【特別企画】お父さんのための三脚講座
結婚して子どもが産まれ、子どもが成長していくと、家族のいろいろなイベントや旅行、それに幼稚園や学校の行事など、撮影シーンが増えていきます。お父さんやお母さんたちは、写真やビデオの撮影に大活躍! 特に旅行や各種イベントでの撮影責任者は、どちらかというとお父さんが担当されているのではないでしょうか。
ちなみに我が家でも、写真の撮影はカメラマンでもある私の係で、ビデオカメラでの撮影は妻と担当を分けて撮影しています。
いずれにしても、どんなシーンでも子どもの成長記録や家族の記録などを思い出として高画質な写真や動画として残しておきたいものですね。そのためには、まずカメラを安定させて撮ることが大事になります。
そこで挑戦して欲しいのが、三脚です。
今のカメラやレンズの多くには手ブレ補正機能が付いているので、カメラを手持ちで撮影できるシーンもかなり増えました。しかし三脚を使った方がカメラが安定し、しかも撮影が気軽になるシーンがたくさんあります。また、三脚がないと撮影できないシーンもあります。
今回は三脚を活用したことがない方に向けて、三脚の活用術をご紹介したいと思います。
■最近は持ち運びに便利な三脚も
子どもの成長記録の撮影で三脚が活躍するシーンは、家族全員での記念写真、幼稚園や学校での運動会、室内で撮影することが多い発表会などでしょうか。さらに写真だけに限らず、動画撮影時でも活用できます。
でも、お出かけや旅行などでは、衣類やお弁当、その他手荷物も多いですし、赤ちゃん連れならミルクやおむつ用品など荷物が増えます。カメラと交換レンズに加えて、さらに三脚を持っていくことは無理と思っていませんか?
ところが最近は、脚を反対側に折り畳むことで、いままでの三脚よりも持ち歩き時の長さを大幅に短くした製品が増えてきています。今回使ってみたベルボン「ウルトレック45L」もそのひとつです。
三脚を縮めた状態 | 畳まれた脚を元の角度に戻して…… |
三本の脚を伸ばすと…… | これぐらいの高さになる |
これなら持ち歩き時は、少し大きめのバッグの片隅に入れることができます。ケースに入れてそのまま持ち運んだとしても、一般的な三脚よりも携帯性がよいため持ち歩いても苦になりません。
■三脚の選び方とセッティングの基本
三脚を選ぶ際の基本ですが、まず高さから。撮影者が立ってカメラを構えたときの目線と同じ高さに、カメラを設置できるだけの高さがあればOKです。
次に積載可能な重量をチェックしてください。三脚とその上についている雲台には、どれくらいの重さまで機材を載せられるかメーカーが公表しています。自分が使うカメラ+望遠ズームレンズの組み合わせなど、一番重くなる状態をカバーしているか確認しましょう。
推奨積載重量を越えると、三脚が支える強度に耐えられずバランスが崩れ安定感が無くなります。三脚に付けてもカメラブレを起こしたり、三脚が倒れやすくなり危険です。
以上を含め、三脚のスペックには、全高、最低高、縮長、EV(エレベーター)スライド量、質量、推奨積載、雲台の形状、パイプの種類など、細かく記載されているので、購入前にじっくり吟味して選ぶことができます。
私の身長は170cm。ウルトレック45Lにカメラを固定してエレベーターを上げると、カメラを構えたときのアイレベル(目線の高さ)と同じにすることができる |
基本的にはローアングル(ローポジション)時での撮影を除き、三脚は大は小を兼ねるので、カメラをしっかりと安定させた状態で撮影するには、大きくて足が太く重いガッチリとした三脚で撮影するのが好ましいのですが、使用する用途や撮影シーンなどに合わせて三脚を選ぶことも重要になります。
重量級の機材(右の例)を載せるなら、三脚も脚が太くて重い方が安心だ |
三脚のセッティングですが、まずカメラを手持ちで構え、撮影するアングル(ポジション)を決めます。そのカメラを構えたところに合わせて三脚を立てます。
まだ畳んである状態の三脚なら、手持ちでカメラを構えたときに決めたアングル(ポジション)にカメラが来るように、おおよその高さに三脚を伸ばしてからカメラを固定します。
その後、カメラの画面やファインダーを確認しながら、三脚の脚の長さを調整したり、エレベーターの高さを調整し、カメラで撮影するアングル(ポジション)を決めます。
ウルトレック45Lのセッティング。収納してある脚を180度回転させ、脚を伸ばせるように開き、ロータリーハブでロックする |
シューをカメラに取り付ける | 雲台にカメラを装着 |
簡単に三脚の高さの調整を説明すると以上になりますが、注意しなければいけない点がいくつかあります。
まず、三脚の立てるスペースをしっかり確保し、3本の脚をしっかり広げて使用します。
よく三脚の脚をすぼめて設置するスペースを狭くして使用している人を見かけますが、風などの影響やちょっとしたはずみで三脚が倒れてしまったり、バランスが悪くなってしまいカメラブレを起こしてしまう危険性が高くなるため、必ず脚はしっかり広げて使用するようにしましょう。
また、センターポール(エレベーター)は垂直になるように設置します。
設置位置が平面の場合、脚が同じ長さになっていなかったり、脚が同じ長さになっていても脚がしっかり開いていないと、センターポールは垂直になりません。
設置位置が凸凹しているときは、脚をしっかり開きそれぞれの脚の長さを微調整して、必ずセンターポールは垂直を保つようにセッティングします。
センターポールが傾いていると、これもやはりバランスが崩れ三脚が倒れる原因になってしまったり、カメラブレを引き起こす原因になるので、三脚のセッティング時に注意しましょう。
なるべくなら避けたい三脚のセッティング。脚をすぼめるとバランスが悪く、風やはずみなどで倒れる原因につながるだけではなくカメラブレも起こしやすい | これも×。センターポールが傾いていると、倒れる原因になったり、カメラブレも起こしやすい |
三脚を立てたら、三脚の脚を1本前に出し、2本の脚と脚の間に立つようにするのが基本です。
三脚の脚を自分の足の間に挟むように立つと、自分の足が三脚にぶつかり、せっかく決めたカメラの画面(フレーミング)がずれてしまったり、カメラブレを引き起こす原因になってしまいます。
撮影場所の条件にもよりますが、できるだけ脚の間に立つようにし、もしどうしても三脚の脚を挟むようにして立つときは、注意して撮影するようにしましょう。
三脚の脚を1本前にし、後ろの2本の間に立つのが基本姿勢だ |
柵越しで撮影するときのような撮影条件が例外なときは仕方がないものの、できるだけ三脚の脚を自分の足で挟まない姿勢で撮影しましょう。
三脚は脚やエレベータの長さを調整することで、自由に高さを変えることができるので、撮影シーンや三脚を設置する撮影条件などに応じて高さを調整します。
三脚は開脚するとスペースが必要です。また脚の長さを長くするほど開脚するスペースが広がるので、人通りの多い場所などでは三脚に人がぶつかりやすくなるため注意が必要です。
また三脚を高くすると前や左右だけではなく、後ろに人がいる場合も後ろの人が見えない状況をつくってしまうため前後左右に注意を払うようにしましょう。
特に気を付けたいのは、運動会や発表会など人が大勢いるような環境で、通路になっている場所をふさいだりしないようにすることや、後ろの人に迷惑にならないように三脚を周囲の邪魔にならないような場所に設置する気配りを心がけることが重要です。
例えば脚の伸ばさず広げるだけにすれば、地面に座って撮影するのにちょうどよい高さになります。この高さは、例えば運動会などで観客席の最前列で撮影するときに後ろの人に邪魔にならない高さとして活用できます。
椅子に座って撮影するときは、脚の長さをやや伸ばして調整します。この高さは運動会の観客席などで2列目くらいで、前の人の頭をよけ後ろで立つ人にも邪魔にならない高さになります。
脚を伸ばすと立った姿勢でカメラを構えたときと同じくらいの高さにできます。もちろん中腰くらいの中間の長さで脚を調整することも可能です。
脚が長くなるほど、三脚を設置するスペースが広くなります。運動会や発表会などで脚を大きく広げるときは、周囲に邪魔にならないように、人が居ないスペースや最後列で撮影するときに使用しましょう。
脚を最短で最も開脚させた状態。ローアングル(ローポジション)での撮影が可能だ | 列の最前列で撮影するときは、地面に座る姿勢で三脚をセッティングすると後で見る人にも邪魔にならない。また三脚のスペースも一番狭く設置することができる |
2列目3列目で撮影するときの例。椅子に座るポジションなら前の人の頭をかわし、後ろで立ってみている人にも邪魔にならない | 脚を伸ばした状態は三脚の設置スペースも広くなってしまう。人の少ない場所や最後列などに設置し、周囲の邪魔にならないように気を配ろう |
■実践編:記念写真で
家族そろっての記念写真を撮りたいアングルで構図をしっかり決めて撮影するには、三脚を使用して撮影しなければ思い通りに撮ることはできません。
家族の誰かが撮影するとその人が画面から欠けてしまい、全員そろわなくなってしまいます。
また近くに誰かがいる場合はその人にカメラを託して撮影してもらうことになりますが、ピントが合っていなかったり、構図がいまいちだったりとイメージ通りに撮ってくれるとは限りません。
旅行先だけではなく、毎年家族で撮影する家族全員そろっての記念写真や記録写真は三脚を使用すると、思い通りのアングルで構図をまとめることができるので、こういうときこそ三脚を活用しましょう。
三脚を使用して家族写真を撮る方法は、一般的なカメラの場合セルフタイマーに設定して撮る方法や別売のリモコンを用意すると簡単に撮影することができます。
記念撮影のときのセルフタイマーは、10秒くらいに設定するのが一般的だ |
ほとんどのカメラでリモコンが別売されています。リモコンを使用するとセルフタイマーでいちいちカメラのシャッターボタンを押しに行かなくてもポーズを決めたその場でシャッターを切ることが可能なので記念写真も楽に撮影できます。
今回使用したソニーNEX-5には「スマイルシャッター機能」が搭載されているので、「スマイルシャッター」を「ON」にすると、画面の中の被写体が笑顔になると、それを検知して自動的にシャッターを切ってくれます。
背面モニターの角度を動かせるカメラのうち、自分撮りができるカメラなら、画面を見ながら人物のポジションを微調整できます。
このとき、写す瞬間は画面ではなく、必ずカメラのレンズを見るようにします。
写真のパナソニックLUMIX DMC-GH2のように、フリーアングル式で自分撮りが可能なカメラなら、画面を見ながら撮影できる |
記念写真の構図を決めるポイントは、まず背景にしたい風景を決め、ズームの広角側で人物からあまり離れないような距離で三脚を設置します。
撮影する人物の人数や背景に入れる風景によって変わってきますが、広角で人物から離れすぎてしまうと人物が小さく写ってしまいます。画面をよく見ながら距離やズーム操作で画面の中で人物が大きめに写るように画面を調整しましょう。
その時、画面の中に人物は画面中央ではなく、画面の左右どちらかに寄せて構図を決めると、画面の空いたスペースに背景を入れるスペースをつくることができます。
また、子どもがまだ小さい場合は、子どもの目線に合わせカメラを低くセッティングするのがポイント。赤ちゃんや抱きかかえることができる場合は、抱っこして大人の目線で撮影することはできますが、小学生くらいになると抱っこするのも大変になるので、子どもを立たせ、大人が子どもの身長に合わせて中腰やしゃがむなどしてポーズをとると画面にまとまり感が出ます。
できるだけ人物の顔が集まるようにポーズをすると、背景を写すスペースを確保できるだけではなく、画面に人物の顔が大きく写すことができ、密度感のある記念写真を撮ることができます。
【作例】カメラを子どもの目線に合わせて三脚を設置しカメラを固定し、ソニー NEX-5のスマイルシャッターに設定し撮影。人物を画面右に寄せ、左側に背景が写るスペースをつくって画面を決めた |
■実践編:運動会・発表会で
運動会や発表会では、望遠ズームレンズを使い、我が子をアップで撮影するシーンが増えます。
ほとんどのカメラやレンズには手ブレ補正機能が付いているので、以前より撮影は楽になりました。とはいえ、カメラを構えたまま長時間同じ姿勢を維持し続けるのは疲れてしまいます。顔からカメラを離して前に突き出して撮るEVF非搭載のノンレフレックス機の場合はなおさらでしょう。また、ちょっと画面がずれるだけで、被写体が画面から外れてしまいやすくなります。手ブレや被写体ブレなどのブレも大きく写ってしまうため、ちょっとしたブレでも目立ちやすくなるので注意が必要です。被写体が激しく動けば難易度もさらに上がります。
そのような望遠撮影でも三脚を活用することで、安定して被写体を追い続け撮影することができます。
ここで気を付けたいのは、イベントの主催者が、三脚の使用を許可しているかどうかです。三脚の使用が禁止されていることもありますので、必ず事前にチェックしておき、三脚の使用がOKの場合は、周囲に気を配って三脚を設置するように心がけましょう。
運動会や発表会で望遠で動き回る子どもを撮影するときは、三脚にカメラを固定しパン棒などのネジ類を緩めておき、カメラを両手で構えズームを操作しながら、三脚を支えにして撮影します。三脚のセンターポールが地面に対して垂直であれば、被写体を追っていても画面の水平垂直を出すことができます。三脚を軸にすることで画面が安定するため、手持ちで構えるよりも、動く被写体をスムーズに追いながら撮影できるわけです。
このときカメラから手を離すときは、必ず片手でカメラを支え、パン棒などのネジ類をしっかり締めて雲台を固定させまます。
運動会など屋外でスポーツを撮影する場合のカメラ設定は、ISO感度をオートにし、撮影モード「S」または「Tv」などのシャッター優先オートにします。シャッター速度は1/1,000秒以上の高速シャッターに。動きの速い被写体ほど、高速シャッターを切らないと被写体ブレ(動体ブレ)を起こしてしまいます。
AFエリアは「マルチポイント」や「自動選択」に、さらに「コンティニュアスAF」にします。動く被写体にピントが合い、さらに「連写」に設定するとシャッターチャンスを逃さずに撮影ができます。
室内やステージの発表会では、ストロボを使うとその場の雰囲気を再現することができませんし、またストロボ撮影が禁止の場合が多いため、ストロボは「発光禁止」に設定して撮影します。
カメラの設定は「P」プログラムオートで、ISO感度を1600以上の高感度に設定します。ISO感度を高感度に設定すると、シャッター速度が速くなるため被写体ブレ(動体ブレ)を起こしてしまいますが、環境の明るさに左右されるため、できるだけ高感度に設定して撮影する方が確実性は増します。
被写体が動き回るステージ発表などでは「コンティニュアスAF」と「連写」に設定してたくさんシャッターを切り撮影しましょう。
手持ちで長時間カメラを構え続けるのは疲れる。特にノンレフレックスカメラをはじめとしたライブビュー撮影では、画面がブレやすく、被写体を画面から逃しやすい |
手持ちでカメラを構えたときと同じ位置にカメラがくるようセッティング。三脚がカメラを支える軸になり、動く被写体でも安定して追うことができる |
運動会で走る子どもを撮影するときは、カメラに向かってくる子どもを撮るとカメラを振らなくてよいので撮影が簡単です。ゴール前だけではなく、種目やコースによってはバックストレートでもいいでしょう。またコーナーをうまく使うと、子どもの正面から撮影することが可能。連写でシャッターチャンスを逃さないようにしましょう。
子どもがカメラの前を横切るパターンも良くあります。カメラを振りながら被写体を追うことになるので、左右幅の狭い縦位置で撮影するのは困難です。横位置でやや広めくらいで撮ると被写体を追いながらでも画面から外さずに撮りやすくなります。ここでも連写でたくさん撮影してベストカットを選びましょう。
【作例】カメラに向かってくる子どもを撮影 |
■実践編:動画撮影で
最近はビデオカメラだけではなく、デジタルカメラにも動画撮影機能が付いています。写真だけではなく動画撮影も1台で可能になりました。
動画の場合は三脚を使用しないと、常に安定した画面を記録することはできません。テレビ局などプロの世界でも、基本的には三脚を使用した撮影をしています。三脚の必要性は静止画より高いといってよいでしょう。
もちろん運動会や発表会の場合は、動画撮影と三脚の両方が可能か、事前に調べておくことが必要です。
望遠ズームレンズで動画を撮る場合、両手でカメラをしっかり持っても映像に揺れが入る。片手ならなおさらだ | 三脚でカメラを固定して撮影すると、常に安定した画面で撮影が可能だ |
【作例】望遠で手持ち撮影した。終始画面の揺れが大きくなってしまった。
【作例】望遠にしてアップで撮影するほど、画面の揺れは大きく目立ってしまう。
【作例】三脚にカメラを固定して撮影すると撮影スイッチのオン、オフ時でも画面が揺れず、常に安定した画面で撮ることができる。
■まとめ
撮影した写真や映像を見て、なんかうまく撮影できなかったと思う原因は、実は意外に初歩的なミスが多くあります。
それはカメラやレンズの手ブレ補正機能には限界がありますし、画面を固定して撮影するシーンだけに限らず、望遠+手持ち撮影で動く被写体を撮影するようなときは上手に追いにくい場合もあるからです。
写真でも動画でも高画質で記録するためには、写真ならブレ、動画なら画面の揺れといった不安定な状態で撮影することは禁物だからです。
そんなときに三脚を活用すると、構図がしっかり整った画面で写すことができたり、カメラブレや画面の揺れを抑えて撮影することができたり、動く被写体を安定して追うことができたりと撮影を強力にサポートしてくれます。
まずは、いろいろな撮影シーンで三脚を使って撮影し、今までとはひとあじ違う写真や動画を体感してみることをオススメします。
モデル:西村春映
2012/3/29 13:46