吉村永の「ホントに使える動画グッズを探せ!」

1品目:持ち運びやすい小型・大光量のLEDライト

Aputure Amaran 200d

一眼レフ、ミラーレスを問わず、最近のカメラにはもれなくと言っていいほど備わっているのが「動画撮影機能」。写真撮影については一家言あるけれども、動画についてはまだ未知の領域……、という読者も多いはず。

この連載では“スチルカメラ愛好家”に向けて、動画畑出身のカメラマン 吉村永がレンズ交換式デジタルカメラで動画を撮る際に便利なグッズを見つけて紹介していく。時にプロ向けの高価な機材から、馴染みのないメーカーの製品まで積極的に試して紹介できたらと思う。

記念すべき第一回で紹介するのは、AputureのLEDライト「Amaran 200d」だ。Aputure国内正規販売店のアガイ商事での販売価格は税込4万7,960円。

Aputure「Amaran 200d」

役立ち度:★★★★☆
コスパ:★★★★★
マニアック度:★★★

持ち運びに便利。小型・大光量のLEDライト

Aputureは中国の照明機器メーカー。映像業界ではLED照明の部門でかなり普及しており、有名ブランドのひとつと言って差し支えがないだろう。十数年前の映画、映像業界の照明機材はキノフロと呼ばれる映画用特殊蛍光灯や大光量のHMIが使われることが多く、これは安くて50万円から数百万円といったプライスであった。だがAputureのLED照明は数十万円と比較的手頃で扱いやすく、みるみるうちに評判となっていった。これら業務用機材をベースに、廉価版としたのが今回紹介する「amaran」シリーズとなる。

なんといってもこの機種の特徴は、そのコンパクトさである。写真の世界でいう、モノブロックストロボ的な大きさでありながら200W級の大光量を誇っている。このモノブロックストロボのような灯体部分は実測1,580gと軽量だが、灯体と別に820gほどのバラスト(電源安定回路部)を組み合わせて使うシステムとなっている。別体型ではあるが、このシステムをここでは一体型のものと併せて便宜的に「モノライト」と仮で呼ばせていただこう。

機能としては1~100%まで1%刻みで光量を変えられることや、特殊効果として光を一定間隔でストロボのように連続発光させたり、稲光のように明滅させたりできる。また、Bluetoothを内蔵しており、スマートフォンのアプリからライトのオン/オフや光量の調節、特殊効果明滅の設定などが可能。これは特に、複数台のライトを使いたい現場で役に立つ機能だと感じる。

灯体背面の表示パネル。光量が1%刻みで表示される。シンプルな操作部だが、ダイヤルを押すと1押しごとに20%光量が変わり、回すと1%きざみで変えられる

おすすめする理由は?

動画用LED照明というと、多くの人はパネルタイプやリングタイプのものを想像するだろう。けれどもこのモノライトをお勧めするには理由がある。

持ち運びやすさ

第一に持ち運びの便利さだ。パネルやリングタイプのライトは、サイズによっては個人が使うには持ち運びに不自由。それから通販などでよくみられる長辺が40cm未満くらいのモデルとなると、発光面の小ささゆえに人物撮影などにおいては光質がとても硬く、ギラギラとした印象になりがちだ。手のひらサイズの被写体を物撮りする際などには重宝するが、インタビュー撮影などには使いづらいと考えられる。

その点、モノライトの中でもとりわけコンパクトなこの製品は持ち運びがしやすいし、別売りのソフトボックスと組み合わせたり、白壁に光を反射させるバウンスを使えば柔らかな光が手軽に得られるというわけだ。

灯体上面。ハニカム状のパンチホールが並んで熱を排気する。この手の製品ではファンのたてる音が気になるモノだが、10畳間ほどのスペースでインタビュー撮影を行なっても気にならないぐらいに静音化されていた。

大光量

同じAmaranシリーズには、3,200~5,600Kまでの色温度可変に対応する姉妹機「Amaran 200x」も用意されている。だがあえて色温度固定のAmaran 200dをお勧めする理由は光量にある。

色温度可変のamaran 200xは、アクセサリー未装着の状態での照度は4,650~5,950Lux(1m。設定した色温度により変わる)。これに対して色温度固定のamaran 200dは8,200Luxという大光量なのだ。直射光では光の質が硬すぎて使いにくいモノライトは、ソフトボックスやバウンスなどを利用する機会が多いわけだが、それらはいずれも実質的な光量が大幅に落ちる。その落ちる分を見越して、できるだけ明るいものが使いやすいといえる。

また、バラストが灯体と別にある方式は使いづらいのでは? とも考えれらるかもしれないが、同クラスで電源一体型のモノタイプLEDライト「GODOX SL200 II」では全長が36.7cm・重量3,330gとほぼ倍のボリューム感となる。多くのバッグに収納が難しいサイズで、しかもライトスタンドにつけた時に重量物が高い場所に行くので安定性が悪く、スタンド自体もかなり頑丈な重量級を用意する必要が出てくる。小さめのスタンドでもamaran 200dの全長20.7cm・重量1,580gというコンパクトな灯体ならばマッチするし、バラスト部分をスタンドの下部にぶら下げればさらに安定した運用ができるのだ。

実際にスタンドに取り付けて使用しているところ。バラストは付属のワイヤーでスタンドに吊るして重し代わりに。白天井にバウンスして光を柔らかくしている。
スタンド取り付け雲台部分。ハンドルの角度が横方向に広がったつくりで、そのためにバッグへの収納性が低くなってしまっている。自由な向きにハンドルを向けづらいため、この部分がこの製品の一番の使いにくさと感じた。
付属の電源ケーブルは3ピンタイプ。

4万円台の投資で得られる高画質

スチル用のカメラを動画撮影に流用しても、現行製品であればどれも高画質といえる。それに追加して、4万円ほどの投資で画質も演出も大幅に変えられるコンパクトなLEDライトは必須アイテムと言えるのではないだろうか。

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吉村永

東京生まれ。高校生の頃から映像制作に目覚め、テレビ番組制作会社と雑誌編集を経て現在、動画と写真のフリーランスに。ミュージックビデオクリップの撮影から雑誌、新聞などの取材、芸能誌でのタレント、アーティストなどの撮影を中心とする人物写真メインのカメラマン。2017年~2020年カメラグランプリ外部選考委員。