写真展レポート

富士フイルム & マグナム・フォト共同プロジェクト「HOME」

© GUEORGUI PINKHASSOV | MAGNUM PHOTOS

マグナム・フォトのメンバー16名が富士フイルムのカメラを使い、競作した写真展「HOME」が開幕した。与えられたテーマは“HOME”。

「いつもは外に向かっていく活動をしているが、自分の内面を見つめる体験は少なからず怖いことでもあった」とマグナム・フォトの会長を務めるトーマス・ドボルザック氏は話す。

自分の心のよりどころ、原点を探る行為でもあり、それぞれが思い思いの場所に赴き、撮影を通して自らの想いを確かめ、形にしていった。

使用カメラは自由に選んだが、15名がGFX 50Sを使い、1名がX100Fを手にした。

メンバーそれぞれの「HOME」

X100Fを使ったのがドボルザック氏だ。彼が望むカメラは身体の一部になるような、存在を感じさせないものが良いと言う。

「だから小さいカメラが好きなんだ」

© THOMAS DWORZAK | MAGNUM PHOTOS

父親はチェコスロバキアから追放された移民で、妻もイラン革命で国を追われている。氏は自らの心に深く存在する3つの場所に1週間ずつ滞在して撮影した。

エリオット・アーウィット氏はニューヨークのアパートとスタジオ、イーストハンプトンの家で撮影した8点を組んだが、そのうちの4点に自分自身を入れ込んでいる。彼自身、実に魅力的な被写体に見えるのだが、それはやはりアーウィット氏が撮ったからそう見えてしまうのだろうか。

© ELLIOTT ERWITT | MAGNUM PHOTOS

この撮影のアシスタントは息子であるミシャ・アーウィット氏が務めたそうだ。

「僕は父のアシスタントとして写真のキャリアをスタートさせた。50年後、またその役割を果たすことができて、その機会を与えてくれたこのプロジェクトに感謝している」と話す。

オリビア・アーサー氏は自分にとってのHOMEは家族だと断言する。これまで家にいる時は写真家の帽子を外していたが、今回初めて家族を被写体として見つめた。さらにこのプロジェクト中に次女を授かり、新しい娘の誕生の場にもカメラを持ち込んだ。

© OLIVIA ARTHUR | MAGNUM PHOTOS

アレック・ソス氏は生まれ育った地から離れず、ミネソタ在住であることが写真家としてのアイデンティティだと話す。普段は自動車で移動し、スタジオまでの通勤もミニバンを使う。今回のプロジェクトでは通勤の8マイルを歩きに変え、スナップすることにした。

「普段なら通り過ぎてしまう日常を楽しむことができた」

© ALEC SOTH | MAGNUM PHOTOS

写真家とカメラメーカーが手を取りあった

このプロジェクトの発端は約2年前。X-Pro2を発表した時に遡る。マグナム・フォトのメンバーであるデビッド・アラン・ハービー氏がXシリーズについて熱く語った。そこで富士フイルムとマグナム・フォトの共同企画が動き出した。

オープニングパーティーにて。左から飯田年久氏(富士フイルム株式会社光学・電子映像事業部長)、トーマス・ドボルザック氏(マグナム・フォト会長)、久保田博二氏(マグナム・フォト正会員)。

「昨年9月、綱町三井倶楽部での発表会に、久保田博二さんに来ていただき、人選や参加の交渉をしていただくことになった」と富士フイルム株式会社光学・電子映像事業部の飯田年久事業部長は経緯を明かす。

また飯田事業部長はポケットから、新製品「FUJIFILM XF10」を取り出した。

「この企画展に合わせて、今日、発表した製品です。ミラーレスカメラと同じセンサーを使い、同じ画質を実現しつつ、ポケットに入るサイズにしました」

会場でこのサプライズを一番喜んだのは、ドボルザック氏だったはずだ。

会期中、出展者のドボルザック氏とマーク・パワー氏が自作やほかのメンバーの作品を解説するギャラリートークも組まれている。

展示概要

会場

代官山ヒルサイドテラス
東京都渋谷区猿楽町18-8

開催期間

2018年7月20日(金)〜2018年7月30日(月)

開催時間

11時〜19時(入館は18時半まで)
※7月20日(金)、27日(金)は11時〜20時(入館は19時半まで)

休館

無休

入場料

無料

市井康延

(いちいやすのぶ)1963年、東京生まれ。ここ数年で、新しいギャラリーが随分と増えてきた。若手写真家の自主ギャラリー、アート志向の画廊系ギャラリーなど、そのカラーもさまざまだ。必見の写真展を見落とさないように、東京フォト散歩でギャラリー情報の確認を。写真展の開催情報もお気軽にお寄せください。