山岸伸の「写真のキモチ」
第77回:ロケの一から十まで
草野綾と蒼山みこと テレコで撮影する沖縄ロケ
2024年8月31日 12:00
グラビアDVDの撮影で約1年半ぶりの沖縄へ。4泊5日、撮影に用意した時間は丸3日間。今回は同じ事務所に所属する草野綾さんと蒼山みことさんの2人をテレコで撮影する形となった。テレコとは撮影用語で「たがい違い」「交換する」という意味。ロケの準備からメイキング、そして滅多にしないテレコでの撮影で感じた良し悪しとは。(聞き手・文:近井沙妃)
機材とパッキング
今回の機材はスチールを撮影する私がキヤノン、近井はOM SYSTEM、動画を撮影するマッハ君はソニーをメインに。照明機材はNANLITEのスティック型LEDライト、ProfotoのA10。レフ板はラストライトの折り畳み式がコンパクトでお気に入り。白銀とトランスルータイプを愛用している。長年使用し段々と汚れてきてしまったが白傘は被写体に当たる直射日光を遮れる必須アイテムだ。
預ける機材キャリーにはバッテリー類を入れないよう注意し、ウェスや余った間仕切りなどで機材を保護。長物はタオルなどを緩衝材にしつつ三脚や傘類、LEDライトとスタンド、延長ケーブルなどが入っている。三脚は故障防止とサイズダウンのため雲台を外し別々にパッキング。
機材キャリーは21.4kg、これに長物と私の私物キャリーを預けて3つの総重量は42kg。オーバーチャージはギリギリ回避できた。
空旅と写真
飛行機は必ず窓際の席と決めている。飛行機の揺れが好きではないのと、窓から写真を撮るためだ。昔から世界中をこうして撮ることが絶対的なルーティン。
いつもよりたくさんの写真を撮ったのは出版社から送られてきたルーク・オザワさんの「空旅ごよみ365日」に触発されたから。「俺もしょっちゅう撮っているよ」ってね。私は今回6Aの席、座席前方の窓際はルークさんがいつも座っている席に近い。彼の本を見ながら他のお客さんの迷惑にならない程度に窓のブラインドを開け閉めし撮影した。
飛行場での離着陸や空の様子、とりあえずいつも撮れるものはいっぱい撮っている。だけど基本的にスマホで撮っているので半年に1度くらいのペースで必要ない写真は整理しているのが現状。
ロケ先での交流
沖縄に到着。沖縄に来るといつも会う琉球大学教授の瀬名波先生、そして写真家の湊和雄さん。おふたりとはスケジュールが合えばご飯を食べ一杯飲みに行くというのが定番になっている。今回は那覇に泊らなかったが到着後すぐに合流し、久々の再会を楽しく過ごした。
ちょうど湊さんが9月26日(木)からOM SYSTEM GALLERYで写真展を開催するということで、これから作品を自分でプリントするなど写真展の話で盛り上がった。パーティーのお誘いを受けたので予定をあけている。こうして地方に拠点を置いている写真家の方々とも交流でき、ロケはそういう場でもあるかなと思う。
最後はお得意のカラオケ大会。私は「ダイナミック琉球」という曲を練習のつもりで2度ほど歌った。なかなかいい歌で今一番のお気に入り。
ただ1つだけ、3人のスケジュールを合わせるとこの日しか会えなかったので無理をしたが、ロケ初日にはあまり飲むもんじゃないね(笑)。
瀬名波先生は翌日から東京ビッグサイトで仕事があるということで私と入れ替わるように東京へ。そしてこのコメント取りをしている今日、仕事を終え30分ほどスタジオに顔を出してくれた。東京と沖縄を行ったり来たりしてる先生は本当に忙しいと思うがあまり無茶をしないで欲しい。
ロケの始まり
初日に飲み過ぎたことを深く反省しつつロケの始まり。人数が多いのでレンタカーはアルファード、そしてアシスタントOBで沖縄在住の喜屋武君に手伝いをお願いすると「喜んで!」ということで自分の車で手伝いに来てくれた。
移動中、車でも常にカメラを手元に置いて気になったところがあれば写真を撮る。大切なシャッターチャンスを逃さないように訓練しているつもり。私だけでなく昔から先輩たちがよく言っていることで、車内にいるときに居眠りをしていたらダメだと。道や場所を覚えることを一生懸命しておくんだよ。これはモノに興味を示すという面でとても大切なことだと思っている。
スタジオに到着。同じ事務所に所属する草野綾ちゃんと蒼山みことちゃん。綾ちゃんとは何度も写真集やDVDを撮影しているのでアシスタント達も含め気心が知れた仲。みことちゃんと仕事をするのは今回が初めて。
撮影初日はこの連載でも何度か紹介しているコンテナを積み上げて作られたスタジオへ。ここが好きな理由は風が吹いても雨が降ってもいつでも撮れるところ。バリエーションもあり、撮影で困ることは絶対ない。初日に私は最低限仕事の半分はこなせるよう、絶対にカットを稼げるところへ行く。初めての場所ではなかなかカットが稼げない。
マッハ君が動画を撮ると同時に近井はそのメイキング、私は別場所で綾ちゃんを撮ったりテレコで撮影を進める。写真のあがりも良かったけど近井も撮っているから自分と違う写真ができているのは1つのメリット。便利な時代ですぐにパソコンで確認できてバリエーションが足りないと思えば補えるし、食事のときなどにみんなで写真を見て次はこうしてみようって改善に繋がる。
ロケ2日目
翌日は泊まることで撮影許可をいただいて素敵なヴィラで撮影することができた。
綾ちゃんは足場の狭い所でも頑張ってくれたり、同じ場所でも違う写真になるようにみことちゃんの時はホースで水をパラソルに当てたり彼女に持ってもらう絵作りをした。
マッハ君はプールの中やお風呂でも撮れるように防水機能があるEverioのビデオカメラでも撮っていた。これがあるとまたちょっと違う絵が撮れていいかな。マッハ君なりに頑張ってくれたと思う。
せっかくなのでマネージャーとタレント2人はヴィラに泊まるよう勧めた。彼女たちはXやTikTok、インスタグラムなどのSNSを使い毎日のように発信していて、そのために仕事の合間やプライベートの時間に一生懸命撮影している。そこに私たちがいると邪魔だろうから、夕方からはこのヴィラで自分の好きなことをやりなって。撮影が終わればDVDやデジタル写真集の発売に向けて宣伝もお願いするので空いた時間でSNS用の撮影を快くやってもらった。今回これが彼女たちにとっては1番良かったことかもしれない。
今回は女子が多かったこともあり食べ物に気を遣った。一緒にご飯を食べるということはロケで1番のコミュニケーションの場だと思っている。人の好き嫌いや食べ方を見ながら自分の中でその人を理解していく。今回は本当に皆でよく食べた気がする。
ロケ3日目
3日目はビーチに立ち寄り軽いオフショットを撮ってから以前利用したことがある古民家へ。
今回撮影の90%は意識的に70-200mmの1本で撮影した。撮ってみてわかったのは昔から山岸さんの写真はクセがなく女の子が綺麗に写っていていやらしさがないと言われた理由。メイキングを見てもらえれば分かるように被写体とはこのくらい離れて撮影することが多い。物理的にも内面的にもグッと迫っていないというか、息づかいや匂いを感じない距離で撮っているからそういう風になるのかなとつくづく思った。望遠系でグラビアを撮り続けてきたが、女性を綺麗に可愛く写すということに全集中できるレンズだね。
アシスタントOBの喜屋武君は東京で私の助手をしているときよりも丸くなり、よく働くようになっていた。今の本業はプログラマーだがきっと写真も撮りたいんじゃないかな。またこういう機会があれば手伝ってもらえるといいなと思う。
古民家では虫が出るので蚊取り線香をもりもりに用意して、最後は火事にならないよう消化しゴミ袋にまとめて持ち帰った。撮影は全行程終了、翌日午前中の便で東京へ。
テレコの良し悪し
滅多にしないテレコ撮影。良さと悪さがすごく出て、仮に撮りこぼしがあっても撮り手が変わりカバーできるところや、同じ場所で2階3階を使ったり右と左で分かれたり経費的には効率が良い。それと同時に同じ背景で撮っていないだろうか? 似たような写真になっていないだろうか? って心配になったりと難しさも感じた。
近井が撮った写真も入っているがあえて明記はしない。同じ場所で同じように撮影する環境にいるので2人の助手も同じような動きで写真を撮ってくれたら嬉しい。そういう環境と機会が用意されている助手は世の中になかなかいないと思う。そしてこうしているうちに腕を上げていくことは確かだ。
テレコでの撮影は被写体へのいい影響も感じた。今回初めて撮影したみことちゃん。DVDを出すのは5年振りだが、先輩の綾ちゃんが撮影されている姿を見て勉強になったと翌日から見違えるように良くなったんだ。やり直しが利かないロケでこの短期間の成長は大きい。互いに刺激を受けたりアイデアが生まれることもあっただろうし、2人とも終始いい雰囲気で一緒にロケができてよかった。DVDやデジタル写真集の発売を是非待っていて欲しい。
草野綾:X(@nikunikuhappy)/Instagram(@kusano_aya)
蒼山みこと:X(@mikoto_aoyama)/Instagram(@mikoto__aoyama0917)