ソニー、裏面照射型CMOS搭載デジタルカメラの発表会
Exmor Rを搭載したサイバーショットDSC-WX1(左)と同DSC-TX1(右) | 会場の様子 |
ソニーは6日、裏面照射型CMOSセンサー「Exmor R」を搭載したコンパクトデジタルカメラの発表会を東京・港区の本社で開催した。
発表した製品は既報の通り、「サイバーショットDSC-WX1」と「同DSC-TX1」および、インテリジェントパンチルター(自動電子雲台)「パーティーショットIPT-DS1」。各機種の詳細は記事末の関連リンクを参照されたい。ここでは、発表会の模様をお伝えする。なお、新製品は7日から銀座ソニーショールームとソニースタイル大阪で先行展示を行なう。
■新たな写真文化の創造を
DSC-TX1を手にするソニーコンスーマープロダクツ&デバイスグループ パーソナルイメージング&サウンド事業本部 イメージング第2事業部の佐藤裕之部長。Exmor Rでの暗所撮影を、「フラッシュなしでも雰囲気まる撮り!」のキャッチコピーで紹介した |
ソニーコンスーマープロダクツ&デバイスグループ パーソナルイメージング&サウンド事業本部 イメージング第2事業部の佐藤裕之部長は、裏面照射型CMOSセンサーを搭載したサイバーショットを「高感度、高速連写、パノラマ機能などをスタイリッシュなボディに収めた」と紹介。既存のデジタルカメラユーザーから特に多かった暗所での撮影性能向上を武器に、「カメラはソニー」のキーワードを掲げてデジタルカメラ市場での存在感を高める考えを示した。「コンパクトデジタルカメラの世界シェアは現在約21%。もともとサイバーショットをやっているが、本格的なカメラメーカーとして認知されてこなかった。本格的な撮影ができる技術を搭載したカメラを出すことで、“カメラはソニー”と認識してもらえるブランドにしていきたい」(佐藤氏)
ソニーでは、サイバーショットを通じて写真が楽しくなる「新写真文化の創造」を目指すとしている。新写真文化の創造では、撮像素子、レンズ、画像処理エンジンなどによる「カメラ性能の追求」、パノラマや高速連写などによる「新しい映像の楽しみ方」、ユーザーインターフェースなどによる「使い勝手の向上」の3点を挙げている。
今回デジタルカメラでは世界初の採用となった裏面照射型CMOSセンサーは、従来の表面照射型に比べて配線部分による入射光のロスが無く高効率で光を取り込めるのが特徴。Exmor Rでは、従来比約2倍の感度を実現した。裏面照射型CMOSセンサーの原理自体は20年以上前から知られていたが、製造工程が複雑でより微細な加工などが必要だったため量産が難しいとされていた。現在、裏面照射型CMOSセンサーを量産しているのは、ソニーのみという。なおExmor Rの外販については、「公表できない」(佐藤氏)と明言を避けた。
なお、カールツァイスレンズとGレンズのポジションの違いについては、「製造工程は違うものの、どちらが上でどちらが下というものではない。カールツァイスレンズはソニーとカールツァイスが共同で開発し、Gレンズは現在ソニーが独自で開発している。カメラの性格に応じて適したものを搭載している」(説明員)とのこと。
DSC-WX1およびDSC-TX1に搭載した1/2.4型有効1,020万画素の裏面照射型CMOSセンサー「Exmor R」 | 裏面照射型CMOSセンサーでは、配線の影響を受けずにより多くの光を取り込める |
Exmor Rは従来の約2倍の感度アップという | 従来機との比較展示も行なっていた |
高感度を利用してノンストロボ撮影を行なえば夜間の背景も綺麗に写る、と新たな使い方を提案 |
会場の照明を落として、撮影のデモを行なった | 実際に暗所で撮影した写真を投影 |
CMOSの高速読出しを活かして、フル画素での10コマ/秒連写が可能 | 6枚を高速連写して合成し、ノイズを約半分にする「手持ち夜景モード」も搭載した |
DSC-HX1から引き続いての搭載となる「スイングパノラマ」。カメラを横または縦に振るだけでパノラマ写真ができる | スイングパノラマでは、100枚の短冊状写真をわずか1秒でパノラマ写真に処理する |
現段階の裏面照射型CMOSセンサーは、画素ピッチの狭い小型高画素センサーに対して有効という。35mmフルサイズやAPS-Cサイズといった画素ピッチに余裕のあるセンサーでは、裏面照射型にしても大幅な感度向上は見込めないのではないかとしている。今後は、コンパクトデジタルカメラのマーケットニーズに合わせてExmor Rの採用を適宜決めていくとのこと。
他社から3D機能やプロジェクター内蔵型などのデジタルカメラが登場しているが? との質問には、「カメラの王道である撮影機能を中心に進化させているが、デジタルならではの新しい提案は引き続きやっていきたい」(佐藤氏)と答えた。
・DSC-WX1
DSC-WX1(ゴールド) | DSC-WX1の背面(ゴールド) |
DSC-WX1のカラーバリエーション |
構成パーツ | レンズのカットモデル。広角24mm対応で、広角端は開放F2を実現したGレンズ |
・DSC-TX1
DSC-TX1(ブルー)。スライド式レンズバリアを継承 | 厚みは16.5mm。最薄部は14.1mmという |
DSC-TX1のカラーバリエーション | なぞり操作など、タッチパネルを利用した新ユーザーインターフェースを搭載 |
DSC-TX1の新機能の1つであるカスタマイズ機能。使用頻度の高い機能を撮影メニューに並べることができる | カスタマイズの画面。右のアイコンを左のエリアにドラッグすると登録できる |
DSC-TX1の構成パーツ | レンズユニット。カールツァイスの屈曲光学式を採用している |
・パーティーショットIPT-DS1
対応カメラを載せると人物の顔を追いかけて自動撮影できる雲台「パーティーショットIPT-DS1」 |
その場の人間が撮影した場合の「カメラ目線」、「撮影者が写っていない」、「似たような構図」といった不満の解消をウリにしている | パーティショットの使用でより自然な写真が残せるという。“カメラがカメラマンになる”をキャッチフレーズにした。 |
・アクセサリー
DSC-WX1とDSC-TX1用に専用ケースと、防水ハウジングを用意する。 | 100kgの荷重に耐えられるほか、約1.5mからの落下でもカメラを保護できるというMILスペック準拠のケース「LCH-TW1」。外装にポリカーボネート、内装にエラストマーを採用した |
■カメラの高性能化でさらなる買い換え需要を創出
続いて、ソニーマーケティング コンスーマーAVマーケティング部門デジタルイメージングマーケティング部の下野裕統括部長がマーケティングについて説明した。
ソニーマーケティング コンスーマーAVマーケティング部門デジタルイメージングマーケティング部の下野裕統括部長 | 今後、2005年~2007年に起きた買い換え需要の再来を狙う |
2005~2007年にかけて、コンパクトデジタルカメラ市場が前年を上回って成長したことを挙げ、「この時期は、カメラの高機能化で買い換え需要が起きた。今後、潜在的な不満の解消と従来にない機能の提供を行なうことで、2009年~2010年にかけて市場拡大を狙う」(下野氏)と説明。「ユーザーが今持っているデジカメからの買い換えに足りる機種が必要。潜在的な不満とは暗い場所での撮影で、今回その部分を強化した。劇的な進化で業界を盛り上げたい」(下野氏)。直近では、コンパクトデジタルカメラを新規に購入する層は約2割に過ぎず、残りの約8割は買い換えまたは買い増しという。
購入形態の推移 | 新モデルは「美しさ、一新。」をキーメッセージにする |
ソニーではブラビア、S-Frame(デジタルフォトフレーム)、PS3などでの写真観賞も勧めており、撮影後の楽しみも積極的に提案していく。
新製品のメッセンジャーにはタレントの岡田准一さんを引き続き採用する。また、新製品のテレビCMも9月から放映する。製品カタログなどでは岡田准一さんとともに、「美しさ、一新。」のキャッチフレーズで訴求していく。店頭では、暗所撮影性能を体感できる展示を実施する。
発表会を行なったソニー本社 |
2009/8/6 20:36