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クリエイター向けに“写真も映像も”を掲げるパナソニック

CP+2021配信に向けたエッセンスを紹介

プレデモを担当した栁下隆之氏

パナソニックは2月18日、CP+2021 ONLINEの特設Webページを更新した。「Creators Live! with LUMIX」をテーマに掲げる同社は、どのようなプログラムで来場者を迎えようと考えているのか。今回の出展にかける想いと意気込みを聞く機会を得たので、配信内容のプレデモの様子とともにお伝えしていきたい。

クリエイター“にとっての”LUMIXへ

パナソニックが35mm判フルサイズ機を発表したのは、遡ること2018年のフォトキナでのことだった。折しもニコンがZシステムを8月に、次いで9月にキヤノンがEOS Rシステムをそれぞれ発表した時期のことで、“フルサイズミラーレス戦国時代”という呼称を多く目にし、また耳にする状況だった。

同社35mm判フルサイズミラーレス機LUMIX S1/S1Rが発売されたのは2019年3月のこと。同社は矢継ぎ早にLUMIX S1Hを2019年9月に投入。35mm判センサーながら、時間制限なしでの動画撮影を可能とするなど、さらに本格的な映像制作ニーズに応える製品をラインアップに加えて、静止画・動画の両面に対する布陣を整えていった。

LUMIX S1/S1R/S1H/S5

さらに2020年9月には、同社マイクロフォーサーズ機のフラッグシップモデルLUMIX G9 PROと遜色ないサイズに凝縮した35mm判フルサイズ機の最新モデル「LUMIX S5」を投入。小型軽量化を望む声に応えることで、同社35mm判フルサイズシステムの門戸を拡大。マイクロフォーサーズ機でもVlog向けに「LUMIX G100」(2020年8月)を、映像用途向けに完全ボックススタイルを採用した「LUMIX BGH1」(2020年11月)を、それぞれ拡充・発売。本年春には、LUMIX S1を5.9KやC4K動画の内部記録対応アップデートのリリースも控えるなど、動画に注力した拡充も進められている。

LUMIX G100
LUMIX BGH1

同社はLUMIXのブランドタグラインを「Motion Picture Perfect——写真も映像も、想いのままに。」と定義し、クリエイターへの訴求を進めている。表現することへの情熱を絶やさないこと、そして想像力を新しいステージに引き上げる撮影体験を提供すること、各種機材が撮影者のパートナーとなっていくこと、これらの総体をもって「写真と映像の枠を超え、クリエイターと共に新たな感動を届ける」ことが、今後のLUMIXのアイデンティティーになっていくのだという。同社のいうクリエイターとは、静止画と動画それぞれ、また双方に携わる表現者総体を指し示している、というわけだ。

CP+2021 ONLINEは動画に注力

少しばかり状況の整理が長くなってしまったが、CP+2021 ONLINEで同社が用意しているメインコンテンツもまた、近時同社が環境整備を推し進めている動画撮影を意識したものとなっている。同社では2月26日〜2月28日の3日間にわたってライブ配信を予定しているが、そのうち2日間を動画撮影向けのコンテンツとしている。

配信プログラムは、講師によるプレゼンテーションのほか、トークセッション、配信現場の裏側を紹介、メーカー説明員への突撃インタビュー、タッチアンドトライができる拠点の紹介といった5つの要素で構成。多角的なアプローチで撮影と製品の掘り下げが進められる見通しだ。

1日目のテーマは「写真を、究めよう。」となっている。写真を通じた創造力発揮に向けたヒントを発信していきたいという。登壇予定の主な講師陣は、相原正明氏(写真家)や森脇章彦氏(写真家)、大貝篤史氏(クリエイティブディレクター)、A☆50/Akira Igarashi氏(写真家)、イノウエ氏(写真家)などとなっている。

2日目と3日目は動画撮影が中心になる。2日目は「動画を、はじめよう。」がテーマとなっているとおり、これから動画撮影をしていきたいと考えている人向けの内容となる。講師は、上田晃司氏(写真家)、コムロミホ氏(写真家)、森田良紀氏(mix&recエンジニア)、ニコラス タケヤマ氏(撮影監督・ディレクター)、Shuichi Jouno氏(ムービーアーティスト)が主に務める。

3日目も引き続き動画がテーマとなっているが、その内容はよりクリエイティブな領域に踏み込んでいくとして、「動画を、究めよう。」をテーマに掲げる。写真と動画を仕事としている人向けの内容となる見通しで、Osamu Hasegawa氏(フィルムメーカー)、栁下隆之氏(ビデオグラファー)、TOSH SHINTANI氏(映像監督)、曽根隼人氏(映像ディレクター)、岸田浩和氏(ドキュメンタリー監督・映像記者)などが登壇する。

各日の内容に関する詳細はまだ不明だが、プレデモというかたちで、栁下隆之氏が配信内容のエッセンスを紹介してくれた。ここからはその模様をお伝えしていきたい。

静止画ユーザーに向けた動画コトハジメ

プレデモの実施にあたり、栁下氏は2日目の内容に近いところから説明していきたいと前置きして、LUMIX S5をもとに動画撮影の最初の1歩と、撮影テクニックの一部を紹介してくれた。

まずは自身の所有しているカメラで動画撮影モードをどのように設定するのかを把握するところから、スタートしてみて欲しいと話す栁下氏。それというのも、静止画メインで活動しているユーザーの多くが、そもそも動画撮影の設定に関する理解が十分でないことを指摘した。

まず動画撮影で理解して欲しい要素は2つあると続ける栁下氏。曰く、[1]動画撮影モードへの切り替え方法と、[2]フレームレートを理解すること。この2点がポイントだという。

LUMIX S5では、モードダイヤルから動画撮影モードへの切り替えが可能。富士フイルムX-T4やGFX100Sなどでは、動画切り替えレバーが独立しており、レバー切り替えと同時にメニューも動画撮影用のものに切り替わる。手元にカメラがあったら、一度自身のカメラでどこまで動画撮影が可能であるのかをチェックしてみてはいかがだろうか。

動画撮影モードへの切り替えができたら、次は撮影モードの設定だ。動画撮影では自動でシャッタースピードが変わるモードはオススメしていないと話す栁下氏。おおよそ1/50秒〜1/60秒あたりでシャッタースピードを固定して撮影するのがオススメだという。一定以上の速度でシャッタースピードを固定する理由は、シャッタースピードを上げすぎると映像がカクカクして不自然なものになってしまうからなのだそうだ。モーションブラーとか、残像効果が、そうだ。シャッタースピードを決めてから、露出の設定を考えていく流れが失敗を防いでくれるのだと続ける。

もうひとつのポイントにあげたフレームレートについては、明快な図を用いて原理を説明。多くのカメラが標準で4K撮影に対応する状況となってきているが、一般的なシーンではFHDで十分だと続ける栁下氏。4Kが求められるシーンはCMの撮影などだと説明した。

4Kに対応しているカメラは増えてきているものの、60p記録まで対応しているカメラは、現実にはまだそう多いとはいえない。だが、FHDであれば60pに対応している機種も多い。そうした状況も踏まえて、例えば60pで撮影しておけば、2倍速スロー(30p)にしたりといった使い方もできると、メリットを強調した。

ちなみに撮影時は10bit記録にしておくのがベターだと続ける。これは、編集作業における自由度も踏まえてのこと。8bit記録は、静止画のJPEG撮影と同じようなものだと説明した。

撮影モードと記録設定を完了した状態。これで撮影準備は整った

動画撮影用はコレがあると幅がひろがる

基本的な撮影設定と、設定時のポイントの説明の後、栁下氏は動画撮影の幅をひろげてくれる基本的な道具についても解説をしてくれた。

まずは、スライダー。被写体に対してカメラを左右に水平移動させながら撮影できる道具で、カット割で利用できる映像の撮影など、あるとないとでは、できることが大きく違ってくるという。ここでは、ビデオ雲台をセットして使用。合間でティルト方向の動きをつけたりなど、単に横移動しているだけなのに、印象的なパートを用意することができる。

スライダーにカメラをセットしたところ
栁下氏の視点から。このまま横方向にスライド
手元の機材を栁下氏と同様の状態にセットしたところ。スライド操作のほか、パン・ティルト操作を加えることで映像に変化がつけられる

他の便利な道具にはどのようなものがあるのだろうか。栁下氏はマイクを用意してみては、と続ける。動画では当然、音・音声が入ってくる。そこで集音性能を引き上げることで、より明瞭な音が取得できるようになる。オンカメラは各社から様々な製品が登場しているし、手頃な製品も増えてきている。ワイヤレスマイクもVlogのように、カメラから距離をとって撮影するようなシーンで威力を発揮してくれそうだ。

CP+2021 ONLINEに向けて、パナソニックLUMIXが伝えようとしている内容の一端をお伝えしてきた。ここで紹介した内容は、あくまでもエッセンス。実演のあった内容も、まずは動画撮影の入り口を開くものだった。

しかし、このデモンストレーションを通じて、今回のCP+2021 ONLINEで同社が伝えたいことの一端が見えてきた。今や、静止画向けカメラでも動画撮影への門戸は広く開かれている。そうした映像をもっと深く知り、また深めていくことが、今回の同社の取り組みとなる。とはいえその深みのみを伝えるのではないことは、今回のデモがよく伝えてくれているところ。静止画を置き去りにせず、あくまでも両輪として、これからの表現の行方をともに考えて、深めていこうとしているのだろう。

これから動画を撮影していきたいと考えている人のほかにも、品質の向上や生産効率を底上げしていきたいと考えている人にとって、今回のパナソニックの配信内容は多くの学びや気づきをもたらしてくれる違いない。LUMIXシリーズを所有していないユーザーにとっても、きっとその情報やノウハウは有益なものをもたらしてくれることだろう。

本誌:宮澤孝周