フォトアプリガイド

Photoshop Touch for phone(iOS, Android)

トーンカーブ、レイヤー……お馴染みの機能がスマートフォンで

「Adobe Photoshop Express」というアプリをご存じだろうか。“Photoshop”の名前が示すとおり、アドビシステムズが無料で公開している画像編集アプリだ。切り抜きや回転といった簡易編集とアップロードに対応しているのが特徴で、公開以来多くのスマートフォンユーザーに利用されてきた。

 そんなアドビシステムズから、多種多様な編集機能を備える「Photoshop Touch for phone」が公開された。すでに販売されているタブレット端末向けアプリ「Adobe Photoshop Touch」のスマートフォン版になる。

 無料で使える「Adobe Photoshop Express」を簡易画像編集アプリとするなら、「Photoshop Touch for phone」は“Photoshop”の冠に相応しい本格的な画像編集アプリとなっている。

 試用したのはAndroid OS用で、バージョンは1.0.0。価格は450円。Android OS 4.0以上を採用する端末で利用できる。NTTドコモの「MEDIAS LTE N-04D」(Android OS 4.0.4)で試してみた。

 なお、iOS用もApp Storeからダウンロードできる。

 起動すると、「新規プロジェクトの作成元」ダイアログがポップアップ表示される。これはいわゆる編集元となる画像データを指定するダイアログで、「写真ライブラリ」では端末内(装着した記録メディア含む)、「Creative Cloud」ではCreative Cloudにアップロードした画像データを指定可能。また、「空のドキュメント」を選択すると、画像サイズ(縦×横)を任意に指定し、新しい画像を作成できる。

「新規プロジェクトの作成元」では、編集元となる画像を選択できる
「写真ライブラリ」から編集したい画像を選び編集画面を表示させた

「新規プロジェクトの作成元」から画像データを指定すると、編集画面へと切り替わる。基本的な編集機能は画面の上下に配置され、それぞれアイコンをタップして呼び出す仕組みだ。

 基本的な操作はタッチで行なうため慣れは必要だが、機能の中には自動補正といったオートマチックに補正する機能もあるので、ケースバイケースで利用したい。

 なお、表示された画像はピンチイン/ピンチアウト(拡大・縮小)操作に対応しており、細かな作業も安心して行なえる。タッチした位置がどこなのか不安なら、画面左上の「編集」アイコンをタップして表示されるメニューから「ポインターを表示」をタップするとよいだろう。編集画面にポインターが表示され、位置指定などが視覚的に捉えやすくなる。覚えておこう。

画面左上の「編集」アイコンをタップすると、カットやコピーといった基本的な編集機能にアクセスできるほか、タッチデバイスならではの「ポインターを表示」といった機能が利用できる
「調整」では、「白黒」や「色温度」、「明るさ・明暗差」といった調整項目が用意されている。中でも「自動補正」や「カーブ」は使い勝手がよい印象

 また、他の画像編集アプリで採用されている「フィルタ効果」にも対応。大きく「基本」「表現手法」「アート」「写真」という4つの項目が用意され、それぞれに9パターンの効果が収録されている。

 フィルタ効果を選択すると、それぞれの効果に対応した“かかり具合”がスライダなどで調整できる。無料アプリで採用されているフィルタ効果の多くは“ワンタッチ”で付加できる簡易的なものがほとんどなので、例え同じタイプのフィルターであっても一味違った効果が得られるだろう。

「基本」で注目したいのは「シャープ」や「色かぶり補正」といった効果。単に変化を加えるだけでなく、補正が可能だ
「表現手法」にも「ノイズの軽減」といった補正効果が用意されているが、掛かり具合が強く、スライダをちょっと動かすだけでトーンジャンプしてしまう。加減が難しい
「アート」はデフォルメ色の強い効果が並ぶ
「写真」では、「セピア」や「ソフトライト」など、馴染み深いフィルターが収録されている
各効果をタップすると、画像の様なスライダが表示され、掛かり具合が調整できるようになっている

 画面上部の「&」アイコンをタップすると、基本機能となる「画像の切り抜き」や「画像サイズ」、「回転」のほか、画像に変化を付ける「変形」「ワープ」「グラデーション」といった本格的な編集機能にアクセスできる。逆光効果を付加する「逆光」といったアート色の強い編集機能がフィルタ効果とは別に「&」から設定できる点は不思議な感じではあるが、これはこれで面白い。

 スマートフォンらしい機能としては、「カメラの塗りつぶし」機能がある。これは、カメラを起動し、撮影した写真データをレイヤーとして重ねられる機能。「レイヤー」からも設定できるが、透明度を変更することで、多重露光的な使い方できる。

編集の基本機能と応用機能が混在する「&」項目。「逆光」や「カメラの塗りつぶし」といったユニークな機能もある

 Photoshopの基本ともいえる「ツール」は、画面左下のアイコンをタップして利用可能だ。「長方形選択ツール」や「なげなわ選択ツール」といった選択ツールのほか、「自動選択ツール」を備えているので、タッチ操作でも選択自体は簡単。選択の解除は選択領域外をタップするか、画面左上の「編集」から「選択を解除」をタップして行なう。また、選択領域の消去も「編集」の「消去」から可能だ。選択範囲の追加/削除に関しては、画面下部の「モード」をタップして切り替えできる。「選択機能」ひとつとっても、このように操作場所が点在しており、慣れるまでは思い通りに操作できないかもしれない。

 ただ、画面右上に表示されたアイコンをタップすることで「リドゥ/アンドゥ」が可能なため、手早く修正をやり直せるのは便利だ。

画面左下の「ツール」から「自動選択ツール」や「コピースタンプツール」、「ペイントツール」などにアクセスできる
「ツール」を選択する際は「タップ(タッチ)」ではなく、「スライド」(指が触れたままの状態で操作)で行なう
画面下部にある「モード」をタップすると選択範囲の追加/削除が可能となる。「+」時は追加を、「-」時は削除を意味する
一度操作を行なうと、画面右上に「矢印」アイコンが表示される。これが「リドゥ/アンドゥ」アイコンだ

 PC版のPhotoshopと同様、「レイヤー」機能にも対応。レイヤーを追加するには、編集画面右下の「レイヤー」アイコンをタップし、表示された「レイヤーを追加」ダイアログから追加したいレイヤーの種類を選ぶ。満足のいく編集が完了したら、画面左上の「完了」をタップしてデータを保存する。

 以上が、Photoshop Touch for phoneの基本的な使い方だ。

画面右下の「レイヤー」アイコンをタップすると、レイヤーの追加が可能。現存のレイヤーを複製できるほか、「写真レイヤー」では新しい画像データ、またはその場で撮影した写真データをレイヤーとして追加できる
完了し、保存された画像データは「Photoshop Touch for phone」のメイン画面で確認できる。新しくプロジェクトを作成したい場合は、画面中央下部の「新規プロジェクト」アイコンをタップすればよい

 Photoshop Touch for phoneでは、編集した画像データを「Adobe Creative Cloud」にアップロードしたり、端末内の「ギャラリー」に保存し直したりすることが可能。特にAdobe Creative Cloudと同期させることで、PCとスマートフォン間のデータ共有が簡単に行なえるというメリットは見逃せない。

 なお、Adobe Creative Cloudには定額制のメンバーシップのほか、「無料メンバーシップ」が用意されており、無料のメンバーシップに登録することで2GBのストレージスペースが利用できるようになる。本アプリを利用する際は合わせて登録を検討したいところだ。

画面左上の「歯車」アイコンをタップすると、「マイアカウント」などの項目が表示される。「Adobe Creative Cloud」のアカウントは、この「マイアカウント」から設定する
画面下部左の「共有」アイコンをタップすると、メイン画面に表示された画像データを「Adobe Creative Cloud」にアップロードできるほか、「ギャラリー」に保存させられる。また「共有」をタップすると、インストールした対応アプリで画像データが利用できるようになる
画面下部右の「クラウド」アイコンをタップすると、「Adobe Creative Cloud」の同期設定が可能だ。Wi-Fi接続時のみといった設定ができるので、たくさん同期したい場合も安心
画像データの複製や削除にも対応する。画像が多くなったら、フォルダーを作成して管理も可能だ
画像データの名前部をタップすると、その画像の名前(プロジェクト名)を変更できる

 Photoshop Touch for phoneは有料アプリだ。しかも、無料で使える編集アプリがたくさん配信されているので、気になったとしても入手を躊躇してしまうかもしれない。本アプリを使ってみた率直な感想だが、フィルタ効果や自動補正、トーンカーブ(カーブ)といった機能は扱いやすく便利な印象。特に自動補正の効果は好ましく、便利に利用させてもらった。またトーンカーブは、この手のアプリとしては珍しい機能。RGBの各チャンネルまたは同一チャンネルをタッチ操作で微調整できる点もよかった。

 一方で、スマートフォンの画面で本格的な画像編集を行なうのはかなりの根気と慣れが必要だと思う。“Photoshop”の名に恥じない本格的な機能を搭載したのが本アプリの特徴だが、今後のバージョンアップで操作性のブラッシュアップを図ってもらいたいところだ。

 現状では操作性のクセや画面サイズによる使い勝手に疑問を覚えるものの、搭載する機能や効果には満足。Creative Cloudを使っているユーザーなら積極的に、使ってないユーザーであっても、既存の編集アプリに満足していないなら検討する価値はあるだろう。

飯塚直