【新製品レビュー】PENTAX K-01
一風変わった外観が目に飛び込んでくるが、外観デザインはオーストラリア出身のデザイナー、マーク・ニューソン氏によるもの。そんな斬新なデザインに負けじと、内容も新たにペンタックスブランド初のAPS-Cセンサー搭載のミラーレス構造としている。
外観ばかりが話題となりつつある本機だが、実力もかなりのもの。そんなペンタックスK-01を紹介していこう。
発売は3月16日。実勢価格は、smc PENTAX-DA L 18-55mm F3.5-5.6 ALが付属するズームレンズキットが6万800円前後、smc PENTAX-DA 40mm F2.8 XSが付属するレンズキットが6万9,900円前後、ズームレンズキットにDA 55-300mm F4-5.8 EDをセットにしたWズームレンズキットが7万6,600円前後。
■斬新な見た目と高い質感
マーク・ニューソン氏は工業製品を中心とするデザイナー。本機のフォルムはクセが強いだけに賛否両論あると思うが、数多あるカメラの中でもひと目でわかるのは氏独特の世界観に寄るものだ。
特に店頭でのアイキャッチは圧倒的。やや大柄なボディと相まって量販店店頭での存在感は、他に類を見ることがない。
細部に目をやるとボディ前面を覆う縦縞模様のラバーや煙突風のモードダイヤル、ボディ一体化のレンズ着脱ボタン、直線上に配置された上、背面ボタン類など、デザインを前面に押し出した佇まいは潔く美しい。
これらを既存のカメラの尺度で評価すれば、マイナス要素も多いが、ウキウキする気持ちこそが本デザインの取り柄。整然とシンプルな構成で配されたボタンやスイッチなど、思わず手にしたくなる衝動にかられる魅力を持ち、実用性のバランスとうまく保たれている。
シルバーのトップ部にはストロボを内蔵。内蔵式電子ビューファインダー(EVF)や外付けEVFは用意されていない。 | これまでプリズムなどが置かれていたレンズ軸上の上部にはストロボを配置。ポップアップさせるとパンタグラフ式で思いほか発光部が高く配置される。高くすることで、赤目発症を防げる。 |
ストロボ横の煙突のように生えた上部に置かれているのは、露出モードダイヤル。アルミ製で質感は高い。ちなみに645Dはプラスチック製だ。 | 上部ボタンや背面部のボタンが直線上に配されているのが目を引く。触感は同じためブラインドタッチは難しいが、デザイン優先と見れば、致し方ないところだ。 |
このデザインを成功させるには、ミラーレス構造を採用したボディの功績も大きい。レンズ光軸上の本来、光学ファインダー用にプリズムが入る場所にはストロボを搭載。すっきりとした上面部はミラーレス構造の恩恵に寄るものだ。
同社としてはノンレフレックス機(ミラーレス機)はPENTAX Qに続く、2台目。Qは小型イメージャーや専用レンズマウントを採用して、超小型を狙ったが、一転、本機ではフィルムカメラから脈々と受け継がれているKマウントを踏襲。マニュアルレンズを含め、214種類、2000万本を超えるレンズからチョイスが可能だ。
グリップ部のラバーをめくると各端子やカードスロットが現れる。メモリーカードはSDXC/SDHC/SDに対応。しっかりとはめ込まないとラバーが浮きがちなのがやや残念。 |
■Kシリーズを踏襲した機能。ただしAFはコントラストAFのみ
デザインなどが先行しがちな製品だが、画質やAFスピードなど、カメラの本質的な部分も気になるところ。撮像素子は有効約1628万画素のAPS-Cサイズのソニー製CMOSセンサーを採用。ISO100-ISO12800(カスタムにてISO25600も可能)までのISO感度設定が可能だ。エンジンにおいては新開発のPRIME Mとして、動画にも注力している。詳しくは後半のサンプルをご覧頂きたいが、静止画画質の超高感度域もISO1600なら、画質的にも十分満足がいくものだ。
APS-Cサイズ相当のCMOSセンサーを搭載する。有効画素数は約1,628万。 |
オートフォーカスはK-5やK-rなど光学式ファインダー機ではポピュラーな位相差式から変わり、ノンレフレックス機で一般的なコントラスト式となった。コントラスト式は文字通り明暗差を見ながらピントを動かすために、レンズの相性などを含む精度は高いものの、位相差式に比べて少し合焦までに時間がかかるのがネックだ。本機も例に漏れずK-5などで体感するスピードには劣る。特に暗いシーンでは顕著に感じられた。そもそも位相差用のレンズをコントラストAFで制御する関係からも本機は不利と言える。
ただ駆動式ミラーが無いぶん、静粛性に有利に働くなど、トレードオフな部分も多い。この辺は今後の課題だろう。
ミラーボックス内(ミラーレスのため、呼び方が難しいが)下部には、AFセンサーを配置していた名残が。コストダウンからの流用とのこと。なお通常、シャッターは閉じている。この深さを利用して、沈胴式レンズ登場もあり得るのかも!? | AF/MF切り替えスイッチは指標が省かれて、ひと目で確認しづらい。実際にはさほど影響のない部分だが、マーク・ニューソン氏の意向だそうだ。 |
動画性能においても、H.264方式の1,920×1,080ピクセルのフルHD動画撮影、より楽しめるようにカスタムイメージ処理の併用やインターバル動画など注力が光る。
また最近のカメラには必須となりつつある、画像エフェクトも盛りだくさん。カスタムイメージでは「銀残し」や「クロスプロセス」など11種類。さらにミニチュアなどデジタルフィルターに至っては全19種類から楽しめる。カスタムイメージとデジタルフィルターが明確に整理できていないような気もするが、写真表現の幅を広げる機能としては歓迎。なお筆者の記憶がたしかならば、この手のデジタルフィルターやHDRをレンズ交換式カメラに内蔵にしたのは、同社が初であったように思う。
カスタムイメージやデジタルフィルターなど、Kシリーズユーザーならおなじみの機能を搭載 |
■まとめ
Kマウントをそのままノンレフレックス機に転用した初の機体。レフレックスミラーの名残から、ボリューム感のあるボディとなってしまったが、その大きさがあるからこそマーク・ニューソン氏のデザインが見栄えする感じすらある。中身もK-5などの血を引き継ぎ、ポップデザインらしからぬ、骨のある内容。デジタルフィルターなどと合わせて、楽しんで撮るもよし。動体や速写を優先しなければ、しっかり撮りたい方にもおすすめできる。個人的には、Kマウントノンレフレックス機の今後の進化に期待大だ。
バッテリーはK-5、645D等と共通のD-LI90P。撮影可能枚数は約500枚を誇る。浅めのグリップに伴い、K-5のようなボディに垂直でなく、沿うかたちで装填する。 |
本機と同時発表となったsmc PENTAX-DA 40mm F2.8 XSの薄さも特筆すべきもの。デザインはボディ同様にマーク・ニューソン氏が手がけたものだ。もちろん、フォーカスリングも周囲に配置されている。 |
smc PENTAX-DA 40mm F2.8 XSの最短撮影時と無限遠時。外径よりもひときわ小さなレンズが出入りするのはなんともユーモラス。使用可能レンズはKAマウント系全般。長年のペンタックスユーザーにはうれしい仕様だ。 |
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・HDR
AUTO/レベル1/レベル2/レベル3の4つから選択可能。このシーンではAUTOではやや効果が弱く、レベル2くらいから、HDRらしい雰囲気が味わえた。
・感度
基本感度のISO100から最高ISO12800。感度拡張によりISO25600まで可能。新エンジンの恩恵か、ISO1600くらいまで対ノイズと解像がバランスよく、ディテールをしっかり見せる。用途次第でISO3200でも常用可能だ。
・作例
・動画
- 動画のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。
- 再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
約157MB / 1,920×1,080 / H.264 / 30fps |
2012/4/2 00:00