基礎から学ぶ「デジタルバック入門」(その3)

〜Capture Oneを使いこなそう! RAW現像編
Reported by上田晃司

 その1とその2では、デジタルバックの圧倒的な高画質を体感していただけたはずだ。今回は撮影後の作業となるRAW現像、そこで使用する現像ソフトとして、「Capture One」をご紹介しよう。デジタルバックで撮影した画像はRAWのみの記録になる。そのため、デジタル一眼レフカメラのようにJPEGなどは生成されないため、JPEGやTIFF画像を生成するには、必ずRAW現像が必要になるのだ。

 PhaseOne社純正のRAW現像ソフト「Capture One」は、3種類のパッケージが用意されている。具体的には、PhaseOneとLeafのデジタルバックユーザーが無償で使用できる「Capture One DB」と、有償版だが機能制限がある「Capture One Express 6」、さらに高機能な「Capture One Pro 6」の3種類がある。

 有償版はデジタルバックだけではなく、ほとんどのレンズ交換式デジタルカメラのRAWファイルに対応している。今回は、最も高機能なCapture One Pro 6を使用して、その1およびその2で撮影したRAW画像を現像しつつ、機能の一部を紹介したい。


RAW現像だけでなく、画像補正にまつわる多彩な機能を搭載

 簡単にCapture One Pro 6の機能を基本的なワークフローに沿ってご紹介しよう。

 まず、撮影に使用したCFをカードリーダーに入れると、「イメージのインポート画面」が表示され、撮影した画像を読み込むことができる。もちろん、あらかじめ別の方法でHDDに保存した画像も直接読み込むことは可能だ。

CFをカードリーダーに入れると、自動的にインポート画面が表れる。この画面は、設定から表示させないようにすることができる

 画像編集は大きく分けて、「色に関する作業」「露出」「構成」「詳細」「レンズ補正ツール」「部分調整」「出力」に分かれている。

ツールバーはコンパクトにまとまっている

 そのうち色に関する作業では、「画像プロファイル」、「ホワイトバランス」、「カラーバランス」、「ブラック&ホワイト」、「カラーエディター」といった機能が利用できる。

 「カラーエディター」は、選択した色以外には影響を与えず、選択した部分だけの色調整を行なう機能。

 「スキントーン」は、その名の通り、人物の肌の調整を行なう機能だ。気になる範囲を選択し、「均一」の強弱を調整することで、かなりの改善が見られる。人物撮影をする方にはとても役立つ機能だろう。

スキントーンで肌の赤味を調整した。上の画像が調整後で下が調整前だ。明らかに赤味が引いているのがわかる

 そのうち「ブラック&ホワイト」は、モノクロ作品を本格的に仕上げることができる機能。感色性を調整するだけで写真のトーンを調整できる。

カラー画像をモノクロに変換してトーンを整えたあと、レベルとトーンカーブでコントラストを調整し濃いめのブラック&ホワイト画像に仕上げた

 また、「ウィンドウ」→「ワークスペース」→「ブラック&ホワイト」を選択すれば、モノクロ写真を生成するのに必要なすべてのツールが表示され使用できる。さらに「調整」→「スタイル」→「組み込みプリセット」→「BLACK&WHITE」を選択すれば多くのプリセットが用意されているのでそこから最適なプリセットを選択して微調整していくのもありだろう。

ワークスペースの「ブラック&ホワイト」を選択すると、モノクロ画像を生成するためのツールがまとまって表示される
ワークスペースを「ブラック&ホワイト」に切替えると、モノクロ作品用のツールがすべて表示される
組み込みプリセットから好みのトーンや色合いのプリセットを選択することができる

 「露出」では、露出やコントラスト、明るさ、彩度など、一般的なRAW現像で使用するパラメータを調整できる。

露出に関するインターフェイスは非常にシンプルで直感的に操作できる

 「レベル」では、インプットとアウトプットを調整する。必要に応じてRGBチャンネルごとの設定もできる。もちろん、トーンカーブの調整も可能だ。また、「透明」ツールでは、マイクロコントラストの調整が可能。画像をクッキリさせたり柔らかくしたりすることができる。弱くすればかすんだようなイメージに仕上げることも可能だ。

 さらに「ハイダイナミックレンジ」を使えば、簡易HDR写真に仕上げることもできる。シャドウとハイライトのスライダーを調整するだけでダイナミックレンジ広めの写真に仕上げられる。元画像のダイナミックレンジが広いためある程度無理が利くのもデジタルバックで撮影した写真ならではだろう。

ハイダイナミックレンジを調整して簡易HDR画像を生成した。パラメーターを見ながらスライダーを動かすだけの簡単操作だ

 「レンズ補正ツール」ではレンズのディストーションや色収差、パープルフリンジや周辺減光などの補正が可能となっている。PhaseOne 645DF用のレンズならレンズ名が表示されるが、その他のレンズでも使用可能。汎用レンズプロファイルを選べば補正が可能だ。ディストーションなどは、肉眼で見ながら補正するといいだろう。

レンズ補正では、Phase One純正とマミヤレンズのプロファイルは用意されている。その他の画像を見ながらディストーションなどの調整が可能だ

 「構成」ではクロップ、画像の回転、キーストーン補正、オーバーレイツールが使用可能。クロップは、画像のアスペクトや不要な部分を除去するツールで、回転は画像の水平を調整することができる。

 また、キーストーン補正では、パースペクティブディストーションにより、歪んだ建物などの水平や垂直の調整が可能。設定も簡単で被写体の垂直または水平になるポイントにマークすることで簡単に調整できる。最後に「適用」ボタンを押すことで真っ直ぐに補正することができるので便利だ。建物や風景撮影にはかなり役立つ機能と言えるだろう。

キーストーンでは、マークを水平や垂直に合わせて設定するだけで画像の補正が可能だ。
Before / Afterを比べてみると、歪みは全く目立たなくなっている

 「詳細」ではシャープネスやノイズ除去に加えダスト除去やスポット除去が使用できる。撮像素子に付いたゴミはダスト除去で簡単に消すことができ、他のシーンの写真にも適応できる。

シャープネスなどは画像を等倍にして微調整が可能となっている

 また「スポット除去」は、ほくろやニキビなどを除去するのに向いている。

センサーのゴミは、スポット除去のダストで簡単に除去できる。ゴミのある部分を選択するだけで瞬時に消える
ほくろなどは、スポット除去のスポットで除去できる。こちらも消したい部分を選択するだけの簡単操作だ

「モアレ」ではスーツやネクタイ、遠景の風景の細かい部分に発生してしまったモアレを除去することが可能だ。筆者も撮影時に諦めていたモアレもCapture One Pro 6で完全に消すことができたので、かなり信用して使える印象を受けた。

モアレ除去は、量とパターンを選択するだけでモアレを目立たなくしてくれるので便利だ

 部分調整ツールではレイヤーを作成し、イメージの特定の部分だけマスクを描写することで、マスクの部分だけ露出やカラー、シャープ、モアレ、透明度などの微調整ができる。風景で一部だけ露出を調整ししたい場合なども他のソフトを使うことなく、Capture One Pro 6だけで完結することができる。

部分レイヤーを使えば、修正したい部分をマスクで塗ることでピンポイントな補正が可能となっている。一部分を補正したい場合にはオススメの機能だ。ペンタブレットを使えばさらに使い易いはずだ
マスクした部分を暗くした。かなり使える機能なのでオススメだ。


最後に出力。パソコンからカメラの操作も

 画像のレタッチが終われば最後は、出力ということになる。TIFFやJPEGなど必要な画像フォーマットを選択し、解像度や圧縮率を設定し出力するだけだ。一度に複数枚選択して出力することも可能だ。

 もちろん、Capture One Proから直接プリントアウトしたりWebコンタクトシートやギャラリーを生成することも可能となっている。

画像を書き出す際には、JPEG、TIFF、DNG、JPEG QuickProofから選択できる。後は、圧縮率や解像度を選択するだけだ
Capture Oneから直接プリントアウトすることも可能

 スタジオでの利用が基本になるが、パソコンとの連結撮影もデジタルバックらしい使い方といえるだろう。室内での人物撮影や静物撮影なら、パソコンと直接繋いで撮影することで、すぐにパソコンのモニターで高解像度のプレビューを確認できる。デジタルバック側のコントロールはCapture One、つまりパソコンから行なえる。PhaseOneとLeafのデジタルバック以外にも、キヤノンやニコンのデジタル一眼レフカメラで利用可能だ。

連結撮影する際は、キャプチャーフォルダを設定し、ISOや形式、ホワイトバランスの設定をするだけの簡単操作だ。キャプチャーパイロットの設定もここで行なう

 さらに、連結撮影でパソコンに送った画像をiPhoneやiPadで共有する「キャプチャーパイロット」にも対応している。活用すれば、環境によっては撮影がさらに快適に行えるはずだ。

 その他にも、フォーカスの位置を表示してくれる「フォーカスマスク」や、「ハイライト警告」など様々な便利な機能を搭載しているのが今回ご紹介したCapture One Pro 6だ。各画像のレーティングなども行なえるので、画像管理ソフトとしても大活躍するだろう。

フォーカスマスクを使用すれば、ピントの合っている部分が緑色になり確認しやすい。

 以上、Capture Oneの代表的な機能を駆け足で紹介した。画像の管理からレタッチ、出力までカバーできるのがCapture Oneの魅力。デジタルバックだけでなく、一般に出回っているデジタル一眼レフカメラやノンレフレックスカメラ(ミラーレスカメラ)にも対応しているので、デジタルバックユーザーとデジタル一眼レフカメラを併用するユーザーはもちろん、デジタルバックユーザー以外にもお勧めしたい。

 また、Capture Oneは新機種の対応も早く、すでにD800やEOS 5D Mark IIIなどにも対応している。30日間のトライアルも用意されているので、まずは試していただければと思う。


現像サンプル

 最後に、Capture One 6で現像したJPEGファイルを掲載する。デジタルバックの画質を引き出すCapture Oneの実力を堪能していただきたい。

IQ140 / 110 mm LS F2.8 / 約23.3MB / 5,484×7,320 / 1/40秒 / F7.1 / ISO50IQ140 / 80mm LS F2.8 / 約16.8MB / 7,320×5,484 / 1/160秒 / F4.5 / ISO50
IQ140 / 55mm LS F2.8 / 約18.7MB / 7,320×5,484 / 1/400秒 / F8 / ISO50IQ140 / 80mm LS F2.8 / 約28.2MB / 7,320×5,484 / 1/5秒 / F11 / ISO50
IQ140 / 110 mm LS F2.8 / 約14.4MB / 5,484×7,320 / 1/400秒 / F8 / ISO100P65+ / C 60mm F3.5 T* / 約33.9MB / 8,984×6,732 / 1/125秒 / F8 / ISO50
P30+ / C 60mm F3.5 T / 約15.2MB / 6,347×4,760 / 1/250秒 / F8 / ISO100P30+ / C 80mm / 約10.0MB / 6,222×4,148 / 30秒 / F11 / ISO100





(うえだこうじ)1982年広島県呉市生まれ。米国サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強しながらテレビ番組、CM、ショートフィルムなどを制作。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントを経て、フリーランスのフォトグラファーとして活動開始。人物を中心に撮影し、ライフワークとして世界中の街や風景を撮影している。現在は、カメラ誌やWebに寄稿している。
ブログ:http://www.koji-ueda.com/

2012/5/28 00:00