写真展レポート

日本作例写真家協会写真展「JSPA2024」レポート

「作例」と「作品」に違いは? トークショーでは撮影の苦労話なども

写真展会場のCO-CO PHOTO SALONの様子

日本作例写真家協会の写真展「JSPA2024」が5月10日(金)からCO-CO PHOTO SALONで開催されている。期間は5月21日(火)まで。カメラ・レンズメーカーのプロモーションやカメラレビュー記事などのために作例写真を提供する、7名の写真家の作品を集めたユニークな内容となっている。

本展に併せて5月11日(土)に開催されたトークショー「今だから話そう。作例写真のヒミツ」も盛況で満席だった。ここではその模様も交えてお伝えする。

日本作例写真家協会のメンバーは、赤城耕一氏、宇佐見健氏、岡嶋和幸氏、こばやしかをる氏、大門美奈氏、豊田慶記氏、新美敬子氏の7名。

図録には作品と共にエピソードも書かれているのが特徴

作品も作例も好きなものを撮影

展示の案内では、「カメラ雑誌で口絵とされる作品ページから比べると、作例写真は低く見られがちだ。その区別は一体どこからくるのか」という疑問を提起している。日本作例写真家協会の発起人は2023年に亡くなった写真家の飯田鉄氏。飯田氏は「ならば作例写真をもって作品として発表しよう」と会の結成を呼びかけたそうだ。

銀一スタジオショップで行われたトークショーの様子
同会の発起人である飯田鉄氏の紹介もあった
写真展の会場には飯田鉄氏の作品も

残念ながら会の発足前に飯田氏は亡くなられしまったが、ご家族の了解を得て飯田さんが病床で記したノートの一部が公開された。その中に「カメラ雑誌の口絵の写真も、作例写真もピンキリ」というメモがあり、これを受けて赤城氏は「口絵の写真と作例写真と一体何が違うのか? 考えてみると、あまり違いを考えてアプローチすることは少ないと思うんです。やっぱり自分が好きなものを撮って、カメラやレンズを如何にレポートするかを考えている。機材も好きだが本質的には写真が好きでみんな楽しくやっています」と話した。

また、図録の中では「掲載が見送られた作例にも撮影者の心の底にある熱い想いは残ったまま。作例写真であろうとなかろうと写真を区別して考えることは無い」(赤城氏)と綴られている。

赤城氏は「作例写真家の資質」を示して会場を沸かせた

普段使わないアイテムで良い作品が撮れた

トークショーでは7名が順番に展示作品を解説し、撮影のエピソードなどを語った。一見簡単に撮影されているような写真でも、その裏には作例写真ならではの難しさがあることが披露された。

赤城耕一氏。思い入れが強いというキヤノンEOS 5Dシリーズでの作例を採り上げた
宇佐見健氏。作例としてわかりやすい写真とそうではない写真の違いを解説
こばやしかをる氏。撮影の創意工夫は楽しいが、編集者の意向で不採用になるのも作例写真の難しさ
大門美奈氏。苦手な画角のレンズでも、使ってみると良い発見もあるとのこと
豊田慶記氏。試作品の機材は動作が不安定でよく泣かされたそう。後から画像に問題が見つかり撮り直しも
新美敬子氏。レビュー用のレンズでは窮屈な構図になってしまい、お蔵入りになった作品などを見せてくれた
岡嶋和幸氏。デジタルカメラ黎明期に撮影した作品を展示

そのレンズの持ち味やカメラの新機能がわかりやすいシチュエーションを探したり、一度の海外撮影で多数のカメラやレンズを持ち歩かなくてはならないことも作例写真ならでは。

ほかには、発売前の試作カメラは不具合が多く正常に動かないこともあるそうで、せっかく撮影しても写りに問題があって撮り直しということも少なくないとのことだ。

さらに、貸出期間の短い話題の新製品を試すときの天候との戦いなども、自分の機材を使う作品撮影とは違った難しさもある。

一方で、自分が普段使わないような焦点距離のレンズで作例を撮る際に、苦手だと思いながらも良い作品が撮れたというケースも。かえって自分が希望する機材では無かったことが奏功するのも作例写真の面白さといえそうだ。

トークショーの会場では銀一が扱うカメラアクセサリー(Peak Design、Think Tank Photoなど)も展示された

写真展名

日本作例写真家協会写真展「JSPA2024」

会期

2024年5月10日(金)〜5月21日(火)

時間

11時00分〜18時30分
※最終日のみ17時00分閉場

定休日

日曜日

会場

CO-CO PHOTO SALON

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。