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キヤノン、最高14コマ/秒連写の「EOS-1D X Mark II」

フルサイズ初の“デュアルピクセルCMOS AF”採用

キヤノンは、デジタル一眼レフカメラ「EOS-1D X Mark II」を4月下旬に発売する。EOS-1D Xの後継となる同社フラッグシップ機。キヤノンオンラインショップでの価格は税別67万8,000円。

それまでのEOS-1D系(APS-Hセンサー)とEOS-1Ds系(フルサイズセンサー)を統合した「EOS-1D X」(2012年6月発売)に引き続き、35mm判フルサイズ相当のCMOSセンサーを採用。新たに有効2,020万画素のデュアルピクセルCMOS AF対応イメージセンサーを搭載し、連写速度は最高14コマ/秒(ファインダー撮影時)、最高16コマ/秒(ミラーアップ時)にアップした。

また、AF/AEの機能向上、4K記録対応、内蔵GPS搭載、カメラ内レンズ補正機能の充実などが新たな特徴となる。

有効2,020万画素センサーとデュアルDIGIC6+

EOS-1D Xの有効1,810万画素から、有効2,020万画素に向上。感度は通常ISO100-51200、拡張でISO50〜ISO409600。映像処理エンジンはEOS-1D XのデュアルDIGIC5+からデュアルDIGIC6+に刷新し、処理能力の向上に伴いリアルタイム回折補正機能をEOSで初搭載した。

また、35mmフルサイズフォーマット初のデュアルピクセルCMOS AFに対応。同システムによるライブビュー撮影や動画記録時のAF速度がアップしている。

デュアルピクセルCMOS AFは、2013年8月発売のEOS 70Dで初採用。位相差AFセンサーが使えないライブビューや動画撮影時のAF動作にメリットがある。

EOS-1D X Mark IIはEOS-1Dシリーズ初のタッチパネル式モニターを採用しており、ライブビュー撮影時の測距点選択と拡大操作に使える。

最大14コマ/秒の連写性能。ミラーアップで最大16コマ/秒

連写性能はEOS-1D Xの約12コマ/秒、約14コマ/秒から向上。シャッター耐久は40万回としている。

高速連写中のフレーミングのために、メインミラー機構を新設計のものとした。EOS-1D Xではバネでミラーダウンしていたため減速できなかったが、EOS-1D X Mark IIではモーター駆動でミラーの減速機構を追加した。ミラーが突き当たる直前に減速カムでブレーキをかけ、衝撃を和らげる。また、AF/AE動作のためにサブミラーの衝撃を逃がして止める工夫も新たに盛り込んでいる。

静音撮影は、「ソフト撮影」に名称変更。低速駆動で動作音をソフトな印象にしたというモードで、最高約5コマ/秒の連続撮影にも対応する。また、1枚撮影時はレリーズボタンを離すとチャージする「ソフト動作(1枚撮影)」も使える。

全点F8対応の新61点AFセンサー

測距点数が最大61点(クロス最大41点)なのはEOS-1D Xと同じだが、測距エリアを縦に拡大した。中央低輝度限界は-3EV(EOS-1D Xは-2EV)。

AFセンサー

また、新たに全点で開放F8測距に対応(うちクロス最大21点。EOS-1D Xは1点+領域拡大の4点)している。これによりエクステンダー併用時に開放F8となっても、AF撮影の自由度が高まった。

測距モードは、EOS 7D Mark IIに搭載されていた「ラージゾーン」(3パターン)機能をEOS-1Dシリーズで初搭載。EOS iTR(Intelligent Tracking and Recognition)AFには、顔優先モードを追加している。

これまでAIサーボAFは「近づいてくる被写体」「動きが不規則な被写体」に対する追従性能を高めてきたが、EOS-1D X Mark IIのAIサーボAF III+では、EOS-1D Xでも課題だったという「近づいてすぐに遠ざかっていく被写体」(モータースポーツなど)に対応した。

AFユニット

進化した測光センサー。フリッカーレス撮影も

人工光源のちらつきを避けて連写時の露出安定性を図る「フリッカーレス撮影機能」をEOS-1D系に初搭載。光源を検知するとファインダー視野右下の「Flicker!」表示で知らせる。

「36万画素RGB+IR」測光センサーの画素数向上とIR検知により、被写体認識能力と露出精度を高めた(従来は10万画素RGB)。EOS iTR AFの追尾精度も向上している。

AEセンサー

ファインダー情報表示を充実。AFフレームの赤色表示が復活

ファインダー内表示を従来モデルより充実させた。フレーム内の中央上部に2軸水準器(AF中でも表示可能)、視野内の中央下部に各種モード設定のインジケーターを設けた。露出バーはフレーム外の右側だけにあったが、EOS-1D X Mark IIでは下部にも増えた。

加えて、EOS-1D Mark IVまであったAFフレームの赤色表示を復活。EOS iSA System(被写体を認識する測光システム)と、赤色スーパーインポーズ表示光学系を両立させた。暗所でも選択しているAFポイントや選択可能なAFポイントがわかり、低照度下でのフレーミングしやすさに寄与する。

視野外の表示には有機ELを採用。低温時の応答性と視認性に配慮した。

ファインダー倍率は約0.76倍。アイポイントは約20mm。フォーカシングスクリーンは交換可能(Ec-C6標準装備)。

4K 60p動画対応。120pのフルHD記録も

EOS初の4K・60p動画記録に対応。フルHD解像度では120p記録も可能とした。

デュアルピクセルCMOS AFと162万ドットタッチパネルの組み合わせで、動画記録中もタッチフォーカスが使える。動画サーボAFのAF速度は10段階から選択でき、ハイフレームレートのFHD/120pでも全フレームでAF追従するという。

また、動画の記録開始と停止は、別売のワイヤレスファイルトランスミッターを経由してスマートデバイスからも行える。距離が離れて接続が切れても、近づくと再接続するため、Wi-Fiが混線しやすい状況やドローンでの撮影に有効としている。

880万画素相当の静止画を60コマ/秒相当で記録できる「4Kフレームキャプチャー」もEOS初搭載。

GPS内蔵。5GHz帯で通信するトランスミッターも

内蔵GPS機能により、時刻合わせや撮影画像への位置情報記録がアクセサリーなしで可能になった。EOS-1D X Mark IIのGPS機能はGLONASS、みちびきにも対応。従来のGPSユニットGP-E1/GP-E2より精度を高めた。カメラ内ロガー機能も備える。

別売の「ワイヤレスファイルトランスミッターWFT-E8B」(税別6万8,000円)はIEEE802.11aに対応し、通信速度を向上。スマートデバイスの「Camera Connect」と連携する。

ワイヤレスファイルトランスミッターWFT-E8装着例

引き続き、カメラ本体に有線LAN機能を備える。

新レンズ光学補正、カメラ内にDLOを搭載

EOS-1D XではJPEG撮影時に周辺光量と色収差の補正を行っていたが、EOS-1D X Mark IIでは歪曲収差補正(EOS 7D Mark IIで搭載)と回折補正も可能になった。従来以上に小絞りでの撮影がしやすく、DIGIC6+の高速処理で連写速度にも影響を与えないという。

レンズ補正データはこれまでパソコン上のEOS Utilityからカメラ本体に登録する必要があったが、EOS-1D X Mark IIでは周辺光量/色収差/歪曲収差のレンズ補正データがあらかじめ保存されており、入れ替えの手間がないという。今後発売されるレンズの補正データは、レンズ本体から受け取る。

また、パソコン上のDPP(Digital Photo Professional)でのみ可能だった「デジタルレンズオプティマイザー」をカメラ内に搭載し、カメラ内RAW現像時に利用可能とした。EOS初の機能。

CF+CFastのダブルスロット。バッテリーは共通

記録メディアはCFast2.0とCFのダブルスロット。連続撮影可能枚数は、CFast/CFのどちらもJPEGでは無制限。RAWはCFast2.0で170枚、UDMA7のCFで73枚としている。EOS-1D X(CFのみ)はJPEGで100枚、RAWで35枚だった。

exFATフォーマットに対応したことで、動画の4GBファイルサイズ制限がなくなり、結合の手間が省けるとしている。なお、128GB以下のCFではFAT32のため、従来通りの制限がある。

バッテリーパックは「LP-E19」(単品税別2万円)を同梱。EOS-1D XなどのLP-E4/E4Nも使用でき、新しく同梱される充電器のLC-E19は、従来バッテリーのLP-E4/E4Nを充電することもできるという。

撮影可能枚数(常温)はファインダー撮影で約1,210枚、ライブビューで約260枚。

グリップや操作部材の改良も

プロユースの長時間撮影を意識し、操作部の改良も盛り込まれている。グリップ部は、径を小さくして手が小さなユーザーにも握りやすくした。

縦グリップは、中指から小指までの引っかかりやすさを向上。縦位置のM.Fnボタンは、正位置のM.Fnと同様の操作感が得られる位置に変更した。

そのほか、レンズマウント付近のM.Fnボタンや絞り込みボタンに「再生」「拡大・縮小」「削除」といった操作を割り当てられるようにするなど、ボタンへの機能割り当てもカスタマイズ性を高めている。

ライブビューと動画モードの切り替えがレバー式(EOS 7D Mark IIやEOS 5D Mark IIIなどと同様)になった点を除き、EOS-1D Xから上面・背面とも操作部のレイアウトに変更は見られない。

液晶モニターは3.2型約162万ドット。

外形寸法は約158×167.6×82.6mm。重量は約1,340g(本体のみ)。

2月3日14時25分:WFT-E8BとLP-E19の価格表記を、店頭予想価格からメーカー希望小売価格に修正しました。

(本誌:鈴木誠)