イベントレポート

風景写真家・星野佑佳さんが語る「新型ミラーレス・Z 7で撮る日本の自然風景」

ニコンファンミーティング2018 ステージイベントレポート

星野佑佳さん

昨年に引き続き開催された「ニコンファンミーティング2018」。全国7会場をめぐる大規模なイベントの最大の目玉は、直前に発表されたニコン初のフルサイズミラーレス「Z 7」および「Z 6」。トークステージのプログラムもこの2機種の紹介やレビューで埋め尽くされ、実機体験会では長蛇の列ができた。

今回は星野佑佳さんによるステージ「新型ミラーレス・Z 7で撮る日本の自然風景」の様子をレポートする。

星野さんが初めてZ 7を手にした時の感想は「大丈夫かな?」だったという。あまりにも軽量コンパクトなボディが、これまでのフルサイズ一眼レフ機に慣れていた人にとっては不安な要素だったのだろう。しかしいざ撮影すると、片手で扱えるくらいの大きさと重さで超高画質な写真が撮れることに驚いたようだ。

そうして表示された最初の写真は、干潮の海岸で撮影された月。大きなスクリーンに表示されても岩のディテールが細かく描写され、暗部の階調表現も豊かだ。月や太陽で明るさが変わってくる現場では、分単位で状況が変わるため、カメラ操作も頻繁かつ迅速に設定を変えていく必要がある。その操作性も、Z 7は優れているようだ。

「周囲はどんどん暗くなり、月も上がってせわしなく状況は変わっていきますが、Z 7は右手の操作部に(撮影時に)重要なダイヤルやボタンが集まっているし、主な機能は"iボタン"からも調整できます。一番よかったのは、ファインダー内で画角の一部を拡大してピントが確認できたり、ヒストグラムの表示ができたりすることです。ミラーレス機のメリットですね」

一通りスペックを紹介した後、星野さんが表示したのは先ほどと似たような海岸の写真。だが撮影データをよく見ると、シャッター速度はなんと390秒。それだけの長時間露光だとノイズが出てしまいそうなものだが、写真に濁りは見られない。

「撮影状況が暗かったのですが、ISO感度は上げずにF値も絞りたかったので、明るさを確保するためにシャッター速度を6分半にして撮影しました。それでもノイズは出ずに描写されています。以前の機種だと画像処理エンジンが熱を持って、写真にカラーノイズが発生していましたが、Z 7ではそれも出なくなりました。そして一部分を拡大しても、解像感が落ちずに岩肌のディテールをしっかりと表現してくれています」

次に星野さんが説明したのは、レンズの性能だ。Zマウントレンズは現状、ラインナップこそ少ないものの、マウント内径55mmの大口径をいかした描写力は各所で話題になっている。星野さんも例に漏れず、そのスペックの高さに驚いたようだ。海岸線で太陽を画角に入れた写真は逆光耐性、ひまわりの写真は背景から伸びた光芒の美しさ、夕日の写真からは階調表現の豊かさが伝わってきた。

マウントアダプターFTZも忘れていない。AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED、AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR、AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VRという、いわゆる「大三元」と呼ばれるレンズで撮影した写真をそれぞれ表示。既存のフルサイズ一眼レフカメラと変わらない描写力はもちろんのこと、星さんが特に言及していたのはボディ内手ブレ補正だ。AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDなどはレンズに手ブレ補正機能がないため、Z 7のボディ内手ブレ補正をうまく活用することで、不用意なブレを抑えることができる。

驚異的だったのは、氷柱を写した写真。シャッター速度はなんと1/2秒だが、これも手持ちで撮影してブレなく仕上げられたという。

「脇を締めてしっかり撮りました。私は手持ち撮影が苦手で、いつも三脚を使って撮影するのですが、そんな私でも手持ちで1/2秒をブレなく撮影できたので、手持ちが得意な方は1秒でもきちんと撮れるのではないでしょうか。チルト式液晶モニターやタッチパネルの採用で、操作性も良くなっていますね」

風景写真は画面全体にピントを合わせることも多いため、F値を絞り込んで撮影するシーンが多々ある。そこで起こりがちなのが、絞りすぎて解像感が落ちる「小絞りボケ」だ。従来の一眼レフカメラではF13以上に絞ると画質が不鮮明になるとされていたが、Z 7とZマウントレンズはしっかりと対応していた。

「デジタルカメラになってからは、F16やF22といった数字まで絞ってしまうと、どうしても回析現象により小絞りボケが起きて、被写体が不鮮明になってしまいました。ところがZ 7とZマウントレンズなら"回折補正"をonにすれば、F22まで絞っても小絞りボケが目立たなくなりました。手前から奥までシャープに写したい場合は、F値を大きくする必要があるので、そんな場合はありがたい機能ですね」

また、Z 7は「フォーカスシフト」機能を搭載しており、それを使うことで手前から奥までピントを合わせることが可能。特に遠景までくっきり写したいときには有効に利用できるだろう。

「以前のフォーカスシフト機能は、カメラが自動でピント位置を変えて撮影するので、撮影中にレンズが駆動しているのがわかるんです。ところがZ 7とZマウントレンズの組み合わせだと、いつレンズが動いているのかわからない間に撮影が終わっています。それだけ撮影がスムーズになるので、雲などの動く被写体の輪郭もはっきり写すことができます」

直前の助川さんのステージとはまた違った側面から、風景撮影に便利そうな機能や性能を紹介してくれた星野さんだった。

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。