カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

カラフルな“タコの島”で、ネコと出会う旅(日間賀島・後半)

愛知県の三河湾に浮かぶ島の一つ、日間賀島を旅しました。周囲6.6kmの小さな島に、人口約2,000人が暮らしており、家はきゅっと密集しています。

小道が縦横無尽に通る集落のなかは、迷宮を彷徨うようで、歩くとすぐに方向感覚を無くしてしまいます。カラフルに外壁が塗られた家の前に、ネコがのんびりと居座っている姿に幾度となく遭遇して、まるでイタリアの港町を歩いているみたい。カメラを持って歩くと、ワクワクします。

そんな冒険心を掻き立てられる日間賀島は、「タコの島」として名を馳せており、美味しいタコが通年食べられる島です。島のあちこちに、タコをモチーフとしたオブジェなどもあって、「あ、タコだ!」と見つけるのも楽しい。

集落は西里と東里に分かれています。どちらも同じくらいの規模感で、歩くほど遠い異国の島にいる気がしてきます。

後半は、東里と、夜と早朝の日間賀島を探検しようと思います!

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【これまでのねこ島めぐり】

カラフルな街並みと豪華な海の幸!

日間賀島の西里からを東里まで歩いてきました。ゆっくりと歩いても、30分ほど。

東里は、西里と同じように一軒ごとに、家の外壁が違う色を纏っています。

前にイタリアのネコがたくさんいる島を旅したときも、家ごとの色が異なり、その理由は「漁から戻った男たちが、沖からも自分たちの家がすぐ分かるように、女たちが家の壁に色を塗ったから」と聞きました。

日間賀島もまた、そんな理由があるのでしょうか。

島のおばさんの、腰にかけた蚊取り線香がいい感じ。

日本の原風景と思えるような、のどかなワンシーンです。

夏は島中にさまざまなお花が咲き乱れていて、家並みと一緒に撮ると、とてもフォトジェニック!

細い路地に入れば、やっぱり色彩に富んでいます。

もしかしたら、道が狭いぶん、光が届きにくい集落のなかを、少しでも明るくしようと色を塗り始めたのかもしれません。

オレンジ色に塗られた家の壁。

ペンキが垂れ落ちて、芸術的な仕上がりに? 写真を撮るとアーティステッィクに映る島のワンカットです。

もしかしたら、家族みんなで色を塗ったりしたのかな? 「そろそろ色を塗り替えようか。じゃあ、何色にする?」なんて会話もあったかもしれません。

外壁が黄色に塗られた商店のような家の前で、子供たちが水風船をタライにいれて水遊びしていました。

夏らしい島のひとこまを撮らせてもらいました!

タライの中の水風船は、日間賀島のカラフルな家並みのようです。

東日間賀島郵便局です。タイルが貼られて雰囲気があります。

日間賀島の消印は、タコ入りデザインのようです。旅先からハガキを出したくなります!

日間賀島一押しの観光スポット、安楽寺です。本堂横には、「たこ阿弥陀仏」と呼ばれる仏像が安置されています。

昔、地震があって海にお寺が沈んだとき、引き上げられた仏像に、一匹の大タコが仏像を守るように絡まりついていたことから、大漁・安全祈願として大切に祀られているという謂れがあるそうです。良縁祈願もあるとか。手を合わせてきました。
寺院の表門も風情があり素敵です。

東里をもっと歩きたかったのですが、夕方18時に民宿で夜ご飯なので、散策を断念して西里の民宿へと戻りました。

ウキウキの夜ご飯は、タイのお刺身とワタリガニ、車海老、もずくなどとっても豪華。

島旅の楽しみは、こういった海の幸が新鮮で安く食べられること!

名物タコもどんと登場!

ゆでタコさんです。ハサミで切りながら食べますが、さすがに全部食べきれないほどのボリュームでした!

夕食後、まだ日が落ちていなかったので、ふたたび西里を散策しました。

港まで来ると、ライトアップされて、いっそう華やいでいます。

日間賀島ポート、略して「ひまポ」という船の待合所です。中にはコインロッカーがあって、観光案内所も入っています。島のマップもここでも手に入ります。

日中、観光客で賑わっていた港は、夕暮れ時は人もまばらで静かでした。

日帰り観光客が最終便で島を去った後は、静かな島をゆっくりと味わうことができるので、一泊するといいな〜と常々思います。

宵闇に光輝く港は、やっぱりベネチアンポートのように素敵でした。

これまで訪れた島のなかでも、群を抜いて異国感のある写真が撮れた気がします。波に揺れる光が閃いて幻想的。

仔ネコとの出会い、島との出会い

翌朝はあいにくの雨。

道を少し覚えてくると、迷宮に思えた集落のなかもさくさくと歩けるようになります。

しっとりと雨に濡れた家も、小道も、燃えるような緑も、何かを語りかけるように穏やかで、雨の島旅もいいなあと思います。

あ、仔ネコがいました。

小さな体を草むらに忍ばせて、雨宿りでしょうか。

お母さんは、どこにいるのかな?

しばらくすると、仔ネコがとことこ歩きだして、よいしょっと家の窓辺に飛び乗りました。

お母さんネコがいました。

「ほらほら、早く雨宿りしなさい」と、優しく諌めているよう。

上手に窓辺に飛び乗った仔ネコを写真に撮っていると、お母さんに甘えて、おっぱいちょうだーいと抱きつきました。

雨の日の朝は人も少なくて、こうしたネコの穏やかな日常をゆっくりと撮ることができて、ほっこりとした気持ちになりました。

お母さんは雨宿りを続けるなか、仔ネコは元気いっぱいで、半径数mの世界を、駆け回っていました。

仔ネコにとっての大きな世界。やがて、島の果てのほうまで、冒険へと繰り出す日がくるのでしょう。

立派な大人の島ネコになってね。

午前中の船で日間賀島を出ることにしました。

やってきた高速船からは、ぞろぞろと大勢の観光客が降りてきます。

雨であろうと、今日も島は賑わい、活気あふれる1日が始まるようです。

カラフルな島で暮らすネコたちに出会う人もいれば、たくさんのタコたちに出会う人もいるはず。

やがて夜は、また静かなひとときが訪れて、島はやすらかな時間を迎えるのでしょう。

愛知県の三河湾に浮かぶ佐久島と日間賀島を訪れ、こんなにも近距離にして、これほど違うのだと感じられて、島旅の面白さを再発見した旅となりました!

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。