カメラ旅女の全国ネコ島めぐり

ケラマブルーの島で、ネコ・シカ・人に出会う旅(阿嘉島・前半)

沖縄本島の那覇から西へ約40km、東シナ海に浮かぶ慶良間諸島の1つに阿嘉島(あかじま)があります。“ケラマブルー”と称えられる青く透き通る海が美しく、慶良間諸島のなかでもこぢんまりとして、とにかくスローな時間が流れています。

周囲約12km、人口は260人弱で集落は1つだけ。

ダイビングをする人たちが多く来島しますが、島内には観光名所らしい何かがあるわけではなく、それでも「その何もないのがいい」と、年間通して何度もリピートする旅人が多いようです。

そして穏やかな島には、ネコたちも多く暮らしているようです。

今回初となる阿嘉島へ、カメラを抱えて、行ってきました!


【これまでのねこ島めぐり】

島好きの旅人と知り合う

那覇の泊港から、フェリーざまみ、または高速船のクイーンざまみに乗って、通常1時間〜1時間半で阿嘉島へ着きますが、私が行ったときはクイーンざまみがドッグ入りしていたため、高速船のマリンライナーとかしきで一度渡嘉敷島へ渡りました。

そして渡嘉敷島(とかしきじま)の阿波連港から村内航路船(村営船)に乗って、約30分ほどでようやく阿嘉島へ到着。

宿に到着した頃には太陽が沈み、すぐに夕食をいただいて、ひと休憩。

一人旅の女性Oさんと話していたら、そのまま“ゆんたく”が始まって、宿主やスタッフ、地元の方と泡盛で呑んだくれ。

「今どき、こんなふうに、ゆんたくする宿は減ってるみたい」とOさん。

カリー! と、沖縄の言葉で乾杯が何度もかわされて、

「何してるの?」「ネコならその辺たくさんいるよ」と、あっという間に溶け込んで、「はじめまして」よりも「ただいま〜」って言ってしまいそうになるのでした。

強烈な初夜はぐっすりと眠り、朝目覚めると、隣の慶留間島(げるまじま)へかかる阿嘉大橋の上から、ごきげんよう〜と太陽が顔をだしていました。

すぐにカメラを持って、テラスから1枚パチリ。島々が重なり合う光景、どことなく瀬戸内海や五島列島の島々を思い出しました。

朝食の時間にまたOさんと顔を合わせ、今日は何をするのか聞くと、「何もしません。それで、ここに5日ほど」と笑って答えるので、私もつられて笑ってしまった。

そうそう、単に島が好きな旅人は、何もしなくてもいいという方が多い気がします。

島の空気を吸いに来た、というだけで、立派な目的なのです。

島の雰囲気を伝えるネコたち

朝食後、宿で自転車を借りて、島の散策をスタート!

まずは、「ニシバマ」と呼ばれるビーチの海が一段と美しいというので、宿でもらった手作りマップを元に出発しました。

阿嘉島は、海から見て港の左側へ細長く前浜ビーチがあり、それに沿って集落があります。集落のどこからも、簡単に前浜へ出られる近さ。

宿は港と反対の端に近いところにありますが、港まで歩いても5分ほど。車1台がやっと通れるほどの、昔ながらの面影を残した集落では、徒歩か自転車がぴったり。

その間に、幾度となくネコに出会いました。ネコを通して、その町の雰囲気を感じることがよくありますが、阿嘉島はほんとうに、ネコもスローでピースフル。

時折自電車を降りて、ネコたちの写真を撮らせてもらいました。

宿の近くに、鳥居がありました。

昨夜のゆんたくの時にいた、ブループラネットというダイビングサービスのオーナーが、「阿嘉島は沖縄のなかでもとても神聖な島で、ユタの修行の場ともなっている」と教えてくれました。

宿のオーナーも、「島には男性が入れないところがたくさんある」と言っていました。

そういう場所は“御嶽”と呼ばれる神聖な場所です。

山側の見晴らしのよいところから阿嘉島の集落を撮りました。

背の高い建物もなく、優しい色合いの集落です。

前方には阿嘉大橋でつながった慶留間島が、その奥には外地島が見えます。慶留間島には人が暮らしていますが、外地島は空港があるだけ。

お天気がよくて喉が渇いたので、垣花商店へ寄りました。生活に最低限必要なものがぎゅっと詰まっている感じ。

なんだか、都会にはないようなノスタルジックな感じで、懐かしさがこみ上げる雰囲気。

大型スーパーよりも、ずっと絵になるなあと思いながら写真をパチリ。

ほんとうに美しい浜辺に感動

さて、ニシバマへ行く道はふた通りありますが、集落をぬけて山側の道から行ってみることにしました。

ぜーはーぜーはーと立ち漕ぎしながら10分ほどで、ようやくニシバマビーチへ到着。ところが「北浜」と書いてあるので、「あれ、西をすっ飛ばしてきちゃった!?」と思ったら、沖縄では「北浜」と書いてニシバマと読むらしいのです。

外国語みたいに、難しくて面白い!

なにより驚いたのは、海外でもあまり見たことがないほどの美しいビーチが広がっていたことです。海の色のグラデーション、白い砂浜、日光浴する外国人の3点揃いで、海外と見紛ってしまいそう。

同じような構図ばかり、何枚も写真を撮ってしまいました。

もうちょっと暖かくなったら、泳ぎたいなあ。

さらに驚いたのは、ニシバマビーチからすぐの道で、天然記念物のケラマジカとばったり遭遇。

実は集落でも一瞬見かけたのですが、阿嘉島には野生のケラマジカが暮らしています。慶良間諸島のなかでは、阿嘉島と、橋でつながった慶留間島と外地島にいるらしいです。ケラマジカも橋を歩いて移動しているのでしょうか? なんだか微笑ましいです。

茶トラ一家に出会う

集落へ来たときとは別の道で戻ると、阿嘉島の港のほうへと出ました。

それから阿嘉郵便局を発見。

島で唯一の金融機関です。木製の看板が雰囲気でています。

ふたたび集落を走ると、ひょっこりネコさんが見えたので、覗いてみると、ビッグ・ファミリーでした!

茶トラさんがいっぱい、ぎゅぎゅっと寄り添って寝ています。

外からネコを眺めていたら、おじさんに「入っていいよ」と言われて、中に入らせてもらいました。どうやら民宿のようです。

「10、いや20くらいいるかねえ」とおじさん。

ご飯をあげていたら、みんな集まってくるようになったみたいです。

庭はネコの世界で、みんな穏やかにお昼寝していました。

島によっては、ネコの柄の傾向があるみたいですが、阿嘉島は茶トラや三毛柄が多い印象です。写真を撮る時、華やかに映るのでフォトジェニック。

宝石のような美しさをたたえる海

民宿のおじさんのおかげでネコたちとのんびり過ごせた後、宿に自転車を置いて、歩いて天城展望台へ向かいました。

登り道も気持ちよくて、歩いて10分くらいで到着。

海の美しさを一言で表現するには難しいけれど、こういうときは写真のほうが数段表現力があります。

ブループラネットのオーナー曰く、ケラマブルーの青さは、透明度の高さがとても高いからだそうです。太陽の光がどこまでも海の中に浸透して、宝石のように美しいブルーの色を放つそう。

夜、ダイバーサービスのプループラネットで、ももちゃんという可愛らしいネコちゃんと会いました。

彼女は、子猫のときに沖縄本島でお客さんに保護されて、そのまま連れてこられて、そのまま一緒に暮らすことにしたそうです。ふわふわの毛並みが自慢のお嬢様です。

その後、宿で美味しい夕食をいただき、その後はまたゆんたくが始まりました。誰が誰であって、どこで何をしているかなんて関係なくて、みんながここに来たという「共通点」で心が通う時間。

ネコ、海、シカ、そしてたくさんの人に出会う、濃厚な滞在です。

「いちゃりば〜ちょーで〜」

沖縄の言葉で「一度会ったら兄弟」という意味の言葉を幾度となく聞いて、夜が更けていきました。

つづく

小林希

旅作家。元編集者。出版社を退社し、世界放浪の旅へ。帰国後、『恋する旅女、世界をゆくー29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家に転身。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。