【新製品レビュー】オリンパスSH-25MR
現在、オリンパスのレンズ一体型デジカメは、4つのシリーズに分類されている。レンズ交換式に迫る高画質を追及した「Xシリーズ」。高倍率ズームレンズを搭載したハイパフォーマンスな「Sシリーズ」。防水・耐衝撃のタフネス仕様の「Tシリーズ」。そして、使いやすさを追及した「Vシリーズ」である。
今回のSH-25MRは、高倍率ズームレンズとハイパフォーマンスが身上の「Sシリーズ」に属するモデルで、広角24mm相当をカバーする光学12.5倍ズームレンズを採用。そして、2つの画像処理エンジンによる「マルチレコーディング(MR)機能」を搭載している。マルチレコーディング機能こそが、他のSシリーズモデルと一線を画する点だ。ちなみに、マルチレコーディング機能の搭載は、2011年4月に発売されたSZ-30MR以来となる。
撮像素子は、有効1,600万画素の裏面照射CMOSセンサー。画像処理エンジン「TruePicⅤ」との相乗効果により、高感度、低ノイズ、高速AFなどを実現したという「iHSテクノロジー」への対応を標榜する。
また、GPS機能も搭載。ロガー機能や電子コンパスも利用可能で、ランドマーク情報の記録や表示も行なえる。
操作面では、タッチパネルの搭載が特徴的。タッチ操作でピント位置を決めたり、シャッターを切ることができる。また、後述するiAUTOモード時の「ライブガイド」の設定操作も行なえる。
■使い出のある「マルチレコーディング」
個人的に前モデルSZ-30MRで印象に残ったのは、マルチレコーディング機能の優秀さや便利さ。それと、独特なボディデザインだった。ポップアップ式の内蔵ストロボの出っ張り具合は一眼レフカメラのペンタ部のようだし、鋭角的なグリップ部もどこか一眼レフカメラっぽい雰囲気。あと、ボディカラーは、シルバーとブラックの2種類あったが、どちらのタイプもトップカバー表面の光沢が強い。そのため、いつもキラキラと強烈に反射していて、個人的にはちょっと煩わしく感じられたものだ。
今回のSH-25MRは至って大人しいデザインという印象を受ける。そのぶん、少し古い表現だが「羊の皮を被った狼」的なモデルといえるかもしれない。
実際に手にすると少し重みを感じた。CIPA準拠の重量は208gと大した数値ではないのだが、スリムで軽快に見える分だけ、逆に重く感じるのかもしれない(ちなみに、SZ-30MRは226g、SH-21は184g)。
Sシリーズのウリのひとつに高倍率ズームレンズの搭載が挙げられるが、SH-25MRは光学12.5倍とさほど高倍率ではない。SH-21と並び、現行のシリーズ中で最も低い倍率である(どちらも24-300mm相当の画角をカバー)。だが、超解像技術を使用した「超解像ズーム」が搭載されているので、利用することで25倍の高倍率が得られる。なお、前モデルSZ-30MRには、25mm相当からの光学24倍ズームレンズが搭載されていた。
ズーム時の作動音が小さめなので、動画撮影中に使用してもあまり気にならない。また、その際のレスポンス(スタートやストップ、ズーム速度など)もまずまずで、小刻みなズーム操作(画角調整)にも割と好ましい反応を見せてくれる。
手ブレ補正にはCMOSシフト式を採用し、これに高感度撮影を併用して、オリンパスでは「DUAL IS」と呼んでいる。
8群9枚構成の光学12.5倍ズームレンズを搭載。24-300mm相当の画角をカバーする。開放F値はF3-5.9 |
SZ-30MRやSH-21と同様、撮像素子は1/2.3型有効1,600万画素の裏面照射型CMOSセンサーが採用されている。感度設定はISO80、100、200、400、800、1600、3200、6400。自動設定は「オート」と「高感度オート」が選択できる。
画像処理エンジンは、PEN Lite E-PL2などにも採用されているTruePicⅤを2つ搭載した「Dual TruePicⅤ」。これによって、高度な同時記録「マルチレコーディング」を可能にしている。ちなみにSZ-30MRの画像処理エンジンは「Dual TruePicⅢ+」だった。
マルチレコーディングが実現する主な機能は次の通り。
- マルチフレーム:全体と画面の一部分のアップが同時に撮影できる(※動画も対応)
- マルチサイズ:画像サイズ(画素数)の違う写真や動画が同時に記録される。
- マジックフィルター:フィルター効果を加えた写真とオリジナルの写真が同時に撮影できる。
- フォト・イン・ムービー:フルHD動画を録りながらフル画素の写真も撮れる
これらの撮影機能は、SZ-30MRでも可能だったわけだが、SH-25MRはタッチ機能を搭載したことで、マルチフレーム時にアップにしたい被写体を画面タッチで設定できるようになった。
マルチレコーディング機能を解説する画面。マルチフレーム | マルチサイズ |
MAGIC+オリジナル |
マルチフレーム撮影中の画面 | MAGIC+オリジナル撮影中の画面 |
MRモードなどで撮影されたグループ画像は、再生時にこのように表示される。そして、ズームレバーを望遠側(時計回転方向)に操作すると展開される(シャッター前後の数秒を自動で動画記録する「回想フォト」は例外)。 |
そして、マジックフィルターには「ランダムタイル」と「ドラマチック」が新設され計12種類となった(SZ-30MRは8種類)。モードダイヤルにはマジックフィルターのみが撮影できる「MAGIC」もあるので、オリジナル画像が必要ない場合には、こちらのモードを選択してもいい。
マジックフィルター「ランダムタイル」。並ぶ間隔はカットごとに微妙に変化する | マジックフィルター「ドラマチック」。O-MDやPENシリーズに搭載されるアートフィルター「ドラマチックトーン」に似ている |
動画撮影に関しては、1080p(1,920×1,080/30fps、H.264)のフルHD動画記録に対応しており(MOV/H.264・30fps)、音声記録方式はステレオリニアPCM。動画撮影中の光学ズーム使用やAF駆動にも対応している。
■GPS機能はロガーとランドマーク表示に対応
SZ-30MRとSH-21に搭載されていない機能としては、GPS機能が挙げられる。位置情報を取得できると同時に、195の国と地域の約70万件のランドマーク表示に対応。撮影時や再生時、モニター上にランドマーク名が表示される。
撮影していない状態でも一定間隔で測位を続けて記録するロガー機能も搭載しているので、その記録情報を使用して後からパソコン上で移動の軌跡を表示させることもできる。ログファイルはメモリーカード(GPSLOGフォルダ)に記録される。
A-GPSにも対応しており、事前にGPSアシストデータをパソコン経由で更新することで、測位情報が取得しやすくなる。今回、実際に使用してみても、多くの場合は短時間で情報が取得でき、かなり満足度は高かった。
GPS設定 | GPS衛星の補足状態を表示 |
3型46万ドットのTFTカラー液晶モニターは明るくメリハリがあって見やすい。そして、タッチパネルも使いやすい。タッチによるAFと、タッチシャッター(AFでピントを合わせて自動でシャッターが切れる)の切り替えは、画面上のタッチショットのアイコンに触れると切り替わる簡単な方式だ。また、タッチによるAFやシャッターのレスポンスも良好である。
使用電源は、SZ-30MRやSH-21と同じ充電式バッテリーLI-50B。2つの画像処理エンジンが災いしてか、SZ-30MRのときはバッテリーの容量不足を痛感した。ちなみにSZ-30MRでの撮影可能枚数は約200枚だったが、SH-25MRでは約240枚とやや向上している(いずれもCIPA規格準拠。平均値)。とはいえ、実際に使用してみると、こちらでも容量不足を感じてしまう。数多く撮影するつもりなら、予備バッテリーの準備は必須だろう。
画質はけっこう良好な部類に入ると思う。高感度画質に関しても、同様の撮像素子を搭載する他モデルに引けを取らないだろう。しかし、スリムなボディに合わせたレンズ設計の影響だろうか、光学12.5ズームの描写性能は「いま一歩」という印象を受けた。
記念撮影や旅行スナップといった、コンパクデジカメでの一般的な用途だと、さほど不満に感じないかもしれない。だが、SZ-30MRの光学24倍ズームは、予想以上にシャープで安定した描写が得られただけに、SH-25MRのレンズは周辺部の描写などにやや物足りなさを感じてしまう。
なお、フルHD動画の画質に関しては、おおむね好印象であった。
最も簡単な撮影モード「iAUTO」時には、鮮やかさ、色合い、明るさが「ライブガイド」で直感的に調節できる。タッチパネルパネルはここでも活躍する。 |
これは「色合い」調整の画面。画面右に表示されるガイドバーを上下にスライド(タッチ)することで、色調がコントロールできる。 |
撮影モードでの画面表示。上側にはGPSの位置情報が表示され、右側にはファンクションメニューが縦に並ぶ。上から下へとメニュー項目を移動させていく(選択する)と、5段目のホワイトバランスの所で移動がいったん止まってしまう。これにはイライラさせられる。 |
■まとめ
ボディデザインやレンズの仕様を見ると、SH-21をベースにした製品だというのがわかる。だが、マルチレコーディングが可能な点を考えると、SZ-30MRと比較してしまうのは、致し方ないところだ。
もちろん、SH-25MRとSZ-30MRのデザインやズーム倍率の違いは、個人の嗜好性や用途の違いに少なからず影響を与える。
奇抜なスタイルのボディに高倍率なズームレンズを搭載したSZ-30MRは、望遠撮影に強い個性的なカメラを欲している人にアピールする製品だった。
一方、スマートなデザインで適度に高倍率なズームレンズを搭載したSH-25MRは、一般的なファミリーユースを想定するユーザーの眼には魅力的に映るだろう。
だが、嗜好性や用途の違いはどうあれ、マルチレコーディングがいろんな被写体や撮影シーンに有効という評価に異論を挟む人はいないはず。考えてみれば、運動会や発表会、お祭りや各種のイベント会場など、一般的なファミリーユースでは「ビデオ撮影と同時に写真も撮りたい!」とか「ステージ全体だけでなく、我が子のアップも撮りたい!」といった欲求も出てくる。
スリムで親しみやすいボディに、マルチレコーディング、タッチショット、GPS機能など、先進の機能を多数搭載。撮影ジャンルとは関係なく、多くのユーザーにおすすめできるモデルに仕上がっている。
グリップ側の側面のコネクターカバー内には、HDMIマイクロコネクタとマルチコネクタがある。 | 記録メディアはSDXC/SDHC/SDカード。UHS-IやEye-Fiカードにも対応する。Eye-Fi送信予約機能も備えている |
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・画角
・感度
全般的に、細部描写よりもノイズを目立たせないことを重視した絵作りのようである。そのせいか、最低感度のISO80からISO200くらいまではノイズ感が気になることは少ない。ISOISO400くらいに少しノイジーになってきて、モノの描写自体もノッペリした印象になる。それ以上の感度になると、当然段階的に画質劣化が目立ってくるが、ISO1600くらいまでは意外と良好。色再現もISO1600くらいまでは良好である。あと、これはレンズ描写の問題になるが、画面周辺部の像の乱れが残念だ。
・マクロ
マクロモードの切り替えは、ファンクションメニューからおこなう。マクロモード時は、広角端で10cmまで望遠端で90cmまで被写体に接近できる。スーパーマクロモード時はズーム位置が固定されるが、(標準の画角で)1cmまで被写体に接近できる。
■HDR逆光補正
通常撮影。SH-25MR / 約6.8MB / 4,608×3,456 / 1/200秒 / F3 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.2mm | HDR逆光補正モード。動きのない被写体に向いている。SH-25MR / 約6.2MB / 4,608×3,456 / 1/200秒 / F3 / 0.0EV / ISO80 / WB:オート / 4.2mm |
■手持ち夜景
ソニーのサイバーショットシリーズにも同じ名称の同様の撮影モードがあるが、そちらと比べると仕上がり結果はイマイチ。ISO感度(自動設定)があまり高く設定されないので、照明状態によっては露出不足のカットが出てくる。また、ノイズが目立たないのはいいのだが、シャープネスや質感描写には不満が残る。
通常撮影(ISO1600に設定)。SH-25MR / 約6.8MB / 4,608×3,456 / 1/4秒 / F3 / 0.0EV / ISO1600 / WB:オート / 4.2mm | 手持ち夜景モードで撮影。SH-25MR / 約3.6MB / 4,608×3,456 / 1/2秒 / F3 / 0.0EV / ISO400 / WB:オート / 4.2mm |
■高速連写
光学ズームの倍率はSZ-30MRに負けているが、連写能力に関しては逆に勝っている。1,600万画素のフル画素で撮影できる「連写2」は約7コマ/秒・最大約5コマまでから、約10コマ/秒・最大約12コマと高速化されている。
最も高速な「高速連写」も約15コマ/秒・最大約70コマ(5M以下)から、約60コマ/秒・最大約75コマ(3M以下)と、大幅にスピードアップしている(SH-25MRは高速連写2の値)。
高速連写だとISO感度が自由に設定できないので、思うような高速シャッターが得られないというジレンマはある。それと、SZ-30MRと同様、高速連写モード時の描写(画質)は、画像サイズが小さい点を考慮しても粗っぽくて不満が残る。あと、SZ-30MRと同様「オート分割連写」を搭載している。
・作例
・動画
- 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
マルチレコーディングの機能を生かして、フルHD動画の録画中にフル画素(16M)の静止画を撮影。静止画のレリーズ時には一瞬画面が白くなり撮影画像が画面左下の小さな画面に表示されていく。もちろん、このモニター画面の変化は実際の動画には影響しない。
動画と同時に記録された静止画 |
動画。約87.2MB / 1,920×1,080 / 30fps / H.264 |
三脚を使用して撮影。ムービーメニューの「風切り音低減」をOnに設定している。
約53MB / 1,920×1,080 / 30fps / H.264 |
2012/4/12 00:00