デジタルカメラマガジン

写真を撮る意味を考える書籍『写真で何かを伝えたいすべての人たちへ』

写真家、文学研究者と渡り歩いてきた別所隆弘氏が実体験とともに解き明かす

別所隆弘氏による書籍『写真で何かを伝えたいすべての人たちへ』がインプレスから3月19日(火)に発売されます。価格は税込1,980円。A5判で全176ページの内容です。

「写真を撮ること」「表現すること」の意味を考える1冊

目新しいクリエイティブであってもWebを通じて一瞬で消費され、画像生成AIによって瞬時に新しい画像が作り出される2020年代において、写真を撮る理由はどこにあるのか。表現を続けていくことに価値は見出せるのか。本書は、現代において「写真を撮ること」や「表現すること」にどんな意味があるのかについて、思考を巡らせていく1冊です。

全4章30トピックで構成された内容で、各トピックは4〜6ページとテンポよく読み進めることができます。

SNS文化や古典的名著を横断的に紐解きながら展開する現代の写真論

本書は、文学研究者、そして写真家と、表現文化の領域を渡り歩いてきた別所隆弘氏ならではの視点で語られていきます。

写真家としての視点では、2010年代から2020年代にかけてのSNSを通じた写真文化の発展の中で活動してきた体験をベースに、写真が「バズる」ことや「炎上する」こと、模倣され消費されていくことの現状やその根源がどこにあるのかを、さまざまな切り口で解説していきます。

一方で、文学研究者としての視点では、デカルトによる哲学的認識論やスーザン・ソンタグやロラン・バルトによる写真論の古典にもあたりながら、過去と現代における写真や表現における共通点と差異を分析していくことで、2020年代における写真論を展開します。

人間が表現することの根源的な意味を探りつつ、現代において写真で表現することの価値を見出していく内容です。

ライフワークとして撮影している4テーマのギャラリーページ

章間には著者がライフワークとして撮影している4つのテーマでギャラリーページを収録。私的なエピソードとともに、写真を続けていく糧となった被写体やテーマの魅力を綴っています。176ページの中に、たっぷりとテキストと写真を詰め込んだ1冊です。

著者からのメッセージ

本書は「写真」をテーマにした本ですが、シャッター速度やF値、あるいは構図や撮影地といった通常の写真の本に出てくる話題は、1つも出てきません。その代わりに、写真について、これまで私が「考えてきたこと」のすべてを、1冊の本に凝縮して書き出しました。

SNSがあらゆる表現をコモディティへと変化させてきた2010年代、そしてAIが表現の可能性を根こそぎ変革させてしまうことが予想される2020年代、そんな20年を経た後、カメラを持ち、写真を撮る我々に、一体どんな「表現」の余地が残されているのか、今、写真と表現を取り巻くさまざまな問題に関して、ぎゅっと圧縮して書きました。でもそこに明快な答えは、1つもありません。ただこの本は、読者の皆さんに、「一緒に迷いませんか?」とお誘いするだけの本なのです。

それでも、この迷いの森の中を歩く経験が、いつか私自身を、あるいはもしかしたら読者の皆さんを未来のどこかで導く、小さな種火になるかもしれない。そういう願いを込めてさまざまなことを書いています。ぜひ一緒に、この獣道を歩んでいただけたら心強く思います。

(別所隆弘)