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自分の手でプリントを販売したい…写真家・吉村和敏さんが開設したフォトギャラリーにおじゃました

吉村和敏さん。今年できたばかりの「吉村和敏 清里フォトギャラリー+Books」で。

写真家の吉村和敏さんが山梨県清里に個人ギャラリーをオープンしたというので、ある日様子をうかがいにいった。

吉村和敏さんといえば、デビュー作の『プリンスエドワード島』をはじめ、『BLUE MOMENT』『PASTRAL』といった国内外の美しい風景作品で知られる人気作家だ。

そんな吉村さんがなぜギャラリーを開設したのか。

「海外の作家ように、自分の写真を販売する拠点が欲しかったのです。たくさんの写真を壁に掛け、ふらっときた方が買って帰る。そういう写真との付き合い方を日本で実現したかった」

確かに壁面には多数の作品が飾られ、整然と写真が並ぶ美術館やフォトギャラリーと異なる雰囲気。数々の吉村作品がにぎにぎしく並べられている印象だ。まさに海外の画廊、といった趣き。

作品によるが、基本的に1万円台と手頃な価格。ほぼすべての作品が吉村さんによるプリントであり、額も吉村さんが選んだものだ。サインも入っており、何から何まで作家の手作りなのに軽く驚いた。

作家の名前を冠するギャラリーは日本各地にあるものの、亡くなった著名作家の作品を展示しているケースが多い。そこへいくと吉村さんはまだ存命であり、自らが次々とプリントを制作している。

写真集も置かれていた。多数並ぶ写真集を見て、吉村さんがいかに多作な作家だったのかと改めて感心。絶版や希少本も見られる。書棚は著作がぴったり入るよう自作したそうだ。

従業員も置かず、あくまで自分がお客と対面することを重視する。取材で忙しい身の吉村さんだけに、結果的に営業日は1ヶ月のうち数日と短くなる。それでもブログでオープンの日取りを告げると、お客さんはしっかり訪れるという。

対面販売などしたことがなかった吉村さんだが、最初の頃は想定外の苦労の連続だったという。中でもレジスターの使い方がすぐに覚えられず、お釣りが出るたびに苦労したエピソードが微笑ましい。いまは慣れたもので、クレジットカード用の端末も揃うなど充実したレジ周りとなっている。

お客さん一人一人に声をかけ、写真の説明や近況を語る吉村さん。お客さんの層は、やはり吉村さんのファンが多い印象だ。写真集やトークショーで吉村さんのファンになった方は多く、ペンタックスギャラリー大阪での展示の際に出会ったファンも、清里まで足を運んでくれたとのこと。なお、部屋で飾る目的で購入する人がほとんどと思われ、やはり海外の風景作品が人気だ。

「無謀かと自分でも思いましたが、50歳を機に、思い切ったことをやりたかったのです」

静かな環境に拠点を据え、作家が1枚1枚プリントを売るという行為も、ひとつの表現活動なのかもしれない。雑誌や広告が華やかなりし頃と違い、写真家を取り巻く環境も変わってきている。ギャラリーの開設とそこに集うファンの関係は、吉村さんの長年の活動が実を結んだ結果といえるだろう。

プリント販売だけでなく、これまでのプリントの倉庫としても活用したいとのこと。清里は標高が高く、湿気が少ないためプリントの収蔵には適している。ただし冬の寒さが厳しく、雪も深い。冬の期間、ギャラリーをどうするかは開設時からの不安だったという。

結局冬季はギャラリーをいったん休業。ただし期間限定で、東京・池袋のジュンク堂書店でギャラリーのプリントと写真集を販売することが決まった。清里のギャラリーを東京で再現するかのこの試み、興味のある方は訪れて見てほしい。

「吉村和敏 清里フォトギャラリー+Books」in Tokyo

期間

2017年12月13日(水)〜2018年1月31日(水)

営業時間

10時〜23時(月〜土) 10時〜22時(日・祝)

場所

ジュンク堂書店池袋本店9階ギャラリースペース

会場の様子

特別企画 吉村和敏トークショー「清里フォトギャラリーを作ったわけ & 写真集の制作秘話」

日時

2018年1月12日(金)19時〜21時、1月13日(土)14時〜16時

会場

ジュンク堂書店池袋本店9階ギャラリースペース

定員

各回40名 無料
※1階サービスコーナー、または電話(03-5956-6111)で事前の予約が必要

吉村和敏作品展『POND&RIVER 錦鯉×発電所』

会場

ソニーイメージングギャラリー 銀座
東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階

開催期間

2017年12月15日(金)〜12月28日(木)

開催時間

11時〜19時(最終日やイベント開催時に閉館時間が早まる場合あり)

定休日

なし(銀座プレイス休館日を除く)

ギャラリートーク

12月15日(金) 17時〜18時
12月16日(土) 14時〜15時、16時〜17時
12月23日(土) 14時〜15時、16時〜17時

本誌:折本幸治