伊達淳一のレンズが欲しいッ!

電子接点付きEF-Eマウントアダプターを検証する(後編)

AFスピード、内面反射などを4種類のアダプターで比較

シグマもMOUNT CONVERTER MC-11でマウントアダプターに参入し、EF-Eマウントアダプターが活況を呈している

前編に引き続き、4メーカーの電子接点付きEF-Eマウントアダプター(αボディにEFマウントレンズを装着)の検証結果をお伝えする。後編では、AFスピード、内面反射、電子先幕シャッターへの対応などを、実写テスト動画を交えて比較する。

―注意―
  • デジカメ Watch編集部および伊達淳一は、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。また、各マウントアダプターの動作の可否について保証するものでもありません。

AFスピード

電子接点付きEFマウントアダプターで実用的な合焦スピードが得られるのは、ソニーLA-EA3装着時に像面位相差AFが効くα7R II、α7 II、α6300の3機種。それ以外の機種は、AF-Cはいわずもがな、AF-SでもAFスピードが遅く、MF拡大やピーキングを利用して、MFでピントを合わせるのが賢明だ。

さて、マウントアダプター使用時に像面位相差AFが効く機種で、どの程度のAFスピードが得られるのかが、もっとも気になるポイントだろう。そこで、カメラのHDMI端子に外部レコーダーを接続して、ライブビューの映像を1080/60pで録画し、実際の動作レスポンスを記録してみた。

ちなみに、静止画撮影時にはHDMIから音声出力が得られないので、ホットシューにPCMレコーダーを設置し、レンズやISの動作音、シャッター音などをライン入力で外部レコーダーに渡している。そのため、実際よりもレンズやISの動作音が大きめに記録されているが、レンズの動きやISの動作を音でも確認することが可能だ。

FE 35mm F2.8 ZA

まず、純正のFEレンズ装着時のAFスピード等を確認するために、ソニーFE 35mm F2.8 ZAを装着して撮影したものをご覧いただこう。



像面位相差AFが動作するのはF8までなので、F8よりも絞り込むと多少AF動作が冗長になるが、FEレンズとの組み合わせにおいては、コントラストAFでも実用的な合焦スピードが得られている。また、AFエリアも広く、像面位相差エリア外にもフォーカスポイントを動かせる。

α7R II / 1/320秒 / F11 / ISO200 / 絞り優先AE / 35mm / 撮影場所:秩父高原牧場の天空のポピー

α7R II+METABORNES+EF24-70mm F4L IS USM



[ゾーン]や[フレキシブルスポット]は選択できず、フォーカスポイントを移動できるのも、像面位相差AFエリア内の被写体に限定される。その意味では、α7 IIよりもα7R IIのほうが像面位相差AFエリアが広いので、より構図の自由度は高いといえるが、レンズによっては像面位相差AFエリアの中央付近でないと安定した合焦が得られないものもある。

α7R II / 1/320秒 / F8 / ISO100 / 絞り優先AE / 28mm / 撮影場所:秩父高原牧場の天空のポピー

α7R II+MC-11+EF24-70mm F4L IS USM

AF-Cで撮影。マクロモードにしてポピーのアップを狙ってみた。



風で花が揺れるので、AF-SではなくAF-Cで狙っているが、像面位相差AFの効果で、コントラストAFのウォブリングのようにフォーカスが前後に微動することもなく、安定して花のシベを狙うことができている。一眼レフでもここまで高精度のピントを得るのはむずかしいだろう。

α7R II / 1/2,500秒 / F4 / ISO400 / 絞り優先AE / 80mm / 撮影場所:秩父高原牧場の天空のポピー

α7R II+MC-11+SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Art

AF-Cで撮影。MC-11対応レンズとの組み合わせなので、[ゾーンAF]や[ロックオンAF]が使えるのが魅力。



被写界深度が極めて浅いシチュエーションで、被写体(ひなちゃん)も動くので、像面位相差AFといえども、100%完璧なピントが得られるのはそう多くはないが、一眼レフの位相差AFよりもガチピンが得られる率は高い。

しかも、レンズ内補正で周辺光量も安定し、おまけにボディ内手ブレ補正も効くので、ニコンやキヤノンで使うよりも、よりこのレンズの性能を引き出せる。

α7R II / 1/60秒 / F2 / ISO800 / 絞り優先AE / 50mm / 撮影場所:横浜関内の猫カフェMiysis

α7R II+METABORNES+SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Art

AF-Cで撮影。MC-11とは違って、[ゾーン]や[ロックオンAF]は使えないので、フレキシブルスポットMでフォーカスポイントを顔に設定。



小さな緑色の□がピントを合わせようとしている部分で、フルサイズの50mm F1.4という極めて浅い被写界深度でも高い精度でピントが合う。

また、α7R IIはサイレントシャッターが使えるので、ほぼ無音で撮影できるのも魅力。うるさいシャッター音がしないので、近づいて撮影しても、さほどネコに嫌がられずに済む。

α7R II / 1/60秒 / F1.4 / ISO250 / 絞り優先AE / 50mm / 撮影場所:横浜関内の猫カフェMiysis

α6300+MC-11+EF70-300mm F4-5.6L IS USM

MC-11の動作保証外レンズ、しかも、同じく動作保証外のAF-Cでの動体撮影だ。マウントアダプター装着時には、連写HではAF-Cが追従せず、ピントは最初の1コマ目で固定される仕様なので、AF-Cが追従する連写Lで向かってくる連写を撮影。



正直、連写Lでは、動く被写体を狙うには連写が遅いが、1コマ1コマのピント精度はかなり高い。このように連写しっぱなしではなく、ベストな瞬間を狙って1~2コマ、フレーミングし直して、次のベストな瞬間を1~2コマという撮り方をすれば、十分動体を望遠で狙うことができる。

※共通設定:α6300 / 1/2,000秒 / F5.6 / ISO800 / シャッター優先AE / 300mm / 撮影場所:京王線 府中~分倍河原間

α6300+METABORNES+EF70-300mm F4-5.6L IS USM

11コマ/秒の連写H+では、AF-Cは追従しないが、4~5コマずつ連写したら、シャッターボタンを半押しし直して、再び、4~5コマの連写を繰り返してみた。



厳密には、1コマ目以降は後ピンになっているはずだが、連写が速いので、2~3コマならほぼ被写界深度内で実用になるピントが得られている。飛行機など撮影距離が離れている被写体なら、じれったい連写Lでストイックに撮影するより、ここぞという瞬間を連写Hで数コマ撮影したら、シャッターボタンを半押しし直して連写を繰り返すという撮影スタイルもありだろう。

※共通設定:α6300 / 1/1,600秒 / F5.6 / ISO640 / シャッター優先AE / 300mm / 撮影場所:京王線 府中~分倍河原間

α6300+TECHART+EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM

現状、FEレンズにはまだ存在しない超望遠ズームの組み合わせだ。大ボケ状態ではフォーカスが多少迷うが、一度、被写体を掴んでしまえば、α6300の広い像面位相差AFエリアが被写体の動きをしっかり追ってくれる。



下手な一眼レフのコンティニュアスAFよりも安定した動作だ。キヤノンユーザーに大人気の超望遠ズームだけあって、APS-Cの2,400万画素(しかも、ローパスフィルターあり!)でもキレキレの描写。レンズ内手ブレ補正の効きも良く、ライブビューも非常に安定している。もっと動きの速い被写体でも連写Lならしっかりピントが追従する。

α6300 / 1/1,250秒 / F7 / ISO200 / マニュアル / 286mm / 撮影場所:山中湖湖畔

EF70-200mm F2.8L IS II USM+4つのアダプター

135mm域ではα7R IIの像面位相差AFエリアの周辺までピントを合わせられるアダプターが多いが、200mm域になるとどのアダプターも周辺ではまったくピントが合わなくなる。



とはいえ、画面中央近辺の被写体は、AF-Cでも非常にスムーズで安定したAF動作が得られている。ソニーのボディにキヤノンのレンズを組み合わせ、ここまでのAF性能が得られる時代が訪れたのだ。

TECHART使用
α7R II / 1/400秒 / F2.8 / ISO100 / 絞り優先AE / 140mm
VILTROX使用
α7R II / 1/400秒 / F2.8 / ISO100 / 絞り優先AE / 200mm

マクロレンズ

キヤノンEF100mm F2.8L Macro IS USMとタムロンSP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USDの2本の中望遠マクロレンズで、4本のマウントアダプターの挙動をチェックしてみた。



EF100mm F2.8L Macro IS USMは、シグマMC-11とMETABORNESは問題なくアジサイのシベにピントを合わせられたが、TECHARTはレンズを認識せず、VILTROXはフォーカスが前後に迷いまくり、MFにしないと満足にピントを合わせられなかった。

SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USDはさらに動作が不安定になり、シグマMC-11も最初は満足にAFでピントが合わなかったものの、一度、MFに切り換えて撮影した後は、AF-SもAF-Cも正常動作するようになった。謎である。

TECHARTはNorモードではレンズを認識するもののAFが満足に動作しないが、Fnモードにすると、レスポンスは遅めだが一応AFが効くようになる。VILTROXは、EF100mm F2.8L Macro IS USMと同様、フォーカスが行ったり来たりで、MFに切り換えないと使えない。4本のマウントアダプターのなかでは、METABORNESが一番安定していた。

MC-11+EF100mm F2.8L Macro IS USM
α7R II / 1/640秒 / F2.8 / ISO400 / 絞り優先AE / 100mm
METABORNES+SP 90mm F/2.8 Di MACRO 1:1 VC USD
α7R II / 1/640秒 / F2.8 / ISO400 / 絞り優先AE / 90mm

内面反射対策

「あれ、このレンズ、逆光でフレアが多いなぁ」と思っていたら、実はマウントアダプターの内面反射だった、なんてこともある。レンズにそんな濡れ衣を着せないためにも、4つのマウントアダプターの逆光性能をチェックしてみた。

各マウントアダプターの内面処理
MC-11
METABORNES
TECHART
VILTROX

テストに使用したレンズはキヤノンEF50mm F1.8 STM。4本のマウントアダプターでもっともフレアが少ないのはシグマMC-11、逆に多いのがVILTROXだ。METABORNESも内面に植毛がしっかり施されているので、もっとフレアを抑止できているかと思っていたのだが、シフトレンズ対応のため、上下の開口を広げている分、シーンによっては余計な光を拾いやすいのだろう。

その点、シグマは、自社にシフトレンズがないので、シフトレンズ対応を考える必要がなく、マウントの開口をギリギリまで絞っているので、最も迷光を拾いにくく、フレアを生じにくかったものと思われる。

MC-11
METABORNES
TECHART
VILTROX

※共通設定:α7R II / 1/30秒 / F2.8 / ISO400 / マニュアル / 50mm

電子先幕シャッターへの対応

電子先幕シャッターで1/1,000秒以上の高速シャッターで撮影すると、電子先幕とメカ後幕の影の出方の違いから露光ムラを生じやすくなる。そのため、純正レンズでは、装着しているレンズによって露光タイミングを調節して、電子先幕シャッターでも露光ムラが出にくいようにしている。

そこで電子接点付きEFマウントアダプターが、どこまで純正レンズと同様に振る舞うことができるのか、高速シャッターを切って確かめてみた。

SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Artの場合、1/8,000秒の高速シャッターを切っても、どのマウントアダプターも目立った露光ムラは生じていないが、サイレントシャッターで撮影したものと比べると、わずかに画面上部が白っぽくなっている。MC-11が正式対応しているSIGMA 50mm F1.4 DG HSMでも同様だ。

SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Art
MC-11
MC-11(サイレントシャッター)
METABORNES
METABORNES(サイレントシャッター)
TECHART
TECHART(サイレントシャッター)
VILTROX
VILTROX(サイレントシャッター)

※共通設定:α7R II / 1/8,000秒 / F2 / ISO100 / マニュアル / 50mm

一方、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMで1/4,000秒の高速シャッターを切ると、どのマウントアダプターも画面上部が黒くなっている。特に、TECHARTの露光ムラが大きめだ。先幕も後幕も電子のサイレントシャッターで撮影すれば、高速シャッターでの露光ムラは抑えられるが、サイレントシャッターは幕速が遅く、動体にローリングシャッター歪みが生じるリスクが高くなる。

EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
MC-11
MC-11(サイレントシャッター)
METABORNES
METABORNES(サイレントシャッター)
TECHART
TECHART(サイレントシャッター)
VILTROX
VILTROX(サイレントシャッター)

※共通設定:α7R II / 1/4,000秒 / F5.6 / ISO400 / マニュアル / 400mm

残念ながら、電子先幕シャッターに完全対応している電子接点付きEFマウントアダプターは、この4製品の中にはなさそうなので、望遠レンズで高速シャッターを切らざるを得ないときは、レリーズタイムラグが長くなるのを覚悟で、電子先幕シャッターを[切]にするのが無難だ。

総論

当初は、電磁絞りをコントロールできるだけの電子接点付きEF-Eマウントアダプターだったが、AF-Sや手ブレ補正が効くようになり、ボディ側の進化でマウントアダプターでも像面位相差AFの支援を受けられるようになり、AF-Cでも実用的なAFスピードで撮影できるレンズが増えてきた。

さらに、純正のFEレンズと同様、AFモードやフォーカスエリアモードを制限なく選択でき、レンズ補正まで効く時代が訪れた。キヤノンユーザーにとっても、ソニーα Eユーザーにとっても、キヤノンEFマウントレンズは“第2の純正レンズ”となりつつある。

ずばり、お薦めは、内面反射が少なく、マウントのガタツキも少ないシグマMC-11。新プロダクトラインのシグマレンズと組み合わせるのがベストではあるが、多くのキヤノンEFレンズも十分実用になる。タムロンの新SPシリーズで認識しないことと、対応レンズ以外の手ブレ補正の挙動以外は大きな問題は感じない。価格的にもMC-11がベストチョイスだ。

レンズとの相性が少なく、完成度が高いという点では、METABORNESも値段は高いが、買って損はない。とりわけ、α7シリーズでシフトレンズを使いたいという場合は、METABORNES一択だろう。

最後に、こうしたマウントアダプターでEFマウントの手ブレ補正搭載レンズを使う際の注意として、レンズを交換する際にはいったん電源をOFFにしてからレンズを交換するか、少なくともISユニットがロックされる(シャッターボタンから指を放して1~2秒でジッという音がする)まで、レンズをマウントアダプターから取り外さないこと。

もし、ISユニットがロックされる前にレンズを外してしまうと、ISユニットがフリーの状態でレンズを持ち歩くことになり、ISユニットに重大なダメージを与えてしまうリスクがある。もちろん、これはマウントアダプター使用時だけでなく、純正ボディと組み合わせた場合にも共通する注意点だが、マウントアダプター使用時には特に留意しておきたい事項だ。

伊達淳一

(だてじゅんいち):1962年広島県生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒。写真誌などでカメラマンとして活動する一方、専門知識を活かしてライターとしても活躍。黎明期からデジカメに強く、カメラマンよりライター業が多くなる。