「APS-C専用単焦点レンズ」のススメ(ニコン編)
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デジタル一眼レフカメラ最大の魅力は、撮影用途に合わせてレンズを交換できることだろう。ニコンからは多種多様なレンズが発売されており、APS-Cサイズの撮像素子を搭載した機種向けのデジタル専用設計(DXレンズ)も数多い。そのうち3月に発売された標準域の単焦点レンズ「AF-S DX NIKKOR 35mm F1.8 G」(以下35mm F1.8 G)は、リーズナブルな店頭価格とシャープな写りが評判で、DXレンズの中でも人気のある製品の一つだ。
APS-C専用設計のAF-S DX NIKKOR 35mm F1.8 G | D5000に装着したところ。もちろんAFが動作する |
人気の理由はほかにもある。ボディにレンズ駆動用のモーターを搭載しないD3000、D5000、D60、D40X、D40といったエントリーモデル機でもAFが使える点だ。というのも今までのフルサイズ用単焦点レンズを上記ボディに装着するとAFが使用できず、マニュアルフォーカスが必須となる。フォーカスエイドが使えるとはいえ、単焦点レンズを使うには少々敷居が高かったわけだ。しかし35mm F1.8 Gが出たことにより、ついに上記のエントリーボディで、単焦点レンズの楽しさを気軽に味わえるようになったのだ。
■軽量でコンパクト。一眼レフカメラを毎日持ち歩きたくなる
単焦点レンズの魅力といえば、まずは軽量でコンパクトな点だろう。35mm F1.8 Gの本体サイズは、約70mm×52.5mm(最大径×全長)、重さ200g。対して、エントリークラスのボディに付属する標準ズームレンズ「AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR」(以下18-55mm F3.5-5.6 G VR)は、約73mm×79.5mm、重さ265gとなっている。最大径はあまり変わらないが、全長と重さは35mm F1.8 Gの方がかなり軽量でコンパクトだ。
コンパクトなレンズはボディに付けた状態での持ち運びが楽なので、日常的に使用する気になる。近所に愛犬の散歩に行く時でもカメラ持っていく気になるのは、単焦点レンズらしい魅力。キットレンズセットに加えて、カメラバックの中に入れておいても、まず苦痛に感じないだろう。
左が35mm F1.8 G、右が18-55mm F3.5-5.6 G VRをそれぞれD3000に装着したところ。35mm F1.8 Gを付けたときの小ささが際立つ |
■大きなボケで一眼レフカメラらしい作品を
単焦点レンズの面白さといえば、ズームレンズでは得られない大口径ならではの大きなボケを得られる点だろう。前後を大きくボカすことができるので、被写体を際立たせることが可能だ。
例えば標準ズームレンズのAF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VRでは、焦点距離が35mmの時、開放F値がF5になってしまう。AF-S DX NIKKOR 35mm F1.8 Gの開放F1.8と比べると3段分も違う。もちろん絞り込むことも可能なので、被写界深度のコントロール幅が広く、使いこなすことで表現方法が多彩になるわけだ。ポートレート、ペット、テーブルフォトなどの撮影では、絞り開放気味でボケを活かして撮影すると、標準ズームレンズでの写真とは違った雰囲気になる。コンパクトデジタルカメラではまず撮れないボケ表現も可能のなので、まだ試したことのないユーザーは、ぜひ挑戦してほしい。
●同じ被写体を絞りを変えて撮影
※共通データ:D3000 / 約3.8〜4.5MB / 3,872×2,592 / -0.3EV / ISO100 / WB:晴天 / 35mm
・AF-S DX NIKKOR 35mm F1.8 G
F1.8 | F2 | F2.8 |
F4 | F5.6 | F8 |
F11 | F16 | F22 |
・AF-S DX NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6 G VR
F5(絞り開放) | F5.6 | F8 |
F11 | F16 | F22 |
F32 |
さらにF値が3段も違うということは、シャッター速度も3段分速く設定できるということになる。標準ズームレンズで撮影中、被写体の明るさがF5でシャッター速度1/15秒だった場合、AF-S DX NIKKOR 35mm F1.8 Gの開放F1.8なら、1/125秒にすることが可能だ。つまり手ブレの可能性がぐっと低くなる。合わせて手ブレ補正機構では補正できない被写体ブレも起きにくくなるので、室内や夜間のスナップでも手持ち撮影が楽しめる。動き回るペットや子どもの撮影なども楽になるので、この1本で撮影スタイルを大きく広げることが可能だ。
■“標準レンズ”ならではの画角を楽しみたい
35mm F1.8 Gの画角は、35mm判換算で焦点距離52.5mmに相当する。つまり35mm判でいうところの標準レンズ(焦点距離50mm)と同じような使い勝手が体験できるわけだ。50mmは人間の自然な視線に近いとされる画角で、さらに被写体との距離やアングルにより、広角的にも望遠的にも使用できる奥深さを兼ね備える。
単焦点レンズに慣れていないと、画角を変えられないことに不便に感じるかも知れないが、フットワークを活かし、自らが動いて写したい範囲を調整するのも楽しいもの。被写体が小さいと感じれば、被写体に近づいて撮影すれば良い。逆に被写体が大きいと感じるときは、被写体から少し離れて撮影するなどすれば、結構イメージ通りに撮影できる。もちろん、立ち位置が制限される撮影もあるだろうし、超望遠レンズでないと撮れない世界もある。自分の足で距離を調整できる撮影、例えばスナップ撮影やポートレート撮影などなら、本レンズの魅力を味わえるだろう。
最初にも述べたが、デジタル一眼レフカメラの魅力は、なんといってもレンズを交換して楽しむことだ。キットレンズだけでも綺麗な写真を撮ることは可能だが、単焦点レンズには、キットレンズとはひと味もふた味も違った写真を撮影できる力がある。今回使ったD3000との組み合わせは軽快で楽しかった。
しかもこのレンズは2万円台ととても廉価。キットレンズから少しステップアップしたいユーザーや、撮影や機材に飽きがきはじめたユーザーは、ぜひ単焦点レンズを手にとって撮影に出かけていだだきたい。
■AF-S DX NIKKOR 35mm F1.8 Gを使った作例
2009/9/16 12:00