インタビュー
独ライカ担当者に聞いた「LEITZ PHONE 2」の進化と展望
2022年11月25日 19:00
ソフトバンクが11月18日に発売したスマートフォン「LEITZ PHONE 2」について、独ライカカメラ本社の担当メンバーにグループインタビューする機会を経た。
LEITZ PHONE 2は、独ライカカメラ社とソフトバンクが企画し、シャープが製造するスマートフォン。約4,720万画素の1インチセンサーや35mm判換算19mm相当のレンズといったデバイスを「AQUOS R7」と共有しつつ、ライカ監修の外装や画面デザイン、ライカレンズの味わいを再現するという「Leitz Looks」モードの搭載などを独自の特徴としている。
今回、話を聞いたのは以下の4名。
——「Leitz Looks」に、新しくライカMレンズのシミュレーションが加わりました。デジタルのボケ処理は他社スマホにもありますが、ライカが開発したことによる独自性を教えてください。
パブロ:ご承知の通り、ライカの社内でアルゴリズムや機能を独自開発しました。ライカのレンズやカメラの性能を再現できるように、またユーザーが実際のカメラで撮影するのと同じ感覚になるように開発しました。
私達のアプローチは、他社のボケ感を与える処理とは全く異なります。実際のレンズの物性により、正確に形をぼかすだけでなく、少し歪ませるとか、曖昧な表現をさせるといった点があり、大きなカメラで撮影しているのと似通ったシミュレーションをできるのが強みです。
——新しい「Leitz Looks」のボケ処理などは、以前のLEITZ PHONE 1でも使えるようになりますか?
パブロ:ハードウェアが異なりLEITZ PHONE 1には実装できないため、予定もありません。
——モノクロやシネマ風など、色調のフィルターを用意した理由は何ですか?
ヨナス:我々はこの機能を「トーン」と呼んでいます。モノクロはライカの歴史的に重要で、ライカのカメラを語る上で必須なので入れました。シネマティックトーンも歴史との関連があり、アナログ時代を意識したものです。こういったモードを搭載するのが、我々のLEITZ PHONE 2の特性を示すのに自然と考えました。
——Leitz LooksのUIは、画作りよりレンズの選択が先に来ています。どのような発想に基づきますか?
マリウス:この端末を手にする方は写真好きなので、彼らに気に入ってもらえると考えて、このような順番にしました。実際にカメラで写真を撮るときに、まずレンズを選ぶというアプローチをスマートフォンにも反映しています。
——ディスプレイをフラットにしたのは、ユーザーの声によるものですか?
マリウス:そうです。一貫したLeitz Phoneの体験やデザインは評判が良かったため踏襲しましたが、ディスプレイの側面が湾曲していた点は、ユーザーの声によりフラットに変更しました。
——モバイル部門とは、ライカにおいてどのようなミッションの部署ですか?
マリウス:ライカにとってスマートフォンが大事であると昨年改めて感じたため、専任のチームを作りました。私が責任者を務めています。プロダクトマネジメントや開発などのチームがありますが、90%がD&E(Development&Engineer)です。
ここには3つの機能があります。1つはレンズなど光学技術を開発するオプティカル・デベロップメント。2つめはソフトウェアの画像処理やISP、パイプラインなどを担当します。3つめは、様々な被写体に対する画質チューニングなどを行う機能です。
LEITZ PHONE 2には、これら3つの機能の全てと、更にライカのインダストリアルデザインチームが関わっています。彼らはライカの双眼鏡やカメラも手がけており、LEITZ PHONE 2のUI/UXまで深く関与しています。
——このチームで、LEITZ PHONE以外のメーカーとも協業しているのですか?
マリウス:そうです。とは言っても同じ人間ではなく、プロジェクトごとに分けていますが、各チームの知見は共有しています。
——Leitz Looksモードの進化の予定はありますか?
マリウス:選べるレンズを増やしたいですし、トーン(色調の選択)も改善していきたいと思っています。被写体と背景をよりクリアに分離するとか、ボケ感の度合いを選べるようにするというアイデアもあります。画質もまだ追求していきたいので、さらなるR&Dを続けていきたいです。このどこまでをLEITZ PHONE 2の中で実現できるかは未定です。
——ライカが関与したスマートフォンでも、ライカバッジが付いているものと、シャオミのように付いていないものがあります。それらに違いがありますか?
マリウス:協力関係に温度差があります。LEITZ PHONEは全面的にライカが責任を持ってデザインしているので、ライカがそのドライバーズシートに座っています。シャオミと協業した製品では、画質や画像処理、レンズの共同開発などでライカが手伝っていますが、あくまでシャオミの製品です。そのため、LEITZ PHONEとは違った扱いになります。
——Leitz Looksでレンズを選べるモードが増えたのは、プロセッサーの性能向上によるものですか? Leitz Looksモードで撮影タイムラグが発生する時は、ボケ処理が負担になっていますか?
パブロ:LEITZ PHONE 1からプロセッサーが変わったことに加え、カメラのセットアップが変わりました。メインのイメージセンサーだけでなく、被写体との距離や深度を測るもう一つの測距用センサーの搭載により実装できました。
Leitz Looksには、メインのカメラと外部カメラで複数のフレームを撮って、それぞれをシンクロさせるなどの処理が発生しますし、ボケをきれいに出すような処理がエンジンとして動いているので、動作が重くなっています。
——試写を通じて、1インチセンサーのポテンシャルは実感できました。操作性の向上などは、アップデートに期待してもよいですか?
パブロ:はい。先にもマリウスが言ったとおり、全ての機能に対して常に進化を遂げる努力をしています。セキュリティパッチ、アルゴリズム、UX改善、画質改善など、できる限りやっていきます。
——LEITZ PHONE 1の約2,020万画素から、約4,720万画素の新センサーになりました。どのようなチャレンジがありましたか?
パブロ:当初はLEITZ PHONE 1と同じセンサーを使う予定でしたが、製造元のシャープから最新のセンサーの提案があり、それに合意しました。現在市場にある最高水準のセンサーを搭載できたと思います。センサーを変更するには、まず新しいセンサーを動作させるところから、画像処理の適用まで、膨大な作業が発生します。
ヨナス:スマートフォン業界はスピード感が速く、高画質へのこだわりを短期間で修正・実装する必要があるので、二重の大変さがありました。しかしLEITZ PHONE 2の結果には満足しています。
——日本市場以外での展開予定はありますか?
マリウス:LEITZ PHONEはもともと日本市場向けで開発しているため、アンテナなどの都合もあり、海外展開するには作り直しとなります。我々は小さい会社なので、まずは日本向けにLEITZ PHONE 1/2を出そうと決断した経緯があります。
とはいえ海外からも反響が大きいため、そちらでも出したい気持ちはあります。仮に“LEITZ PHONE 3”などでは海外も視野に入れるかもしれませんが、あくまでも「将来、いつかは」というレベルです。