フォトアプリガイド

新年度特集:iOS/Androidの複写アプリ活用術

領収書から紙焼き写真まで、手早く便利にデジタル化するアイデア

必要事項を入力した書類を印刷し、領収書を糊で貼って経理担当者に提出するというのは、多くの企業の経費精算でよくある流れだろう。一方で、最近は領収書の添付が不要という企業も増えつつある。これは2020年にデータでの保存が認められるようになったことが関係している。

筆者も、経費を取引先に請求するとき、以前であれば領収書を郵送で送る/手渡しするなどしていたのだが、最近は「データでいいです」というところが増えてきた。内容が読めればいいのだから、スマートフォンなどでパチリと撮り、そのままメールなどで送ってしまう。

小さな紙片をデータ化したいというのは、領収書に限らない。名刺のデータ化にスマートフォンのカメラを使っているという人も多いだろう。画質にこだわらないのであれば、いつでも身近にあるスマートフォンのカメラを使うのがやはり手軽だ。基本的に、撮りたいものを机などを置き、真上から撮るだけ。

iPhoneの画面。真上から俯瞰で撮ろうとすると、画面中央に十字のマークが表示される。この2つが重なるところが真正面ということになる。そこまで厳密でなくても、できるだけカメラを正対させて撮っておいたほうが後々ラクだ。

iPhoneでは、カメラを水平近くに構えると、中央に黄色と白で十字にマークが2つ表示される。これがピタリと重なったところが水平になった合図で、真下にカメラを向けていることになる。机が傾いていなければ、机の上の領収書が歪まず撮れる状態だ。Androidの場合はカメラアプリや機種にもよるが、標準アプリでは同様の機能がある。

また、スマートフォンには、そうした書類などを撮影することに特化したアプリが数多く用意されているので、後半ではそれらも紹介する。

複写のコツは「光が均一に当たるように」

照明の光を避けつつ、自分が影にならないように撮るなら、ノートパソコンのディスプレイを使うと便利。角度を調整しつつ、うまいところをみつけやすい。

基本的には、撮りたいものを平らに置いて、真上から撮影するのがセオリーだが、スマートフォンや自分が影になって、写したいものの一部分だけが暗くなってしまうこともある。天井の照明が領収書などに反射して、一部が白トビして読みづらくなってしまうこともあるかもしれない。

そうしたときは、傾けた本などの上に置くなど、光が均一に当たり、影が出ない位置を探してもいいだろう。ノートパソコンのディスプレイ部分において、角度を変えながら好ましい位置を探るのもいい。データを受け取った人の読みやすさを大事にするならば、少し書類の形が歪んでも、反射したり影ができない位置を探すといいだろう。

先に述べた領収書の撮影であれば、どのくらいのクオリティなら許されるのかは、提出先の担当者にもよるだろうから直接聞くのが一番だ。案外、"読めれば十分"ということも少なくない。

フラッシュをオンにして撮影する手もあるが、近くからフラッシュを光らせると一部だけが白トビしてしまうので、少し距離をとって撮影することになる。"読めればいい"という用途であれば、少し離した状態にスマートフォンを構えて、デジタルズームだったり、あとからトリミングしても、実用画質としては大きく問題にならないだろう。

そのまま撮影(フラッシュなし)
フラッシュをオンにして撮影。自分の体やスマートフォンの影ができるなら、フラッシュをオンにして撮影するといい。
フラッシュをオンにしつつ、少し離れて撮影。このほうが、均一に光が当たりやすい。ただし、条件によってはフラッシュ光が反射することもあるので気を付けたいところ。

領収書といえば折り目がついているということも多い。変色や退色をおさえるために、印字面を内側にして折るのが癖になっている人も多いだろう。しわくちゃになっていることだってある。こうなっていると前述の明暗差が起きやすくなる。

この場合は、一所懸命に折り目を伸ばすのはもちろんだが、透明なクリアファイルなどに入れてしまうのが簡単だ。クリアファイルによっては照明を反射しやすくなるので、フラッシュはオフにしたり、撮影位置を工夫したい。

こうして撮影した写真は、自分宛てにメールで送るなどすればいい。スマートフォンで撮影した写真を自動でクラウドにバックアップするようにしているのであれば、それをパソコンから取り出せばいいだけなので手軽だ。経費精算をすぐしないにしても、とりあえず撮っておけば、紛失したときに自腹を切る羽目にならずに済む可能性も高まる。

スマートフォン複写の定番アプリを紹介

専用アプリを使えば、台形に写ったレシートも簡単に補正できる(Microsoft Office)
例:台形補正を適用した画像

せっかくのスマートフォンだから、ここはやはり書類などを撮影する専用のアプリを使うのが便利だ。ここでは定番をいくつか紹介する。四角い紙が歪んで台形に写ってしまうような状況でも、自動で台形補正する機能のあるアプリも多い。

Microsoft Office

・Android(Google Play)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.microsoft.office.officehubrow

・iOS(App Store)
https://apps.apple.com/app/id541164041

モバイル向けはExcelやWordなどアプリが分かれていたが、スマートフォンではOfficeという一つのアプリに統合されている。書類撮影アプリであるLensも同様にOfficeにまとめられた。マイクロソフトのアカウントにログインしておけば、撮影後はそのままOneDriveに保存される。

Lens/レンズ機能は写したいものに応じて、ホワイトボード/書類/写真のモードが選べる。領収書であれば書類を選ぶ。赤い線で取り込む部分が表示されるので、いい感じのところでシャッターボタンを押す。

Adobe Scan

・Android(Google Play)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.adobe.scan.android

・iOS(App Store)
https://apps.apple.com/app/id1199564834

アドビ製の、撮影とPDF変換を行うアプリ。撮影モードはホワイトボード/フォーム/文書/名刺から選択可能。領収書であれば文書でいい。

カメラを向けると、四隅に青い印が出るので、その状態を維持すると、特にシャッターボタンを押さなくても適切に取り込まれる。多少位置がずれても直後に修正できるので、それほど神経質にならなくても済む。

また、自動で文字認識(OCR)が実行されるので、領収書に限らず用途は広がる。ほかのアプリで撮影した写真も利用できる。Adobe IDもしくはFacebook/Google/Appleのアカウントが必要。

Google フォトスキャン

・Android(Google Play)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.google.android.apps.photos.scanner

・iOS(App Store)
https://apps.apple.com/app/id1165525994

どうしても一部が反射してしまって読めない!というようなときに使いたいのがこれ。本来はプリントした写真を取り込むためのアプリで、カメラの位置を変えながら4回撮影すると、アプリ内で合成される。

まず写したいものの全体が収まるようにフレーミングしてシャッターボタンを押すと、4か所の丸い印が表示されるので、それに合わせるようにカメラを動かしていけば次々と撮影され合成される。台形補正や切り抜きは、調整機能を使って自分で四隅を指定していく。

Evernote

・Android「Evernote for Android」(Google Play)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.evernote

Evernote for Android

・iOS「Scannable」(App Store)
https://apps.apple.com/app/id883338188

Scannable

Evernote純正の撮影アプリ。iOSでは専用のScannable、AndroidはEvernoteのカメラ機能を使う。それぞれできることは異なるが、「自動」にして書類にカメラを向けておけば、自動で写したいものを認識・撮影する。台形補正や切り抜きも自動だ。当然、Evernoteに保存すれば文字認識(OCR)も行われるため、あとからキーワード検索で目的のレシートや名刺を探せる便利さがある。

応用編「斜めに歪んだ写真を補正する」

歪まないように撮影するのは難しい。もちろん、自動で台形補正機能が備わったアプリで撮影するのが楽だが、別途アプリを入れるのはちょっと……という人もいるかもしれないし、たまたま標準で入っているカメラアプリで撮影したということもあるだろう。iOS/Android共に標準の写真閲覧・編集ソフトでは、こうした補正が出来る機能がある。専用アプリほど手軽に簡単に、というわけではないが、いざというときは、こうした機能を活用してもいい。

Android「フォト」

切り抜き機能として搭載されている。四隅を適宜動かせば、それが四角になるように変形し切り抜かれる。ただし、元の写真の状態によっては、細長くなりがちなので注意。

iOS「写真」

回転・傾き補正の編集から行う。上下方向と左右方向個別に歪みを補正できる。斜めに写っているときは、回転させつつ調整していくことになるので、やや手間がかかる。

Google Snapseed

射影変形機能で変形できる。上記のAndroid「フォト」やiOS「写真」のどちらの操作もできるので、細かい調整がしやすい。自動調整機能を使いつつ、微調整するのが簡単だ。

手軽な複写はスマートフォンで

カメラの用途は写真を撮ることだが、写真といっても様々だ。作品としての写真もある一方で、記念撮影や旅行の写真などの、いわゆる記録としての写真もある。また、なにか情報を記録しておきたいという要望も叶える。20世紀の終わりころ(いわゆるデジタルカメラ黎明期)に、バスや電車の時刻表を撮影してメモ代わりに使ったという人もいるだろう。

もう一つの写真の大きな用途が、今回紹介している複写であり、平面に印刷されたものを写真に撮ることだ。フィルムカメラで複写というと、ある種の技術や設備が必要だったが、スキャナーの普及によりカメラで複写することも減っていった。しかし、スマートフォンの性能向上と内蔵カメラの高品質化によって状況が変わる。わざわざスキャナーを使わなくても、常に手元にあるスマートフォンを使って、簡単に複写できるようになったのだ。

もちろん、きれいに複写したいのであれば、カメラをきちんと固定して、きちんとライティングする必要があるし、そもそもスキャナーを使えばいい。しかし、領収書の提出のように"内容が確認できれば十分"といった目的で、簡単にデジタルデータ化したいというものは決して少なくない。上手く使い分けたい。

領収書くらいであれば、紹介してきたようにアプリを使えば簡単にきれいに撮影できてしまうし、台形補正などは後からでもなんとかなってしまう。それでも、あまり撮影後に編集せずに済むよう、照明による変な反射がない位置で、カメラを書類に正対させて撮影しておくほうが、トータルでの手間はかからない。

プリントした写真のデータ化も、あまり厳密さを求めないのであれば、領収書を撮るのと同じようにしてみてもいいだろう。思いがけず部屋から発見された、懐かしい紙焼き写真をSNSで公開する、といった用途には十分なクオリティが簡単に得られる。

領収書の撮影も、プリントした写真を撮るのも基本は同じ。明るさにムラができないように光が均一に当たるようにし、正対させて撮る。
猪狩友則

(いがり とものり)フリーの編集者、ライター。アサヒパソコン編集部を経て、2006年から休刊までアサヒカメラ編集部。新製品情報や「ニューフェース診断室」などの記事編集を担当する傍ら、海外イベントの取材、パソコンやスマートフォンに関する基礎解説の執筆も行う。カメラ記者クラブでは、カメラグランプリ実行委員長などを歴任。