新製品レビュー

Adobe Lightroom mobile

PCとiPadで写真を同期。外出先での画像編集も

 Adobe Photoshop Lightroomのモバイル端末版で、現時点ではアップルiPad専用(iOS 7を搭載したiPad 2以降)となる。iPhone版は2014年内にリリース予定。Androidへの対応も検討中とのこと。

Lightroom mobileの起動画面

 無料のiOSアプリで、iTunes Storeからダウンロードできる。機能を利用するにはAdobe Creative Cloud(以下CC)のアカウントが必要となる(有償)。

インストールから同期まで

 ダウンロードとインストールはiTunes Storeから行なう。「Lightroom」で検索するといちばんに出てくるが、律義に「Lightroom mobile」と入力すると空振りした。というのは、アプリの名称が「Adobe Lightroom」だからで、iPad上では単に「Lightroom」と表示される。混同を避けるため、ここではiPad用は「Lightroom mobile」、パソコン用は「Lightroom desktop」と書くことにする)。もちろん、ダウンロードは無料である。

iPad上のApp Storeの画面。検索する際は「Lightroom」だけで検索すること(「Lightroom mobile」だと何も出てこなかった)。
ダウンロード中の画面。アプリ自体は無料だが、有料のAdobe Creative Cloudプランが必要という説明書きが見える。

 起動してAdobe IDでサインインすると、いきなり「コレクションが使用できません。Lightroom desktopの同期を有効にして起動してください。」というメッセージが表示される。Lightroom desktop(最新版の5.4が必要)を起動して環境設定を開き、「Lightroom mobile」タブからサインインしたうえで、「コレクション」パネルで「コレクションを作成」を選んで、「Lightroom mobileと同期」にチェックを入れて「作成」をクリック。

まずはAdobe IDとパスワードの入力を求められる。サインインしないと何もさせてもらえない。
でも、サインインしただけでは、やっぱり何もさせてもらえない。単独で使うアプリではないので仕方ないところである。
Lightroom mobileを利用するには、Lightroom desktopでコレクションを作成して「同期」する必要がある。
「コレクションを作成」の画面。いちばん下の「Lightroom mobileと同期」にチェックを入れるのを忘れないように。
Lightroom desktopの環境設定には、新しく「Lightroom mobile」タブが追加されていて、こちらでもサインインしておく。
Lightroom mobileとの同期のオンオフは、ここから切り替えられる。

 これで一応準備は完了だが、同期する画像がクラウドにアップロードされるのに時間がかかるので、しばらく休憩である。

 さて、起動直後の「コレクション表示」で表示するコレクションをタップすると「グリッド表示」に切り替わる。Lightroom desktopのグリッド表示と役割は同じだが、この画面で撮影データなどを確認することはできない。また、サムネイルのサイズを変更することもできない。

「グリッド表示」の画面。取り込んだ画像を一覧表示できる。
横持ちにすると表示も切り替わる。

 「グリッド表示」の画面で見たい画像を選んでタップすると1枚だけを画面いっぱいに見られる「ルーペ表示」に切り替わる(ヘルプオーバーレイでは「ルーペ表示」ではなく「フィットビュー」と書かれてたりする)。

見たい画像をタップすると、1枚だけを大きく表示する「ルーペ表示」に切り替わる。これはまだ画像を読み込んでいる途中の画面。
中央の「ぐるぐる」が消えるとくっきり表示になる。が、この状態では、まだ編集作業はできない。
ヒストグラムが表示されると編集可能。時間は2、3秒のときもあれば、6、7秒かかるときもある。スマートプレビューのファイルサイズや回線の状況などによっても変わるようだ。

 当たり前だが、iPadの向きに応じて画面は自動で回転するので(画面をロックしていなければだが)、縦位置の画像は縦向き、横位置の画像は横向きに持つと大きく表示できる。画面をタップすると情報表示のオンオフ、2本指タップで情報表示の内容を切り替えられる。

 画面左上の撮影情報は、テキストが表示されている部分をタップすることで内容が切り替わる。拡大/縮小は、例によってピンチイン/ピンチアウト、ダブルタップでも可能だ。

表示している画像の記録画素数は6,000×4,000ピクセル。ソニーα6000で撮ったもの。
画面左上のメタデータの表示内容は、文字列の上をタップすると切り替えられる。これは露出情報、レンズ、カメラの情報。
露出情報、記録画素数、撮影日時。
撮影日時、露出情報、記録画素数。
撮影日時、フラグ、著作権情報。

 オフラインでも画像の調整が可能なスマートプレビュー機能を利用しているため、Lightroom desktopでのピクセル等倍表示と見比べると、表示解像度は低い(代わりにファイルサイズが小さく抑えられる)。スマートプレビューを利用することでオリジナルの画像はパソコンに置いたままにできるため、iPadの空き容量を無駄づかいしなくてすむわけだ。

Lightroom mobile上でめいっぱい拡大したところ。「あれ、こんなアマかったっけ?」と思ってしまった。
こちらはLightroom desktopでのピクセル等倍表示。解像度がずいぶん違うのが分かる。その分、iPadの容量を無駄食いしないのはいい点。

 コレクション内の全画像のスマートプレビューのデータをあらかじめダウンロードすることができ(それなりに時間がかかる)、そうするとオフラインでの運用もできる。

 ただし、Lightroom mobile上でたくさんの画像に変更を加えた場合、それがオンラインになってからLightroom desktopに反映されるのにもけっこうな時間がかかる。そのあたりの待ち時間まで考えると、高速な回線で常時接続しているほうがストレスは少なそうだ。設定画面に「WiFiでのみ同期」というオプションがあるのを見ると、やはりWi-Fi環境がベターだろう。

グリッド表示から、画面左上の「〈」をタップすると、「コレクション表示」に切り替わる。
設定画面。「WiFiでのみ同期」というオプションがあるのは、やっぱりWi-Fiでの運用がベターだからだろう。
コレクションの設定。「カメラロールから追加」したり、「自動読み込みを有効にする」こともできる。
「オフライン編集を有効にする」と、ネットにつながっていない状態でも画像の編集が可能となる。スマートプレビューのデータはけっこう小さい(13枚の画像で3.5MB)。

閲覧と整理

 「ルーペ表示」は「フィルムストリップ」付きとなしが選べる。左右にフリックして画像送りをするか、フィルムストリップ上のサムネイルをタップして画像を切り替えることもできる。

ルーペ表示の画面。画面をタップすると画像以外のデータやアイコンがすべて消える。もう一度タップすると再度表示される。
フィルムストリップ付きの「ルーペ表示」画面。

 上下にフリックすると「フラグ」の設定が可能。下フリックが「拒否」、上フリックが「採用」となる。画面左上の「〈」をタップすると「グリッド表示」になり、もう一度「〈」タップで「コレクション表示」に戻る。使い方は簡単で、すぐに覚えられるし、スマートプレビューデータのダウンロードが完了していれば動作も軽い。

ヘルプオーバーレイの表示。ルーペ表示で2本指タップすると、メタデータのオンオフができる。親友になれるかどうかの判断は保留しておく。
フラグの設定は上下にフリック。上フリックが「採用」、下フリックが「拒否」。この画面では「フィットビュー」と書かれている。
3本指でホールドすると、補正前の状態を確認できる。
調整をキャンセルしたいときは、スライダーをダブルタップする。このへんの操作はよく使うので忘れないように。

 画面右上のアイコンをタップすると、「共有」「コピー先」「移動先」「削除」「ここから再生」が選べる。「共有」では、カメラロールに保存する「画像を保存」、アドレス帳のアイコンに設定できる「連絡先に設定」のほか、「コピー」「プリント」がある。

画面右上のアイコンをタップして表示されるプルダウンメニュー。別のコレクションにコピーしたり移動したりもできる。
共有の選択肢。FacebookやFlickrへのアップロードもできるらしい。

モバイル編集は「基本補正パネル」相当。プリセットも用意

 「調整」および「プリセット」については、Lightroom desktopの基本補正パネルと初期状態で登録されている純正のプリセットの内容に準じる。トーンカーブやHSL/カラー/B&W、ディテール、レンズ補正などに相当する項目はないし、円形フィルターや補正ブラシもない。ユーザープリセットもサポートされていない。

「調整」の画面。内容はLightroom desktopの基本補正パネルと同じだ。
パラメーターの帯の部分はフリックでスクロールできる。右端が「初期化」でその隣が「前へ」。
「プリセット」の画面。内容はLightroom desktopの初期設定のプリセットと同じ。

 操作としては、ホワイトバランスなどのように適用後の雰囲気がつかめるサムネイル付きのリストから選択するか、スライダー上でドラッグするか、という簡単なもの。従来からのLightroom desktopのユーザーならもちろん、初めての人もすぐに使い方を覚えられるだろう。

こちらは「プリセット」の画面。「白黒パネル」プリセットの内容。Lightroom desktopのプリセットと同じだ。
「白黒フィルター」プリセットの内容。
「白黒階調」プリセットの内容。画像にドーンと乗っかるので邪魔である。
「カラー」プリセットの内容。
「効果」プリセットの内容。
「一般」プリセットの内容。

 ここからは少し画像の調整もやってみる。

ホワイトバランスはプリセットがいろいろ。いちばん上の「採用」は無彩色部分を指定するもの。
「採用」をタップすると画面上にルーペのようなターゲットが表示される。縁の部分をつかんで移動させられる。
ターゲットの中心部の円内でとらえた部分がグレーになるようにホワイトバランスが設定される。
右上のチェックマークをタップするとターゲットは消える。
Lightroom mobileの共有から「画像を保存」したもの。画像は長辺が2,048ピクセルになるサイズに設定されるようだ(クリックで原寸表示)。

 次は「自動階調」を試してみる。

正面の窓が明るいので、画面全体としては暗めに写っている。
「自動階調」をオンにしたところ。明るい部分を落として、暗い部分を持ち上げる処理になっている。
Lightroom mobileで保存した画像(クリックで原寸表示)。

 今度は自動階調を使わずにやってみる。

初期状態。
白飛びを抑えつつ、暗い部分の調子を持ち上げて、明瞭度でメリハリをつけている。
3本指でホールドした状態の画面。補正の前後を見比べられる。設定画面で「プレゼンテーションモード」をオンにすると、タップしたところに赤丸印が表示される。
Lightroom mobileで保存した画像(クリックで原寸表示)。

 分かりづらいのは「前へ」という項目で、直前に表示していた画像の調整内容を、現在表示中の画像に適用できるというもので、Lightroom desktopの「写真」メニュー→「現像設定」→「前の設定をペースト」と機能としては同じ。「設定をコピー」「設定をペースト」をセットにして、操作を少し簡略化したような項目である。ニュアンスとしては、「直前の画像の設定を適用」なのだが、「前へ」だけでは意味が通じない気がする(英語版では項目名が「PREVIOUS」になっているので、それを直訳したのだろう)。

 もうひとつ、ややこしいのが「初期化」である。「前へ」と同様、「基本補正」と「すべて」のほかに、「書き込むには」というのと「開くには」という項目があって、iPadの言語を英語に切り替えてみると、それぞれ「To Import」と「To Open」なのだが、これはこれで意味が分かりづらい。確認したところ、前者は「読み込み時の状態にリセット」、後者は「開いたときの状態にリセット」ということらしい。

「前へ」の動作のチェックのために、Lightroom desktopでトーンカーブを派手めにいじったもの。
フィルムストリップから別の画像に移動して……
「前へ」をタップ。
「前の写真のすべての設定」をタップ。
Lightroom desktopでの調整結果も全部適用される。前の画像の設定をコピー&ペーストしているわけだ。

 つまり、前者は、Lightroom desktopでの調整後の画像をLightroom mobileで受け取ってからの変更をリセットする項目、後者はその画像を開いてからの直近の変更だけをリセットする項目のようだ(ホワイトバランスと露光量を変更して、別の画像を調整して、それから彩度を変更した場合に、「書き込むには」はホワイトバランス以降の変更がリセット、「開くには」は彩度の変更だけがリセットされる)。

「前へ」よりも分かりづらいのが「初期化」。途中から日本語が理解しづらくなっている。
「基本補正」はLightroom mobileでできる調整のみリセットするもの。
「すべて」はLightroom desktopで行なった調整も含めたリセット。
「書き込むには」は、Lightroom mobileで読み込んだときの状態にリセットするもの。
「開くには」は、その画像を最後に開いた以降の調整のみリセットするもの。

 Lightroom desktopにも意味を取り違えているような項目があったりするが、いずれにしても、もう少し分かりやすい日本語を使って欲しいと思う。

 「切り抜き」は、縦横比のプリセットがいくつか用意されているほか、比率を維持してトリミングしたり、90度ずつ回転させることもできる。「グリッド表示」も3種類から選べる。使い勝手はおおむねLightroom desktopと同じだ。

「切り抜き」の画面。画像の外側をドラッグすると任意の角度に回転させられる。

編集機能はシンプル。メタデータ編集の強化に期待

 Lightroom mobileの現状は、Lightroom desktopで取り込んだ画像の確認(解像度の問題があるので、微細なブレやピントのチェックはできない)、フラグによる分類、コレクションから別のコレクションにコピー/移動による選別がいいところで、おおざっぱな調整の方向性を検討するといった軽作業までならいけるかな、というレベルだ。

 それとやはり、凝った画像編集をしようとして厄介な問題は「色」である。なにしろ、iPadにはカラーマネージメント機能がない(ICCプロファイルに対応していない)。キャリブレートされたモニターとは色味もコントラスト再現も違うので、短絡的に断じてしまえば、iPad上で画像の調整を行なうことには大きな意味はないのである。

同じ画像でもパソコンの画面とiPadの画面では、色味もコントラスト再現もかなり違う。これだとやっぱり細かな調整はきびしい。

 とはいえ、Lightroomという写真家のためのソフトウェアがiPadに乗ったことは大きいと思う。今のところ、機能はまだ多くないが、操作は簡単だし動作も重くない。これで色の問題がクリアになって(iOSがシステムレベルでカラーマネージメントをやってくれるか、Lightroom mobileがi1などのキャリブレーションツールをサポートしてくれればいいのだが)、出先での画像の取り込みが可能になって、撮ったその場で調整してプリントしたりメールで送信したりといったワークフローが構築できれば、ノートPCはいらなくなるし、作業もシームレスに行なえるようになる。そういうところまで進化していってくれたら楽しいだろう。

 個人的には、色の問題をクリアするのは難しそうな気がしているので、どちらかというと、レーティングやカラーラベル、キーワード、ロケーションといったメタデータの編集機能を優先的にやってもらえるとありがたいと思う。

北村智史

北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら