赤城耕一の「アカギカメラ」

第35回:ズームコンパクトも捨てません。私事に仕事に「LUMIX LX100 II」

ダイヤル操作&黒塗りカバーの愉悦

パナソニックLUMIX LX100 II。小型軽量でまずまずの凝縮感。表面のペイント仕上げもツルンとしていてなかなか美しい。シャッタースピードダイヤルや絞り環は装飾という意味が強いのですが。ここぞという時には確実に役立ちます。フラッシュ内蔵を見送ったのもデザインの美を守るという意味で良い判断だと思います。

今年も残り一か月を切ってしまい、理由もなく焦っているアカギでございます。すでに師走に突入しているわけですし、周囲が慌ただしい感じがします。でも走るのはイヤ。疲れちゃうじゃない。

この時期になると、今年はあれもこれもそれもできなかったと反省ばかりしている筆者です。結論としては「来年こそは頑張る」ということで落ち着くんですけどね。だから反省なんかせずにさっさと始めたいと思います。はい20の扉の時間です。

今年も仕事にはまったく不要なフィルムカメラを導入して、日々のウサを晴らし、じゃない、心にぽっかりと空いた穴を埋めているんですが、あいかわらず周囲からはアカギは無駄遣いの王者みたいに見られている感じです。でも仕事としてのツール以外にも心を満たす目的のためにカメラは必要だと思うわけです。こういう気持ちがなくて、新型カメラのレビューなんかできませんよ。どうせ超高性能の新型カメラ買っても、撮るものは大して変わりゃしないんだから。

で、ここでですね唐突ですが、今年導入したけど、表ではなく、裏舞台で活躍したカメラを取り上げることにします。筆者はデジタルカメラはどんなものでも何らかの仕事に使うことで、なんとしてもギャラに替え、仮にそれが赤字だとしても溜飲を下げようという考え方です。それでも稀にプライベートな楽しみだけのために使いたいなと思わせるデジタルカメラが出てきます。それがパナソニックのLUMIX LX100 IIなのです。前機種のLX100からとにかく気になって気になって仕方がなかったカメラで、いつの間にかLX100 IIと進化していましたが、登場してからすでに3年を経ています。つまり3年ものあいだ、導入に迷っていたわけです。

最近では3年程度前のカメラならそうは古びていない印象を持っています。けれど、さほど売れていなくて在庫がたくさんあるから、後継機の新規開発とかが行われていないのかもしれないですねえ。それは言い過ぎかな。パナソニックさんすみません。

ちなみに今回の原稿執筆の資料としてカタログをもらうために、某量販店へ行ったのです。おそらくWebサイトの方がカタログより情報は豊富で詳しいと思いますけどね、でも行きたいじゃないですかリアル店舗。

で、LX100 IIのカタログは置いてありませんでした。デモ機も。顔見知りの店員さんに、カタログはあるかと訊いたら、それよりライカのD-LUX7はどうですかと勧められました。最近なんちゃらとかいう特別なモデルも出たそうです。ちょっとイラっとしました。なんのことかわからない人は探らない方がいいと思います。

電源オフ時の姿なんですが、ずいぶんとスマートな印象です。ムリとは分かっていても、なぜこのままの姿を保ち続けることができないのかと毎度思うのです。
別売の自動開閉レンズキャップ。利便性は間違いなく高いです。ただ、このキャップは防塵仕様ではないことと、フィルターの併用ができません。筆者は元からついていたリングを紛失しました。まるであのカメラのリングみたい。あ、今回はだらしない筆者の責任です。

LX100 II導入の一番の理由は、姿とカタチです。ひたすらこれです。マイクロフォーサーズのセンサーを搭載していますから、筆者がよく使うLUMIX G9 PROとか、OMデジタルソリューションズ(長い名前じゃのう)の各カメラと整合も良いのではと考えたわけです。プライベートの裏舞台で使うとか言ったくせに、あわよくばアサインメントにも使ってしまえという魂胆が少しだけ見え隠れします。セコいですね。

はっきり言っておけば、カメラデザインの良否は秒間120コマ撮影できるスペックよりも筆者にとって重要な選択要素です。さらに小型軽量が絶対的な正義だと信じている筆者ですから、選ばれるカメラの範囲はおのずと狭まってきます。“私事”カメラですから、ある意味では仕事カメラより選択が厳しくなります。だって、本来は要らないものじゃないですか。

とある街の盛り場を昼間歩いていたら奇妙な居酒屋の看板を見つけました。撮影距離を少し遠くに置いて絞り込むと、長焦点設定時にもパンフォーカス撮影ができますね。35mm判換算だけではなくて実焦点距離を意識して撮影するのはマイクロフォーサーズセンサー搭載カメラの使いこなしのコツだと思います。
LUMIX LX100 II(F8・1/3,200秒)ISO 400
露出を少し切り詰め気味にして、撮影してみました。ディテールの再現性もいいですし、ハイライトの描写もとてもいいです。歪曲も良い感じで補正されていますね。建築写真なんかでも使えますね。
LUMIX LX100 II(F5.6・1/1,250秒)ISO 400
斜光線で照らされたウィンドウ。太陽のリフレクションを思い切り画面内に入れてみましたが、ゴーストは小さいですね。これくらいだとアクセントにちょうどいいかなあと思うくらいですね。
LUMIX LX100 II(F7.1・1/2,000秒)ISO 400

ただ、LX100 IIのデザインについてひとつダメ出ししておくと、電源をオンにしてスタンバイ状態になった時の鏡胴の飛び出たフォルムがイヤ。収納状態との差が大きすぎる感じしませんか。その姿を正面から見ると今後の自分の人生を憂いたくなるほどです。レンズをナイナイしていた時はあんなに愛いやつだったというのに、レンズが飛び出ると緊張感が失われ、ヤボったくなる印象を受けます。リコーGRとかを見習って欲しいよなあ。もっとも、こちらはズームレンズだから諦めるしかないのか。単焦点レンズ搭載の兄弟機があったら楽しいような気がしますが……売れないですよね。

フォルム全体はコンパクト機の延長上にある感じですが、機能の凝縮感はそれなりにあります。これがベストじゃないと思いますけどね。そして、個人的に好きなのはボディ上面にシャッタースピードダイヤルがあることです。おー富士フイルムのXシリーズみたいじゃんかー。最近ではニコン Z fcか。そしてレンズ鏡胴に絞り環があります。露出補正ダイヤルも表に出ています。これだけでも高得点になり、グラっとなる単純な筆者です。

シャッターダイヤルや絞り環なんかめったに動かさないのにね。でも、これらがあるかないかだけでも、他のコンパクトカメラを使う感じと気分はかなり異なってきますね。デザイン重視派には重要です。

電源を入れ、カメラを手前からみた状態ですね。この方向からの姿も嫌いなんですが、我慢は必要ですね。絞り環、アスペクト比の切り替えレバーが見えます。
シャッターダイヤル周り。モードダイヤルと異なり、筆者を含むジジイ連中に安心感を与えるレイアウトであることは確かですね。露出補正ダイヤルも表に出してきたということは意味があると思います。

アルマイト仕上げのアルミ外装は前機種LX100から継承だそうですが、新たにトップカバーがツヤのあるブラックペイント仕上げになっていてなかなか美しいです。そして、ココが決断の決め手なんですが、倍率こそ小さいもののEVFを備えていることは自分的には点数が高いのです。もちろんEVFの性能を追求するつもりはまったくなくて、おおよそが見られればいいんですよ。厳しいこと言いません。ファインダー倍率は0.7倍ですから、まずまずというところでしょう。

ファインダーアイピース。0.7倍と視認性はまずまずかと。晴天屋外など、ファインダーがあるとないとでは大違いですよ。視度調整もあるし、ボディデザインに影響を与えることなく収めたことは評価します。

レンズ交換式のカメラの場合は特定のレンズに対して性能を徹底して追い込むというのは難しいと思いますが、本機のような一体型のカメラって、出来上がりの画像を展開するとレンズ性能はツッコミどころがない感じがします。カメラ内でも画像の補正をカマしているんじゃないかと想像はしますが、レンズ性能のポテンシャルをしっかり出しているという印象があります。

搭載レンズはライカDC バリオ・ズミルックス10.9-34mm(35mm判換算24-75mm相当)F1.7-2.8の3.1倍ズームです。正統派の標準ズーム画角なので、派手さはありません。筆者は鳥とか飛行機とか電車とかは撮りませんので、この焦点域で大丈夫です。街のスナップではレンズに合わせた雰囲気の被写体をこちらに呼び寄せてやろうという気持ちになるのがいいです。

レンズ構成は8群11枚で、2枚の両面非球面EDレンズを含む8面5枚の非球面レンズを使用しているということです。こだわってます。ライカブランドレンズですし、なぜかライカD-LUX7搭載のレンズとスペックが同じですね。きっと偶然の一致なんでしょう。

もう一つの良い点は、ズームなのにワイド端はF1.7、テレ端はF2.8という大口径の開放F値であることです。マイクロフォーサーズフォーマット用レンズならではの設計です。もちろん実焦点距離が短いので、開放絞りでも大きくボケるという印象は少ないのですが、確実に写真の変化はつけることができます。マクロ切り替え時のワイド端での最短撮影距離はレンズ前3cm、テレ端で30cmというのも実焦点距離が短いゆえの特性でしょうし嬉しいですね。

マクロモードに切り替えて紅葉に寄って撮影。どこにマクロ切り替えレバーがあったかなとふと考えてしまうわけです。少し経つと忘れてしまうわけです。見つけたからいいけど。
LUMIX LX100 II(F5.6・1/1,600秒)ISO 400
AF/MF/AFマクロ切り替えレバーは鏡胴側面にあって、使用頻度はそんなに多くないものだから、ここぞというときに探したりします。アスペクト比の切り替えレバーと配置を取り替えた方が良くないですか。なんか問題あるのかな。
筆者の好きな正方形画面でマクロ撮影しました。4:3、3:2、16:9であればアスペクト比を変えても画角が維持される「マルチアスペクト」がLXシリーズの伝統ですが、それは本機にも継承されています。
LUMIX LX100 II(F4・1/320秒)ISO 800

この数年、単独で依頼仕事をこなすケースが多くなりまして、マイクロフォーサーズ機のコンパクトさには助けられています。LX100 IIならマイクロフォーサーズフォーマットだから、本番撮影にマイクロフォーサーズ機を使えば、移動中や休憩の合間などに取り出して撮影しても整合性がよくて、雑観としてアザーカットを何かに使えるんじゃないかという下心も出てきます。これ、昔のグラフジャーナリズムの手法です。

とはいえ昨今は週刊誌のグラビアページでもフォトストーリー的な意識で構成しているページはほとんどないので、本番撮影の合間に余分に撮影しても役立たないですけどね。けれど移動中に軽い私的なスナップは撮れます。自分と共にあるカメラとして使うこともできます。そういう意味ではやはり私事カメラになるのです。

道にあったオブジェです。昔からリー・フリードランダーを目指していますが、なかなか芽が出ない筆者です。ワイド端に設定しました。少し絞るとパンフォーカスになりますがレンズ性能が良いためか合焦点の見極めはつきます。
LUMIX LX100 II(F8・1/3,200秒)ISO 400
ローカル線の駅ですね。車内から、しかも逆光という条件です。窓のガラス越しに撮影しているわけですが、ヌケもコントラストも悪くないですね。鉄分が希薄なので他の説明ができずです。
LUMIX LX100 II(F5.6・1/1,600秒)ISO 400
建物に当たる光が網目状になっていたのが面白くてシャッターを押しました。見た目の印象に近く再現されていて感激ではないですか。紅葉はちょいと中途半端でした。
LUMIX LX100 II(F5.6・1/1,250秒)ISO 200

プライベートで撮影するのはスナップショットが多いので、条件によってはMFに切り替えて撮影したいのですが、残念ながらLX100 IIにはレンズ鏡胴に距離指標がありません。MF撮影時にはEVFと背面のLCDに距離表示のバーが表示されます。また画面の一部を拡大してフォーカシングも可能ですから、置きピン撮影の場合でもさほど不便ではありません。

ただ距離表示バーは、最至近位置の「花」、無限遠の「山」のアイコン表示のみで途中に数値はありません。割り切っています。どこかに似たような表示のミラーレス機がありましたよねえ、困るなあ。ジジイはしつこいんで、MF操作性がこんな感じのカメラには毎回ネチネチと文句を言いたくなりますが、最近は目測距離設定で撮影する機会も少なくなりました。メーカーも言うんじゃないですかね、“無理しないで高性能のAFで撮影してね”って。

LX100 IIには「タッチAF」とか「タッチパッドAF」とか「アイセンサーAF」のように、ファインダーを覗いただけでAFが開始される機能もあります。顔認識も瞳認識もあり、きちんとそういう機能を使いこなしてから文句言えや、みたいな感じでしょうか。でも現場でいざという時になっても機能を設定できないわけ。記憶力が絶賛低下中のジジイですから、そういう機能があることを忘れているわけです。

そういえば最近登場してきた富士フイルムのXマウント交換レンズも、OMDSの新レンズも、MFクラッチ機構は省略されています。変なMFの使い方をしないで、高性能のAFを使ってくださいということなんだろうなー。MF派には苦難の時代が到来したわけです。LX100 IIの場合はワイド端の実焦点距離が10.9mmですから、被写界深度はとても深いです。少し絞れば”ボケ味って何さ?”みたいな写真になるわけですから、あまりうるさいことをいうのは野暮なんでしょう。

カメラを持っていると街にあるオブジェが気になり出します。ワイドだとなんだか決まりすぎていつもの写真になりそうなのでテレ側にして撮りました。フォーカシングは顔認識のカメラ任せで。
LUMIX LX100 II(F2.8・1/1,250秒)ISO 200
資材置き場。裏道を歩くとよくこんな光景に当たったりしませんか。モチーフにもよるけど、こうした被写体ではシャープな描写をするレンズが好まれると思います。
LUMIX LX100 II(F4.5・1/125秒)ISO 200

画質面ではどうですかねえ。有効画素数は1,700万ですね。私事カメラとしては十分です。しかもローパスフィルターレスで、画像処理エンジンは4CPUのヴィーナスエンジンです。これでふつーに綺麗に写りますね。手ブレ補正も備えられています。

お前さ、この間までリコーGR IIIxとか褒めてたじゃねえかよと言われてしまいそうですが、今でも褒めてますけど、何か?(笑)。GR系カメラはLX100 IIとはコンセプトが違います。GR系カメラはポケットにハダカで突っ込んでおき、何か発見したらカラダでさっと動いて撮影する身体型カメラですね。搭載レンズが単焦点ということもありますが。

LX100 IIは、電源入れてからグイーンとレンズが伸びて、シャッターを押すまで一拍間が入る感じ。私は表示画像を見てズーミングすることはほとんどありません。あらかじめ焦点距離を決めて撮影します。また「レンズ位置メモリー」をオンにしておいて、電源を入れたときに35mm相当の画角になるようにしておきます。大体はそれで撮影しちゃいますが、気に入らないときにそこから焦点距離を変えるわけです。GRよりも少しだけ考えて撮ります。もっとも悠長に時間をかけて撮影しているのが良いことではなく、早く撮れば必ずしもカッコいいかといえばそうでもなく、このあたりは気をつけねばなりません。

資金が潤沢にあるのなら、私事用のコンパクトカメラはライカD-LUX7にしたかったんですけどね。あるいは、ほんとに余裕あるならライカQ2にするとか。今はQ2モノクロームってのもありますね。ソニーのRX100シリーズとかRX1シリーズも気になるところではあります。趣味という部分を徹底追求してゆけば、富士フイルムのX100Vも視野に入ってきますが、これだと、撮影よりもカメラと戯れる方向が強く打ち出されてしまうことがあり、筆者には危険です。単焦点レンズ搭載かズームレンズ搭載かでも、少し考え方が変わります。それに、これ以上コンパクトカメラが増えると、うちにはフィルムコンパクトカメラもたくさんあるのでさすがに使いきれません。

筆者のカラダに合うという観点から見て今回はLUMIXのLX100 IIが良かったという意味です。ええ、まったく説得力はありませんね。いつも通りの結論になりました。

昼間のクリスマスツリーってのは間抜けな印象がしなくもないですねえ。使い回し感が露呈するからでしょうか。ツリーの色が濃くて明暗差が大きいのに良い感じの描写になったことは点数高いです。
LUMIX LX100 II(F7.1・1/2,000秒)ISO 400
皇帝ダリアと呼ばれるそうです。最近は街角でもよく見かけますね。意外と高いところに咲いているものですからGRのような単焦点のコンパクトでは撮るのを諦めたりしますが、LX100 IIはちょうどいい感じでした。ヌケもよく申し分ない高画質ぶり。
LUMIX LX100 II(F3.5・1/2,000秒)ISO 200
歩いていて工事現場を見つけると必ず覗くことにしています。本日はたくさんの樽を見ました。謎の光景になったので今回のお気に入りです。この距離でも木目の再現とかいいですね。
LUMIX LX100 II(F8・1/2,500秒)ISO 400
赤城耕一

写真家。東京生まれ。エディトリアル、広告撮影では人物撮影がメイン。プライベートでは東京の路地裏を探検撮影中。カメラ雑誌各誌にて、最新デジタルカメラから戦前のライカまでを論評。ハウツー記事も執筆。著書に「定番カメラの名品レンズ」(小学館)、「レンズ至上主義!」(平凡社)など。最新刊は「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)