ニュース

最新Photoshopに搭載「コンテンツ認証機能」の仕組みとは?

クリエイターの半数が“オンラインでの作品盗用”を経験

コンテンツ認証イニシアチブについて説明するアドビのScott Belsky氏

アドビのクリエイター向けイベント「Adobe MAX 2021」が10月27日より国内でも配信されている。配信では既にアップデートがリリースされたアプリケーションの進化点や様々なクリエイターによる話題が配信。同社が進めているフェイクコンテンツ撲滅へ向けた取り組みも紹介された。では、同社が進めているフェイク情報との戦いとはどのようなものなのか。配信内容を振り返りながらお伝えしていきたい。

コンテンツの真正性とフェイク情報との戦い

バージョンが23.0にメジャーアップデートされたデスクトップ版のPhotoshop。主な機能強化ポイントは既報のとおりだが、同社の新しい取り組みとして、コンテンツの真正性を確保するための仕組みも機能として盛り込まれている。Adobe MAX 2021を通じて同社はこの取り組みを「コンテンツの真正性とフェイク情報との戦い」と説明しているが、今なぜコンテンツの透明性確保への取り組みが進められているのか。背景にはコンテンツの盗用問題が潜んでいる。

同社が実施した「マーケティングの未来」という調査では調査対象となったクリエイターのおよそ54%が作品をオンライン上で盗用された経験があると回答したという。さらに85%のクリエイターからは自身が手がけた作品の真正性を誰にでも分かるように証明できるアトリビューションツール(ここではコンテンツの履歴等を解析できるという意とみられる)があれば、ぜひ利用したいと答えたという。

同社が2年前に立ち上げたコンテンツ認証イニシアチブ(Content Authenticity Initiative)ではデジタルコンテンツの出所を明示するシステムを構築。コンテンツの帰属と検証可能な事実によって、コンテンツの真正性を視覚化できる仕組みとなっているという。開発はオープンソースで行われており、「業界横断であらゆる組織が活用できる」システムとして構築が進められている。

同取り組みに加盟している企業・団体は375以上にのぼるとしており、この10月にはニコンも加わったという。

Photoshopで証明データの埋め込みが可能に

コンテンツの真正性を確保するための取り組みを次の段階に進めるためとして、同社は今回デスクトップ版のPhotoshopに「コンテンツクレデンシャル(Content Credentials)」機能を実装。写真の帰属先やどのような編集・加工が加えられたのかを暗号化し、メタデータとして画像データに埋め込めるようになった。付加されたメタデータの改ざんもできないようになっているという。

また同機能はAdobe Stockにも追加されているという。

さっそくチェック

さっそく手元の画像データを用いて、どのようにメタデータが埋め込まれるのかをチェックしてみた。

同機能は現状ベータ版として提供されておりデフォルトではオフになっている。有効にするためには、まず環境設定の「テクノロジープレビュー...」から、「コンテンツ認証情報を有効にする(ベータ版)」にチェックを入れる。機能の説明内容によれば、対応するデータ形式はPNGとJPEGの2種類となっているようだ。

続けて「ファイル」メニュから「書き出し」を選択。「書き出し形式...」をクリック。

右側パネルの最も下にある「Content Credentials (Beta)」で「画像に添付」を有効にすれば完了だ。

埋め込み情報をプレビューすると以下のようになる。書き出しで使用したPhotoshopのバージョン情報のほか、編集内容やアセット情報、作成者の情報が埋め込まれていることが確認できた。

さらにこの画像にトーンカーブ調整とモノクロ化を加えて保存してみた。改めて画像をPhotoshop上で展開したところ、元のカラー画像に加えて今編集を加えた画像が表示されていることが確認できた。編集内容もしっかりと記録されていることがわかる。

真正性をチェックする仕組み

クリエイターによって、自身が手がけた画像データの真正性を確保する仕組みがPhotoshopおよびAdobeStockに実装されたわけだが、ではチェックはどのように行うことができるのか。

消費者サイドからコンテンツをチェックする仕組みとしては、Webサイト上からの確認が可能になっている。実際に検証をしていった。

まず、Webサイト「Content Authenticity Initiative」にアクセスする(直接Verifyサイトへ行くことも可能)。サイトURLについては記事末に添えているので参考にしていただきたい。

続けて画面右上の「Go to Verify」をクリックし、画面が切り替わったら、同じく右上の「画像をアップロード」をクリックする。

アップロードは、Webサイト上に検証したいファイルをドラッグアンドドロップするだけでOK。

先ほど調整を加えて、コンテンツクレデンシャル情報を加えて書き出したファイルをアップロードしてみた。左側ペインには元画像とともに「i」マークつきで調整後の画像が表示されていることが分かる。右側ペインには画像の来歴とともに変更を加えた調整内容が表示されている。これで第三者もその写真がどこからきたもので、編集や加工が加えられていれば、誰がどのような変更を加えたのがが追跡できるというわけだ。

コンテンツの真正性を保っていくためには、Lightroom ClassicやLightroomなど、より写真の編集や書き出しフローで慣れ親しまれているアプリケーションでの普及が不可欠になるとは思われるが、それでもコンテンツの信頼性を確保していく上では大きな前進だと言える。

同社のコメントにも「このワークフローが今後より洗練され、普及が拡大していくことで、最終的にはクリエイターにとってはコンテンツの帰属が明確になり、インターネット上の視聴者にとってはコンテンツの透明性が高まることになります。」としているように、今後の拡充が期待される。多くの人が写真や動画をSNS等に投稿することが当たり前となった昨今の状況をかえりみても、コンテンツ保護の重要性は、よりその重みを増していくことだろう。

本誌:宮澤孝周