新製品レビュー
FUJIFILM X-E2
全部載せのお値打ちミラーレス
Reported by澤村徹(2013/11/18 08:00)
富士フイルムのXシリーズは、ミラーレス機とコンパクト機の2本立てで展開している。ともに高画質重視のスタンスで、順次機能強化しながら発展してきたシリーズだ。しかしながら、新機能が色々なモデルに分散していた印象は否めない。ここで取り上げるX-E2は、分散していた機能を集約し、富士フイルムの持てる力をすべて盛り込んだモデルだ。いわば「全部載せ」のお値打ちミラーレス機である。
X-E2は外観こそ従来機X-E1を踏襲しているが、根本からブラッシュアップが施されたモデルだ。まず、イメージセンサーと画像エンジンはX100Sと同等。1,630万画素APS-CサイズのX-Trans CMOS IIセンサーを採用する。既存のXシリーズと同様、ローパスレス仕様の解像感を重視したイメージセンサーだ。
また、点像復元処理を搭載し、絞り込んでもシャープな写真が撮れる。過度に絞り込むと回折現象によって解像感が甘くなるが、レンズ個々の特性をプロファイル化し、回折発生前のシャープな像に復元するという機能だ。実際に試してみたところ、F5.6とF8の像はほとんど見分けがつかないくらいにシャープだ。F11でわずかに解像感が甘くなり、F16まで絞ると明らかに回折ボケが感じられる。そうはいっても、通常のF11やF16の画像と比べると、格段にシャープな絵作りだ。かっちり絞って撮れるというのは、本機の大きなアドバンテージといえるだろう。
このイメージセンサーは位相差画素を搭載しており、ハイパフォーマンスな像面位相差AFが使える。このハイパフォーマンスを後押しするのが画像エンジンのEXR Processor IIだ。従来比2倍の処理速度を誇り、公称値では、AF最速0.08秒、起動0.5秒、撮影間隔0.5秒、シャッタータイムラグ0.05秒だという。また、連写機能は7コマ/秒と一眼レフに負けず劣らず高速だ。ミラーレス機だからといって、手加減しながら使う必要はないだろう。
操作面で特徴的なのが、デジタルスプリットイメージだ。デジタルスプリットイメージは像面位相差センサーを利用したMFアシスト機能で、往年のスプリットスクリーンをデジタルで再現したものである。MFに切り替えるとモニター中央がモノクロ化し、その部分が4本の帯状になって像がズレている。この像のズレを合わせると、ピントが合うという仕組みだ。拡大表示に切り替えれば、モニター全面にスプリットイメージを表示することもできる。今回、オールドレンズを付けたX-E2でこの機能を試してみたが、EVFでデジタルスプリットイメージを使うと、さながらフィルムカメラを使っているような雰囲気だ。実用性もさることながら、撮影フィーリングを高めてくれる機能である。
本機はWi-Fi機能を搭載している。X-M1が同社ミラーレス機ではじめてWi-Fi機能を搭載し、それにつづく形でX-E2もWi-Fi機能を備えている。スマートフォン側で専用アプリを起動すれば、IDやパスワードを入力しなくてもX-E2と連携可能だ。カメラ側の画像をスマートフォンで閲覧したり、リサイズした画像をダウンロードできる。スマートフォンでSNSを活用している人であれば、X-E2の画像を撮ったその場でSNSにアップロードできるわけだ。シャッターボタン脇のFnボタンがWi-Fiボタンを兼ねており、再生モード時にこのボタンを押すだけでWi-Fi機能を呼び出せる。
前述の通り、X-E2はX-E1の外観デザインをほぼそのまま踏襲した。しかしながら、細かい部分で様々な改良が施されている。たとえば、露出補正ダイヤルは±3EVまで調節可能になり、シャッタースピードダイヤルは「A」の前後にスペースを設け、独立性を高めた。従来ひとつのボタンに割り当てられていたAE-L/AF-Lは、それぞれ独立したボタンに変更になっている。また、AFボタンを十字カーソルの下ボタンに割り当てて操作性を向上。その一方で、従来AFボタンがあった場所をFn2ボタンに変更し、拡張性を高めている。堅実なブラッシュアップを実感させてくれるモデルだ。
全部載せのX-E2は、Xシリーズの決定版といって差し支えないだろう。しかしながら、未見の新機能がないという点も事実である。安定感のあるモデルである一方、新鮮味に乏しいと感じた人もいるはずだ。この新鮮味という部分については、今後のX-Pro1後継機に期待したい。