カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

ケラマブルーの島で、ネコ・シカ・人に出会う旅(阿嘉島・後半)

沖縄県の慶良間(けらま)諸島で、可愛いネコとシカがいて、のんびりした島んちゅが暮らす、美しい海に囲まれた阿嘉島(あかじま)を旅しました。

那覇からフェリーに乗って、西へ約40km。透明度が非常に高く、ケラマブルーと言われる海には、日本でも有数の豊かなサンゴ礁が広がり、ダイバーたちの聖地の一つとなっています。

とはいえ、「何もしない」で過ごす旅人も多いのです。

私も、初めて来た島なのに、ネコが安穏とお昼寝をする集落をゆったり散策したり、天然記念物のケラマジカと遭遇したり、夜は宿の人たちや地元の人、旅人たちと“ゆんたく”をして呑み交わしたり。

まるで何年も島に通っているかのようにすっと溶け込め、ただここにいるだけで充実した気持ちになりました。

そうやって、滞在3日目もゆるやかに始まりました。


【これまでのねこ島めぐり】

阿嘉島と慶留間島をつなぐ橋へ

気分屋のお天気は、ご機嫌が悪かったのか、朝は土砂降り。フェリーも欠航してしまっていました。

午後からは曇天に変わり、次第にお天気が良くなってきましたが、とくに何かをすることもないので、のんびりと集落を散策しようとすると、宿のオーナーが一人旅の女性たち3人に声をかけてくれて、一緒に慶留間島(げるまじま)のほうへ車を走らせてくれました。

慶留間島は、阿嘉島と阿嘉大橋で繋がっています。阿嘉島へ船でやってくるときに真っ先に目に飛び込んでくる、シンプルで美しい橋。1998年に完成したものです。

車でも、自転車でも、走ると気持ちがいい阿嘉大橋。写真で撮っても開放感があって、気持ちのよさがわかります。

滞在中、一度橋の上からエイの魚影が見えました。ここからはよく、エイやウミガメも見えるそうです。透明度が高いので、よーく見えるのです。

慶留間の集落も1つだけで、人口は80人ほど。そのほかはクバの原生林に覆われています。

宿のオーナーが小さい頃は、橋もなかったので、「普通に泳いで遊びにいってたよ〜」と。

慶留間島と阿嘉島との交流は深く、神事においても、阿嘉島にいる神官のノロさんが慶留間にある御嶽へお祈りに行くそうです。

赤い屋根が海に映える

慶留間で感動したのは、座間味村立慶留間中学校。なんと海が見える校庭!

それも、天気がよければ毎日ケラマブルーの海が見えるなんて。隣の外地島へつながる慶留間橋からパチリと撮りました。赤色の屋根がアクセントに。

要塞のようにも見えて、異国感が出ています。

それから外地島へ。この島は空港があるだけ。阿嘉島から橋を2つ渡っても、車だと10分ほどでついてしまいます。

オレンジ屋根の空港はほんとうに小さくて、かわいらしい。現在飛行機の就航はしておらず、船舶が欠航しり、緊急用のヘリタクシーの発着に使用されているようです。

ケラマジカとネコのツーショット

阿嘉島の宿へと戻って、ネコがたくさんいる民宿のほうへ1人散策に出かけました。

また集落の小径でケラマジカに遭遇。どうやら、2頭連れ立って、前浜ビーチのほうへ行くようです。

ちょっと追いかけてみました。

私が追いかけるのを敏感に察知して、やや小走りで先をいくケラマジカたちに悪い気がして、ネコたちがたくさんいる民宿へ、顔を出しにいきました。

民宿のおじさんが、「そこにシカいるでしょ。葉っぱあげたら食べるよ」と言って、お庭から枝ごと切って葉っぱを持ってきました。

そして、当たり前のようにして、シカに葉っぱを食べさせるのです。いつもおじさんからご飯をもらっているのか、ネコたちと同じように、シカまで懐くとは……。

「すごいですねえ」なんて感心していると、民宿の庭にいたネコたちが、どやどやと外へ出てきました。

「いいにゃー。シカさん、いいにゃー。ぼくたちにもご飯はー?」と聞いているみたい。

他の島だったら絶対に撮ることのできない、ネコとシカのコラボショットを撮れて、大満足!

そして、「はい、じゃああげてみる?」とおじさんに葉っぱを手渡されて、私も挑戦!

シカさんは恐る恐る、いつもと違う人間からご飯をもらうことに抵抗があるのか、警戒心が強かったけど、食欲には負けたみたいです!

「わ、わ、すごい力!」

シカさんが葉っぱを食いちぎる力が思いの外強くて、びっくり。

気づけばシカの隊ができている!

葉っぱを食べるシカさん、なかなか可愛く撮れました。

するとおじさんも、「カメラ貸して!」とシカたちと一緒に私を撮ってくれました。

その間、ネコたちが、たくさん路上に出てきたので

「みんな、戻らないと、ここ車通るからね、ほら戻って」

そうネコに話しかけるおじさんに、ネコは、ネコらしく、まったく言うことを聞きません。なので、必殺技。

「みんなにも、ごはんだよ。ほら、ごはん」

そういうと、自由きままなネコたちが、一斉に民宿の庭へと戻っていきました。

まるで、魔法をかけたみたいに!

島の歴史と文化を伝える

おじさんにお礼を言って、それから港近くの「さんごゆんたく館ビジターセンター」を訪れました。2018年3月にオープンしたばかり。

ここは、阿嘉島の文化や歴史、さんごの生態や保全についての情報がパネルや映像などで紹介しています。島の年間行事の紹介も興味深く、慶留間島へとお祈りにいくノロさんお神事などもパネルで紹介がありました。

館内にはWi-Fiもあり、休憩スペースや、ワークショップ開催などもあって、観光客の利用に便利そうです。

なにより、すっかり宿のゆんたくを楽しんでいる私としては、「さんごゆんたく」という名称がとてもチャーミングで、いいなあと思うのです。

旅んちゅたちとの交流に花がさく

夕食の前に宿に戻っていたら、道すがら、ダイビングサービスのブループラネット・オーナー宅のももちゃんにバッタリ。

ふわふわの毛並み、まるい瞳が相変わらず、可愛い。

なんて思っていても、ももちゃんは「にゃに、だれ?」という感じなのは、眼差しでわかります……。

それでも、逃げずにモデルさんになってくれるので、パチリと撮らせてもらいました。

夜ご飯は豪勢なお料理で、毎回楽しみ! ほとんどが、島で採れた魚や野菜なのだそうです。魚の煮付けは、ハタがまるまる一匹。

ボリューミィだけど、ヘルシーで体にいいものばかりです。

そしてまた、「今日はどうでしたー?」とご飯を食べながら、旅んちゅたちと会話が始まります。

夕食の後は、ゆんたく。

宿の人も、島の人も、旅の人も一緒に。

そこでまた、島で起こった面白い話や、何十年も前の話など、驚いたり、笑ったり、大盛り上がり。

その頃、ネコたちは何をしているのかな。ケラマジカは前浜を歩いているのかな。

そんなことがチラッと頭をよぎり、この小さな島という舞台における、最高の登場人物(動物)たちとの出会いに、幸福感を覚えるのでした。

翌日、宿で出会った1人旅の女性たち、ブループラネットのオーナーに見送られて、島を後にしました。

別れの言葉は、「また、島で」。

両手を振りながら、なんだか夢からさめたくないような一抹の寂しさや名残惜しさを感じつつ、「まーた、通いたくなる島に出会っちゃった」と、嬉しさも込み上げてくるのでした。

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。