新製品レビュー

ソニーサイバーショットDSC-RX10

玄人好みの大口径ズーム機

 RXシリーズは、ソニーのサイバーショットのなかでも大型センサーを搭載し、最上位に位置付けられているシリーズである。35mmフルサイズセンサーを搭載する唯一無二のコンパクトデジタルカメラ「RX1/RX1R」や、1型センサーを積む「RX100/RX100M2」があるが、間の“10”が付くカメラがなく、カメラ愛好家の間では様々な憶測が広がっていた。そして満を持して登場した「RX10」は、1型センサーと明るいズームレンズを搭載するレンズ一体型のブリッジカメラであった。

発売は11月15日。実勢価格は12万9,800円前後

 今回お借りしたRX10を見て、まずそのシェイプに驚かないわけにはいかなかった。見慣れた1/2.3型センサーを搭載するブリッジカメラにくらべ、鏡筒が極端に太く、それに合わせてボディも一回りほど大きい。高倍率ズームを装着したデジタル一眼レフにくらべれば確かにコンパクトであるものの、ここ最近のブリッジカメラとは一線を画すサイズだったからである。

 しかしながらボディのつくりや質感は高く、このカメラがただものでないことを見る者に知らしめる。さらにトップカバーのエッジの効いたシェイプは、低く身構えたようなフォルムとともに精悍な印象で、鏡筒のカールツァイスの青いロゴなども含めどこかエキゾチックにさえ思えるルックスである。

 早速手にしてみると、ホールディングした印象は上々だ。1/2.3型センサーのブリッジカメラにくらべれば遥かに安定感があり、ミドルクラスのデジタル一眼レフのように手にしっくりと馴染む。風の強く当るような場所での撮影でも、ふらついてしまうようなことなどなく安定してカメラを構えることができそうである。

撮影モードダイヤルは、背面左手側に設置。
シャッターボタン側のトップカバーには、±3段まで補正可能な露出補正ダイヤルのほか、露出やISO感度、WBなどの設定値を表示する液晶表示パネルを配置。
約3段分減光するNDフィルターを内蔵する。通常は、自動的にNDフィルターのON/OFFを行なうオートを選んでおくとよい。

 ボディ外装は質感の高いマグネシム合金製で、剛性感も高い。さらに製品情報ページを見ると「各種操作部材にはシーリングなどの処理を施し、水滴やほこりが侵入しにくい構造を実現」としている。どちらかといえばプラスチック外装などチープなつくりのものが多いブリッジカメラのなかで、一線を画す上質な仕上がりである。

 レンズには、バリオ・ゾナーT* 8.8-73.3mm F2.8を搭載。35mm判換算で24-200mm相当とする光学8.3倍のズームレンズである。小型センサーで光学50倍ズームを搭載するものもあるブリッジカメラのなかでは、このズーム倍率にもの足りなさを感じる向きもあるだろうが、ズーム全域で開放F2.8とし、さらに7枚もの非球面レンズを採用するなど描写を優先させたことは玄人好みといってよいものである。

レンズは、カールツァイス・バリオゾナーT* 8.8-73.3mm F2.8を搭載。レンズ構成は、非球面レンズ7枚、EDガラス1枚を含む11群14枚。
花型のフードが付属。装着すると、より押しの強い印象となる。フィルター径は62mm。
レンズキャップは、RX1/RX1Rのものと同様のデザインとしている。フードは逆付け可能

 さらに光学式手ブレ補正機構とNDフィルターを内蔵。特に後者は3段分の光量を低減するもので、晴天屋外などの明るい場所で絞りを開いて撮影を楽しみたいとき重宝する。レンズ先端から被写体までの最短撮影距離は、ワイド端3cm、テレ端30cmとこちらも文句のないものである。

左よりレンズ収納時、ワイド端24mm相当、テレ端200mm相当。テレ端では、さすがに大きくレンズが繰り出す。
ズームリングを作動させたとき、シームレスにズーミングするスタンダードと、焦点距離ごとにズームするステップから選ぶことができる。

 鏡筒には、AFのときはズームリングに、MFのときはフォーカスリングとなるレンズリングと、絞りリングをそれぞれ配置する。レンズリングをズームリングとしたとき、デフォルトではシームレスなズーミング操作だが、設定によりステップズームとすることもできる。前者の場合、ズーミング操作を止めてもズームはその時点で止まらずオーバーランしてしまうため、静止画の撮影ではステップに設定したほうが使いやすいように思える。なお、シャッターボタンと同軸とするズームレバーも備わっているので、コンパクトデジタルカメラから乗り換えたユーザーなどはそちらのほうが便利に感じることもあるだろう。

 絞りリングはRX1/RX1Rと同様のもので、1/3段ステップでの設定が可能。クリック感も同じような印象で使い勝手はたいへんよい。さらに、クリックの有無を選ぶこともできる。

絞りリングは1/3段ステップで設定が可能。この部分のつくりの印象は、RX1/RX1Rに準ずる。
絞りリングのクリックのON/OFFスイッチが備わる。静止画撮影時にはクリックがあったほうが使いやすく感じることだろう。
ピーキングのレベルの強さやピーキングの色の指定も可能。マニュアルフォーカスで撮影することの多いユーザーは活用したい機能だ。
ゼブラとは、輝度が一定レベルを超える部分に出る斜めの縞模様のこと。白とびを避けるための目安となる。

 イメージセンサーは、前述しているとおり1型CMOSを搭載する。有効2,020万画素で、高感度特性と階調再現性に優れた裏面照射タイプだ。ボケや被写界深度のコントロールのしやすさも含め描写とセンサーサイズの関係を考えれば、1型センサーはある意味バランスのとれたものといえるだろう。なお、デフォルトのアスペクト比は3:2とする。常用感度はISO125からISO12800。拡張機能によりISO80相当からの設定を可能とするほか、マルチショットNR機能を使用した際、最高ISO25600相当での撮影も可能としている。

ベース感度はISO125だが、拡張機能によりISO80相当での撮影も可能。なお高感度側の拡張機能は、マルチショットNR機能を使用したときのみ、最高ISO25600相当での撮影を可能としている。
DレンジオプティマイザーやオートHDRの搭載も他のRXシリーズ同様とする。
仕上がり設定であるクリエイティブスタイルには、スタンダード/ビビッド/ニュートラル/クリア/ディープ/ライト/ポートレート/風景/夕景/夜景/紅葉/白黒/セピアを搭載。
ピクチャーエフェクトには、トイカメラ/ポップカラー/ポスタリゼーション/レトロフォト/ソフトハイキー/パートカラー/ハイコントラストモノクロ/ソフトフォーカス/絵画調HDR/リッチトーンモノクロ/ミニチュア/水彩画調/イラスト調を搭載。

 画像処理エンジンは最新の「BIONZ X」。最高コマ速は速度優先連続撮影モードで10コマ/秒、通常の連続撮影時で2.5コマ/秒を達成する。速度優先連続撮影モードも通常撮影と同様にメカニカルシャッターを使用するので、ローリングシャッター現象の心配は無用だ。

 さらに画像処理技術としてディテールリプロダクションと回折低減処理を新たに採用。前者は、時として嫌みな印象となることもある過度な輪郭強調を抑えながら、解像感を高めることでより質感再現性の高い描写が得られる。一方後者は、絞り込んだときに発生する回折現象に対し、フィルター処理により解像感を高めるものである。実際、その描写はどの絞り値においても解像感の低下は感じさせず、ディテールを損なうようなことなどない。1型センサーやカールツァイス8.3倍ズームレンズとともに、このカメラの優れた描写の源となるものである。

 電子ビューファインダーには、144万ドット有機ELのTru-Finderを採用。コントラストが高いうえに高精細でたいへん見やすく感じる。掲載した作例のほとんどはファインダーを覗いて撮影したものであるが、一眼レフに慣れた写真愛好家に限らず積極的にファインダーに接眼して撮影したくなることだろう。また、ファインダーアイピース部がカメラ背面部よりも後方に飛び出しているので、液晶モニター表面に顔の皮脂などが付着することが少ないのもうれしい部分だ。液晶モニターは3型122万ドットで、上方向84度、下方向43度のチルト式としている。

EVF内を撮影。左より情報表示なし、ヒストグラム、水準器となる。なお、格子線はデフォルトの設定では表示されない。
EVF使用時に向けた撮影情報表示。ここから各機能の設定変更も可能だ。
液晶モニターの表示画面。左より全情報表示、情報表示なし、ヒストグラム表示。格子線はデフォルトでは表示されない。
液晶モニターは3型122万ドット。チルト式としている。

 操作性に関する部分のトピックとしては、まずトップカバーにある露出補正ダイヤルと同じく液晶表示パネルの存在があるだろう。露出補正ダイヤルは±3段までの補正が可能で、右手親指で直感的かつ速やかに操作ができる。すでに珍しいものではないが、露出補正ボタン→コマンドダイヤルの順で操作するタイプとは比較にならないほど良好な操作性だ。

 液晶表示パネルには露出設定をはじめ、バッテリー残量、ISO感度、ホワイトバランスなど設定値を表示。カメラ背面の液晶モニターにも設定により撮影情報を表示できるが、デジタル一眼レフの操作に慣れたユーザーにとっては便利に感じられるはずだ。そのほか、メモリーカードスロットも多くのデジタル一眼レフ同様、ボディ側面に設置。いうまでもなく、三脚にカメラをセットしたときにも迅速なカード交換を可能とする。

バッテリーはNP-FW50を採用。フル充電からの撮影可能枚数は、液晶モニター使用時で約420枚、EVF使用時で約340枚。
独特の動きでポップアップするストロボを搭載。ガイドナンバーは公表されていないが、記念写真レベルであれば十分。
メモリーカードスロットはボディ側面に設けられる。三脚にカメラをセットした際でも、速やかにカードの交換ができる。
ボディ側面のインターフェースは、上からマイク端子、ヘッドホン端子、USBマイクロ端子、HDMIマイクロ端子。

 Wi-Fi機能に加えNFC対応も便利に思える機能。専用アプリ「PlayMemories Mobile」をスマートフォンやタブレットにインストールすることにより、RX10とスマートデバイスをタッチするだけで撮影画像を転送でき、さらにそれらのデバイスからリモートでシャッターを切ることもできる。カメラとデバイスの接続に手間がかからず、速やかに撮影した画像が転送できるため、SNSなどを楽しんでいるユーザーなどは見逃せない機能といえる。

メニュー最初の画面をグラフィック表示(左)にすることも可能。タイルメニューという。

 RX10は強いこだわりを持ってつくられたブリッジカメラだ。1型センサーにカールツァイスレンズを採用するなど描写を徹底して極め、ズーム全域でF2.8と開放絞りにもこだわる。その結果、ズーム倍率は控えめなものとなり、ボディも一回りほど大きくなってしまったが、それでもこのカメラを魅力あるものとしている。本テキスト執筆時点での実勢価格は12万9,800円前後。このカメラのコンセプトに共感できるなら、決して高い買い物ではないはずだ。

実写サンプル

  • ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

・感度

各サンプルのサムネイルはこの青枠部分を等倍で切り出しています

高感度NR:標準

ISO80(拡張)
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

高感度NR:弱

ISO80(拡張)
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

高感度NR:切

ISO80(拡張)
ISO125
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800

・作例

DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F5.6 / 1/640秒 / 13.4mm(36mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F2.8 / 1/200秒 / 30.8mm(84mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F2.8 / 1/80秒 / 25.2mm(69mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F2.8 / 1/25秒 / 15.1mm(41mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F2.8 / 1/640秒 / 39.2mm(107mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F8 / 1/320秒 / 8.8mm(24mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F5.6 / 1/640秒 / 8.8mm(24mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F8 / 1/500秒 / 16.8mm(46mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F8 / 1/160秒 / 24.3mm(66mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F8 / 1/125秒 / 29.8mm(81mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F4 / 1/400秒 / 65.2mm(178mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F4 / 1/1,250秒 / 25.7mm(70mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F4 / 1/1,250秒 / 44.5mm(121mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F13 / 1/125秒 / 9.9mm(27mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F2.8 / 1/1,600秒 / 9.3mm(25mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F5.6 / 1/1,250秒 / 24.8mm(67mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F5.6 / 1/200秒 / 37.5mm(102mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F9 / 1/80秒 / 73.3mm(200mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F5.6 / 1/800秒 / 41.8mm(114mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F5.6 / 1/640秒 / 13.9mm(38mm相当)
DSC-RX10 / 3,648×5,472 / ISO125 / F8 / 1/400秒 / 8.8mm(24mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F8 / 1/500秒 / 8.8mm(24mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F2.8 / 1/200秒 / 47mm(128mm相当)
DSC-RX10 / 5,472×3,648 / ISO125 / F4 / 1/640秒 / 54.9mm(150mm相当)

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。