赤城耕一の「アカギカメラ」

第107回:手放す前にもう一度——国内未発売のデジタル一眼レフ「E-400」

大掃除だ、断捨離だ、カメラの整理だ!の年末、ついに師走の時期がやってまいりました。2024年も残り少なくなってまいりました。読者のみなさまは師走をいかがお過ごしでございますか。

信じてもらえないかもしれませんが、筆者は今年はだいぶ身軽になりました。ええ、体重は変わらないままです。でも、カメラ周りがかなり少なくなりました。これだけでもフットワークが良くなった感じがするのは……はい、気のせいです。

好きなモノを処分するか否かというのは、場合によっては目をつぶって判断する必要があり、なかなか悩ましいものがありますが頑張ったのです。

ろくに使いもしないカメラが仕事部屋を占拠する状況が許せなくなったからということもありますし、このまま急死でもすれば、家族に大きな迷惑がかかります。今年は同年代の友人、知人を多数見送ることになってしまいました。筆者もいつのまにか、そんなことを考えるお年頃になったわけです。年の瀬に暗くなるのはまずいのでこれでやめときますが。

ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6
E-400にくっついてきたキットズームで、マウントはプラスチックです。粛清の「対象になるレンズですが、ものすごくよく写るし寄れます。ただ、マウント部を見るとプラスチックで、暴れたくなる仕様です。距離指標もありません。アダプターをつけて、OM-1などミラーレス機につけると動作がトロくヘンな動きも。ハイスピードイメージャ対応ではなくてもこれはいただけません。どなたですか? 機構設計された方は。
ものすごく安っぽい作りのレンズですが、マクロ並みに花の中に入り込みそうになるほど寄れるレンズなんです。見かけによらず性能が良いことも特徴。プラマウントのレンズは不愉快ですが、この性能なら諦めるしかないのか。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6/42mm(84mm相当)/絞り優先AE(1/800秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 200
斜光線で照らされると路傍の石でさえ撮らされることがよくあるのですが。コンクリートのディテールが見たかったのです。気になるものは考えもせずにシャッターを切ります。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6/25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/160秒、F10、−0.7EV)/ISO 200

ミラーレス機全盛のいま、売りそびれたデジタルカメラ、とくに一眼レフは、一部の特別な機種を除けばゴミ扱いの悲惨な運命が待っています。

昨今は古いコンパクトデジタルカメラが一部で人気のようですが、これも一過性のものではないかとみています。なにしろ壊れてしまえば、修理不能ですから不燃ゴミです。それとも分解してパーツを取り出すと、少しはレアアースが採取できるのでしょうか。

正直フィルムカメラのほうは、撮影はもとより、装置としても戯れることができます。だから整理するスピードが鈍くなります。これは仕方ありません。フィルムが存在するかぎりは過去と同様に今も同じ仕事をすることができるからです。

さて、年末の整理対象になったのはオリンパスのフォーサーズ、E-システムの中でもキワモノのオリンパスE-400であります。

お、聞いたことないカメラだ。E-410の間違いだろうと思ったあなた。そのとおりですが、そんなことを知っているあなたはずばり、ヲタクですね。

オリンパスE-400は輸出専用機で、日本国内では発売されることはありませんでした。だからちょっぴり珍しいカメラであります。登場は2006年ですね。当時としては世界最小のデジタル一眼レフという触れ込みでした。

珍しいとはいえ、純正バッテリーもすでに販売されておらず、使用頻度が極端に落ちたので、さようならすることに決めたのですが、手放す前に最後にもういちど撮影しておくかということで、今回持ち出してみることにしたわけです。あいかわらず潔くない筆者であります。

記憶を残すために筆者はカメラとの最後の別れの儀式として撮影をするのですが、使用してみると別れが惜しくなり、整理対象から外れたりするカメラも出てきます。なんの意味があるのかよくわかりません。

ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD
本来はポートレート撮影をしたかったのですが、今回は時間がなく。鏡筒の太さが茶筒みたいで良いですね。あらゆるケースで万能の性能を発揮。レンズがこれだけ高性能だと画素数とか、どうでもよくなる感じさえします。
FナンバーがF2という大口径のズームも個人的には好みです。焦点距離が短いので、35mm判換算だと2段ほどしか被写界深度は変わらないんですが、写りは見事ですね。重たいけど。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD/35mm(70mm相当)/絞り優先AE(1/4,000秒、F2.0、−0.7EV)/ISO 100
前ボケを多少意識して絞り開放で撮影してみました。雰囲気はありますが、筆者はガンガン絞って撮影するタイプなので少し無理やり感があります。でもものすごくよく写ります。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD/35mm(70mm相当)/絞り優先AE(1/4,000秒、F2.0、−0.3EV)/ISO 100
絞りは開いてよし、絞ってよしの名玉ですが、鏡筒が太く、E-400との組み合わせはバランス悪いです。仕方ないけど。グッと鏡筒を掴む感じでホールディングして撮影しております。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD/18mm(36mm相当)/絞り優先AE(1/2,500秒、F5.6、−0.3EV)/ISO 400

少しだけE-400登場までのオリンパスのフォーサーズ、E-システムの経緯を書いておきますが、オリンパスのデジタル一眼レフは2003年のE-1からはじまりました。いわゆる一ケタですから、最初っからフラッグシップの扱いです。

デザイン的には、デジタルになったからにはフィルムカメラのことは忘れるのだと言わんばかりとなりました。でもね初号機のE-1は好きなんですよ。全体のデザインから、これから未来に向けてヤルぜという気合いとか意欲を感じさせるものがありました。

2004年には3桁機の兄貴になるE-300、そしてE-330なんて機種も出てきます。これらはいきなり鬼瓦みたいなデザインになり、カッコ悪くなりました。全体の雰囲気に絶望した筆者であります。E-330はライブビューを可能としたことで話題にはなったものの、デザインをカメラの価値として最優先する筆者はどうしても受け入れることができませんでした。

筆者は、たいがいのオリンパスのカメラに手を出しておりますが、さすがにこれらはパスしたもんなあ。今になって少し気になるけど、中古市場でもあまり見ません。まあ、一時の気の迷いですね。

ブサイクなカメラを生み出した反省かどうかわかりませんが2006年に登場したE-400はかつてのOMの雰囲気を少しだけ感じさせる、よい意味で保守的なデザインの一眼レフとして登場してきました。

筆者はE-400発表時の写真をみてかなりグラっときましたもん。登場時は現行のOM-1とかOM-1 MarkIIよりもそれらしく見えたような気がします。

ポップアップな内蔵フラッシュです。ペンタプリズムの中に仕込んであります。筆者は一度も使用したことがありません。ストロボを屹立した姿がカッコ悪いからです。
メディアスロットはCFとxDピクチャーカードのダブルです。CFを探すのに苦労しました。買いたくないですからねえ。でもCFを使うカメラは手元には本機を入れて数台しかないぞ。

イメージセンサーは有効約1,000万画素のコダック製CCDで、これがオリンパスのフォーサーズのE-システム一眼レフとしては最後のCCD搭載カメラになりました。で、これも理由のひとつとして欲しくなったわけです。

2007年にはE-400のセンサーをLive MOSにしてライブビュー撮影を可能としたE-410が登場します。E-400とほぼ同型であります。こちらは国内で発売されます。続いて手ブレ補正内蔵のE-510が登場します。

それでもね、こうして後継機が出てある程度の時間を経ても、E-400はなんとしても入手せねばならんとずっと考えていました。

筆者はフォトキナ2008の取材に出かけた『アサヒカメラ』の記者にお願いして、ケルンのカメラ店でE-400の中古品を購入してもらうことにしました。

もちろん中古品は1個ものですから、あまり期待はしていなかったのですが、あっけなくE-400の入手に成功し、喜んだ筆者です。購入価格は忘れましたが、記者に立て替えてもらっても迷惑をかけない程度の値段であり、予想よりも廉価だった記憶があります。

ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8
フォーサーズマウントにもパンケーキの25mm F2.8がありました。薄いですね。ただ、タル型の歪曲が取りきれていない感じです。Photoshopで少し直してしまえば済むことですが。
ちょっと間を空けると、25mmの焦点距離のレンズが35mm判換算で50mm相当の画角になるということを忘れてスナップ撮影に持ち出してしまいました。堅苦しいフレーミングですが、パンフォーカスになりますねえ。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8/25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/4,000秒、F6.3、−1.3EV)/ISO 400
建物を見上げたら、ビルの窓に、隣のビルのリフレクションを見つけました。このレンズ、直線部をみるとわずかにタル型の歪曲があることがわかりますね。補正しないでそのまま出します。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8/25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/640秒、F8.0、−1.0EV)/ISO 400
路地裏。なんでもない光景なんだけど、光が綺麗だと脊髄反射でシャッター押したり。E-400は問題なくイメージを集めます。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8/25mm(50mm相当)/絞り優先AE(1/200秒、F9.0、−0.7EV)/ISO 400

入手したE-400は海外専用機だったので、メニューに日本語の表記はなかったのですが、オリンパスのサービスに持ち込んだら日本語が表示できるようにしてくれました。

もしかすると国内発売も見据えていたのかもしれませんが、おそらくE-410と同じものではないかと。今ではこんなことは不可能でしょうし、おおらかな時代だったのでしょうね。良い子は海外から購入したカメラについて、国内で無理なことを言ってサービスの人に迷惑をかけないようにお願いします。ええ、筆者は身勝手なだけです。

メニューのフォントも粗いですね。そして項目が少ない。階層は浅い。これは年寄りにもわかりやすい。大変結構です。筆者はエフェクトとか使わないのでね。

そういえば昨今は、古いイメージセンサーであるCCDを礼賛する傾向があります。CCDのセンサーはエモく写るからとか、こってりと色が乗り、味わいがあるということで人気らしいのです。

筆者がE-400の入手にこだわったのも、この当時からすでにCCD神話があったからだと思います。

すぐに新しいものには飛びつかないぞ、という保守的な思想も根底にあるわけですが、国内未発売の人が入手しづらいカメラを手にして悦に入り、酒宴で見せびらかし、自慢したり、本連載のようなメディアのネタにしようという考え方もあったのでしょう。いやらしい行為ですね。

ダイヤル周りは小さくでも操作性よくわかりやすいですね。もう少し色気というか、おもちゃとは一線を画するんだぜという雰囲気が感じられると良いですね。
フラッシュ用とセルフタイマーや連写設定ボタン。銀色のメッキみたいなのが安いよなあ。こういうところは正直、デザインの見識を疑ってしまうんですけども。
十字キーですね。押下感触は悪くないですが、今どきだと真剣に使うのかこれ。と思わされるんですが、タッチパネルじゃないからそりゃ必然的に使うことになります。

ただね、1つ言い訳をしておきますと、CCDのこだわりについても冷静になる必要はあります。これ、前にも書きましたが、異なるカメラメーカーの画像を担当するエンジニアふたりにCCDとCMOS違いによる画作りの特性を質問したことがあるのです。

CCDのほうが味わいがあるのではないでしょうかと話をしかけた途端に、エンジニアさんは「やれやれ、ったく、ド素人はこれだから困るぜ」という顔をされ、一笑にふされてしまいました。

CCDとCMOSの役割は基本的に同じ。それぞれ異なるのは各画素の情報を運ぶ方法の違いで、色再現には基本的に関係ないというのがエンジニアの共通した見解でした。画を作るのはあくまでも画像処理エンジンであるということ。

そうですね、ど素人が知ったかぶりをしても仕方ないのだけれど、少しだけ抵抗をすると、まったく違いがないということも断言できないわけで。

撮影現場での体験をいえば、CCDとCMOSって、ライブビューの可否や消費電力の違い、高感度のノイズの特性とか、ダイナミックレンジの違いとか、いわゆる半導体としての性能の違いはあるんだろうなあと感じることがあります。

でも、いまは画像処理を行えば、自由に色再現や画質を変えることはできます。

シグマ 30mm F1.4 EX DC HSM
フォーサーズマウントのサードパーティレンズはシグマの30mm F1.4だけしか所有していませんが、なかなかの性能です。これでもう少しだけ近寄れたら完璧です。やはりF1.4のFナンバーレンズは必要です。
レンズ性能が優秀なのか、画像の形成がいいのか、両方が協力しているのか。優れた画質です。ハマればハマる状況だったのかも。
オリンパス E-400/シグマ 30mm F1.4 EX DC HSM/30mm(60mm相当)/プログラムAE(1/800秒、F5.0、−0.7EV)/ISO 100
ボケ味をみるため至近距離で。それなりに大きくボケます。黄色は色づいた銀杏なんですよ。
オリンパス E-400/シグマ 30mm F1.4 EX DC HSM/30mm(60mm相当)/プログラムAE(1/4,000秒、F1.8、+0.3EV)/ISO 200
逆光条件です。拡大すると緻密さはやや不足しておりますが、これも実用上は問題ないなと。
オリンパス E-400/シグマ 30mm F1.4 EX DC HSM/30mm(60mm相当)/プログラムAE(1/1,000秒、F8.0、±0.0EV)/ISO 200

もちろん写真制作は妄想によって出来上がる部分もありますから、夢は壊してはいけないと考えています。最近はCCD礼賛論をふりかざす人を前にしても、静かにしている筆者です。でもね、エンジニアさんからは妄想はほどほどにしないと信用を落としますぜ、アカギさん。とまで言われましたもん。

と、いうことを書いてしまうと、E-400を残す意味合いがさらに薄れてゆくことになるのですが、私的にはE-400に限らず、このままデジタル一眼レフとすべてさようならしてもいいのかという気持ちがどこか根底にあったのでしょう。

フォーサーズマウントのレンズはアダプターを使用して、マイクロフォーサーズ機でもほぼストレスなく使用できますから筆者は満足なんですが、それでも、たまにはダイレクトな装着性、操作感を味わい、リアルな光を映すファインダーを見たくなるわけです。年寄りはなんとわがままなのでしょう。

久しぶりに外に持ち出したE-400なかなか可愛らしいヤツにみえました。仕事の合間に撮るために常に肩から下げていたのですが、知人の女子やモデルさんからカワイイとか言われまして、おじいさんは自分が言われたみたいに嬉しいわけです。バカですね。

ただ、フォーサーズ一眼レフはそのセンサーサイズにあわせて、シャッターもミラーもファインダーのサイズも合わせてありますから、光学ファインダーはどうしても小さくなります。ファインダー光学系をデカくすると、E-3とかE-5みたいになってしまいますもん。

E-400のファインダーなんて、やたら小さくて、周りは漆黒の黒で、井戸の底を覗くようです。また、空シャッターを切ると、小さなミラーがパタパタと動きます。これがおもちゃっぽいのです。もっとも、それはそれでカワイイという印象もあるから世の中はわからない。

E-400はシャッターの切れ味がいいんですよね。いや、“切れ込み” ですかねえ。シャキシャキとミラー動作するのが嬉しいわけで、これも一眼レフならではのものですし、フルサイズ一眼レフやフィルム一眼レフのデカいミラーを見慣れ、動作音を聞いてきた筆者としては嬉しいです。

画質はどうでしょうか。かつて言われた「オリンパス・ブルー」を感じさせる雰囲気の画像は多々作ることができます。

「オリンパスブルー」とはこれですかねえ。とてもクリアな描写です。けれど拡大すると、少しノイズが見えたりします。ま。軽くレタッチすれば済みな案件です。気にしなければ気にならないでしょう。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8/25mm(50mm相当)/プログラムAE(1/500秒、F9.0、−0.7EV)/ISO 400
これもまたまたオリンパスブルーですね。ネットを貼って柿を守ろうという知恵なんでしょうが、あまり役立たないみたいな。42mmですが、至近距離だとF8でもそこそこはボケますね。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6/42mm(84mm相当)/絞り優先AE(1/600秒、F8.0、−0.7EV)/ISO 200
これも深みのあるオリンパスブルーといえばそうなんですが、むしろコントラストの高さが引き立てましたね。
オリンパス E-400/シグマ 30mm F1.4 EX DC HSM/30mm(60mm相当)/プログラムAE(1/3,200秒、F4.0、−0.3EV)/ISO 400

筆者は青空の写真が好きですが、でもね、これが、この時代E-400の個性とか思われると困るなあと。いまは他のメーカーにおいても美しいブルーを再現するカメラはたくさんありますからねえ。ただ、青空って、ノイズ浮きやすいのか、ISO感度を少し上げたり画像を大きくすると、辛い感じはあります。画像を拡大するとすでにISO 400あたりでも怪しい再現性です。

1,000万画素では足りないという声もよく聞きますけど、筆者のプライベートな撮影では問題なく使えます。それよりもLCDの表示画像が粗いから、撮影後の画像をチェックすると合焦確認がしづらい。ピントが甘いのではないかと心配になるわけです。

AFは普通の一眼レフ同様に位相差ですから、ミラーレス機に慣れていると大口径レンズなどの使用時には精度的な不安が出てくるのですが、実焦点距離が短いので被写界深度が深く、マージンがとれて余裕がある感じがします。初期のレンズ以外はAF動作も良い感じです。

ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0
E-400のような一眼レフだとファインダーが明るく、よりありがたみが増しますね。でもE-400との組み合わせだとご覧の通りです。
大口径の中望遠ズームです。全域開放Fナンバー2は素晴らしいけど、35mm判の同画角のレンズとの被写界深度の差は絞りにして2段の差がありますからF4で撮影したと同じことになります。秀逸な性能ですが使いこなしは難しい。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0/100mm(200mm相当)/絞り優先AE(1/4,000秒、F2.0、−0.3EV)/ISO 100
至近距離開放。焦点距離は100mmです。さすがに大きくボケますね。光のニュアンスの捉え方に品格があります。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL ED 35-100mm F2.0/100mm(200mm相当)/絞り優先AE(1/1,000秒、F2.0、±0.0EV)/ISO 100

一眼レフですから、F値の暗いレンズを装着すればファインダーは暗く、明るいレンズを装着すれば明るくなります。こんな当たり前のこともお得感があるわけです。筆者など一生懸命頑張ってお金をためて購入した大口径レンズをミラーレス機に装着してもファインダーの明るさは変わらないのでがっかりすることがあります(笑)。

フォーサーズマウントにも個性的な大口径レンズがそれなりにあり、パナソニックにはかなり以前からライカブランドの交換レンズも用意されていました。これらももちろんE-400で使えます。

よい機会ですから、E-400に手持ちのレンズをいろいろと装着してみました。バランスが悪くてもそこはご愛嬌という感じで楽しめました。アサインメントでは使う気はしないけど。ただ、大きなレンズを装着すると、E-400は大木に止まったセミみたいみえます。

自分でもなんだかなあと思うのは、ミラーレス機で普通に行っている、ライブビューでの撮影がE-400ではできないことです。

ついついそのことを忘れてカメラを頭上に構えたり、腰だめの位置やローアングルから撮影しそうになって、そうだ、背面LCDには何も映らないんだということに気づくわけで、ちょっぴりがっかりします。

街と向き合ってみました。画素数の少なさとか気になりません。カメラのLCDの再現性の弱さが心配になりますが。
オリンパス E-400/シグマ 30mm F1.4 EX DC HSM/30mm(60mm相当)/プログラムAE(1/160秒、F11、±0.0EV)/ISO 100
夕暮れですが、あまりキレーじゃないですね。色を盛ってしまえばいいのですが、いちおうレビューのつつもりなのでそのままで。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro/50mm(100mm相当)/絞り優先AE(1/1,600秒、F2.0、−0.7EV)/ISO 400

E-400と同じカタチをしている後継のE-410ではライブビュー撮影はできるからなあ。もちろん、E-400においてもノーファインダー(最近はノールックって言うのか)撮影すれば済むことですが、ライブビュー撮影の便利さを知ると、少し躊躇してしまったり。

いや、人間の心理とはおかしいですね。フィルムカメラ時代はもとよりデジタル一眼レフしかない時代には普通にこのような撮影方法をとっていたはず。

ライブビュー撮影のときだって、筆者は神経質にフレーミングに気を配っているわけではありませんが、スルー画像が見られるかどうかって、ミラーレス時代にはそれなりに重要な要件だったわけですね。

でもミラーレス機を使用したからといって、名作が湯水のごとく、連続して生まれるというわけでもないことは知っています。

オリンパスE-400はデザインの個性、フォーサーズマウントのレンズのダイレクトな装着感、操作性のよさ。画像にしても、普通に鑑賞するなら十分なレベルででした。楽しく撮影できる。これだけで十分であります。結局E-400は、年末の整理対象カメラから外れることになり、これからもウチの子でいてもらうことにいたしました。今後ともよろしくね。

感度はISO 1000でシャドーのノイズはそれなりにありますが、実用上は問題のない画質です。手ブレ補正が内蔵されていれば、あまり感度を上げずに撮れるんですが。
オリンパス E-400/シグマ 30mm F1.4 EX DC HSM/30mm(60mm相当)/プログラムAE(1/160秒、F1.8、−0.7EV)/ISO 1000
長い間、建機の会社のPRの仕事をしていたので、黄色い車体を見るだけで反射的にシャッターを押したりすることがあります。綺麗な再現です。シャドーの描写も良いですね。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD/14mm(28mm相当)/プログラムAE(1/4,000秒、F2.0、−0.7EV)/ISO 100
誰かに見つめられているような気がしたら、ラーメン屋さんの看板犬でした。お爺さんは膝が痛いのでしゃがまずにろくにファインダーを見ないで撮影しています。怠惰さが画面から溢れています。
オリンパス E-400/ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8/25mm(50mm相当)/プログラムAE(1/125秒、F4.5、−1.0EV)/ISO 400
赤城耕一

1961年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。一般雑誌や広告、PR誌の撮影をするかたわら、ライターとしてデジカメ Watchをはじめとする各種カメラ雑誌へ、メカニズムの論評、写真評、書評を寄稿している。またワークショップ講師、芸術系大学、専門学校などの講師を務める。日本作例写真家協会(JSPA)会長。著書に「アカギカメラ—偏愛だって、いいじゃない。」(インプレス)「フィルムカメラ放蕩記」(ホビージャパン)「赤城写真機診療所 MarkII」(玄光社)など多数。