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祇園・花見小路にオープンした「ライカ京都店」レポート

町家を改装 京友禅のレンズポーチなどオリジナル商品も

 ライカカメラジャパンは3月15日、京都市内に直営店舗の「ライカ京都店」をオープンした。3月14日に行なわれた内覧会に参加したので、そのレポートをお届けする。

©Stirling Elmendorf
©Stirling Elmendorf

 国内7店目のライカストアとなるライカ京都店は、京都観光の中心ともいえる祇園・花見小路に面した場所にある。ほぼ向かいに甲部歌舞練場、南に下れば建仁寺という好立地に所在。周りには古くから続く京町家が並び、ライカ京都店ももともとお茶屋だった町家を改修した。築約100年の由緒ある物件であり、ライカカメラも今年、奇しくも誕生100周年を迎える。

 まずは、とてもカメラ店とは思えない外観に驚かされる。入口にはライカマークの入ったのれんがかがげられ、足下には同じくライカロゴ入りの燈籠が。

 店舗内部も長く奥へと続く町家らしさを残したものとなっており、木製の階段もそれらしい雰囲気。坪庭(敷地の一部にある小さな中庭)も残されており、石灯籠は改修前のものをそのまま使っているとのことだ。

店舗入口。祇園・花見小路の景観に溶け込んでいる
店長の都丸直亮氏。これまでにも二子玉川店など、ライカストア立ち上げ時の店長を務めている
和室のスタジオ。ここから坪庭を望める
坪庭の石灯籠は改装前の町家からそのまま引き継いでいる
内覧会の様子。芸舞妓さん(右)も登場して盛り上がった
壁面には元の町家にあったかまどのふたが残されていた
開くと中に、ライカI型が鎮座しているという演出

 世界中のライカストアはどれも、ライカ本社が規定するレギュレーションに沿って作られている。「そうしたレギュレーションとの擦り合わせに苦労したものの、結果的にライカと京都文化とをうまく融合できた」と語るのは、ライカカメラジャパン株式会社代表取締役社長の福家一哲氏。

 想定する客層としては、京都市内の富裕層と、海外からの渡航者を含む観光客。常駐スタッフのうち1名は京都出身者で、「今後は季節にあわせた撮影地や被写体の紹介などにも対応できれば」(福家社長、以下同)とのこと。撮影マップの制作など、今後の企画にも余念がないようだ。

店舗2階の床の間で、ライカカメラジャパン株式会社代表取締役社長の福家一哲氏。一番左は八坂神社で執り行われた竣工祝いのときのもの。中央は改装時に発見されたもので、建物が約100年前の大正二年(1913年)に造られたことを証明している

 なお店舗には、ライカカメラ誕生100周年を記念した「ライカS Edition 100」、「ライカD-LUX6 Edition 100」といった新製品もディスプレイされていた。100周年に関する発表は、今後もほぼ毎月行なわれるそうだ。

ライカS Edition 100。価格未定
ライカD-LUX6 Edition 100。直営店価格は11万5,500円
100周年のロゴには、ウルライカの回転式レンズキャップのデザインが取り入れられている

 また、京都店で3月15日に先行発売された「ライカMPオリーブセット」および、ライカ京都店限定発売の「ライカX2オリーブ」も見ることができた。一般店舗では4月1日からの発売となる。

ライカMPオリーブセット。限定100セットで価格は171万1,500円
ライカX2オリーブ。限定50台、価格は29万4,000円

 1階には店舗の他に、和室のスタジオを用意する。プロ写真家の撮影で使ってもらう他、例えば顧客向けに、舞子さんをモデルにした撮影会なども企画したいとのことだ。

 階段を上がった2階には、フォトギャラリーが用意されている。銀座店のギャラリースペースよりゆったりしており、より本格的な展示が期待される。また天井には元の町家にあった梁も残されているなど、和の雰囲気もフォトギャラリーとしては珍しい。

2階のギャラリースペース。このときの企画展は、マグナムのメンバーが撮影した京都の写真を展示したもの

 2階の花見小路側の一角には、これまた和風となる座卓のサロンスペースや床の間が設けられている。

サロンスペースも設けられている

 現在のところギャラリーの展示は、銀座店とは別の内容を考えているという。ただし将来、海外ライカストアを含む巡回展の通り道とするなど、柔軟なプランも考えているとのことだ。

 京都に店舗を構えた理由として、福家社長は「京文化とライカの親和性」を挙げた。物作りの伝統を守り、高度な技術を大事にする。同時に古きを守るだけでなく、時代に合わせた攻めの姿勢も持ち合わせる……銀座に並ぶ旗艦店をつくるに当たり、京都ほど似つかわしい場所はないと判断、ライカ本社を説得して開業にこぎ着けたそうだ。「祇園で店舗を構えた外資系の企業は、ライカカメラジャパンが初めてでは」とのこと。

 それを表してか、八坂倶楽部で3月14日に行なわれたオープニングレセプションには京都商工関連の大物がつめかけ、大いににぎわった。ライカカメラ本社からも、社主のアンドレアス・カウフマン氏をはじめ、多くのキーマンが来日した。

手前が都をどりで有名な祇園甲部歌舞練場。懇親会が行なわれた八坂倶楽部はその奥。花見小路を挟んで向かいがライカ京都店という位置関係になる
ライカ京都店オープニングレセプションの入口(オープニングレセプションの翌日に撮影)
八坂倶楽部1階の広間。ここでオープニングレセプションが行なわれた(オープニングレセプションの翌日に撮影)
日本庭園を背景に、ライカロゴのついた酒樽で鏡開き。オープニングレセプションの一幕
ライカカメラ社主のアンドレアス・カウフマン氏が持っていたライカMには赤いアポ・ズミクロンM f2/50mmが。もちろん非売品で特注。本人曰く「赤が強すぎた」とか

 福家社長に今後のライカストアの展開を聞いてみた。「首都圏、横浜は充実した。次は商業集積地、地方都市にひとつずつ設けていきたい。大阪は心斎橋に足がかりができた。名古屋、福岡、札幌などが候補」とのことだ。

 世界のライカストアも充実が図られている。アメリカの旗艦点としては、ロサンゼルス店がオープンしたばかり。2階のギャラリーには白いソファーが置かれ、ハリウッド映画の世界を体現したという。京都店と同様、その土地にあわせた趣向を凝らし、観光客の取り込みにも力を入れるという。

  • ライカ京都店
  • ・住所:京都市東山区祇園町南側570-120
  • ・営業時間:11時〜19時
  • ・定休日:月曜日

 最後に、京都店でしか購入できないオリジナル商品を紹介したい。京都の老舗の工房とコラボレーションした商品もあり、いずれも「和とライカ」の組み合わせの妙が特徴だ。

ライカ京都店のオリジナル商品。この店舗でのみ購入できる

 カメラバッグは、西陣織の老舗「細尾」とのコラボレーション。バッグのデザインは自らもライカユーザーであるデンマークの著名デザイナー、トーマス・リッケ氏が担当した。

 フラップ部にあしらわれた西陣織は、和紙に顔料を塗り、細く裁断したものを絹に織り込んだという。独特の光沢と質感を持っている。バッグ内側に配置されたライカロゴもモノトーンで控えめだ。

 価格は税別7万5,000円。カラーはブラックまたはネイビー。

西陣織があしらわれたカメラバッグ

 レザーポーチは、内側に京友禅の老舗「千總」の京友禅柄プリントシルク生地を採用。さらっとした質感のため、レンズの出し入れもしやすい。

 価格はSサイズ(千鳥、市松、桜)が税別1万2,000円。Lサイズ(蝶、波、鞠)が税別1万4,000円。

レンズポーチ。京友禅柄のプリントシルクが内側に使われている

 レリーズボタンは、レッドとブラックとレッドのセット。表面は七宝焼きで、レッドはライカ赤ロゴデザインとなっている。価格は1万2,000円。

七宝焼きのレリーズボタン

 ボディ用クリーニングクロスは、ライカ赤ロゴ入り。カラーはアイボリー。価格は2,800円。

ボディ用クリーニングクロス

 ライカオリジナルデザインの扇子も販売されている。京都の老舗「宮脇賣扇庵」の扇子に、ライカのクラシックなロゴをあしらったもの。「黒渋」と「七宝紋」の2種類から選べる。価格はともに6,000円。

ライカオリジナルデザインの扇子

(本誌:折本幸治)