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【新製品レビュー】市川ソフトラボラトリーSILKYPIX Developer Studio Pro 5

〜定番RAW現像ソフトに待望のMac OS X版が登場
Reported by 北村智史

 プロ、ハイアマチュア層から高い支持を集めている市川ソフトラボラトリーのRAW現像ソフトの最新バージョン。Windows版はすでに発売済みなのでもうかなり使い込んでいる人も多いと思うが、この6月にようやくMac OS X版も登場したので、この機会に試用レポートをお届けしたい。



 価格は、マニュアルが付属したパッケージ版が3万3,000円(こちらはWindows版のみ)、ダウンロード版は2万7,000円となっている。

 なお、同社のWebサイトから30日間無料体験が可能な試用版がダウンロードできるので、興味のある方は使ってみるといいだろう。


SILKYPIXならではの扱いやすい機能

 筆者が個人的に注目しているポイントは、HDRの搭載やノイズリダクションの強化、オートホワイトバランスのアルゴリズムが新しくなったことなど。そのほか、黒レベルツールだとかテイストだとかも気になっているし、ダイナミックデフォルトという考え方も興味深い。このあたりをまずはおさらいしていこう。

「HDR」機能はワンショットタイプで、暗部の階調を持ち上げてダイナミックレンジを拡張するものだ。操作はスライダーを動かすだけ(スライダーにマウスカーソルを重ねた状態でホイールを回すことでも操作できる。このやり方はなかなか面白いし快適だ)。控えめにやれば自然な効果が得られるし、大きく動かすとアートっぽい表現が楽しめる。明るさ違いの複数画像を合成するのではないから、動くものにも対応しやすいのが強み。反面、暗部のノイズが目立つようになるのはしかたのないところだ。


HDR。1枚の画像から生成可能。操作はスライダーで行なう

 その分、ノイズリダクションもいろいろと改良が加えられている。が、基本的に、ややこしいことをあまり考えなくてもいいのがありがたいところ。というのは、画像に合わせて現像パラメーターの初期値が変化する「ダイナミックデフォルト」が採用されているからだ。

 ダイナミックデフォルトは、撮像素子のサイズ、画素数、感度などに応じて、自動的にさまざまなパラメーターを最適化してくれるもの。感度を変えて撮った画像のノイズ除去のパラメーターを見てみると、ニコンD3200の場合、ISO100で「0」、ISO200で「10」、ISO400で「25」、ISO800で「35」、ISO1600で「45」、ISO3200で「55」、ISO6400で「68」、ISO12800相当(Hi1)で「78」になる。ほかのRAW現像ソフトなら、感度に合わせてノイズ処理の数値を手動で変えてやる必要があるが、SILKYPIXはまるっきりノータッチ。自動でやってくれるのだから、作業の効率がぐっとアップするわけだ。


ノイズリダクションの設定例。こちらはISO100。
ISO3200だとパラメーターが変化している。ほどよい値に自動的に調整してくれるので、作業効率がいい。

 新アルゴリズムの「オートホワイトバランス」も見逃せない。たいていのソフトは1種類のオートホワイトバランスだけだが、SILKYPIXには「絶対」と「自然」の2種類が搭載されている。前者はとことん色の偏りを補正するタイプで、正確な結果が期待できる反面、風情のない仕上がりになりやすい。後者は光源の色味をほどよく残す雰囲気重視タイプで、白熱灯との相性がいい。


ホワイトバランスを「Auto(絶対)」に設定した状態。
ホワイトバランスを「Auto(自然)」に設定した状態。

 そのうえ、白熱灯と蛍光灯が入り交じった室内や夜景、日中シンクロといったシーンで役に立ってくれる「ミックス光補正」機能もある。

 プリセットの昼光モードにしても「晴れ夕方」「快晴」「晴れ」「曇り」「晴天日陰」「快晴日陰」「日出前・日没後」の7種類が用意されている。もちろん、設定したホワイトバランスから色温度や色偏差と言ったパラメーターを、手動で微調整することもできる。盛りだくさんなうえに、ものすごいまめさなのである。こういうところは本当に素晴らしいと思う。


選択可能なホワイトバランス。昼光だけでも7種類用意されている

色収差の補正も簡単

 筆者の場合、RAW現像は、白、黒、中間の順に操作するのを基本にしている。まず、ハイライトの明るさを決めて、次にシャドーの暗さ、それから中間調を整える、といった具合。Adobe Photoshop的にいえば、レベル補正とトーンカーブ。最後にコントラストを微調整。なので、この流れでやらせてくれないソフトがとても苦手だったりする。

 SILKYPIXだと、ハイライトの調整は「露出補正」、シャドーの調整は「調子」の「黒レベル」で行なうことになる。それぞれスライダーを動かして調整するが、「露出補正ツール」「黒レベルツール」を使うと手っ取り早い。「ここを白にしたい」「ここを黒にしたい」ポイントをクリックするだけなので、カメラのブツ撮りなんかにはばっちりなのだ。で、トーンカーブをいじって中間調の明るさ、コントラストの微調整でおおざっぱにはOK。このへんの流れも快適に操作できる。

 あと、倍率色収差やディストーション(歪曲収差)、シェーディング(周辺光量)の補正も簡単。倍率色収差などはワンクリックもしくは範囲選択するだけでばっちりに仕上げてくれる。今までだとシャープネスをめいっぱい下げたりの下準備をしてから400%くらいに拡大してちみちみやっていたのだが、そんなのが嘘みたいに本当にらくちんなのだ。画面の傾きの調整も、水平にしたい直線成分に沿ってラインを引けばいいだけ。簡単すぎて唖然とするほどだ。


倍率色収差が見られるエッジをドラッグして囲む。
自動的に倍率色収差が補正される。素晴らしい。


SILKYPIXで開いたところ。歪曲収差の補正のため、グリッドを表示している。
「歪曲率」を「-4.0」に設定した状態。歪曲収差が補正された

 調整したパラメーターをコピーして、それを別のカットに貼り付けることもできるので、大量の画像を処理する際の効率アップがはかれる。

 また、いろいろなパラメーターのセットを「テイスト」として登録しておいて、ワンクリックで適用できるのも便利な点。自分なりの標準現像のテイストやアート系のテイストを作っておくといった使い方ができる。このテイストはぜひとも使いこなしたい機能だと思う。


プリセットのテイスト。新たなテイストを作ることや、ダウンロードも可能だ


まとめ

 このジャンルには、Adobe Photoshop LightroomやアップルのApertureをはじめとする強力なライバルが多い。とはいえ、SILKYPIXも機能の多彩さではひけはとらないし、ハイライト部分の色味を調整する「ハイライトコントローラ」や色別に色相や彩度、明度を調整できる「ファインカラーコントローラ」といった細かい設定が可能なところなどは、1枚1枚の写真に徹底的にこだわりたいユーザーには強い味方になってくれるのではないかと思う。作品づくりのためのRAW現像ソフトを探している人にこそおすすめしたい。


現像サンプル

・HDR

 ワンショットタイプのHDRで、動く被写体にも対応できるのが強み。「0」から「30」くらいまでならわりと自然に仕上がる。「50」以上になると明暗差の大きなエッジ部分に不自然な縁取りが出てくる。めいっぱい上げるとアート系のエフェクトをかけたような仕上がりとなる。これはこれで面白い。


オリジナルのJPEG画像。E-M5 / M. ED 9-18mm F4-5.6 / 4,608×3,456 / 1/400秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:晴天 / 10mm(20mm相当) 無調整で現像
HDR「25」で現像した状態 HDR「50」で現像した状態。
HDR「75」で現像した画像。 HDR「100」で現像した画像。

・ノイズリダクション

 HDRを使ったり、高感度で撮った画像のノイズ処理はめんどうなものだが、SILKYPIXではダイナミックデフォルトという手法のおかげで、ややこしいことを考えずにすむのがうれしい点。もちろん、ノイズ処理自体も非常にハイレベルで、オリジナルのJPEG画像と比べると1〜2段分はいいように思う。

オリジナルのJPEG画像。ISO100。D3200(以下同) 無調整で現像した画像。ISO100。「偽色抑制」は「20」、「ノイズ除去」は「0」
オリジナルのJPEG画像。ISO200 無調整で現像した画像。ISO200。「偽色抑制」は「20」、「ノイズ除去」は「10」
オリジナルのJPEG画像。ISO400 無調整で現像した画像。ISO400。「偽色抑制」は「25」、「ノイズ除去」は「25」
オリジナルのJPEG画像。ISO800 無調整で現像した画像。ISO800。「偽色抑制」は「35」、「ノイズ除去」は「35」
オリジナルのJPEG画像。ISO1600 無調整で現像した画像。ISO1600。「偽色抑制」は「45」、「ノイズ除去」は「45」
オリジナルのJPEG画像。ISO3200 無調整で現像した画像。ISO3200。「偽色抑制」は「55」、「ノイズ除去」は「55」
オリジナルのJPEG画像。ISO6400 無調整で現像した画像。ISO6400。「偽色抑制」は「68」、「ノイズ除去」は「68」
オリジナルのJPEG画像。Hi1(ISO12800相当) 無調整で現像した画像。Hi1(ISO12800相当)。「偽色抑制」は「82」、「ノイズ除去」は「78」。

・ホワイトバランス

 オートホワイトバランスには「Auto(絶対)」と「Auto(自然)」の2種類があって、好みに合わせて使い分けられる。前者は色の偏りを徹底的に補正するタイプで、後者は光源の色味を残す雰囲気重視タイプ。また、プリセットのホワイトバランスも種類が豊富だ。


オリジナルのJPEG画像。D700(以下同) 無調整で現像した画像
ホワイトバランスを「Auto(絶対)」で現像した画像 ホワイトバランスを「Auto(自然)」で現像した画像

OLYMPUS Viewer 2で現像した画像。E-P3(以下同) 無調整で現像した画像
ホワイトバランスを「昼光(日出前・日没後)」で現像した画像

・倍率色収差

 倍率色収差の補正は半自動化されていて、マウスでクリックするか範囲選択するだけで最適なパラメーターが自動的に設定される。


オリジナルのJPEG画像。こちらも倍率色収差の補正はなされているようだ。E-M5(以下同) 無調整で現像した画像。オリジナルのJPEG画像に比べると、倍率色収差は大きめだ
倍率色収差が補正された画像

・テイスト

「テイスト」はさまざまな現像パラメーターをワンセットにしたもので、あらかじめSILKYPIXに組み込まれているもののほかに、自作のテイストを登録することもできる。いったん登録したテイストは、ほかの画像にワンタッチで適用できるので、よく使う設定を組んでおくと便利だろう。


OLYMPUS Viewer 2で現像した画像。E-P3(以下同) 無調整で現像した画像
テイスト「ノスタルジックトイカメラ」を適用して現像した画像

OLYMPUS Viewer 2で現像した画像。E-P3(以下同) 無調整で現像した画像。
「ノスタルジックトイカメラ」に「レッドエンハンサー」を重ねて適用して現像した画像


・パラメーター設定例


Digital Photo Professionalで現像した画像。EOS 10D 無調整で現像
ホワイトバランスを「昼光(快晴)」に 「黒レベル」を「20」にアップ
「ファインカラーコントローラ」で青色成分だけ彩度を「33.5」にアップ さらに青色成分の「明度」を「-25.8」に下げて現像

View NX 2で現像した画像。D80 無調整で現像した画像。
ホワイトバランスを「6300K」に設定して現像した画像。 露出補正を「-2/3」にして夕方っぽさを強調。

オリジナルのJPEG画像。E-M5 無調整で現像した画像。
まずは、気付かないうちにホワイトバランスが「水中」に変わっていたのを修正。空の青色がニュートラルになった。 雲の調子を出すために露出補正を「-1.00」にセット。
画面全体が暗くなるので、HDRを「30」にアップした。このくらいまでなら、違和感はそれほどないと思う。 もう少し暗い気がするので「トーンカーブ」を少し持ち上げてみた。
「ファインカラーコントローラ」で青色成分の彩度を「30.0」、明度を「-20.0」に。

※RAWで撮影することのメリットを解説したSILKYPIXの公式動画です。







北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。

2012/7/25 11:44