カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

カラフルな“タコの島”で、ネコと出会う旅(日間賀島・前半)

愛知県の三河湾に浮かぶ3つの島の一つ、佐久島を前回ご紹介しましたが、佐久島から距離にして目と鼻の先ほどに、日間賀島(ひまかじま)があります。

日間賀島は、知多半島先端の師崎(もろざき)港からわずか2kmほど先の沖に位置する、周囲6.6kmの小さな島です。

人口は約2,000人と、小さな島に対しては多く(かつては、日本あちこち、そういう島だらけだったようですが)、そのため集落の家々はみっちりと寄り添っていて、歩けば迷路のような路地が続き、独特の景観をしています。

佐久島とは、同じ三河湾に浮かぶすぐそばの島であるにもかかわらず、「こんなに違うんだ!」という発見がたくさん。だから、島旅は面白いなあと思います!

漫画『ねことじいちゃん』の作者は、日間賀島もまた作品の舞台の参考にしたと言われています。ということは、きっとネコたちもいるはず!

さあ、カメラを抱えて、いざ日間賀島へ!

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【これまでのねこ島めぐり】

ネコもいるけど「タコ」も?

佐久島とわずか2kmほどしか離れていない日間賀島へ行くには、2つの島が違う市であることから定期航路が結ばれておらず、一度本州に戻らなくてはいけません。

実は、こういう島間の事情は、他の島々でもよくありますので、事前の下調べが大事なところです!

長閑な知多半島をちんたらと電車とバスで行く時間を楽しみ、河和港へ到着。

河和駅から港まではシャトルバスが出ていますが、そのバスも満員状態でした。

佐久島もですが、「三河湾に島があるの知ってる?」と東京で友人に聞くと、ほとんどが「え、知らない!」と言います。それでも、この人気ぷりを見ると、地元からとっても親しまれていて、それだけで十分賑わっているのかなと感じました。

名鉄海上観光船「はやぶさ」に乗って、日間賀島の東港までは20分で到着。お決まりの船の写真をパチリ。

島に行くことは、船に乗ること。舩旅の楽しさも島旅の魅力です。

日間賀島は、東里と西里のふたつの集落があり、どちらも同じほどの規模感だそうです。

予約していた民宿のお迎えがあって、西里へと移動して、荷物を置いてチェックイン。

すぐに西里を散策することにしました。

民宿は集落の上側のほうにあるので、西港のほうへと降っていくことにしました。

さっそく第一島ネコさんに遭遇! 茶トラネコさんです。

警戒心があるように思えて、人に慣れていました。ネコさんが、じっと相手を見定めている表情が好きです。

「だれにゃ〜?」と思っているうちに、パチリ。

西里のみっちりと家が立ち並ぶ集落の中で、オアシスのような長心寺をお参りしました。境内には阿弥陀堂と弁天堂があって、安産の神様を祀っています。

お寺にインスタ用のパネルがあって、観光地的な魅力を感じました。

境内で見つけた、猫を肩に乗せ、犬のお散歩をするお地蔵さまがとっても可愛くて、テンションが上がりました。

境内には、他にもいくつかお地蔵様があり、自分好みのお地蔵様に出会えるかもしれません。

長心寺を出てすぐ、商店があって、軒先にタコが日干しされていました。

日間賀島は、年間を通してタコが獲れるため、島としては1980年から「タコの島」というブランディングを始めたそうです。

冬場はフグも獲れて、「フグの島」という異名も持っています。とにかく、季節折々の旬のお魚料理が魅力の美味しい島なのです。

西里のメインストリートです。まっすぐ先は、海。

観光客がたくさんいます。港が賑わい、商店も宿も食堂もある島は、日本の島の中でもそう多くはないので(この規模感の島で)、日間賀島は、長い時間をかけてしっかりと観光地化させた島なのだなあと感じました。

これでも、人口減少して、空き家も増えていると島の人がおっしゃっていましたが。

西港の歓迎タコモニュメントと一緒に撮ってみました。

「タコの島」としてアピールするようになって、このモニュメントが作られたみたいですが、やっぱりこうしてタコさんがお出迎えしてくれると、「タコを食べなきゃ!」という気持ちになります。

サンセットビーチでは、タコつぼから顔を出しているタコのモザイク画がありました。

向こうに見える小さな小島は鼠島です。

「島にたくさんネコがいて、島のネズミがみ〜んな無人島に逃げたって言われているの」と島の方が教えてくれました。鼠島のさらに奥に横たわる島は、島ではなくて本州の知多半島です。

こうして、離島から本州を眺めるとき、幾度となく、「島だなあ」と思うことがあります。気がつかないけれど、日々私たちは日本のどこにいても、「島暮らし」をしているのですね。

ちなみに、5月から9月までは、ビーチでイルカと遊べるゾーンが設置されて、イルカに触ることができるそうです。「ドルフィン・アシステッド・セラピー」という心身のヒーリング療法を経験できるのだとか。

島にいるだけで、十分癒されますけどね!

まるで外国のよう! 密集するカラフルな建物

西港沿の風光を撮りました。カラフルな建物が並んでいて、和風ベネチアンポートのよう。

実際に目にするより、写真を撮って見返したときのほうが、「あ、この風景はどこどこに似ている!」と思うことがしばしばあります。

それにしても、佐久島とは港の雰囲気が全然ちがって、わずか2kmしか離れていないのに、面白いです。

西浜から北側に歩いて新井浜港を見学すると、ずらりと並ぶ漁船が圧巻の光景でした。船の影が、見えない海の世界の穴みたいに見えます。

漁船の数や状態だけみても、漁業で暮らしが成り立っている様子がうかがえます。

それからまた西里のほうをぷらぷら歩くと、西港の南のほうに、タコの駐在所がありました。

中にいるのは、タコ警官? と思いつつ、そういった人はおりませんでした(笑)

行政機関までもタコ化してしまうところに、「タコの島で売り出すぞ!」という気合いを感じます。

西里のメインストリートから枝分かれしている細い路地へと踏み出すと、あっという間に迷宮入り。どこだか方向感覚がわからなくなるほど、入り組んでいます。

集落はとてもカラフルで、ネコたちにもちらほらと出会いました。

イタリアの港町を歩いているような錯覚がします。カラフルな家・港町・ネコというイタリアの島でも感じた要素が、日間賀島にもあるからでしょう。

異国感のある写真がたくさん撮れました!

集落で、少し拓けた場所から家並みを一望すると、ネコが屋根伝いにお散歩できそうなほど密接しています。

青々と繁る緑に埋め尽くされそうな家は、一軒ずつ違って、コントラストのきいた光景が印象的です。

あ! ネコがいました。

屋根下の軒で、気持ち良さそうに眠っています。手前の紫陽花も綺麗です。

細い路地で、ふっと見るとネコがいました。ネコの影に見えたのは、苔みたいです。

苔むした集落のコンクリートが島の色彩を豊かにしているようです。こういうところに、島の情緒たるものが出来上がってくるように思います。

「こんにちは〜」とすれ違う、島の人とのひととき。

ネコにも人にも、細い小道では思いがけず遭遇するので、ワクワクとして楽しいです。

それにしても、どこを切り取っても、カラフルな家並み。

だいぶ集落の上のほうへ来ました。

民宿の階段を見上げると、ネコさんと目が合いました。

ネコたちは、縦横無人に張り巡らされた小径を知りつくしていて、それぞれのテリトリーがあるみたいです。

このネコさんは、民宿に帰っていくのかな?

眺めのいいところに出ました。

集落を一望すると、港沿には大きなホテルが建っているのが一目瞭然。活気ある観光地として勢いがあるけれど、優しさやぬくもりを感じます。

西里と東里の間は標高が高いのですが、日間賀島はもっとも高いところで標高30m。集落内は坂道が多いように感じられたけど、平らな島なのです。

高台から、無人島の築見島(つくみじま)と奥に篠島が見えます。篠島は、三河湾に浮かぶ3つの島の一つ。

東集落と西集落の間にあたる島の真ん中らへんには、小中学校や診療所があって、どちらの集落からも行きやすいようになっていました。

東集落の上側には、日間賀島資料館があります。

散策中に出会った島生まれのおじさんが、「良かったら行ってね」とオススメしてくれたので寄ってみました。無料です。

中には、タコ漁の歴史を紹介する展示や、サメ漁をしていた時代の道具などが展示されています。

「タコの島」の歴史を垣間見られて、島へまた一歩近づいたような気がしました。

いよいよ、東里のなかへ!

つづく

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。