新製品レビュー

OLYMPUS STYLUS SP-100EE

“照準器”がユニークな50倍ズーム機

 カメラメーカー各社がコンパクトデジタルカメラのリストラクチャリングを相次いで行っているが、それでも勢いの衰えないのが高級機と高倍率ズーム機である。特に後者は、比較的手に入れやすい価格設定のものが多いこともあり、老若男女問わず多くの写真愛好家から支持されている。

OLYMPUS STYLUS SP-100EE。照準器をポップアップさせたところ。本稿執筆時時点の税込実売は4万9,450円前後。

 今回試用した「STYLUS SP-100EE」もそのようなレンズ一体型の高倍率ズーム機で、ポップアップ式の照準器が目を引く。ちなみに製品名の“EE”とは、被写体を捕捉する鷲の目”Eagle’s Eye(イーグルズアイ)”を表している。今回のレビューでは、その操作性を中心に見てみることにしたい。

 SP-100EEに搭載されるレンズは、焦点距離4.3-215mmまでの光学50倍ズームレンズ。35mm判換算するとワイド端24mm相当、テレ端ではなんと1,200mm相当の画角となる。ズーム倍率もさることながら、テレ端の画角には改めて驚かされる。デジタル一眼レフやミラーレスでは、こうした超望遠画角で撮影する機会は一般に多くないことを考えると、これまでトライできなかったような表現にも気軽に挑戦できそうに思える。

 しかし、焦点距離が長くなると、被写体によっては捕捉しづらくなることも少なくない。特に野鳥のように小さく、しかも忙しく動き回る被写体では、ファインダーや液晶モニターでは見失いやすく、捕捉に難儀する。そこで便利なのが、野鳥を被写体とするバーダーの間でマストアイテムともなっている照準器(ドットサイト照準器)である。通常はアクセサリーシューやアタッチメントを介してカメラに装着するが、このSP-100EEはボディ上部にドットサイト照準器を内蔵。これはデジタルカメラとして初めてとなるものだ。

 照準器はトップカバーに収納され、内蔵ストロボと同じ要領でポップアップさせる。仕組みとしては、光源とする赤い光をアイピースの上部から被写体方向に投影し、ストロボ発光部の下にあるハーフミラーで折り返して照準ターゲットマーク(レティクルという)を結像させるというもの。ユーザーは照準器を覗いて、被写体にレティクルを重ねると、実際の画面でも被写体が画面の中央となる。超望遠のためEVFや液晶モニターの画像では見失いやすい被写体も、この照準器によって素早く捕捉できるというわけだ。

左より、通常使用時、ストロボポップアップ時、照準器ポップアップ時。ストロボと照準器はペンタ下部にあるそれぞれのレバーをスライドさせてポップアップする。

 掲載した野鳥の作例は、いずれもこの照準器を使ったものであるが、そのような超望遠撮影では実に使い勝手がよい。照準器を覗いて被写体と照準ターゲットマークを重ねた後、液晶モニターもしくはEVFを覗けば、ほぼ画面の中央に被写体がきている。その操作自体が手間のように思えるかもしれないが、液晶モニターやEVFを覗いて被写体を探すよりも格段に早いことはいうまでもない。バーダーがなぜ照準器を装着しているのか、改めてその理由を知らしめるものといえる。

カメラ正面(被写体側)より照準器をのぞく。ハーフミラー越しに赤いレティクル発光部が見える。
アイピース横のダイヤルは照準器調整用のもの。調整はメニューの調整画面を表示して行う。
照準器の設定画面。セットアップメニュー内に置かれる。レティクルの明るさのほか、ストロボ併用のON/OFF、レティクルの微調整を可能としている。
カメラ背面側から見たレクティル。ほぼ狙ったところが画面の中央となっている。照準器はデフォルトでは無限遠に調整されている。

 カメラ内蔵の照準器ならではと思えるのが、ピントが合っていない場合、照準ターゲットマークが点滅することだろう。照準器で動く被写体を追いながらシャッターを切るような撮影では重宝する。さらに光軸に近い位置に照準器を設置しているため、外付けタイプのものよりパララックスが小さいのも特徴。狙ったものが実際の画面で大きく外れてしまうようなことがない。

 なお、照準器はデフォルトで無限遠に調整されているが、被写体の距離などに応じ調整も可能としている。設定は簡単で、レンチなどの工具を用意する必要もない。SP-100EEの照準器は野鳥ばかりでなく、モータースポーツや鉄道、航空機などアイデア次第で様々な被写体に応用できそうに思える。

 カメラの撮影性能に関しては、まず1/2.3型・有効1,600万画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載。画質を追い求めるならより大きなセンサーが欲しくなるが、テレ端1,200mm相当の50倍ズームレンズが搭載できたのは、このフォーマットサイズだからこそだ。

 画像処理エンジンは同社ミラーレスにも搭載されている「TruePic VII」を採用。絵づくりに関しては、コンパクトデジタルにありがちないたずらに強くシャープネスをかけたようなものではなく、ナチュラルなキレのよさがある。階調再現性も同じクラスのイメージセンサーと比較するとよく粘っているように思われる。高感度特性に関しても、比較作例を見る限り高感度特性はISO800までなら気になるようなレベルではない。強力な手ブレ補正機構との合わせ技で、カメラを手持ちしての超望遠撮も安心して臨める。感度はISO125から6400までの設定を可能としている。

レンズ開放値はF2.8-6.5。12群17枚構成で、非球面レンズ、EDレンズを効果的に配置し、諸収差を抑えているという。
バッテリーはLI-90Bを使用。若干心もとないように見えるが、撮影可能枚数は約330枚(CIPA準拠)を実現している。

 連写はフル画素で最高7コマ/秒を達成。最大300万画素とはなってしまうものの、最高60コマ/秒での撮影も楽しめる。AFに関しては同社ミラーレス同様のFAST AFを採用。使用した印象では、合焦速度が特別速いとは感じないまでも十分実用レベル。望遠側での撮影でも、動きの速い被写体でなければストレスを溜めるようなことなどないはずだ。なお、動画は1,920×1,080のフルHD(60P)での撮影を可能としている。

 肝心のズーム倍率50倍の搭載レンズについては、想像以上の描写だ。焦点距離の違いによる描写の変動は少なく、さらに画面全体を見渡しても高い次元の均質性を誇る。また、ディストーションはワイド端の場合、表れ方は穏やか。テレ端も含め周辺減光もクラスを考えれば少ないほうだろう。逆光にも強く、フレアやゴーストもよく抑えている。もちろん高倍率ズームにありがちな“粗”がないわけでもないが、パソコンの画面で等倍まで拡大して厳密に見ないかぎり気になるようなことはない。むしろ静止画用のレンズとしては驚異的なズーム倍率にも関わらず、十分作品レベルの描写が得られることは驚きといってよい。

テレ端時(左側)とワイド端時。テレ端では1,200mm相当の画角であるが、実焦点距離は215mmなので、レンズの繰り出しはさほどでもない。

 ただし、フードは欲しく感じられる。ワイド端の画角に合わせると、当然その深さは最小限のものとなるが、それでもレンズに光が直接当たることを抑えられるはずだ。何より見た目もぐっと向上する。別売のアクセサリーでも用意されていないのはちょっと寂しく感じられる。レンズ先端から最短の撮影距離はワイド端で7cm、テレ端で3.5m。焦点距離が固定されものの、スーパーマクロモード時にはレンズ前1cmを実現している。

 操作性に関しては同社ミラーレスのOM-Dシリーズに近く、トップカバーのコントロールダイヤルとカメラ背面の十字キーを中心に行う。コントロールダイヤルの機能を任意で選択できれば、さらに使い勝手は向上したに違いない。ズームレバーはシャッターボタン同軸のほか、カメラを正面から見て鏡筒の右側面にも備わる。コンパクトデジタルカメラに慣れ親しんだユーザーならシャッターボタン側のレバーを、レンズ交換式カメラの扱いに慣れたユーザーなら鏡筒側のレバーが使いやすく感じるだろう。

OM-Dシリーズ同様、トップカバーに剥き出しのコントロールダイヤルを設置する。操作感も良好だ。
シャッターボタン同軸のズームレバーを備える。コンパクトデジタルカメラのユーザーにとっては馴染みのある操作だろう。電源ON/OFFボタンはプッシュ式。
鏡筒の側面にもズームレバーを備える。右横はフォーカスロックボタンで、長押しするとフォーカスリミットの設定も可能となる。
鏡筒に巻かれたラバーは、しっとりと手に吸い付き感触は良いものの、反面ホコリやゴミなどが付着しやすい。

 92万ドットのEVFと3型46万ドットの液晶モニターだが、いずれも見え具合などクラスとして不足のないところ。ただし、両者を自動的に切り換えるアイセンサーは省略されており、その都度ファインダーアイピースの右横にあるEVFボタンを押すのは少々面倒に感じられる。

撮影メニューは2面。内容的にはシンプル。割愛されている機能もいくつか見受けられるが、割り切って使えばよいだろう。

 このところのデジタルカメラではブームのGPSおよびWi-Fi機能は、残念ながら内蔵していない。しかし、無線LAN機能搭載のSDHCカード「FlashAir」に対応しており、オリンパスのスマホアプリ「OI.Share」との連携機能も活用しつつ、画像をスマホに転送できる。例えば、散歩中の公園で出会ったカワセミをSP-100EEで超望遠撮影しFacebookなどへ即アップすれば、そのインパクトから「いいね!」が増えることは間違いないだろう。

 最近流行りの高級機に比べればボディの質感はさほど高くなく、AEBなど省略されている機能もいくつか見受けられる。しかし、手頃な価格で超望遠撮影が楽しめ、さらに野鳥などの撮影では便利な照準器を備えるSP-100EEはたいへん魅力的に映る。

 特にデジタル一眼レフもしくはミラーレスユーザーなら、サブ機としてカメラバッグのなかに忍ばせておけば、遠くの被写体を画面のなかに大きく引き寄せたいときなど重宝すること請け合いだ。照準器搭載というオンリーワンの特徴とあわせ、手軽に超望遠撮影の世界が楽しめる1台である。

実写サンプル

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・感度

以下のサムネイルは青枠部分を等倍で切り出しています
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400

・画角変化

広角端(24mm相当)
望遠端(1,200mm相当)

・作例

ISO125 / F6.5 / 1/80秒 / 1,104mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/80秒 / 896mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/100秒 / 960mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/80秒 / 1,200mm相当
ISO125 / F6.2 / 1/1,000秒 / 434mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/800秒 / 1,200mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/640秒 / 1,200mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/800秒 / 1,200mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/320秒 / 670mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/800秒 / 960mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/1,250秒 / 1,200mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/400秒 / 1,200mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/800秒 / 1,200mm相当
ISO125 / F5 / 1/125秒 / 88mm相当
ISO125 / F7 / 1/640秒 / 403mm相当
ISO125 / F5 / 1/640秒 / 88mm相当
ISO125 / F4 / 1/800秒 / 42mm相当
ISO125 / F6.2 / 1/320秒 / 243mm相当
ISO125 / F8.4 / 1/250秒 / 24mm相当
ISO125 / F5.5 / 1/640秒 / 136mm相当
ISO125 / F6.4 / 1/640秒 / 501mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/500秒 / 960mm相当
ISO125 / F6.5 / 1/400秒 / 1,104mm相当
ISO125 / F5.8 / 1/250秒 / 302mm相当
ISO125 / F4.4 / 1/1,250秒 / 53mm相当
ISO125 / F5 / 1/1,250秒 / 88mm相当
ISO125 / F5.5 / 1/500秒 / 136mm相当
ISO125 / F5.4 / 1/160秒 / 126mm相当
ISO125 / F4 / 1/500秒 / 42mm相当

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。