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スイマーの撮影に挑戦
写真1
僕が住んでいるレドンド・ビーチから、サンディエゴ・フリーウェイで南に80km下るとオレンジ・カウンティのミッション・ビエホという町がある。そこのスイミング・クラブで、水泳選手を撮影する事になった。
LAは気候がよく世界中から移住する人が年々増え、住宅も高騰しているので、オレンジ・カウンティーにLAから移動する人も多い。きれいなゴルフ場も多く、高級な住宅もどんどん開発されているが、これからもっと開発が進んでいくだろう。撮影が行なわれたスイミング・クラブの周りにも新しい住宅が立ち並び、環境は最高。とはいうものの、東京生まれで何時も忙しくしていないとダメな僕は、こんな環境の中にいてはボケてしまうかもしれない。
撮影を行なったプールは野外で、屋根はない(写真1)。太陽光のみでも撮影は可能だが、ドラマティクで力強い写真が撮りたかったので、大型ストロボをメインライトに使用し、太陽光は補助光にすることにした。
実は、スイマーを仕事で撮影するのは、初めての経験だ。僕自身、運動が大好きで、アスリートのビシッと決まった体にとても魅力を感じていた。ここはひとつかっこいい写真を撮ろうと朝から張り切っていた。
撮影するスイマーはバタフライが専門。このバタフライという泳ぎのいちばんかっこよく決まる瞬間は、潜った体が、水面に飛び上がる時だ。でもこの瞬間を捕らえるのは、結構難しかった。浮き上がる瞬間以外は、あまり絵にならず、泳ぐのも難しそうだが、もしかしたら、いちばん撮影が難しい種目かもしれない。
僕は、水泳に関する知識がほとんどなかったので、バタフライについてちょっと調べてみた。平泳ぎを速くしようとして改良した結果、生まれた泳ぎだそうだ。だから機械的というか、人工的な泳ぎなのだとひとり納得。ちなみに現在の男子の世界記録は、平泳ぎ100mが59秒30、バタフライ100mは50秒40とある。その差約9秒。1956年のメルボルンオリンピックから正式種目になったとある。
スイマーは背中が鍛えられているので、絶対後ろからの撮影がベストアングルと思い、僕はプールの飛び込み台に立ち、スイマーはちょうどぼくの真下にポジションをとった。そこからプールの壁を蹴り、泳ぎを始めてもらい、体が最初に浮き上がるのを撮影した。何度か練習して、大体どのあたりで体が浮き上がるかを確認した。そのあたりにピントを合わせておき(おきピン)撮影するつもりだった。
ところがなかなかそうはうまくいかない。毎回浮き上がるポイントがずれるため、キヤノン EOS 20DのAFモードからAI SERVOを選んで撮影した。説明書には、撮影距離が絶えず変わる被写体の撮影に適していると書いてあり、動態予測機能も利いて、今回の撮影にぴったりだ。僕はいつもマニュアル・フォーカスかONE SHOT AFだから、テストも兼ねて初めて使うAI SERVOはどのぐらい頼れるか試してみた。
泳ぎ始めるスイマーの頭にピントを合わせて、彼がプールの壁を蹴り、潜って行く姿を追う。体が潜って、水面に体が飛び出た瞬間を追って撮る。毎回いいタイミングで撮るのは難しく、シャッターを切るのが早すぎて弱々しくなったり(写真2)、遅すぎて泳いでいるのか飛び込んだのかわからなくなったり(写真3)、なかなか決まらない。いい瞬間で切れても水しぶきの出方が毎回違い(写真4、5、6)、何度も撮影。
写真2
写真3
写真4
写真5
写真6
ピントはスイマーの体が浮き出た瞬間、合う部分が毎回少しずつずれるので、ストロボをフルパワーにしてF13まで絞り、ズームレンズは40mmから50mmの間で、被写界深度を稼いだ。感度はISO100に設定し、シャッタースピードは1/200秒。追いかけながらのピントはまずまずの結果。ストロボはカメラマンから見て右プールサイドから1灯で、太陽は雲に隠れて室内プールで撮影した感じになった。
次は正面から。泳ぎ始めのポイントを決め、そこからカメラマン方向に泳ぎ始めてもらい、潜ってから浮き出た瞬間を撮影(写真7)。向かってくる被写体にもピントが来ている。撮影中、太陽が出ると、写真が明るくなった(写真8、9)。
写真7
写真8
写真9
写真10
カメラポジションをプールサイドに移動してスイマーを横から撮影。ストロボライトは、スイマーの後ろから背中に向けて発光(写真10)。バタフライとはよく言ったもので、本当に飛んで行くようで、僕の予想に反して、横からの写真が後方からよりかっこいい写真になったと思う。
最後に、飛び込んでもらった(写真11、12)。ピントは横から撮影しているので、飛び込む位置の予測がしやすく、はじめからおきピンで合わせておいた。ストロボはカメラ方向からで、説明的な普通の写真になり、一応押さえで撮った写真。この写真もやはり、スイマーが水に入る瞬間か、入った後かで、ずいぶん違った写真になる。
スポーティーな写真は、シャッターチャンスをどこに求めるかが決め手だろう。
写真11
写真12
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押本 龍一
(おしもとりゅういち)東京品川生まれ。英語習得目的のため2年間の予定で1982年に渡米する。1984年、ニューヨークで広告写真に出会い、予定変更。大手クライアントを持つコマ―シャルスタジオで働き始める。1988年にPhotographerで永住権取得。1991年よりフリー、1995年LAに移動。現在はLAを拠点にショービジネス関係の撮影が主。日本からの仕事も開拓中。
http://oshimoto.net
2006/01/12 01:21
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