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キヤノン、新EF100-400mmの技術説明会を開催

ルーク・オザワ氏「待ち焦がれた16年」

 キヤノンは11月11日、同日発表した交換レンズ「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」の技術説明会を開催。ゲストに写真家の水谷たかひと氏とルーク・オザワ氏を迎えた。

技術説明会を開催
EOS 7D Mark II+EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM

 説明会の冒頭では、キヤノン株式会社 執行役員イメージコミュニケーション事業本部 副事業本部長の岡田正人氏が挨拶。デジタルカメラのほかにも幅広い製品で光学系を扱っており、それらのシナジーがレンズの設計技術や製造技術の向上に繋がっていると説明。アメリカでの特許取得件数はIBM、サムスン電子に続く3位だと説明した。

 交換レンズの開発設計では、同社内製のソフトで基本の光学設計を行い、3D CADでメカや電気を設計したのち、衝撃、強度、光学性能といったシミュレーションを「仮想試作」で実施。スーパーコンピューターの進化により、こうしたシミュレーションも精度よく短時間でできるようになったという。これらの仮想試作が完了後、実際の試作や評価に移行するという。

キヤノン株式会社 執行役員イメージコミュニケーション事業本部 副事業本部長 岡田正人氏

 キヤノンでは4種類の非球面レンズを用いて小型化や光学性能の向上に役立てているが、中でも大口径の研削非球面レンズを使っているのはキヤノンだけと強調。レンズ研磨の皿を作る部分など、「高技能者マイスター」と呼ばれる職人の技が欠かせないという工程も重要視している。

 新しい「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」は、1998年登場の「EF100-400mm F4.5-5.6L IS USM」を16年ぶりにリニューアルした製品で、新規開発のコーティング技術を初投入したほか、EOS 7D Mark IIとのマッチングもアピール。これらの製品でプロ・ハイアマ市場を活性化したいと語った。

100-400mmを最新技術でブラッシュアップ

 続いて、キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第一開発センター センター所長の金田直也氏が新製品の技術説明を行った。

キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第一開発センター センター所長 金田直也氏

 EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMは、既存100-400mmを最新技術の投入でブラッシュアップしたモデル。その光学性能は「定評あるEF70-200mm F2.8L IS II USMと同等の高画質」とアピールする。近接撮影能力、操作性向上もポイントとして挙げた。

新100-400mmの特徴
従来モデルとのMTF比較
周辺画質の高さも

 また、フレアやゴーストの抑制に用いるコーティング技術も、新たに「ASC」(Air Sphere Coating)を新100-400mmで採用。多層コーティングの上に形成する微細な空気の球を含んだ超低屈折率層で、光の反射を更に抑制するという。17枚目のレンズの前面に施している。

ASCについて

 最短撮影距離は、従来の1.8mから約半分の0.98mに短縮。最大撮影倍率が向上している。新100-400mmでは、フォーカスの第6群に連動して第4群(フローティング群)を動かして近距離の収差補正を行っている。

 ズーム機構は直進式だった従来の100-400mmに対し、現在主流の回転式ズームを採用。「動画撮影時の操作性も向上している」とした。ズームリング、フォーカスリングの中間に配置されたズームトルクの調整リングも改善したとする。

 三脚座はレンズとリング部分が一体になり、脚の部分だけネジで取り外せるようになった。三脚撮影から手持ちに移行する際にレンズをカメラに装着したままで扱え、利便性が向上したという。一体型としたため、回転はスムーズ。

 また、レンズフードにはサーキュラーPLフィルターの回転操作がしやすい開閉式の窓が採用された。EFレンズでは初の機構。スライド式の窓になっている。

三脚座の概要
フードにフィルター操作窓がついた
その他の搭載技術

写真家の試用レビュー

 説明会の後半では、ゲストに水谷たかひと氏とルーク・オザワ氏を迎え、新100-400mmの印象を両者の作品とともに紹介した。

 ルーク氏は、新100-400mmの登場について「待ち焦がれた16年」とコメントし、先代の100-400mmが登場した際にすぐ導入し、以来ずっと使ってきたと話した。当時は「プロがズームか」と言われることもあったそうだが、広い空港で旅客機を撮るには望遠端400mmが有利なため、それでも使い続けていたという。

ルーク・オザワ氏。水谷氏に「ミスター100-400」と呼ばれていた

 ズームレンズの利点としては、寄りだけでなく引きも撮れる点を強調。1日1便しか来ないような欧米系の航空機を撮る際には便利で、それも100-400mmを愛用してきた理由とした。

 また、空がクッキリした写真を好むというルーク氏は、レンズフードのフィルター操作窓も歓迎。これまではフードに穴を空けて使っていたという。加えて、77mmのフィルター径がルーク氏の他によく使うレンズとも同じで、フィルターを使い回せる点もありがたいと語った。

4段分という手ブレ補正効果も高評価。このカットは1/30秒で、ほかに夜間に撮影した1/6秒の流し撮りカットもあった

 加えて、「飛行機は雨でも撮る。どうせならいっぱい降ったほうが絵的にはいい」と話し、これまでの防塵防滴ではなかった100-400mmではタオルを巻いて撮影していたが、防塵防滴になった新100-400mmならそのまま撮影できるのでは、という期待もあると話した。

 水谷氏は、ラグビーの1試合で新100-400mmを試用。普段「EF200-400mm F4L IS USM エクステンダー 1.4×」 をメインにしており、従来の100-400mmも使っていないという水谷氏の第一印象は、「困った。いいじゃん、と思った」とのこと。200-400mmと使い勝手が変わらず、軽いのがよいという。気に入った点としては、ズームリングのトルク調整を挙げていた。

水谷たかひと氏。小型軽量な100-400mmでも“撮れてしまう”驚きを語った

(本誌:鈴木誠)