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中判デジタルバック「フェーズワンP40+」を試す

4,000万画素の実写画像を掲載
Reported by 上田晃司

  • 作例のサムネイルをクリックすると、撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • 撮影画像はフェーズワンP40+で撮影後、Capture One 4 ProでJPEGに現像しています。

 デジタルバックとは、中判カメラのフィルムバックの代わりに取り付けることのできるデジタルモジュールで、装着することで中判カメラのシステムをデジタルカメラとして使用するためのものだ。現在は、フェーズワン(Phase One)、リーフ(Leaf)、ハッセルブラッド(Hasselblad)、ジナー(Sinar)、マミヤ(Mamiya)などのメーカーからデジタルバックが発売されており、画素数やセンサーサイズの大きさも様々にある。

 35mm判やAPS-Cサイズ相当のセンサーを搭載する一般的なデジタル一眼レフカメラに対し、その魅力はなんといってもセンサーサイズの大きさだろう。35mm判フルフレームセンサーの36×24mmに対し、フェーズワンのフラッグシップモデルP65+では53.9×40.4mm、P40+で43.9×32.9mmと格段に大きい。大きなセンサーから得られる浅い被写界深度、圧倒的な解像感、16bitの豊かな階調と広いダイナミックレンジは、一般的なデジタルカメラとは一線を画すクオリティといえる。特に階調表現にはすばらしいものがあり、暗部からハイライトまでディテールを失うことなく表現される。

 ただし、一般的なデジタル一眼レフカメラに敵わない部分もある。連写や高感度ノイズだ。例えばニコンD3Xの連写速度が5コマ/秒なのに対し、P40+は1.2コマ/秒、または1.8コマ/秒(Sensor+時、後述)となっている。連写速度が遅い理由のひとつは、センサーにCCDを採用している上、大きいためキャプチャーに時間が掛かるためだ。とはいえ、銀塩中判カメラ自体も35mm判カメラほど連写性能は高くないので、業務での撮影で気になることはほとんどない。

 かつては機動力も敵わない分野だった。数年前までのデジタルバックは、液晶モニター、記録メディアスロット、バッテリーなどはなく、撮影するにはパソコンとデジタルバックをFirewireケーブルで接続する必要があったのだ。基本的にスタジオでの使用を想定していたためで、風景撮影などには不向きといえた。しかし最近のデジタルバックのトレンドは、スタンドアローンでオペレートできるタイプとなっている。フェーズワンでもPシリーズやP+シリーズは、CFスロットやバッテリーを搭載。35mmベースのデジタルカメラとほとんど変わりない機動力と操作性が備わっている。

 フェーズワン製のデジタルバックが対応するカメラは、ハッセルブラッドHシリーズ、ハッセルブラッドVシリーズ(555ELD、503CW、501CM、903SWCなど)、マミヤRZ67 Pro II、マミヤ645、フェーズワン645、コンタックス645AFなど。また、アダプターを使用すれば、デジタルバックをラージフォーマットのカメラに取り付けることもできる。

 今回は、5月に発売されたばかりの最新モデル、フェーズワンP40+を試用することができたので、そのインプレッションを書いていきたいと思う。

高感度や連写に強くなる「Sensor+」

P40+をハッセルブラッド503CWに装着した状態。後ろについている四角いボックスがデジタルカメラバックのP40+だ

 まず、P40+のスペックを簡単に見てみよう。P40+は、ラインナップで上から2番目の画素数を誇るモデル。センサーには、43.9×32.9mmの4,000万画素CCDを採用。このクラスのセンサーサイズでは、世界最高の画素数を実現している。また、今までの、P+シリーズ(P21+、P25+、P30+、P45+)などは、コダック社製のセンサーを採用していたが、P40+では、ダルサセミコンダクター社製を採用。ピクセルサイズは、6×6μmとなっている。また、ISO感度は、ISO50〜3200(Sensor+モードを含む)、露光時間は1/10,000秒〜1分、バッファには1.3GBのRAMを搭載している。液晶モニターは23万ドットの2.2型を採用。

 特徴的な機能としては、「Sensor+」モードの存在が挙げられる。これは、センサーのフルフレームを使って1,000万画素のイメージを生成するモード。クロップなどと違いレンズの画角は変わらない。

 Sensor+にはいくつかの利点がある。その一つは高感度に強い点。通常撮影時に設定できるISO感度はISO50〜800だが、Sensor+使用時にはISO200〜3200となる。スタジオ使用がメインのためか、今までのデジタルバックは、お世辞にも高感度に強いといえなかった。しかし、Sensor+を使用すると、4画素を1画素として扱うため、ノイズはSensor+を使用しない時にくらべ1/4となる。Sensor+を使って撮影した時のISO800と、Sensor+を使用せずに撮影したISO200のノイズはほぼ同じになる。高感度の撮影が可能になることで、35mm判のようにF1.4などの明るいレンズの無い中判システムでも、手持ちでの撮影や薄暗いロケーションでの撮影が楽に行えるようになったのは大きい。
 
 また、画素数が1/4になることで、RAWデータ量も1/4になりファイルの扱いが楽になる。データが軽くなるとはいえ、イメージの品質は全く失われない。その上、連写速度が上がるのもSensor+の特徴だ。通常P40+の連写速度は、1.2コマ/秒なのだが、Sensor+使用時には1.8コマ/秒に上がる。1分間で最大108枚の撮影が可能ということになる。なお、フェーズワンのデジタルバックは書き込み速度が一定のため、CFがフルになるまで書き込み続けることができる。

 今回テストするにあたり、色々なシチュエーションで P40+を使用してみた。カメラボディはハッセルブラッド503CW。そこにP40+Vマウントを使ってP40+を装着した。

 まず、操作感は今までのPシリーズとまったく変わらない。すべての操作を「画像表示」、「メニュー」、「ISO」、「WB」の4ボタンのみで操作できる。メニューもとてもシンプルで、撮影に必要な操作は、ISO感度、WB、ファイル形式の設定くらいで済んでしまう。とりたてて難しい操作や設定はなく、フィルム感覚で撮影できるのが特徴的だ。


CFスロットを備える。ノートパソコンがなくても記録が可能だ バッテリーも装備。ケーブルレスでの撮影に対応する
ISO感度の設定画面 ホワイトバランスの設定画面
保存先としてFireWireとCFを選べる。状態により自動検知も可能 再生画面。拡大させたところ
「Sensor+」と「仮想水平」が新機能 「仮想水平」は、いわゆる電子水準器だ

 P40+になってメニューに「Sensor+」と「仮想水平」が追加された。「Sensor+」については、上記で説明した通り。「仮想水平」は、カメラの水平状態を簡単に判別できる機能(いわゆる電子水準器)なので、どんな撮影でも役立つツールだ。ただ頻繁に使用する機能なので、「メニュー」→「撮影メニュー」→「撮影設定」→「仮想水平」と起動するのに若干時間が掛かってしまう。ワンボタンで起動するような機能があればさらに使いやすいと感じた。

 画質に関しては、作例を見ていただければわかるように、圧倒されるほど高画質が得られる。被写体の細かなディテールまで、こと細かに表現可能だ。夜景を見てもわかるように、工場のパイプラインのディテールやプラントの数字などがはっきり写っているのがわかる。ただし、長秒露光によるルミナンスノイズが若干目立つ。P40+は長秒露光が1分までとなっているなので、夜景撮影は長秒露光が1時間まで可能なP45+やP30+などが向いているのかもしれない。

P40+ / CFE 80mm F2.8 / P40+ / 約25.5MB / 7,320×5,484 / 1/30秒 / F8 / ISO50 P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約29.1MB / 7,320×5,484 / 1/250秒 / F8 / ISO200
P40+ / CFi 120mm F4 / 約22.7MB / 5,484×7,320 / 1/4秒 / F5.6 / ISO50 P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約25.7MB / 7,320×5,484 / 22秒 / F8 / ISO50
P40+ / CFi 120mm F4 / 約33.3MB / 7,320×5,484 / 45秒 / F8 / ISO100

 また、人肌に関してもイメージ通りに仕上げやすい。肌の微妙なトーンや暗部からハイライトまで美しく表現できているのがわかる。圧倒的な解像力で肌の産毛などのディテールまできっちりと描写しているのだ。

P40+ / CFi 120mm F4 / 約22.0MB / 5,484×7,320 / 1/500秒 / F11 / ISO50 P40+ / CFi 120mm F4 / 約22.1MB / 5,484×7,320 / 1/500秒 / F11 / ISO50
P40+ / CFi 120mm F4 / 約27.2MB / 5,484×7,320 / 1/250秒 / F8 / ISO50

 12.5段と広いダイナミックレンジもP40+の魅力の一つ。作例からもわかるように、太陽が完全に山の陰に隠れてしまったひまわり畑の作例では、暗部からハイライトの部分まで白トビ、黒ツブレすることなく、美しい階調で表現できている。

 かなり厳しい条件だった滝の作例に関しても、日の当たってない陰の部分から広く当たっているハイライトの部分まで、豊富な階調で表現できているのがわかる。

P40+ / CFi 50mm F4 / 約22.2MB / 5,484×7,320 / 1/250秒 / F4 / ISO50 P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約21.6MB / 5,484×7,320 / 1/125秒 / F8 / ISO50
P40+ / CFi 150mm F4 / 約23.7MB / 5,484×7,320 / 1/125秒 / F5.6 / ISO50 P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約33.5MB / 5,484×7,320 / 1/4秒 / F22 / ISO50
P40+ / CFi 50mm F4 / 約20.4MB / 7,320×5,484 / 1/125秒 / F5.6 / ISO50

 さらに、「Sensor+」を有効にして撮影した作例は、ISO400にも関わらずほとんどノイズは目立たず、高感度のおかげで手持ち撮影することができた。「Sensor+」を有効にしてISO200で撮影した画像と通常のISO200で撮影した画像を比較してみると若干「Sensor+」で撮影した画像のダイナミックレンジの方が広いと感じられた。「Sensor+」の実用度は非常に高いことがわかった。

●Sensor+有効

P40+ / CFE 80mm F2.8 / P40+ / 約5.0MB / 2,740×3,658 / 1.0秒 / F5.6 / ISO200 P40+ / CFi 120mm F4 / P40+ / 約30.6MB / 5,484×7,320 / 30秒 / F8 / ISO100
P40+ / CFi 50mm F4 / P40+ / 約6.2MB / 2,740×3,658 / 3秒 / F8 / ISO200
P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約6.8MB / 2,740×3,658 / 1/30秒 / F3.5 / ISO800

 ISO感度に関しては、Sensor+無効でISO200までは何の問題もなく使用可能。被写体によっては、ISO400でも使用できそうだ。また、Sensor+を有効にすると、ISO800までは実用の範囲。ISO1600は被写体を選べば使用できるかもしれないが、基本はISO800までにしておくのが良さそうだ。ISO3200はカラーノイズが目立つので実用的では無い印象だ。

●ISO感度

・Sensor+有効

P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約5.3MB / 2,740×3,658 / 1/4秒 / F5.6 / ISO200 P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約5.6MB / 2,740×3,658 / 1/8秒 / F5.6 / ISO400 P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約5.8MB / 2,740×3,658 / 1/15秒 / F5.6 / ISO800

P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約6.4MB / 2,740×3,658 / 1/30秒 / F5.6 / ISO1600 P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約8.0MB / 2,740×3,658 / 1/60秒 / F5.6 / ISO3200

・Sensor+無効

P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約19.9MB / 5,484×7,320 / 1.0秒 / F5.6 / ISO50 P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約20.5MB / 5,484×7,320 / 1/2秒 / F5.6 / ISO100 P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約20.2MB / 5,484×7,320 / 1/2秒 / F5.6 / ISO200
P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約20.5MB / 5,484×7,320 / 1/4秒 / F5.6 / ISO400 P40+ / CFE 80mm F2.8 / 約23.1MB / 5,484×7,320 / 1/8秒 / F5.6 / ISO800

中判ならではの高画質。今後の展開にも期待

 P40+ではRAWのみ記録され、JPEGやTIFFでの記録は行なえない。撮影後に、フェーズワンのRAW現像ソフト「Capture One 4」シリーズを使用する必要がある。P40+で撮影した画像をCapture One 4 Proに読み込むと、ルミナンスノイズやカラーノイズはある程度除去することが可能。その際、必要なパラメーターを自動的に適用してくれるのはとても便利だ。ホワイトバランスの細かな設定やシャープネス、ノイズ、モアレなどの設定、レンズの補正など、現像処理にまつわる機能は豊富。また、P40+との連結撮影にも対応しており、パソコンとデジタルバックを接続して撮影することが可能だ。

Capture One 4.8。P40+でのテザー(PC接続撮影)に対応する

 デジタルバックの設定をパソコンから変更することもできる。キャプチャー速度も早く、撮影後すぐにパソコン上に表示される。スタジオでのモデル撮影には重宝する。ただし、4,000万画素クラスのデータを扱うので、快適に操作するには、ある程度のスペックのパソコンが必要だろう。

 高画素の35mmフォーマットのデジタルカメラが値下がりするにつれて、ミディアムフォーマットのデジタルカメラの値段も徐々に下がり始めている。とはいえ、まだ個人で所有するには高価な部類なのは事実なので、もう少し値段が下がることを期待したい。高画質はもちろんのこと、スタンドアローンでのオペレートが可能になり、今まで苦手とされていた高感度にも強くなってきた。今後のミディアムフォーマットデジタルの発展が楽しみだ。

【2009年9月7日】撮影データにレンズ名とF値を加えました。





上田晃司
(うえだこうじ)1982年広島県生まれ。アメリカ、サンフランシスコに留学し、写真と映像の勉強をする。学生時代にTV 番組やCMを制作するものの人物写真に目覚め、写真家を目指すことを決意。帰国後、写真家塙真一氏のアシスタントしながらフリーランスのカメラマン、ライターとしても活動を開始。

2009/9/7 00:00


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