特別企画
オールドレンズユーザーにおすすめしたい「香港撮影地ガイド」
夜景だけが香港じゃない。知る人ぞ知る撮影スポットを紹介
2016年11月15日 16:46
11月初旬、タートルバック社の「澤村徹と行く香港ワークショップ」に講師として参加した。香港でオールドレンズ撮影を楽しむことを目的とした撮影イベントだ。香港在住の現地スタッフと協力し、オールドレンズ撮影に向いている撮影スポットを選出。4月に下見を行った上での開催である。4日間にわたって様々な撮影ポイントを訪れたが、その中から特に面白かったポイントを紹介しよう。
香港らしさが凝縮された大繁華街、旺角(モンコック)
今回のワークショップでは、九龍側と香港島の北側を中心に撮り歩いた。九龍サイドで主に見て回ったのは、旺角(モンコック)と鯉魚門(レイユームン)だ。
オールドレンズ向きの被写体という点では、旺角はぜひとも押さえておきたい。ここはいわゆる下町で、年季の入ったビル、アパートメント、看板がそこかしこにある。
さらに露天、市場、ミニバスの停留所など、フォトジェニックな被写体に事欠かない。古い町並みをタクシーとミニバスが走り回り、香港らしい写真があらゆるところで撮れるだろう。地下鉄の旺角駅からぶらぶらと歩くだけで様々な被写体と出会えるため、予備知識なしで訪れても楽しめるはずだ。また、日中だけでなく、夜スナップもお薦めしたい。有名な女人街(衣料品の露天街)は夜遅くまで賑わっており、明るめのレンズで撮って歩くにはうってつけのロケーションである。
観光客で賑わう海鮮レストラン街、鯉魚門(レイユームン)が見せるもう一つの顔
鯉魚門(レイユームン)はグルメスポットだ。昔は渡し船を使わないと訪れることができなかったが、近年地下鉄の駅が近くにでき、アクセスしやすくなった。
海鮮レストランが軒を連ね、海上レストランジャンボと負けず劣らず有名なグルメスポットだ。そのような場所を何故オールドレンズワークショップで訪れるのか? それは海鮮レストラン街を抜けた先に、極上の撮影スポットが待ち構えているからだ。
レストラン街を抜けると燈台があり、そこから東に向かって歩いて行く。道が一気に細くなり、ひなびた漁村が現れる。
くすんだ白壁の家がそこかしこに建ち並び、寂れたサントリーニ島のようで面白い。さらに進むと、突如採石場跡に突き当たる。海沿いに石造りの建物が点在し、オールドレンズには恰好の被写体だ。
背後に目を転じると、地層剥き出しの崖が迫ってくる。香港在住数十年の現地スタッフをして「香港にこんなところがあるなんて知らなかった」と言う。ひなびた漁村、産業遺跡、さらには地層。まったく無関係の被写体が一堂に会しているのだから、鯉魚門が撮影スポットとしていかに優秀かが解るだろう。
2階建て路面電車の車窓から市場のカオスを撮る
香港島の北側は、東西にトラムが走っている。トラムとは二階建ての路面電車のことだ。日本でも路面電車は走っているが、二階建てのものは珍しい。
路面電車というとレトロな外観を想像しがちだろう。残念ながら、香港のトラムはその多くが全面にど派手な広告が印刷されている。そのため懐古調の写真は望めないが、古い町並みと派手なトラムのギャップを意識して撮影すると面白い写真が撮れるだろう。
今回のワークショップでは、上環(ションワン)、北角(ノースポイント)、太古(タイクー)をトラムで移動しながら撮影した。トラムからの光景、トラムが走る風景、どちらも写欲をそそる。
ただし、どの線に乗り、どこで乗り換え降りるのか。これは香港ビギナーの旅行者にはまったくお手上げだった。現地スタッフのアテンドなしにはトラムでの移動は難しかっただろう。また、トラムは線や時間帯によって車内がかなり混雑する。旅行者がひとりで乗り降りするにはハードルの高い交通機関と感じた。
北角の近くの市場があり、ここが恰好の撮影ポイントだ。市場の真ん中をトラムが走ってくる。しかし、買い物客は一向に避けようとしない。トラムの運転手も諦め顔で、トロトロと徐行しながら市場の端にある駅を目指す。市場、トラム、買い物客の混沌とした様子が、香港の生命力のようなものを感じさせる。そうしたカオスなさまも、香港の魅力のひとつと言えるだろう。
結局はお気に入りのレンズで撮る写真が一番
香港をオールドレンズで撮る、これについて感じたことをまとめておこう。
今回、4月の下見で10本、11月の本番で10本、合計20本のレンズを香港に持ち込んだ。その内訳は、現行レンズ5本、オールドレンズ15本である。下見に行く前から撮影ポイントの情報を収集し、どこをどのオールドレンズで撮るか、自分なりにプラニングして撮影に挑んだ。オールドレンズは得手不得手があるため、被写体との相性が重要になるからだ。
熱帯の国だからコントラストと発色の強いツァイスかな。夜の露天はF1.2クラスの大口径レンズがほしい。下町の看板はあえて地味に写るレンズで撮ろう。とまあ、自分なりにいろいろと考えてレンズセレクトした。ところが撮影結果は、お気に入りのオールドレンズで撮ったカットが明らかに秀でて見えた。
つまりはこういうことだ。オールドレンズはそれぞれ個性があり、その個性に惚れて特定のオールドレンズを使用する。自分の求める表現にオールドレンズの描写が合致するからこそ、そのオールドレンズを愛用するわけだ。お気に入りのオールドレンズで目の前の被写体を切り取るだけで、求める写真(もしくはそれに近いもの)になる。この関係性は日本だろうと香港だろうと変わりない。好きなオールドレンズで撮る。これに勝るものはない。
むろん、被写体に応じてレンズの画角や明るさは選択が必要だ。ただ、こうした部分はサブレンズに任せよう。あくまでもメインレンズについては、お気に入りのオールドレンズでぐいぐい押し切ると良い結果に結びつく。せっかくの海外撮影だからとつい色々なレンズを持ち込んでしまうが、ことオールドレンズに関しては、お気に入りの相棒を常に携行したいところだ。