山岸伸の「写真のキモチ」
第86回:北海道遺産ばんえい競馬 私の新たな1つのけじめ
写真集出版に向けて
2025年2月28日 08:14
山岸さんが北海道遺産 ばんえい競馬を撮影し続けて約18年。2025年上半期に新たな写真集出版を予定している。その1冊を仕上げるために向かった2月のばんえい十勝 帯広競馬場。果たしてどのような撮影になったのでしょうか。(聞き手・文:近井沙妃)
2月の帯広へ
約18年かけて撮影し続けたばんえい競馬。自分の中で1つのけじめをつけるため帯広に向かった。羽田から帯広行きの飛行機は1日6便ほど飛んでいて、今回はいつもよりロケの日数が少ないこともあり始発の便で帯広へ。
常にスマホのカメラで自分の同行を記録。高速道路を使い羽田に到着し、車を空港の駐車場に預ける。最近駐車場の予約が取りにくく、アシスタントは1ヵ月前からサイトをこまめにチェックしてようやく予約できている。
昔はJALをよく利用しており、世界中のロケ先で尾翼にある鶴のマークを目にした時に安心感があり非常に頼りになる存在だった。いつの間にかグローバルクラブ会員というステータスをいただき、利用頻度が少なくなった今でも会員ということでサービスを受けている。特に1番楽なのがチェックインと預け荷物。荷物をたくさん持つ人間として大きい利点だ。最近はANAに乗る機会も多く、同様にステータスをいただいて非常にスピーディーな荷物の出し入れが可能。これは結構カメラマンにとって大切なこと。
飛行機は必ず窓際の席を取り、モニターに映るナビゲーションを見ながら今どこにいるかなどを確認しながらずっと写真を撮っている。これも写真を撮る人間としてとても大切なことじゃないかな。
とかち帯広空港に近づいてきた。上空から見る日高山脈がとても綺麗。以前、熱気球に乗せていただき撮影を試みたが残念ながら風が強く思うように撮れなかったのでもう1度くらい撮ってみたいと思っている。
過去にもお話した通り、昔からロケではどこに行ってもいつも同じ道を通り同じものを買い同じものを食べるのが癖というか習性だ。そうすることによって余計な気を使うことがなく、撮影に行くことだけに集中できる。
着いたらまずは腹ごしらえ、飛行場から帯広市内へ直行しラーメン屋「大光」で昼食をいただく。ここの塩ラーメンは絶品。1度本当に美しく撮ってみたいと思うようなラーメン。
宿泊先もいつもと同じ駅前のホテルで無理を言ってベランダに出れる部屋。そこから毎日駅を見ながら寝起きしている。このホテルで有名なのはサウナとモール温泉。私は滅多に入らないがこの日は早かったので他に誰もいなく思い切り入らせてもらった。
夕方は市や関係者の方たちと食事をし、明日に備え早めに就寝。ここまでが山岸伸の帯広観光と帯広到着日の模様。
ばんえい競馬 撮影スタート
朝調教の撮影では冬は4時くらいに起きて5時半には競馬場、夏は3時くらいに起きて4時半には競馬場と日の出に合わせて行動している。まずは起きてベランダに立ちその日の寒さを肌で感じ、何を着てどう防寒するかを決める。
2月の日の出は6時半頃、どの季節でも日が上がる前から撮影を始める。極寒の中で撮りたいと思っていたが以外と寒くなく、下がっても-10℃くらいだった。
ロケの直前に購入したキヤノンEOS R6 Mark IIを撮影に持って行った。果たして寒さに耐えられるのかと多少心配していたが問題なくごく普通に撮影ができ、何よりも良かったのは軽さ。そしてボディを長く触っていてもあまり冷たさを感じないという点。ISO感度までオールオートで撮ってみたシーンもある。過去一度もそうしたことがなく、長くはその設定を続けなかったが集中できてそれなりに撮れることに驚いた。
さあ、日が出てきた。馬の吐く息と体から出る湯気を撮りたかったが不思議と湯気が少なく朝日が上がる位置も想像とはかなり違い戸惑った。
2~3年前から朝調教時もヘルメットを着用するようになった。
これは私の荷物を持ちながら近井が撮った1枚。なかなか牧歌的でとてもいい写真だと思う。
今回は装蹄所にも顔を出して撮影させていただいた。私が以前撮った装蹄所とは変わりどちらかと⾔えば⾞の修理⼯場を感じさせるくらい近代化していて、装蹄師も若くかっこいい方たちがされていた。時代だよね。
帯広に訪れると必ずFM-JAGAというコミュニティーFMに出演する。番組出演前に全国区になりつつある浦島先生、いつもアテンドしてくれている元帯広市役所の梅村さんと写真談義。
浦島先生は英語学校の経営者であり、なんとあの「ジュエリーアイス」の名付け親。続いて「ハルニレの木」とどんどん撮影スポットを見つけその場所を有名にされている。同じR6を使い、ピントは真ん中で余計なことは考えずにオートで撮っているらしい。先生は毎朝の撮影が習慣化するぐらい写真に情熱を持っている。今夏は若い頃にヨーロッパ留学されたときに訪れた場所をご夫婦で回ってくるということでその準備に精を出していた。梅村さんは本当に驚くほど写真が上手。この2人がいれば十勝を表現することが出来ると思うくらい。
いつも番組に呼んでくれるラジオパーソナリティの梶山さん。ちょっと太り気味で心配だったが、梶山さんの声はいつ聞いても癒されるね。
放送を終えてお昼は「そば小川」へ。帯広では車を一切運転しないのでちょっとだけお酒をいただく。いつも中々手に入らないお酒を飲ませていただき、これも勉強。ご主人と若旦那の写真を「瞬間の顔(現・KAO)」で撮影させていただいた縁もあり、とても親切にしていただいている。
そば小川の建物は文化財になってもおかしくないような趣がある元酒蔵。人気のごぼう天そばをいただき観光気分は終わり。競馬場へレースを撮りに行く。
お店を出ると駐車場に元副市長が私の大好きな「高橋まんじゅう」の温かいおやき(大判焼き)を差し入れに来てくれていた。嬉しいよね。一カメラマンごときにこんなによくしていただいて本当に感謝。
今回はここ数年で登場したまだ私が撮影したことのない若手騎手たちを撮影させてほしいと依頼した。それにあたり騎手の方はもちろんだが許可撮りや段取りなどを手伝ってくれている株式会社ティワイネットの皆さんには本当に感謝している。
レースの間で初々しい5名の騎手を撮影。過去に撮影させていただいた騎手の皆さんはシャイでなかなか会話する機会がなく、十数年通った今でもほとんど口を利いたことがない方もいる。その中で若手騎手の方たちは驚くほど明るく好青年だった。皆さんの今後にとても期待している。
レースの撮影では観客席から私たちが見えているので目立たないようなるべく謙虚に物陰でじっと始まるのを待つ。
撮影2日目 ロケ最終日
2日目の朝調教は1点気に入った写真が撮れたので大満足。
帰りの飛行機の時間が許すまでレースを撮影し競馬場を後にした。