特別企画
北海道の深まる秋を撮る
EOS 5D Mark IVで撮影する、色づき始めた北の風景
2016年11月9日 07:00
北海道撮影ワークショップの主催者であり講師を務める礒村浩一さんに、晩秋の北海道における撮影スポットを解説してもらいました。
カメラは9月に発売されたEOS 5D Mark IV。主な使用レンズは、SIGMA 20mm F1.4 DG HSM、SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSMなどです。
撮影スポットの作例は、RAWデータからCameraRAWでJPEGに現像し、長辺800ピクセルにリサイズしています。(編集部)
拠点を設けて撮影地に向かう
今回の北海道での撮影は10月17日〜27日までの11日間である。期間中に私が主催する北海道撮影ワークショップの3日間を挟んでいるが、私が北海道で行う1回の撮影期間としては比較的短い方だ。
通常、いちど北海道入りすれば短くとも2週間、長ければ4〜5週間は滞在して撮影を行う。とはいえ、10月の後半の北海道はすでに晩秋となっており高地では紅葉も終盤。途中、初雪も降るほど気温も下がった状態であったため、秋の北海道撮影としてはあまり猶予はない状況であった。
ひとことに北海道といっても非常に広く、そう簡単に各地を周れるものではない。むやみやたらと走り回るだけでは、移動だけで日程が終わってしまうことにもなりかねない。
そこで北海道で撮影を行おうと考えている方には、まず拠点を設けることをお勧めしている。私の場合は数カ所に拠点を設けており、そこを起点として北海道の各地へ向かうようにしている。その拠点の1つが北海道の地理的中心地に近い南富良野町にある「かなやま湖」である。
南富良野町かなやま湖
かなやま湖は1967年に竣工した金山ダムによってできた人造湖である。周囲は山に囲まれており、湖の周回道路を車で走るとまるで自然湖のように自然に溢れた景色を堪能できる湖だ。湖畔には散策のできる公園やオートキャンプ場も整備されており、カヌーやラフティングなども楽しめる。
かなやま湖畔で撮影した星空。町が遠く空が暗いおかげで晴れれば満天の星空が堪能できる。EOS 5D Mark IVは高感度特性が向上しているので、星空撮影においてもより高い画質で撮影が可能となった。
厳冬期は湖面が完全結氷するため湖上を歩ける。夜間でも細心の注意を払うことで夜景や星景撮影が可能だ。(2016年1月OLYMPUS OM-D E-M1で撮影。冬の北海道撮影ワークショップにて)
私が北海道撮影の拠点のひとつとしている「かなやま湖ログホテルラーチ」。かなやま湖の湖畔に建つログハウス形式のホテルだ。湖を見下ろすカラマツ林に囲まれた森林公園に隣接した広い敷地内には鹿やリスなど動物も訪れるほど自然に溶け込んだ静かなホテルである。
南富良野町にある、かなやま湖へはJR根室本線を利用して訪れることも可能だが、8月の台風被害により、最寄駅である東鹿越駅から帯広方面の新得駅間がいまだ不通となっていることから、現地へは車で訪れる方が良いだろう。
なお、南富良野町およびかなやま湖周辺は、台風被害の影響はほぼ回復している。(JR幾寅駅周辺の住宅地などではいまでも復旧のためのボランティアを必要としている場所もある)
狩勝峠(かりかちとうげ)
南富良野町のかなやま湖を起点として、国道38号線を東に十勝方面へと向かう。空知郡である南富良野町から上川郡の新得町へと越境する際に通る峠が狩勝峠だ。道路の峠の標高は644m。急勾配をいっきにかけ下りる道である。
狩勝峠の展望台より眺める新得町方面。広大な十勝平野への入り口だ。ここを訪れた10月18日には、狩勝峠より標高の低い場所に紅葉の木々が広がっていた。
今年の北海道は一気に気温が下がったことから紅葉はあまり良い条件ではなかったが、よく探せばカラフルな色が混ざり合った秋ならではの光景を見つけることもできる。
地図では判りにくいが、南富良野方面と新得方面では標高差が大きく、これを繋ぐ狩勝峠はかなりの急勾配である。とくにこれからの冬季期間には道路が凍結するので、車での通行は十分に注意したい。
ただ、急勾配の峠であるが故にその景色はとても魅力的だ。撮影を行う際には必ず安全な駐車帯に車を止めて行うようにしよう。
十勝平野は畑作や酪農が盛んな地域である。広大な畑や牧草地とどこまでも続くような大きく広い空が北海道ならではの風景を魅せてくれる。使用されている農機具も大型のものが多く、広い農地とともにダイナミックな光景を撮影できる。
ただし許可なく農場へ立ち入ることは絶対にやめよう。法律的な問題だけでなく、農地へ不用意な菌やウイルスなどを持ち込んでしまう恐れもあるからだ。
然別湖(しかりべつこ)
十勝地方の上士幌町と鹿追町にまたがる自然湖である然別湖は、北海道でもっとも標高の高い湖だ。火山の噴火によってできたといわれているだけに沿岸には入り組んだ山がぎりぎりまでせめてきている。その光景が澄んだ湖水と相まって魅力的な風景となっている。
また湖岸にはアウトドア体験のプログラムを提供しているネイチャーセンターもあるので、はじめての方はそのプログラムに参加して撮影を行うのもよいだろう。
然別湖は高地特有の爽やかな気候で真夏でも涼しい。それだけに秋が深まるのも早く10月18日の撮影時ではすでに紅葉は終わってしまっていた。
しかし常緑樹ののなかのダケカンバの木々の白い姿が、これから迎える長く厳しい冬をいちはやく想像させる。冬季は非常に厳しい寒さとなるが、全面氷結した然別湖は神秘的な光景となり被写体としてとても魅力的だ。
大雪山国立公園内に位置し周囲は深い森に囲まれているが、湖に向かう道路は広く整備されている。道すがら十勝平野を見渡す展望台や木々が開けた場所もあり撮影ポイントにはことかかない。
然別湖へはJR新得駅から車でおよそ50分前後。定期バスも運行している。冬季も湖畔の温泉までは通行可能だが、その先の山田温泉や糠平湖へ抜ける道は冬季通行止となる。
音更(おとふけ) 家畜改良センター十勝牧場の白樺並木
十勝地方の農場地帯はとにかく広い平野が広がっている。まさに北海道らしい光景だ。どこまでも続く平野とまっすぐな道路が印象的。また道路沿いに多く見られる白樺並木も十勝を印象付ける被写体となる。
家畜改良センター十勝牧場への入り口となる真っ直ぐな道とそこに植林された白樺並木。夏季は青々と茂った葉の緑が爽やかな並木となる。牧場は白樺並木から展望台までの幹線道路のみ通行可能。小高い展望台からは周囲の牧場を一望できる。
家畜改良センター十勝牧場へはJR帯広駅から車でおよそ30分。定期バスもあり。ただし牧場内および周囲には店舗や休憩所などは一切ないのでそのつもりで。
三国峠から大雪湖周辺
上士幌町から上川郡の大雪湖へと抜ける国道273号線は、まさに山間を走る道路である。北海道を走る国道の峠としてはもっとも標高の高い三国峠は、トドマツやエゾマツの樹海のなかを縫うようにしてつづら折れが連なる峠だ。
夏には緑深く秋には黄色く色づいた樹々の眺望が素晴らしい。また峠を上川方面へ登り越えた先にはダム湖である大雪湖があり、その周辺の河川の開けた風景もとても魅力的である。
三国峠を走るつづら折れの国道は高低差が大きく、また大きな橋がいくつも繋がり、その光景はまるで森の中を大蛇が這っているかのようにも見える。日が沈むと辺りは道路の照明のみの闇となるが、長時間露光で星空と共に撮影することで金色に輝く龍のごとき姿となった。
大雪湖はダムが造られたことでできた人造湖だが、周囲は自然のままの光景が多く国道からも河川沿いの開けた光景を見る事ができる。
大雪湖につながる石狩川にかかる橋の上から、月明かりだけで捉えた冠雪した大雪山とその天空で輝く星々。本来、ここに架かる橋は8月の台風による増水で橋桁がずれてしまい通行止めとなっているため、現在は仮橋にて往来できるようにされている。
この夜のように穏やかな日もあれど、自然がいちど荒れて猛威を振るうと人の力ではなすすべのない状態になるという事を忘れてはならない。
三国峠および大雪湖は大雪山国立公園内に位置し、国道は大自然のなかを走っている。三国峠を下れば十勝方面へ、大雪湖から層雲峡方面へ向かえば上川方面へ進み、旭川へと抜ける。
大雪湖へは車で帯広から約2時間、旭川からは約1時間半ほど。公共交通機関は層雲峡までしかないので、そこからタクシーを利用することになる。
作品のクオリティを上げてくれる最新モデル
今回紹介した撮影地は、私が撮影で赴くなかのごく一部である。撮影期間が10月中旬から後半にかけてであったことから、現在はすでに紅葉の時期は終わり冬を迎え、場所によってはかなりの量の雪が降っていると聞く。今年の秋景色にはもう間に合わないが、ぜひ来年以降の撮影の参考にしていただければと思う。もちろん秋以外の季節に訪れても魅力的な場所ばかりである。
今回使用したEOS 5D Mark IVは、さまざまなシーンにおいて高いパフォーマンスを発揮してくれた。特に高感度撮影時におけるノイズの少なさは、夜景や星景撮影で有利に働いてくれた。次回の北海道の撮影は冬景色。いまから心待ちとしたい。
撮影協力:かなやま湖ログホテルラーチ