新製品レビュー
ライカT(実写編)
コンパクトな高解像レンズと落ち着いた絵作り
藤井智弘(2014/11/11 07:00)
ライカの新システムカメラ、ライカT。アルミのブロックから削り出したユニボディや、背面の液晶モニターに3.7型の全面タッチパネルタイプを採用するなど、個性的なカメラに仕上がっている。しかも、そのタッチパネルの操作感は、まるでスマートフォン。ライカらしいクラフトマンシップと、現代ならではの使い勝手を併せ持ったカメラだ。
本稿では先にお届けした外観・機能編に続き、ライカTの画質インプレッションをお届けする。
ライカTの撮像素子は、APS-Cサイズの有効1,630万画素。レンズ一体型のライカXシリーズ現行モデルとほぼ同じスペックだ。フィルム選択(仕上がり設定)は、スタンダード、ヴィヴィッド、ナチュラル、白黒ナチュラル、白黒ハイコントラストの5種類で、これもライカXシリーズと同じ。
そして画作りもライカXシリーズと同様、スタンダードは彩度が低め。一見すると、とても地味に見える。日本メーカーのデジタルカメラは、標準が目を引きやすい鮮やかな仕上がりになる傾向が強いが、ライカは全く異なる。ヨーロッパらしい落ち着いた仕上がりといえる。ただしフィルム選択をヴィヴィッドにすると、彩度もコントラストもグンと上がり、メリハリのある写真になる。
またそれぞれ彩度、コントラスト、シャープネスの調整が可能なので(白黒はコントラストとシャープネスのみ)、自分の好みに合わせた仕上がりに設定できる。DNG形式のRAWからは、付属のLightroomで自在に調整できるが、JPEG派はカメラ側で好みの設定を探すのが、使いこなしのポイントのひとつと言えそうだ。
感度
ISO感度は、ISO100をベースに、最高はISO12500。拡張感度は持たない。今はAPS-CサイズでもISO51200が設定できる機種がある時代。ISO12800にも届かない高感度は、数字だけ見ると物足りなさがある。しかしISO800までは、ISO100とほぼ同じ仕上がり。ほとんどノイズ感がない。ISO1600で拡大するとわずかにノイズが見られる程度。ISO3200からノイズが目立ってくるが、無理にノイズを消すことをしていないため、被写体のディテールが損なわれていない。
またノイズ自体も不自然さがなく、例えばISO6400でモノクロにすると、フィルムの粒子を思わせる雰囲気があり、表現によっては効果的になる。主観にもよるが、通常はISO1600まで常用域。ISO3200は実用範囲内、という印象だ。実用十分な高感度性能だろう。
遠景(解像力)
レンズは標準ズームのVARIO-ELMAR-T f3.5-5.6/18-56mm ASPH.(35mm判換算で27-84mm相当)と、単焦点のSUMMICRON-T f2/23mm ASPH.(35mm判換算で35mm相当)の2本を使用した。
標準ズームは、この焦点域とF値を見ると、いわゆるキットレンズを思い浮かべる人がいるだろう。しかしこのレンズは、オールメタル製。ピントリングやズームリングにゴムを使わないところは、ライカMレンズを彷彿させる。手にした質感の高さや重量感は、ライカらしい高級感だ。23mmも同様に高級感のある仕上がり。どちらもシンプルなデザインで、ライカTによくマッチする。ズームリングもピントリングも、適度なトルク感でスムーズに回転し、快適な撮影が楽しめた。
VARIO-ELMAR-T f3.5-5.6/18-56mm ASPH.の描写は、絞り開放からズーム全域で解像力が高い。画面四隅は中心部と比べるとわずかに甘さがあるものの、よほど拡大しないと気にならないレベルだ。またワイド側で絞り開放でも、周辺光量低下が少ないのも好感が持てた。
SUMMICRON-T f2/23mm ASPH.も、絞り開放からシャープだ。しかも形の崩れない、自然なボケ味が楽しめる。35mm相当は、ライカMシステムでも50mmと並ぶ人気のある画角。日常の光景を作品に仕上げたくなるレンズだ。また大口径ながらコンパクトなので、携帯性に優れている点も見逃せない。
2014年9月のフォトキナでは、これらに加えて広角ズームのSUPER-VARIO-ELMAR-T f3.5-5.6/11-23mm ASPH.と、望遠ズームのAPO-VARIO-ELMAR-T 3.5-4.5/55-135mm ASPH.も発表されたライカTシステム。これからの発展がとても楽しみだ。
まとめ
ライカTはスマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスを日常的に使いこなし、ライカで作品を撮りたい人に最適なカメラだ。アルミ削り出しの美しいユニボディと、コンパクトで解像力の高いレンズを手にするのは、ライカTならではの悦びだ。またライカMアダプターTを使えば、ライカMレンズもライカTで使用できる。そのためすでにライカMシステムを愛用している人のサブとして、あるいはいずれライカMシステムを使いたい人の入口としてもおすすめできる。