自分の色を表現する。私のColor PENcil

撮りたいものはモノクロで。大家族の姿を撮り続ける理由とは

伝えたいことが素直に表現できる、モノクロ写真の面白さ

万年床で眠る父と母。周囲には物が散らかり、机の上には前夜に興じた麻雀の名残がある。いつも見るこの光景に懐かしさを感じてシャッターを切った。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 17mm(34mm相当) / マニュアル露出(F4、1/30秒) / ISO 640

カメラらしい小粋なデザインと高い質感が人気のミラーレスカメラ「OLYMPUS PEN-F」。見た目だけでなく、最新の装備や機能も充実しています。その中でも特徴的なのが、仕上がりを撮影現場で反映できると評判の「カラープロファイルコントロール」「モノクロプロファイルコントロール」です。

この連載では、PEN-Fの「カラープロファイルコントロール」「モノクロプロファイルコントロール」を使いこなす若手写真家にインタビュー。作品の紹介に加えて、写真についての考えなどを披露してもらいました。

今回の写真家は、家族をテーマにした作品で知られる山本雅紀さん。モノクロで撮影し続ける山本さんは、PEN-Fについて何を感じたのでしょうか。(編集部)

山本雅紀さん。1989年兵庫県生まれ。日本写真映像専門学校卒業。自身の家族をテーマとして撮影し「山本家」で2015年度三木淳賞奨励賞、「I’m home」でThe Editor’s Photo Award ZOOMS JAPAN 2016エディター賞を受賞。2017年同テーマにて写真集が赤々舎より刊行予定。

写真・キャプション:山本雅紀
イラスト:ナカムラエコ

現在、どのような写真関連の仕事をされていますか?

カメラ雑誌社からのご依頼や以前勤務していた京都新聞社からの臨時の撮影、非常勤講師として母校である日本写真映像専門学校での講義などをさせていただいています。また現在写真集を制作中でその撮影も続けています。

写真を撮るようになったきっかけは?

18歳の時にたまたま本屋で「戦場に立つカメラマンの群像」という本を立ち読みしたことがきっかけでした。写真に写されていた現実に心を動かされ、ちょうどこれからの生き方を模索していた時期ということもあり、写真を学ぶことを決意し専門学校へ入学しました。

窓辺でくつろぐ母。いつもこの場所で小説を読んだり昼寝をしている。ハイライトからシャドウまでディテールが残るように意識した
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 17mm(34mm相当) / マニュアル露出(F2.2、1/30秒) / ISO 400

影響を受けた写真家、写真集、メディアは?

マグナム・フォトの写真に惹かれ、コンタクトシートを集めた写真集やウェブサイトをよく見ています。ナン・ゴールディン、セバスチャン・サルガド、荒木経惟、森山大道、猪瀬光といった著名な写真家の作品にも強く惹かれます。

またパソコンなどで気になる写真や絵があればその画面を保存し、スクラップとしてまとめては繰り返し見ています。

その影響は自分の作品のどんなところに現れていますか?

スクラップから気に入った作品を抽出していく過程で、だんだん自分がどういう写真が好きで、どういう写真を撮りたいのかに気づいていきました。気になる写真家も出てきて、他のシリーズやどういう活動をしてきたのかを知ることもできて面白いです。

そうすると他の人と同じだとか違うということはどうでもよく、自分がどういうふうに撮りたいかということに向き合える。それは僕にとって大きいことだったと思います。

年季が入った灰皿と無造作に捨てられた吸い殻。光の当たり方でいつもの灰皿が違って見える。周辺の光量を落とすことで、中央の被写体を強調した。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 17mm(34mm相当) / マニュアル露出(F4、1/25秒) / ISO 200/ WB:オート

山本さんにとって写真の色(Color)とは?

撮りたいものを写真にした時にはモノクロになることが多いです。普段はカラーの中で生活していますが、僕が良いなと思うことや瞬間を伝える時にはカラーよりもモノクロのほうが、スッとそこまでたどり着ける感覚があります。

また、ニュージーランドに1年間滞在した際に撮った写真は半数くらいカラーであり、伝えたいものがより伝わるようであれば、それもまた良いのかなと思っています。

母曰く、「長所は舌が長いことで、特技は舌が鼻に届くこと」らしい。撮影後には舌で鼻の穴をほじっていた。間違いなく長所であり特技だ。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 17mm(34mm相当) / マニュアル露出(F2、1/125秒) / ISO 400

PEN-Fのカラープロファイルコントロールについて。

一番面白いと感じたのはやはりカラーフィルター効果でした。学生の頃はモノクロフィルムで撮影してもフィルターは使用したことがなく、今回初めて使ってみてその効果の違いや大きさにとても驚き、ワクワクしながら撮影しました。

またすぐに手元で画像を確認できるのでとても使いやすく、シューディング効果やハイライト&シャドウコントロールもあわせて使うことで、見せたい被写体をより強調できるのは魅力的でした。

今夏初めてのスイカにかぶりつく父。家にはクーラーがないので、夏はいつも半裸ですごしている。ストロボを使って光量を調整した。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 17mm(34mm相当) / マニュアル露出(F5、1/60秒) / ISO 800/ WB:オート

家族を撮ることについて。山本さんにとっての家族とは?

一番家族を感じる瞬間は、みんなで食卓を囲んでいる時です。7人家族で家の狭さもあり会話が絶えず、「団らん」という言葉が理解できても実感がわかないほど身近にあるものでした。

そんな家族にカメラを向けて感じたのは、好みや感覚など自分の個性を目一杯満たしてくれる被写体だったということです。死ぬ時に振り返って、答えはここにあったのか、こんなにシンプルだったのか、と思うのではないかという気がしています。

真面目に新聞を読んでいるように見えるが、よく見るとリオ五輪の記事を読んでいる。逆光だがストロボは使わずにその場の雰囲気を大切にした。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 17mm(34mm相当) / マニュアル露出(F4、1/30秒) / ISO 800

今後取り組みたいシリーズやテーマは?

上京する予定の妹に密着したり、北海道や東北、アジアの写真を撮りたいと考えています。ですがあまり先にテーマを決めて撮るということではなく、自分が生きていく中で出会う人や場所の中で撮りたいものを撮りまとめていき、向き合っていくというスタイルだと思っています。

写真展の開催や写真集の発売など、告知があればぜひ!

来年の1月に赤々舎から写真集を刊行予定です。自身の家族をテーマに撮影し、居間や台所などでおりなす人間模様がありのまま写された、山本家の人間味や生活感が渦巻いた写真です。写真関係者はもちろん、普段あまり写真集を手に取らない方々にも見ていただきたいです!

我が家ではここ数カ月間、狂ったようにファミリー麻雀に勤しんでいる。白くモヤっとしているのは牌がベタベタしないように天花粉をふったせいだ。
オリンパス PEN-F / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 / 17mm(34mm相当) / マニュアル露出(F4、1/60秒) / ISO 400

◇   ◇   ◇

デジタルカメラマガジン2016年10月号では、OLYMPUS PEN-F「モノクロプロファイルコントロール」のテクニックを山本雅紀さんが紹介。あわせてごらんください。

協力:オリンパス株式会社

本誌:折本幸治