「カメラグランプリ2012」の授賞式が開催


 カメラ記者クラブ カメラグランプリ2012実行委員は1日、カメラグランプリ2012の授賞式およびレセプションを都内で開催した。レセプションでは、各社の開発者が製品開発にまつわる秘話などを話した。

カメラグランプリ2012の受賞製品

 カメラグランプリの授賞式は今年も引き続き「写真の日」である6月1日に実施。既報の通り、大賞およびあなたが選ぶベストカメラ賞を「D800」(ニコン)がダブル受賞。レンズ賞は「EF 8-15mm F4 L Fisheye USM」(キヤノン)、カメラ記者クラブ賞は「NEX-7」(ソニー)、「M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8」(オリンパス)が受賞した。

ニコン執行役員 映像カンパニーマーケティング本部長の岩岡徹氏(右)。カメラグランプリ2012実行委員会 委員長の伊藤亮介氏(左)が贈呈したニコンの出席者

 ニコン執行役員 映像カンパニーマーケティング本部長の岩岡徹氏は、D800の受賞に対し「2008年のD3に続く2度目のダブル受賞を光栄に思う」と述べ、あなたが選ぶベストカメラ賞を5回のうち4回受賞したことについても「励みになる」とコメントした。

 EF 8-15mm F4 L Fisheye USMがレンズ賞を受賞したキヤノンは、常務取締役 イメージコミュニケーション事業本部 事業本部長の眞榮田雅也氏が登壇。

キヤノン常務取締役 イメージコミュニケーション事業本部 事業本部長の眞榮田雅也氏キヤノンの出席者

 「交換レンズは撮影領域を広げることが最大のミッション」と前置き、「マニアックでニッチなレンズだが、発売以降スチルだけでなく動画においてもいろいろなトライがなされている。制作関係からも認めてもらって嬉しい」と述べた。

 EF 8-15mm F4 L Fisheye USMは新入社員のレクチャーから開発・製品化にこぎつけたレンズで、開発にはマニアックな人間が多く「こういう製品に燃える」のだという。

 続いてTIPAのジュリオ・フォルティ氏が登壇し、「2年になるカメラ記者クラブとの関係は実りの多いものになると確信している。互いの賞に参加し、普及に努める」とコメント。1991年に5つの部門を設けていたTIPAアワードだったが、2012年3月には40の賞を選出。これもデジタル化や製品の細分化があったからだと話した。エントリーする製品は日本が全体の3割と群を抜いているが、近年ではアメリカもそれに迫っているという。

TIPAのジュリオ・フォルティ氏

 NEX-7でカメラ記者クラブ賞を受賞したソニーDI事業本部イメージング第1事業部 副事業部長の長田康行氏は、「エースナンバー“7”のカメラを出すべく頑張った。量産スタートの数日後にタイ洪水でレンズのラインなど全てが被災し、電気もない中で設備の引き上げなどを行なった。NEX-7には決まったサプライヤーからしか入手できない“こだわりの部品”も使っており、苦労した」と述べた。

ソニーDI事業本部イメージング第1事業部 副事業部長の長田康行氏(右)。カメラ記者クラブ代表幹事の石川孝宏氏(左)が盾を贈呈ソニーの出席者

 M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8でカメラ記者クラブ賞を受賞したオリンパスイメージング取締役 営業本部本部長の五味俊明氏は、「3月以降カメラ業界は活況にある。様々なカメラの発売がこの春に集中し、カメラ専門店に聞いた関連製品の売り上げは久々のいいニュースだった」と印象を述べた。同社は明るいレンズの開発の力を入れているといい、「今後も特に明るいレンズを中心にラインナップを充実させれば、業界を活性化できるのでは」とコメントした。

オリンパスイメージング取締役 営業本部本部長の五味俊明氏オリンパスの出席者

 乾杯の発声はカメラ映像機器工業会 事務局長の小川眞佐志氏。「カメラグランプリは“カメラの美人コンテスト”ではないかと思っている。来年はどんな美人カメラ・美人レンズが登場するのか今から期待している」と述べた。

カメラ映像機器工業会 事務局長の小川眞佐志氏

 授賞式後のレセプションでは、受賞製品の開発者代表が開発秘話などを話した。D800が受賞したニコン映像カンパニー開発本部長の山本氏は、「これまでの機種の中でも特に思い入れが強い。いろいろなレンズと組み合わせてみてほしい」とし、D800は「これまでやってきたことのひとつの結実」だとしていた。

ニコン映像カンパニー開発本部長の山本氏ニコンD800

 EF 8-15mm F4 L Fisheye USMが受賞したキヤノンICP第一開発センター 副所長の池上氏は、いろいろな角度から光が入ってくる全周魚眼までカバーするレンズとして、今までないほどにゴーストが発生し、その除去に苦労したという。

キヤノンICP第一開発センター 副所長の池上氏キヤノンEF 8-15mm F4 L Fisheye USM

 通常のレンズであれば「ゴーストをレンズの外側に逃がす」という手法も使えるそうだが、同レンズは全周魚眼のため“正攻法”で除去しなければならず、同社のSWCコーティングや、鏡筒内を精密に加工して平面をなくすといった技術が活きたという。また、レンズ評価には通常の平面チャートが使えず、新しい評価方法の装置も作ったという。

 加えて、魚眼レンズはほかのレンズと組み合わせて持ち出すことが前提になると想定し、携帯性にも配慮。小型のモーターを新たに設計するなど「とにかくコンパクトにした」という。写る範囲が広いことから、撮影者の指が映り込まないよう、引っかかりを設けるなどの工夫も施したという。

 ただ「(撮影者の)お腹や足が写ってしまうのはこちらではどうにもできない。慣れるとお腹を引っ込めるようになるので、このレンズを使うとダイエットになる。ダイエットしながら楽しい映像表現を行なってほしい」と締めくくり、会場は笑いに包まれた。

 NEX-7が受賞したソニーDI事業本部 イメージング第1事業部担当部長の野田氏は、NEX-7の最大のポイントを3つのダイヤルからなる「トライダイヤルナビ」と説明。その操作性はゼロから考えたものだという。フランジバックが短いことからEマウント以外の各種レンズを装着して楽しむユーザーが多いことについても触れ、「マニュアル操作やカスタマイズ性も3つのダイヤルに込めた」と話した。

ソニーDI事業本部 イメージング第1事業部担当部長の野田氏ソニーNEX-7

 M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8が受賞したオリンパスイメージング光学開発部部長の片桐氏は、同レンズの開発にあたりターゲットを「コンパクト機からのステップアップ層」とし、高画質とボケのニーズを意識しながら「ポートレートレンズ」としてコストパフォーマンスの高い製品を企画したという。

オリンパスイメージング光学開発部部長の片桐氏オリンパスM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8

 35mm判換算90mm相当の同レンズは、同社「ハイグレードレンズ」相当の画質という。大口径のボケ味と口径食のない画像を狙うとレンズ径は大きくなるが、そこでマイクロフォーサーズのセンサーサイズが活きたという。同レンズは中国・深センの工場で生産しているが、ちょうど「立ち上げの大変な時期」に東日本大震災が発生し、生産機器の搬入が遅れるなど、発売に間に合わせるための苦労があったという。

カメラ記者クラブの出席者



(本誌:鈴木誠)

2012/6/1 18:09