りました。

伊達:レンズの面間反射(撮像素子とレンズとの間で発生する内面反射)を抑えるということですか。

細野:イメージセンサー表面の反射を抑えます。

伊達:保護カバーガラスとセンサーの反射を抑えるということですか? ARコートはどの面に施しているのでしょうか。

細野:保護カバーガラスの両面です。これまでは保護カバー自体の(内部での)面間反射もありましたし、レンズ後玉からの反射もありました。ARコートしたガラスを接着するのは手間もコストもかかるのは確かですが、性能を上げるためには必要でした。

伊達:面間反射を抑えるには、撮像素子自体が(反射して)光っているからどうなんだろうなと思ったのですが。

細野:その点は特に問題になりません。この技術については、弊社のレンズ設計担当者も喜んでいます。これでレンズの性能が最大限に発揮できるだろう、と。

動画用のピクチャーモードを搭載

伊達:さて、4K動画は今や撮れるのが当たり前になってきましたが、E-M1 Mark IIの4K動画で優れている点はどこでしょうか。

細野:一番は、手ぶれ補正が動画にも効いて、手持ちでもかなりスムーズな動画が撮れる点です。プロの方にも使っていただくために、様々な機能を加えました。例えばCinema 4Kでは最大237Mbpsの高ビットレートに対応したこと、HDMI出力で外部レコーダーに記録する際にディスプレイの機能表示を消す仕様を採用したことなどです。電子シャッターのレスポンスも高速化していますので、被写体がこんにゃくのように歪むローリングシャッター現象も気にせず使っていただけるかと思います。

伊達:動画用に電子手ぶれ補正を含む設定も入っていたと思うのですが、これは動画時に画角が狭くなるんですか?

細野:狭くなります。

伊達:電子手ぶれ補正を入れなければ、水平画角は16:9から変わらないのですね。電子手ぶれ補正を併用するメリットについて教えてください。

田中:E-M5 MarkⅡ 以降、動画の手ぶれ補正は5軸手ぶれ補正に電子補正を組み合わせる方式が選択可能になっています。歩きながらの撮影ではカメラが大きく揺れるのですが、電子手ぶれ補正を併用することで、こうした場合でもちゃんと補正することができます。

伊達:電子補正を入れることで補正の最大量が増えると。

田中:その通りです。今回はそれに加えて、いくつかの歪みが電子的に補正できるようになっています。ひとつは、広角側でパースがかかることで生じる台形歪みです。動画ではカメラの揺れだけを補正すると、画面中央は揺れていないのに、被写体の形が変わって見えてしまうので、違和感が生じます。もうひとつは、ローリングシャッターの歪みです。電子補正をすると、1つのフレーム内の変化には追従できず、カメラを横に振るとどうしても像が斜めに歪んでしまうのです。これら2つの歪みを、電子的に補正しています。

伊達:近くのものと遠くのもので歪み(の度合い)って違いますよね? 手前の電柱はすごく歪むけど、遠くの建物は歪みが少ない、みたいな。どうやって対処しているのですか?

田中:ピントが合っている距離の歪みを補正します。

伊達:電子補正を入れることで、画質は落ちるんですか?

田中:若干落ちますが、通常利用される場合では差が認識されないレベルに抑えています。むしろ、ぶれによる画質の劣化を防止できるため、トータルの動画の品質は上がります。

伊達:ぶれは抑えられるから品質は上がると。ぶれているよりは、ぶれていない方がいいですもんね。じゃあ、動画撮影時は電子補正と手ぶれ補正を有効にしておいた方がいいということですね。

田中:はい。

細野:Cinema 4Kと普通の4Kとでは、画質が全く異なるんです。

伊達:どう違うんですか?

細野:ビットレートで言うと、普通の4Kは100Mbps程度で、Cinema 4Kは237Mbpsです。ただしCinema 4Kは24fpsになります。

伊達:Cinema 4Kを入れた狙いは何ですか?

細野:(ムービーの)プロを意識したことが一番大きいです。手ぶれに強いですし、映画撮影をされる方は勿論、ハイアマチュアの方にも使っていただきたいです。

伊達:プロの世界を前提にすると、今はグレーディング前提のログ記録が一種のトレンドになっているのですが、コレに関しては。

細野:検討中です。E-M5 Mark IIからは動画のピクチャーモードとして“フラット”を用意しています。デフォルトのピクチャーモードに比べ階調がなだらかになっており、白とびや黒つぶれがおきにくく、グレーディングも行いやすいため、動画に適した画像処理になっています。

伊達:では軽い色処理をすることを前提に動画を撮る場合、“フラット”で撮れば後処理がやりやすいわけですね。

細野:動画モードでは静止画と別個にピクチャーモードがあります。その中で通常モードと“フラット”を選択できます。

伊達:静止画と動画で“フラット”は絵作りが異なると聞きましたが、どの程度違うのでしょうか。

細野:中間調をやわらかくした静止画時の“フラット”と比べ、動画の“フラット”は後処理を考慮して、ハイライトからシャドーまで全体がやわらかな絵作りにしています。先ほど説明した静止画の場合と同様、新しい画像処理エンジンによって動画の高感度時のノイズ低減処理も進化していますので、ISO3200〜6400はかなりきれいになっています。

試行錯誤を重ねたグリップのデザイン

伊達:操作性やデザインについて、コンセプトをお聞きしたいと思います。E-M1から変えた点、変えない点とか。

鎌田:2代目ということを意識して、E-M1をベースに開発を進めてきました。操作性に関しては、E-M1発売からの数年間で、多くのお客様にご指摘いただいた点を重点的に反映しています。

伊達:グリップ側にレリーズのソケットがきたのには、何か理由があるんですか?

鎌田:PCなど外部への接続端子がUSB TypeCになり高速化しましたが、以前のケーブルは使えなくなったので、そのタイミングで配置を変えました。

伊達:特にレリーズを使いやすい位置に移動したわけではないんでしょうか?

鎌田:はい、グリップ側の一番いい位置に持ってきました。E-M1 Mark IIにはマイク端子、ヘッドホン端子として3.5mm径のピンジャックをグリップの反対側に配置しています。ケーブルレリーズは2.5mm径のピンジャックなので押し間違えることはないのですが、形状が似ているので間違えづらくする狙いもありました。

伊達:E-M1ユーザーに支持されている点と、変えてほしいと言われていた部分はどこでしょうか。

鎌田:ボタンの配置や、前後のダイヤルの使い勝手といったレイアウトの全体的なコンセプトは、E-M1の頃から高い評価をいただいていました。それを継承しつつ、ユーザーの皆様がそれぞれ使っていく中で感じたことをご指摘いただき、それらを元に変更を加えました。AEL/AFLボタンの位置、背面のレバーの向きがその一例です。

前モデルを踏襲しつつもリファインされたE-M1 Mark IIのグリップ。

伊達:デザイン・操作性の面で、アピールポイントはありますか?

鎌田:グリップ周りのデザインです。全体的なボディーとのバランスやレリーズボタンの角度を見ながら、ホールド感を高めるため、全体的なボディーとのバランスやレリーズボタンの角度などを見ながら、試行錯誤を重ねました。こちらもお客様からいただいたご指摘を、細かな配置までデザインに落とし込んでいます。見た目はそんなに変わっていないようですが、実はかなり手を入れています。

伊達:グリップと言えば、バッテリーグリップは基本的に使いたくないのですが、E-M1 Mark IIのパワーバッテリーホルダーHLD-9を初めて触ってみて、縦で使っても横で使っても差が少ないと思いました。この手のアイテムはホールド感がいまいちなものが多いんですが、これは持ったときの感覚が横グリップとほぼ一緒で、すごくいいなと素直に思いました。

パワーバッテリーホルダーHLD-9を装着した状態。

【実写で検証編】に続きます

伊達淳一

(だてじゅんいち):1962年広島県生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒。写真誌などでカメラマンとして活動する一方、専門知識を活かしてライターとしても活躍。黎明期からデジカメに強く、カメラマンよりライター業が多くなる。