山岸伸の「写真のキモチ」
第75回:「KAO ―日本の顔scene1072-1140―」
12日間の写真展、設営から撤収まで
2024年8月6日 12:00
昨年に続き、オカムラガーデンコートショールームにて開催された山岸伸写真展「KAO -日本の顔scene1072-1140―」では69名の錚々たる顔ぶれのポートレートが展示された。「靖國の櫻」「帝国ホテルの記憶」と共に発見や感謝に溢れた機会だったと振り返る山岸さん。今回は「KAO」にフォーカスを当てお話を聞きました。(聞き手・文:近井沙妃)
3つの写真展を終えて
今年前半は3つの写真展を開催した。まずは2月10日から約3カ月間、靖國神社内の遊就館で展示をした「靖國の櫻」。次にオカムラガーデンコートショールームにて会期を終えたばかりの「瞬間の顔」改め「KAO」の第2弾。そして帝国ホテルプラザ東京で階数や場所を変えながら1年間にわたり展示をした「帝国ホテルの記憶」が8月7日(水)で終了となった。
この3つの写真展は全て写真業界などのタイアップはなく、私にとって各企業や神社で新しい試みとして始めたことだ。今回は写真展「KAO -日本の顔scene1072-1140-」の設営から撤収までをご報告したいと思う。
会場づくりって、楽しい!
昨年と同様、額装と設営は株式会社フレームマンに依頼。ニューオータニガーデンコート3階にあるオカムラガーデンコートショールームは写真展会場ではなく、ホテルの一部なので壁に釘などで穴を開けたり床を傷つけてはならない。如何に69点の顔の写真を安全かつ均等に見やすく展示するか、何度も奈須田社長と相談しながら図面を引いていただき最終的に90度開きのパネルを組み合わせて十字やT字など数パターンの自立する壁を設置することに。
帝国ホテルプラザ東京での写真展もフレームマンさんと組んでいる。建物の建て替えが決定しているため設営方法の自由度は高いが、何よりもお客様の安全が第一だ。写真の大きさや重さも様々。長期間落下せずに耐えられるかどうかを考えながらの会場作りだった。2つの会場を作り来場者の反応を目の当たりにして、写真は会場によって見る人の心が違ってどのように見られるかを考えることが大切だと実感した。
「顔」の題字は以前「瞬間の顔」にご出演いただいた書家の石飛博光先生に書いていただいたもの。カッティングシートを用意してガラス面に貼り、会場の完成。素晴らしい空間に私の写真が映える。
写真展の幕開け
今回は久々にオープニングパーティーを催した。パーティーというよりも内覧という気持ちでご案内は出演者の皆さんを中心にごく内輪なもの。株式会社オカムラ 中村社長のご挨拶から始まり、アナウンサーの武田真一さんに乾杯の音頭をとっていただき、ファミリーソングシンガーの山野さと子さんは歌を、チェリストの新倉瞳さんにチェロの演奏をしていただいた。
イリュージョニストのプリンセス天功さんはわざわざマスクを作ってプレゼントしてくださって本当に嬉しかった。来場の様子が東スポさんの翌日の紙面とwebに掲載された。
ここではご参加いただいた方全員のお名前を載せてご紹介することはできないが、想像以上に出演者や関係者の皆さんが来てくださって参加者は当初予定していた100名を超え150名ほどに。おかげさまでとても楽しいひと時となった。
皆さんの発信力とサポート
今回もいくつかのカメラ誌で多くのページを組んでいただいたり、Webや新聞などでも写真展の案内をしたが、今の時代は来てくださる皆さんの力が1番じゃないかと思う。SNSで「山岸伸の写真展に行ってきた」「展示はどうだった」と発信や拡散をしてくれた効果を感じるシーンが多かった。
俳優の飯島直子ちゃんは私との記念写真やオカムラのショールームを1周しながら撮った写真をインスタグラムに投稿してくれていて、後日「飯島さんのSNSで写真展を知って見に来ました。」という方もいた。
ありがたいことに私の写真展は毎回多くのお花が入り、とても嬉しいと同時に手入れをする必要性が出てくる。正しい水やりや枯れていくものを間引いたりするのは大変な作業だが、今回は12日間ほぼ休むことなく知人の鈴木賀壽代さんが毎日会場に来てお花を綺麗に手入れしてくれた。大手会社の元OLさんで退職された今は恐らく悠々自適だと思うが、草月流の師範である彼女に毎日手入れをしてもらうというのはとても贅沢なこと。きっと贈ってくれた皆さんも喜んでくれていると思う。
新しい背景、新しい写真
多忙な合間をぬって会場で撮影した花。カメラと光があればどんなところでも写真は撮れる。綺麗に撮りたい、その花を残したいと思えば必ずお気に入りの写真が撮れるはず。多くは撮れなかったが我ながらいい写真が撮れたと思う。
実は昨年の写真展開催後、オカムラのショールームは改装され少し様変わりしている。新しくこの背景とドリンクを提供するカウンターができたことによってここで撮影できる写真も増えた。花も頂き物も社員さんたちのポートレートもここで撮影した。何を撮るにしても背景は大切。特別変わったライティングはしていないがこの背景で実にいいボケ味が出て楽しい写真が撮れている。
陶芸家の大塚茂吉先生はイタリアでの仕事を終え、写真展にお越しいただいただけでなく作品までプレゼントしてくださり感謝感激。早速作品を会場で写真を撮らせていただいた。
カメラマンとして写真でできる恩返し
この写真展をサポートしてくれている企業の株式会社オカムラ様。私はカメラマンなので写真を撮ることでしか恩返しができない。今年も社内で私に撮られたいという方を募って70名ほど社員の方を撮影させていただいた。ケンコー・トキナーさんにお願いしてGODOXストロボ(QT400III-M)とランタンソフトボックス(CS-65D)を使用。こんなときに1番便利なのはこういうアクセサリーだよね、天板で光が回って被写体の位置が多少変わってもそんなに大きく露出を変えなくて済む。
90分ノンストップのギャラリートーク
20日に行ったギャラリートークでは元アサヒカメラ編集長の佐々木広人さんをゲストに1時間を予定していたが、どうもお互い話すのが好きなようで30分のタイムオーバー(笑)。しかし皆さんは嫌な顔をせずに最後まで聞いてくださって本当に楽しいギャラリートークになった。
皆さまの来場に感謝
何度写真展を開催しても始まる前は見に来てもらえるか不安でならないが、終わってみると多くの方がお越しくださっている。パーティー同様すべての方を掲載することは難しいが少し振り返る。
私事だが毎回写真展の図録を作り、お会いできた出演者の皆さんからはサインをいただいている。これは私の一生の宝。今回は会場にたくさんの出演者の方々が来てくださりサインをしてくれた。全てを埋めることはなかなか難しいがまたお会いした時などにお願いをしてサインを増やしていきたいと思う。
可能性との出会い
「KAO」は現在活躍されている方々のポートレート。その写真を売ることはできないが、今回は会場の奥にショールーム内で撮影したオカムラのオフィス家具や素材のクローズアップのイメージ写真を4点ほど飾らせていただいた。さり気なく見ていただこうかなと思っていたが何名かの方に「すごく気になるいい写真」と評価を受けてホッとしている。この写真を欲しいと言ってくれた方がいただけでも私は今回すごく新しい何かを見つけたような気がする。
撤収、そして原状復帰
そして迎えた最終日、フレームマンさんに搬出と会場の原状復帰をしていただく。写真展が終わればすぐにオカムラさんのショールームはオフィス家具と事務機が並ぶショールーム兼商談スペースになる。元通りにすると言うのは一仕事。照明もこちらである程度戻した後にオカムラさんのスタッフがメジャーを持ち間隔も全て図りながら陳列していく。
撤収を終えた頃、帯広で知り合った猪又さんが自宅で咲いたカトレアを持って来てくれた。包装も全て彼の手作り。またいつか一緒にばんえい競馬を撮りに行きたい。
そしてエスカレーターを降りていると出演者である丹下さんが奥様と会場へ向かう途中でバッタリ。「17時までやっていると思っていました。」とお越しいただいたが残念ながら最終日は15時まで。またこちらからお伺いできればと思う。
写真を撮る人間として大切な機会
写真展に思うこと。たくさんの方に見ていただく、たくさんの方とお話しができる。そして今回はいいお話しを多くいただき写真展はただ見せるだけの自己満足ではないということを実感した。素晴らしい場と機会を作ってくださったオカムラさんに感謝。そして支えてくれた皆さんに感謝。写真を撮るということは常に感謝。それだけは決して忘れてはいけない。この「KAO」シリーズは来年も続く。皆さん、その時はまたお会いしましょう。