イベントレポート

【CP+】鈴木知子さん「スナップはいつだって真剣勝負!~部屋に飾りたくなる写真のススメ~with α7 III」レポート

ソニーブース写真家セミナーより

ソニーブースのステージに立つ鈴木知子さん。

CP+ 2018最終日の3月4日。この日のソニーブース最初のステージは、スナップフォトグラファー鈴木知子さん。10時に開場した直後、用意された座席は次々に埋まり、10時10分からセミナーがスタートした。

セミナーのテーマは、「スナップはいつだって真剣勝負!~部屋に飾りたくなる写真のススメ~with α7 III」とのこと。鈴木さんがα7 IIIで撮影した、撮り下ろしスナップ写真を紹介していくという贅沢な内容だった。

α7 III。3月23日発売。実勢価格はボディ単体が税別23万円前後、FE 28-70mm F3.5-5.6 OSSの付属するレンズキットが25万円前後。

作品を紹介する前に、鈴木さんは「スナップ」という言葉の語源を説明し、それに基づく自身の撮影スタイルを語った。

「スナップとは狩猟用語の早撃ちをする技術が由来になっています。いざ狩りをするとなると、ただブラブラと獲物を探して歩いていても、目的の獲物には出会えません。これはスナップ写真にも言えることです。目的を持って獲物を探しに行く。それが本来のスナップ撮影だと思っています」

「その目的とは、狙いたい獲物がいる場所に狩りに行く。自分が撮りたい被写体がある場所に出かけるこの思いがとても大切だと感じています。ソウゾウという言葉があります。漢字にすると思い(想像)と作る(創造)と意味が違う2つの言葉ですが、どちらも写真にとっては大切なものです」

ここからは、撮影の目的と実際に撮影された写真がセットで紹介されていく。最初は「流れる光が撮りたい」だ。

「スナップで日常をドラマチックに撮りたいと、常に考えています。ふと流れる光が撮りたいと考え、思いついたのは夜の空港でした。空港に行く前から飛行機を流し撮りしたい。この飛行機という被写体、そして流し撮りは、私の作品の中では意外だと思う方もいらっしゃると思います。意外だからこそ、強く撮りたいと思った1枚なんですね」

夜の空港で離陸する飛行機を流し撮り。流れる光を表現した。

次のテーマは「鏡の世界が撮りたい」。水たまりに反射する世界を撮影した1枚だ。

「今回は東京らしい街並みを水に映したリフレクションを撮ってきました。風が強いと水面が揺れてしまって街並みがクリアに映らないので、なるべく水面が穏やかになるタイミングでシャッターを切りました。このような撮影ではカメラポジションが低くなるので、チルト式の液晶モニターが活躍します」

水たまりにカモメが止まり、リフレクションでになっているシーンを撮影。上下逆さまになっていても気づかないかもしれない。

そして、このトークで核心を突くテーマの写真がこの螺旋階段の写真。テーマは「うすまきが撮りたい」だ。

「今回、作品を撮りながらずっとひとつのテーマを導線に考えていました。その中のひとつに『つなぐ』という言葉がありました。既にお見せした飛行機であったり、駅など場所と場所をつないでいますよね。場所だけでなく人や時間、様々なものがつながっているとイメージできると思います」

螺旋階段を下から見上げて撮影した1枚。「つながり」を強調した写真だ。

こういった調子で、各写真に設定されたテーマとともに、作品とその状況やテクニックの解説でトークが進んでいく。それぞれの被写体も時間帯も撮影技法も違うが、一貫した鈴木さんの世界観は感じることができた。

すべての写真に共通していたのは、「こんな写真が撮りたい」というイメージが事前にあったこと。この講演では、どの写真も必ず直前にテーマが示されて、「『○○を撮りたい』というイメージを持って撮影しました」という説明から入る。

スナップ写真といえば、とかく出かけた先で出会った風景を場当たり的に撮影するイメージがあるが、鈴木さんの場合はそうではなかった。そのイメージこそが彼女の世界観であり、飛行機、動物、街、テーブルフォトなど、まばらな被写体や状況の写真の中にも一貫する何かを感じさせるのだろう。

最後に、α7 IIIの特徴を説明し、この日のトークを終えた。

「35mmフルサイズ有効約2,420万画素。さら最大693点という、ものすごいAF性能も搭載されました。普段は動体を撮らない私でも、難なく自分の狙った構図とタイミングでとらえることができました。また、最高約10コマ/秒の高速連写、そして大容量のバッテリー。これを期待されていた方も多いのではないでしょうか」

「私も今回ものすごい数の撮影をしています。やはりウィンターシーズンはとてもバッテリーの消耗が早いのですが、1日1本のバッテリーでもつという非常に嬉しい大容量バッテリーでした。他にも、強力なボディ内手ブレ補正やサイレント撮影、タッチパッドやタッチフォーカス機能もとても嬉しい機能です」

表示された作品の枚数は多く、どれも胸を打たれるものだった。来年のCP+2019で、さらに進化したカメラで写す鈴木さんの世界が見られるかもしれない。

中村僚

編集者・ライター。編集プロダクション勤務後、2017年に独立。在職時代にはじめてカメラ書籍を担当し、以来写真にのめり込む。『フォトコンライフ』元編集長、東京カメラ部写真集『人生を変えた1枚。人生を変える1枚。』などを担当。愛機はNikon D500とFUJIFILM X-T10。