タムロン“新SP”レンズの実力に迫る

写真家2人による実写レビュー、今度はポートレート編!

魚住誠一・上田晃司によるインプレッション

フルサイズセンサーを搭載したデジタルカメラの普及もあり、単焦点レンズの人気が復権した感のある昨今。そんな中、ズームレンズが得意なイメージのあるタムロンから、大口径単焦点レンズ「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」と「SP 45mm F/1.8 Di VC USD」が登場。発表以来、話題を振りまいている。

開発者へのインタビューを行った前々回、スナップ撮影でその実力を見た前回に続き、今回はポートレートでのインプレッションをお届けしよう。

魚住誠一さんが35mm F/1.8で女性モデルを、上田晃司さんが45mm F/1.8で男性モデルをそれぞれ撮影。どんな作品が飛び出すのか、楽しみに読み進めていただきたい。(編集部)

左からSP 35mm F/1.8 Di VC USD(Model F012)、SP 45mm F/1.8 Di VC USD(Model F013)。メーカー希望小売価格はどちらも税別9万円。発売日はキヤノン用とニコン用は9月29日。ソニー用は未定。(撮影:曽根原昇)

SP 35mm F/1.8 Di VC USD:モデルとの関係性が現れるレンズ(魚住誠一)

まず手にしたときに、金属の触感と「ガラスが詰まっている」という重さの感触が良い。ボディの質感も高く、独自のデザインや高級感にもこだわりを感じた。

今回は撮影のおよそ80%をAFで撮ってみたが、ストレス無くピントが合うのが気持ち良い。そして手ブレ補正機能のおかげで、ファインダー内の光景がピタリと止まるので構図が決めやすい。特にライブビュー撮影時には効果はテキメン。ピント合わせがやりやすかった。フォーカスリングの操作性も良く、AFだけではなく、MFでもしっかりと撮って欲しいという設計者の気持ちが伝わる。

モデルを日陰に入れて背景から光が廻り込む条件で撮影。意図的に逆光状態を作る訳だ。横位置でのバストアップだがピントが浅いのでMFで念入りに合わせた。
EOS-1D X/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/400秒/F1.8/0EV/ISO200
開放でのボケ味は重要なポイント。ワイド系の単焦点レンズはクセが無く自然に背景が馴染んで行くのが特徴だ。なだらかなボケ味でポートレートであまり絞らずに使いたくなる雰囲気だ。
EOS-1D X/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/500秒/F1.8/0EV/ISO200
35mmレンズならではのパースを利用しての全身カット。絞りは開放。立体的にモデルが浮かび上がるカットも明るいF値の単焦点レンズならでは。
EOS-1D X/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/400秒/F1.8/0EV/ISO200

寄れる35mmは撮り手を選ぶかもしれない。最短撮影距離20cmは何をどう使うのか? 絵が見えていないとレンズに撮らされるかもだ。

このレンズの特徴として、最短撮影距離が20cmと言うのがある。さすがに20cmまで近づくとポートレートに仕上がらないので、収まりの良いところまで。柔らかなボケ味はマクロレンズのそれに近い。
EOS-1D X/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/500秒/F1.8/0EV/ISO250
ライブビューにて撮影。睫毛の付け根にピント。シビアな世界。
EOS-1D X/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/400秒/F1.8/0EV/ISO400

そして肝心の画質だが、逆光に強く、安心して光の中で撮れる。

良く晴れた秋の午前中。逆光で髪の毛にハイライトが入る条件で撮影。F2.8ぐらいに絞ると両目にピントがくるので表情が生きてくる。
EOS-1D X/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/400秒/F2.8/0EV/ISO200

絞り開放でのボケ味はとても素直で上品だ。魚住はF2.5〜4あたりのエッジが立つぐらいがおいしいと感じた。四隅の流れも感じられないし、歪みも無い。全体的にナチュラルな描写に新しい個性を感じる。35mmの広角系を体感するにはベストな1本だろう。

正午に近い時間帯。太陽はトップに。適度なコントラストが欲しい時はF4ぐらいに絞るとカリッとエッジの立つ絵に仕上がる。
EOS-1D X/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/125秒/F4/0EV/ISO200
日陰のおいしい光線状態で背景がぬけている場所を探す。俯瞰で撮る。目線以外のカットも何点かで写真を組む時は重要。
EOS-1D X/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/125秒/F1.8/0EV/ISO200
女の子と旅で撮るのに1本だけレンズを選べ。と言われたらこの35mmをチョイスする。背景と関係性を撮るには35mmと言う画角がハマる。
EOS-1D X/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/320秒/F2.2/0EV/ISO250
本当にこの35mmレンズはカメラマンとモデルの関係性が現れるレンズだと思う。それだけに自分の個性が前面に出しやすい。
EOS-1D X/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/320秒/F1.8/0EV/ISO200

モデル:若月さら

SP 45mm F/1.8 Di VC USD:意識なく撮れる距離感と納得の高画質(上田晃司)

レンズの質量は520gと標準域のレンズとしては少しヘビーな印象だが、金属製の鏡筒や多くの枚数のレンズを採用しているので納得できる。ホールド時のバランスも良く、カメラのデザインとも合っている印象だ。

デザインに関しては今までのタムロンレンズと比べると大幅に変更され、とにかくシンプルになっている。距離指標の視認性が高く、フォーカスリングの大きさもちょうどいい。

2灯のストロボを使用して陰影をつけて撮影。絶妙な肌のトーンもしっかりと表現できている。逆光目にストロボを配置しているがコントラストは高く、フレアなども発生していない。
D750/SP 35mm F/1.8 Di VC USD/1/160秒/F6.3/0EV/ISO100
絞り開放付近のF2で撮影。屋内で背景は近いが適度にぼけている。
D750/SP 45mm F/1.8 Di VC USD/1/160秒/F2/0EV/ISO100

操作系に関してもポートレート撮影では欠かせない、フルタイムマニュアル機能に対応。MF時のトルク感が絶妙なピント位置の調整を可能にしてくれる。AFの変更やVCのON/OFFは一カ所にまとまっており、レンズをホールドしたまま変更できる点も魅力だ。AF動作は高速かつ静か。ストレスのないピント合わせが行えた。

筆者はポートレートで50mmや85mmを使用する。45mmは50mmより少し画角が広めになり、背景を少しだけ広く入れられるのが特徴だ。

最短撮影距離は29cm。一般的な標準域のレンズと比べて、明らかに被写体に寄れる。制約の少ない自由な距離感でアップから引きまでこなせるのでとても便利だ。

小道具で使用したサングラスにグッと寄って撮影。最大撮影倍率は1:3.4と小さな被写体でも大きく撮影できる。
D750/SP 45mm F/1.8 Di VC USD/1/160秒/F5/0EV/ISO100

描写力に関しては、絞り開放付近では比較的落ち着きのある柔らかい描写だ。肌のトーンも綺麗に再現できており、ぼけも素直でピント位置からアウトフォーカスにかけても美しい。ウエストアップくらいであれば、屋内でも大きなぼけを得られるだろう。絞り開放から2段ほど絞ると全体的に解像感がアップする印象だ。

逆光目にストロボを設置した場合でも、コントラストの低下やフレア、ゴーストも確認できない。大口径の上に手ブレ補正も利用できるなど、ポートレートで高画質を堪能できるレンズだと感じた。

大きな傘を使い、柔らかいライティングで撮影。F8まで絞ることで周辺まで光量が安定し解像感も高い印象だ。
D750/SP 45mm F/1.8 Di VC USD/1/160秒/F8/0EV/ISO100
スタジオの外で日中シンクロ。F6.3で撮影したがシャープネスも高く被写体のディテールまでしっかりと表現できている。
D750/SP 45mm F/1.8 Di VC USD/1/80秒/F6.3/0EV/ISO100

※画像にはニキビを消すなどの若干の修正を施しています。

協力:株式会社タムロン

魚住誠一

1963年、愛知県生まれ。高校時代はインディーズ・ロック・バンドで活動。その後、ロサンゼルスでアンセル・アダムスの写真に出合い、風景写真を撮り始める。渡米を繰り返し、スタジオ・アシスタントを経て1994年よりフリーとして活動。1998年より拠点を東京に移す。2002年、デジタルカメラ「キヤノンEOS 1Ds」導入。撮影の90%をデジタルで行うスタイルを提案。2005年、初の著書となる「おしゃれなポートレイトの撮り方」(マーブルトロン)を出版。2008年〜11年まで「月刊カメラマン」(モーターマガジン社)の表紙撮影を担当。2007年〜現在、渋谷ルデコギャラリーにて自身主催の合同写真展「ポートレート専科」を開催。その他現在まで数々の書籍や写真専門誌、ファッション誌、音楽誌などで活躍中。

上田晃司

1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/