【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-LX7
パナソニックLUMIX DMC-LX7は、同社ハイエンドコンパクトDMC-LXシリーズ5代目となるカメラである。開放値F1.4-2.3の光学3.75倍ズームレンズをはじめ不足のない性能と充実した機能を誇り、絞りリングなどのアナログ的な操作を多用する。
発売は8月23日。大手量販店での店頭価格は5万9,300円前後となる。
■主要デバイスを一新。レンズはついに「バリオズミルックス」へ
今回のリニューアルでは主要デバイスのほとんどに手が入った。まずはそれらを見てみることにしよう。
搭載するレンズは24-90mm相当(35mm判換算)の光学3.75倍ズーム。開放F値は単焦点レンズ並のF1.4-2.3とする。レンズの名称も、ライカでは開放値F1.4に与えられる「SUMMILUX」(ズミルックス)の称号が与えられ、「LEICA DC VARIO-SUMMILUX」としている。光学式の手ブレ補正機構「POWER O.I.S.」を搭載しており、広角端での開放値F1.4とともにアベイラブル撮影の可能性が広がる。
レンズは光学3.75倍ズーム、LEICA DC VARIO-SUMMILUXを搭載する。広角端の開放値F1.4はクラス最高レベル。手ブレ補正機構POWER O.I.S.を搭載する。 |
レンズ構成は10群11枚。EDレンズが2枚、非球面レンズを5枚9面採用する。解像感はズーム全域で高く、画面周辺近くまでよく結像している。ディストーションはわずかにあるものの、さほど目立つものではなく、総合的にクラスに相応しい描写特性を持つ。さらに、パナソニックご自慢のナノサーフェスコーティングが施され、逆光撮影時や点光源が画面に入ったときなど心強く感じられる。
鏡筒の付け根に絞りリングを新たに備えたのも、このレンズの特徴だ。1段ごとのクリックの間隔は、妙に間の開いたものだが、操作は上々。このところ、この部分に操作リングを備えるカメラが増えつつあるが、操作性を考えると頷ける。絞りによってボケの変化が期待できるのは、テレ側で比較的被写体と近い場合か、マクロ撮影のときなどに限られることも少なくないが、それでも絞りリングを操作して積極的に撮影したくなるほどだ。
3段分の光量が落ちるNDフィルターも内蔵する。明るい屋外などで、このレンズの開放値を活かした大きなボケを必要とするときなど重宝する。NDフィルターのON/OFFは、カメラ背面の専用のND/FOCUSレバーで行なう。メニューに入る必要がなく、直感的かつ速やかに設定が行なえるのも便利だ。
NDフィルターのON/OFFは、このND/FOCUSレバーを押すだけで切り換えられる。AFでピントを合わせた後、このレバーでピント位置の微調整も可能としている。 |
NDフィルターを使ったユニークな機能として「開放優先モード」と「解像優先モード」を搭載する。これらのモードはプログラムAE時に有効で、その発想には感心させられる。
開放優先モードは常に絞りを開放し、被写体が明るい場合にNDフィルターが自動的に有効になるモード。ボケを活かした撮影を楽しみたい場合に効果的なプログラムラインとしている。解像優先モードは、レンズのもっとも結像効果の高い絞りに常に設定されるプログラムラインを持つモード。こちらも被写体の輝度が高い場合にNDフィルターが自動的に有効になり、露出をコントロールする。少しでも描写にこだわりたいユーザーなら必見の機能といえる。
プログラム線図では、プログラムAE時の露出の設定方法を切り換えることができる。「STD」は通常のプログラムライン。「MAX」は「開放優先モード」のことで、常に絞りを開放し、被写体の輝度が高くなるとNDフィルターが自動的に有効になる。「MTF」は「解像優先モード」で、レンズのもっとも結像効果の高い絞りに常に設定される。 |
撮像素子は新設計、有効1,010万画素の1/1.7型MOSセンサーを搭載する。ちなみに先代のDMC-LX5は、有効1,010万画素の1/1.63型CCDセンサー。闇雲に画素数を追いかけなかったことは好感の持てるところだ。感度はISO80からISO6400まで。拡張で最高ISO12800まで可能としている。
なお、拡張域では有効画素数は314万画素となる。パソコンのモニターを使い画像拡大率50%ほどで確認したかぎりでは、ISO1600までならノイズはほとんど気にならないレベルだ。連写速度は機械式シャッターで11コマ/秒(10MP、AF固定)を実現。先代のDMC-LX5は同じ条件の場合3コマ/秒だったので、飛躍的に向上している。
マルチアスペクト機能も引き継がれている。これは、アスペクト比が変わっても同じ画角で撮影できるもので、イメージサークルよりもセンサーのサイズが一回り大きいために実現した機能だ。画角を同じとするアスペクトは4:3、3:2、16:9の3つ。一般的なデジタルカメラの場合、4:3の画面をベースに3:2と16:9にそれぞれに切り出しているため、同じ画角とはならない。
レンズの付け根にあるアスペクト切り換えスイッチと絞りリング。4:3、3:2、16:9の画角はマルチアスペクトにより同じ画角としている。絞りの文字の間隔はちょっと広め。 |
作例を見てもらえば分かるとおり、DMC-LX7ではそれぞれのアスペクトに合わせて左右の写り込む範囲も変化し、同一画角としていることが分かるかと思う。なお、1:1のアスペクトも選択できるが、こちらは切り出しによるものなので、画角は同じとはならない。
■操作性の良さも特徴
このカメラの最たる特徴といえば、すでに書いた絞りリングやND/FOCUSレバーをはじめ、撮影に関する主要な設定をいわゆるアナログ操作としていることだろう。電源スイッチ、撮影モードダイヤルをはじめ、アスペクトおよびフォーカスモード切換スイッチなど多岐に及ぶ。
また、忘れてならないのが、カメラ背面の後ダイヤル。押し込むことでシャッター速度優先AEおよび絞り優先AEの場合、設定できる内容が露出の設定と露出補正に切り換わる(プログラムAEの場合は、プログラムシフトと露出補正)。同社のノンレフレックス(ミラーレス)カメラなどにも採用されており、使い慣れると他に移れなくなるほど使いやすい。
押し込むことで設定する内容を切り換えられる“くるポン”ボタンを搭載。慣れるとたいへん使いやすい。スライド式の電源スイッチは、パナソニック・コンパクトモデルの伝統。 |
もともと同社のコンパクトデジタルはこのシリーズに限らず、電源スイッチはスライドさせるタイプを採用するなど、アナログ操作にこだわったものが少なくないが、DMC-LX7はその究極にあるものといえる。視認性がよく、直感的で速やかな操作が楽しめるほか、カメラとしての品位の高さも感じさせる。
AFモード切り換えスイッチは先代と同じ位置に置かれる。 |
背面モニターは固定式。バリアングルや上下可動式を望む声もあるだろうが、ボディをコンパクトなサイズに抑えることを考えると、現時点では固定式を上回るものはないといえる。視野角は十分に広いので、ちょっとしたローアングル、ハイアングル撮影ではさほど不便は感じないだろう。
このクラスには光学ファインダーを搭載するものの少なくない。しかし、本モデルは残念ながら未搭載としている。その代わりというわけではないが、外部ファインダー専用コネクターを持ち、別売りのEVF「DMW-LVF2」を装着できる。コンパクトデジタルカメラのアクセサリーとしては値が張るが(量販店などでは2万5,000円前後)、背面モニターと同等の表示を可能とするので、考えようによっては光学ファインダーより使い勝手はよい。明るい屋外などの撮影では重宝することだろう。
別売のEVF「DMW-LVF2」を装着したところ。見た目のバランスはあまりよくないが、ブレを抑えたい撮影や、明るい屋外での撮影では重宝する。 |
クリエイティブコントロール機能の新しい2つのモードにも注目したい。「露光間絞り」は、露光中に絞りを開放から小絞りまで作動させて、背景の芯を残しながら輪郭を柔らかくボカすモード。「露光間デフォーカス」は、同じく露光中にピント位置を移動させることで、被写体の輪郭をボカし幻想的な表現の得られるモードである。
同じ被写体でピントの合った画像とピントをデフォーカスとした画像を撮影し、レイヤーで重ね合わせたり、多重露光で撮影したりするテクニックが従来からよく知られているが、それにイメージ的には近い。大きな効果を得るには撮影条件を選ぶこともあるが、いろいろ試してみたくなるモードである。先に紹介した「開放優先モード」と「解像優先モード」などとともに、小技の効いた機能がDMC-LX7には多く搭載されていて面白く感じられる。
インターバルタイマーの搭載も目新しい。1分刻みに最高60分の間隔で撮影できる。バッテリーの消耗に関しては、撮影後自動的に電源がOFFとなるので、心配は不要。インターバル撮影というと、敷居の高く馴染みのないテクニックのように思われがちだが、街の雰囲気や花が開く様子などの撮影も楽しめる。
インターバル撮影の設定画面はシンプルで分かりやすい。撮影後、次の撮影まで電源がOFFになるので、電池の消耗が少ないのも特徴だ。 |
このところ大型の撮像素子を搭載するコンパクトデジタルカメラをよく見かけるようになった。ミラーレスカメラやデジタル一眼レフカメラ並みの撮像素子により、優れた描写を誇る。しかし、コンパクトとして考えた場合、手軽さや軽快さといったところは、従来のサイズの撮像素子を搭載するカメラに及ばないところも少なくない。
LUMIX DMC-LX7は、そのような小さい撮像素子のメリットを活かし、明るいズームレンズとアナログ操作を多用することで我々の理想とする高級コンパクトに仕上がっている。ライバルは強者揃いだが、隙のないカメラのように思える。
バッテリーはDMW-BCJ13を使用。このところUSBケーブルを介しボディで充電するものも増えているが、きちんとバッテリーチャージャーが付属するのは好感の持てるところ。 | ポップアップ式のストロボを備える。手もとにある資料を見るかぎりガイドナンバーは公表されていないが、通常使うには不足のないものだ。先幕、後幕発光の設定も可能としている。 |
インターフェースはHDMIとUSBを搭載。カバーはプラスティック製だが、精度が高く、閉じるとしっかりボディと密着する。 | どことなくクラシックテイストの漂うレンズキャップ。紛失防止のためにボディとつなぐ専用の紐が同梱されている。 |
ISO感度ステップが変えられるのは、このクラスならでは。好みに合わせて設定できる。 | 従来通りノイズリダクションの調整機能は、フォトスタイルのなかに入っている。筆者自身もそうであるが、見落としてしまうことが多い。 |
iDレンジコントロール機能は、強、中、弱、OFFから選択できる。ダイナミックレンジ拡大機能として、効果的に活用したい機能である。 | 超解像機能も強、中、弱、OFFから選択できる。少しでもシャープに写したいときに活用したいが、コマ速が低下することもあるので状況に合わせて使いたい。 |
縦位置で撮影した画像をどのように表示するかを決める設定。PCもカメラの背面モニターも縦位置で表示、PCのみ縦位置、どちらも縦位置表示しないから選べる。 | メニューを表示した場合、直前に設定したメニュー位置から表示されるメニュー位置メモリー機能を搭載。縦位置表示のメニューとともに、フラグシップらしい機能だ。 |
左右および上下方向の傾きを表示する水準器機能を搭載する。大きく表示されるので視認性は高い。 |
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・絞り値別
・アスペクト比
DMC-LX7 / 約4.1MB / 3,648×2,736 / 1/1,000秒 / F4 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.7mm | DMC-LX7 / 約4.1MB / 3,776×2,520 / 1/1,000秒 / F4 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.7mm |
DMC-LX7 / 約3.9MB / 3,968×2,232 / 1/1,000秒 / F4 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.7mm | DMC-LX7 / 約3.4MB / 2,736×2,736 / 1/800秒 / F4 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.7mm |
・感度
・超解像
・作例
2012/9/12 00:00