カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

のどかな南の島で、美しい景観にとけこむネコを求めて(竹富島・前半)

沖縄県でもっとも南に位置する八重山諸島で、近年群を抜いて観光客で賑わう小さな島が竹富島。石垣島から6km南の沖に浮かぶ、周囲約9kmのサンゴが隆起してできた平らな島です。

サンゴの石垣や白砂の小道、木造の赤い瓦屋根が印象的な家並みは、琉球王朝時代の面影を残した歴史的な景観で、1987年に重要伝統的建造物群保存区に選定されました。

外国人にも人気で、日中はとにかく観光客でいっぱい!

また、竹富島はネコ好きの間では、「ネコのいる島」と認識されているほどネコが多く暮らしている島なのです。

今回、ゆっくり一泊することにして、日中と夜の竹富島の変化を楽しみつつ、ネコスポットをめぐる旅をしました!


【これまでのねこ島めぐり】

なんてフォトジェニックな島!

竹富島へは、石垣島の離島ターミナルから船に乗って約10分で到着します。30分おきに石垣島から船が出ているのも、観光客が多い理由の一つ。

ミントブルーに華やぐ海を走って、あっという間に竹富島へ到着しました。同時に、竹富島を出る観光客が、大行列をなして待機しているのを見てびっくり!

港から集落までは、歩くには少し距離があるので、コミュニティバスなどに乗ると便利です。私は、宿泊する「小浜荘」の迎えを待って、車で集落へ。

竹富島には集落が3つあります。港から道路をまっすぐに来て、最初に入るメインの集落が、東集落(アイノタ)です。そのほか西集落(インノタ)と仲筋集落(ナージ)。

特に集落の間が離れているわけではなくて、大きな集落が3地区にわかれているという感じです。

集落の入り口には、大きな木が植えられているそうです。
これは、「スンマシャー」という神様の木を意味します。集落の中へ外敵が入ってこないように、魔除けの役割があるそう。スンマシャーをみれば、「ああ、集落の入り口だな」ということがわかるのです。

西側の西集落にある宿、小浜荘でチェックインをすませて、さっそく散策!

ピンク、赤、黄色と、色とりどりの花々が咲き乱れる小道は、楽園を絵に描いたようなフォトジェニックな光景です。歩くと、ほのかに甘い香りもして、なんとも夢心地な気分になります。

ツノがにゅっと長く曲がった水牛が、人を乗せた車をよっこら、よっこらとひっぱって歩いていきます。白砂の道と、サンゴの石垣にとけ込む水牛車を撮ろうと、これまたたくさんの観光客がカメラを向けますが、平然としている水牛さんのたくましいこと!

ちょっと暑い日で、時折水をかけてもらいながら歩いていて、微笑ましかったです。

白砂の小道は、よく見るとサンゴが砕けた小さなカケラでできていて、じゃりじゃりと音がします。

青い空に広がる、南国の木々の燃えるような緑と、サンゴの砂の白さ。コントラストが効いて、視界がくっきりと華やかになるので、気持ちがいい!

そして、竹富郵便局のかわいいこと。

集落のなかの小道は、同じような石垣と白い砂地が続くので、方向音痴だとあっという間に迷います。

集落そのものはとても小さくて、迷いようがないのですが、「あれ〜さっきもここ歩いたような?」という既視感がとても強くて、宿でもらったマップを眺めても、いとも簡単に迷います。

なので、郵便局などわかりやすい建物を目印に……と、それでも迷うのですが(笑)。

いい意味で無駄足をたくさんかいて、写真もたくさん撮って、お腹が空いたので、「かにふ」でランチをとることにしました。

これまでの経験で、島のご飯といえばやはり「お魚!」と思っていたのですが、八重山諸島に来てからは、石垣牛や美崎牛などあって「お肉も食べられるのか!」と感動したのですが、「かにふ」ではお肉の定食があるのが嬉しい!

沖縄豚のポークジンジャーソテーにしました。

付け合わせに、島もずく、八重山そば、白米とボリューミィ。

お待ちかね、島ネコたちとの邂逅

お腹もいっぱいになったところで、集落を外れて海のほうへ向かいました。

その前に、自転車をレンタル!

24時間のレンタル料1,500円が、島に宿泊していると1,000円になるという大サービスを展開している友利観光で借りました。

ところが、乗ってみると、たいへん。

集落は舗装されていないところがほとんど。サンゴのカケラの小道は、タイヤが突っかかりなかなか思うように進まないのです。

やっとこ、集落をはずれて西桟橋へ。

美しいグラデーションの海に突き出るように伸びた桟橋は、1938年に造られて、1971年まで使われていたそうです。2005年に国の登録有形文化財に指定されて、今は絶賛観光スポット、写真スポットとなっています。

桟橋のまっすぐ先には、西表島がうっすらと見えます。

ややグレイッシュな空の色になっていたので、全体的に淡い感じの写真になりました。海の色は、天気によって、光の降り注ぎ具合によって刻々と変化するので、面白いです。

それから、自転車を飛ばして10分ほど、コンドイ浜へ来ました。遠浅のミルキーブルーの海が広がっています。

外国の女の子たちが歩いているので、遠目に写真を撮りましたが、被写体が変わるだけで異国に見紛う光景になるから不思議。

ところで、このコンドイ浜、ここが「ザ・ネコスポット」なのです。

コンドイ浜にある屋根付きの休憩場所が、ネコが集う場所です。

人を恐れず、むしろ観光客の間に溶け込み、「自分たちの場所だからね」と主張するかのように、自然体で寝ているのが微笑ましいです。

私が以前、冬に来たときは、竹富島も寒かったので、猫たちがどんどん膝に乗ってきてくれました。でも、今の季節はもう十分に気温が高いので、猫たちは居心地の良さそうな場所で、銘々くつろいでいました。

警戒心がなさすぎで、寝相のバリエーションがネコによって全く違うのですが、中には「伸びきってるね〜!」と声をかけたくなるネコもいました。

せっかくなので、後ろからと前からと写真をパチリ。まったく、起きる気配はなし!

ネコたちの写真を撮っているうちに、あれよあれよと、雲が真っ黒になりました。石垣島上空にあった雨雲が、一気に竹富島へやってきたかと思うと、轟々とものすごい勢いで風が吹きました。

眠っていたネコたちが、一斉に「なにごとにゃ?」ともぞもぞ起き始めて、様子を伺っていました。

そして数分後には雨が降り、30分ほどで雨は止みました。

南国特有の単発的なスコールですが、とても迫力ある自然現象に出会えました。写真に撮ると、暗澹たる空の色が、絵画的に映ります。

コンドイ浜には、ざっと見るところ10匹ほどのネコがいました。ネコのための小さな小屋と基金箱があって、ボランティアさんがお世話をしているようです。

コンドイ浜を出て、星の砂があるカイジ浜へ向かうことにしました。

前方を自転車で走る人がいて、木々のトンネル感がすごいので、後ろから写真をパチリ。なんだか、その先は別の国へワープしてしまいそうな、冒険感に駆られる道です。

さあ、私も行こう。

ところがカイジ浜へ来ると、しゅるると現実に引き戻されました(笑)。

観光客がバスでどどっと押し寄せて、「星砂」を探しています。

砂といっても、正確には海藻などに付着した有孔虫ホシズナの遺骸です。砂浜に打ち上げられ、星型か太陽型をしている小さなカケラが、星砂として有名なのです。

私も5つほど、星砂を見つけて、それなりにカイジ浜をエンジョイしたあと、自転車にまたがって、仲筋集落へと向かいました。

カイジ浜から仲筋集落のほうまでは、やや坂道を登るので、ゆっくり走って10分ほどです。

その途中で、ネコが道を横切りました。

昔、奄美大島で、「蛇が道を横切ると、そこは“神道”だから行ってはいけないよ」と言われたことがあるのですが、ネコの場合はどうなのでしょう!?

その先に何があるか、好奇心に駆られるままに、行ってみまます!

つづく

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。