【新製品レビュー】カシオHIGH SPEED EXILIM EX-FH25

裏面照射型CMOSセンサーを搭載した超高速連写機
Reported by 北村智史

 HIGH SPEED EXILIM EX-FH20の後継モデル。いわゆるネオ一眼系スタイルのボディに光学20倍ズームレンズを搭載している。撮像素子はEX-FH20と同じ1/2.3型のCMOSセンサーだが、裏面照射型に変更したうえ、有効画素数を910万画素から1,010万画素にアップさせている。

 最高40コマ/秒の超高速連写、1,000fpsの超高速動画といったハイスピード系スペックも継承。大手量販店の店頭価格は4万9,800円程度だ。


26〜520mm相当の光学20倍ズームレンズを搭載

 外観を見るかぎり、EX-FH20との大きな違いはあまりなく、レンズ部前縁にゴールドのリングと鏡胴側面の「HS」のプレートがアクセントとしてあしらわれているのが見わけるポイントと言える。大きさ、重さはまったく同じ数字だ。

 撮像素子は有効1,010万画素のハイスピード仕様のCMOSセンサー。裏面照射型とすることで感度アップを図っており、EX-FH20の感度設定範囲がISO100〜1600だったのに対し、本機はISO3200までとしている。

 レンズは従来どおり、35mmフィルムカメラ換算で26〜520mm相当F2.8〜4.5。センサーシフト式の手ブレ補正機構が内蔵されている。高倍率ズーム機としては起動は遅くなく、ズームの作動スピードも不満を感じないレベル。広角端はタル型の歪曲収差がやや目立つが、光学20倍ズームであることを考えれば良好と言える。四隅の画質の崩れもそれほど気にならない。

 最短撮影距離は広角端で12cm、望遠端は1.5m。マクロモードに切り替えても制御が変わるだけで数字は同じ(近距離の被写体を撮るときはマクロモードに切り替えた方が短時間でピント合わせができるという違い)。スーパーマクロモードでは焦点距離が57mm相当に固定され、レンズ前1cmまで寄れるようになる。

 記録メディアはSDHC/SDメモリーカード+85.9MBの内蔵メモリ。記録形式はJPEGのほか、RAW(DNG)も選択できる。JPEG時のファイルサイズは2MBから8.8MB(10M、ファイン)程度。電源は単3電池×4本で、CIPA準拠の撮影可能コマ数はアルカリ乾電池で340コマ、ニッケル水素電池では490コマ。FH20(アルカリ乾電池で230コマ、ニッケル水素電池で400コマ)を上回る数字だ。

搭載レンズは26〜520mm相当の光学20倍ズーム。開放F値はF2.8〜4.5。前縁のゴールドのリングがEX-FH20との違い
広角端での出っ張り具合はこれくらい望遠端までズームするとここまで伸びる
センサーシフト式の手ブレ補正機構を内蔵。「ブレ軽減」を「オート」にしておくと、感度アップによる被写体ブレ軽減も行なわれる鏡胴側面。「HS」のプレートも新しい。右側のAEロックボタンは、AFロックやダブルロックに機能を変更することも可能だ
レンズ前1cmまで寄れるスーパーマクロ時の表示。焦点距離は57mm相当に固定され、光学ズームが使えなくなる
EVF(電子ビューファインダー)は、20.16万ドットの0.2型液晶を採用。左側のボタンを押すと、液晶モニターと交互に切り替わる「LCD優先する」を選ぶと、EVF使用時にも再生とメニューは液晶モニターに表示されるようになる。普通はこっちのほうが便利
記録メディアはSDHC/SDカード(本当は裏向きに装填する)
電源は単3形電池×4本。カメラに付属しているアルカリ乾電池だと、CIPA基準で340コマ撮れる電池の種類の設定画面。アルカリ乾電池とニッケル水素電池が選べる。ちゃんとやっておかないと、残量表示が不正確になったりするので要注意
露出モードはオート(プログラムAE)だけでなく絞り優先AEやシャッター優先AE、マニュアル露出まで搭載しているマニュアル露出時は左右キーで絞りやシャッター速度を切り替える。SETボタン押しで絞りとシャッター速度を交互に切り替える
「AFエリア」を「フリー」にすると、測距点の位置を自由に変えられる。画面中心からの距離の目安の数字も表示される測距点の位置をめいっぱい左上にずらした状態

進化が見られる高速連写とHS動画

 高速連写とHS(ハイスピード)動画は、先代のEX-FH20よりも若干進化。といっても、連写スピードは40コマ/秒のまま、動画のフレームレートも1,000fpsのままで変わりはない。が、連写時の記録画素数やモード数に変化が見られる。

 高速連写は、EX-FH20が3,072×2,304ピクセル(約708万画素)だったのに対して本機は3,456×2,592ピクセル(約896万画素)。また、HS動画も120fpsと30-120fps(640×480ピクセル)、240fpsと30-240fps(448×336ピクセル)、420fps(224×168ピクセル)、1,000fps(224×64ピクセル)の計6モードに増え、同時に記録画素数も増加している。

 なお、普通の動画(HDとSTD)は音声付きだが、動画撮影中に光学ズームが使えるようにすると音声なしとなる(音声付きにすると光学ズームは不可になる)。といっても、ズームするとピントがズレてしまうので(ズーム動作中はAFが動かないために、特に広角から望遠にズームするとピンボケが目立ってしまう)、ズームできるメリットはけして大きくはないと思う。また、HS動画でも30fpsの状態では音声付きとなる。

 その一方、連写可能なコマ数が40コマから30コマに減っているのは残念な点だ。なにしろ、40コマ/秒だと30コマは0.75秒分にしかならないわけで、一瞬をとらえるには十分かもしれないが、一連の動きの過程を連写で撮りたいときには物足りない。タイミングがズレてしまったときに、連写時間が短いと動きの途中で終わってしまいかねないからだ。

 もちろん、ケースバイケースで連写速度を下げるなどの工夫をすればいいのだが、どんなふうに設定すればいいかは、日ごろから連写でものを撮っている人でないとわかりづらいのではないかと思う。ということもあってか、本機ではBS(ベストショット)の拡充が図られている。

 例えば、「表情の変化を連写します」モードなら3コマ/秒で連続10コマの撮影を行ない、そのうちの3コマはシャッターボタンを全押しする前の瞬間が撮れるパスト連写分となっている。「子どもの動きを連写します」モードなら10コマ/秒で連続10コマ、パスト連写分が5コマといった具合。HS動画も同様で、「子どもをスローで録画します」モードは120fps、「ペットをスローで録画します」モードなら240fps、「スポーツをスローで録画します」モードだと420fpsになる。何度も撮りなおせるシーンであれば、モードを変えて再チャレンジもできるだろうが、一発勝負的なシーンで判断に迷ったならBSに頼るというのも手だ。

上面にあるモードダイヤル。上から順に「ストロボ連写」、「通常連写/高速連写」、「1枚撮影」、「HS動画」、「HD/STD動画」連写時は記録画素数が9M(3,456×2,592ピクセル)以下になり、RAWは選択できなくなる
連写速度は「操作パネル」上で設定できる。スピードは1コマ/秒から40コマ/秒まで一度に連写できる最大のコマ数の設定。多くするほどシャッターチャンスに強くなる反面、書き込みの待ち時間が長くなる
パスト連写の設定画面。シャッターボタン全押しの前後それぞれの撮影コマ数を決める。この項目をどう設定するかが難しいところ通常動画の記録画素数の設定。「HD」は1280×720ピクセル、「STD」は640×480ピクセル。いずれも30fpsの音声付き
動画撮影中の光学ズームの可否の選択。光学ズームを使えるようにすると、作動ノイズが入らないように音声記録はオフになるHS動画のフレームレートと記録画素数の選択画面。FH20は1000fps時に224×56ピクセルだったのが、本機では224×64ピクセルになった
30-120fpsと30-240fpsはSETボタン押しでフレームレートを切り替えられる。動きの途中からスローにしたり元に戻したりできる背面の操作部。十字キー右上の「BS」ボタンでBS(ベストショット)を呼び出せる
BSの連写、動画のモードは、「表情の変化を連写します」をはじめ、連写が4種類、動画が3種類ある

まとめ

 一番の売りは裏面照射型CMOSセンサーを採用したことによる高感度画質の向上だろう。ISO800でもそこそこ使い物になるので、旅先での街の夜景や学芸会などの屋内でのイベントには有利だろう。連写可能コマ数が減ったのは残念だが、高速連写やHS動画はスペックアップしているし、BSも拡充されたおかげで、初心者にもあつかいやすくなった。

 筆者個人としては、十字キーの左右キーに露出補正を割り付けられないこと(SETボタン押しで表示される「操作パネル」から呼び出せるが、左右キーのダイレクト操作のほうが便利なのはEXILIMユーザーならおわかりいただけるはずだ)、また露出補正時のバーグラフ表示が画面中央にあらわれてうとましく感じられるのが気になるところ。

 とはいえ、高倍率ズーム+高速連写やHS動画の楽しさはほかのカメラでは味わえないもの。動きまわる子どもやペットの写真を撮りたい人にはおすすめだし、スポーツなどの動きを連写やHS動画で分解して見たい人には数少ない選択肢でもある。発売当初のEX-FH20の実勢価格が7万9,800円ほどだったことを思えばお買い得感は高い。

「撮影」、「再生」ボタンはモード切り替えのほか、電源のオンオフにも使用可。再生ボタンで起動時はレンズキャップを付けたままでもOKだ画面中央付近に大きく表示される露出補正のバーグラフ。ホワイトバランスもそうだが、被写体が見づらいのは残念
カシオ機なのに左右キーに露出補正(カシオでは「EVシフト」)が割り付けられないのは、個人的には少し不便に感じる再生時の画面。文字が乗るだけならまだしも、網掛けまで。もちろん、情報表示なしにすることもできるから大きな問題ではないが
動画の再生画面。フィルムの1コマふうのフレームが付いている。SETボタンを押すと再生されるこちらは連写で撮った写真。30コマもあるのでひとまとめにして表示するようになっている
連写で撮った写真はSETボタンを押すと、動画っぽく連続して再生できる。

実写画像

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・画角変化

 26mm相当の広角端では、タル型の歪曲収差が多少出るが、目くじらを立てるほどではない。また、画面四隅は若干画質劣化が見られるが、平均的なレベルよりはずっといい。望遠端はややコントラスト、解像力とも低下するが、高倍率ズーム機としては良好だ。

4.6mm(26mm相当)
3,648×2,736 / 1/500秒 / F4.9 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光
92mm(520mm相当)
3,648×2,736 / 1/320秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO100 / WB:太陽光

・カラーフィルター

 彩度、コントラスト、シャープネスを5段階で調整できるほか、2種類のモノトーン、6種類のカラーフィルター効果が選べる「カラーフィルター」がある。紅葉などには「赤」や「ピンク」、青空を強調したいときに「青」を使ってみると面白い。

※共通設定:3,648×2,736 / 1/125秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO100 / WB:太陽光 / 4.6mm(26mm相当)
カラーフィルター:オフカラーフィルター:白黒カラーフィルター:セピア
カラーフィルター:赤カラーフィルター:緑カラーフィルター:青
カラーフィルター:黄カラーフィルター:ピンクカラーフィルター:紫

・感度

 ピクセル等倍で見ると、ISO200でも細かい部分の再現性が落ちているのがわかるが、ISO400までならほとんど気にしなくてもよさそうな感じで、ここまでが安心して常用できる範囲。ただ、ISO800やISO1600でも大きな崩れはないので、シーンなどによっては使えるのではないかと思う。

ISO100
3,648×2,736 / 1/30秒 / F4.2 / -1EV / / WB:太陽光 / 26.9mm(152mm相当)
ISO200
3,648×2,736 / 1/60秒 / F4.2 / -1EV / / WB:太陽光 / 26.9mm(152mm相当)
ISO400
3,648×2,736 / 1/125秒 / F4.2 / -1EV / / WB:太陽光 / 26.9mm(152mm相当)
ISO800
3,648×2,736 / 1/320秒 / F4.2 / -1EV / / WB:太陽光 / 26.9mm(152mm相当)
ISO1600
3,648×2,736 / 1/320秒 / F5.4 / -1EV / / WB:太陽光 / 26.9mm(152mm相当)
ISO3200
3,648×2,736 / 1/500秒 / F6.8 / -1EV / / WB:太陽光 / 26.9mm(152mm相当)

・高速連写

 連写は最高40コマ/秒で、連続30コマまで。人間の目にはとらえられないような被写体の動きを分解して見られるのは面白い。もちろん、動きの中のシャッターチャンスを的確にとらえるにも役立ってくれるはずだ。

※共通設定:3,456×2,592 / 1/125秒 / F4.5 / -0.7EV / ISO100 / WB:太陽光 / 92mm(520mm相当)

・HD動画とSD動画

 普通の音声付き動画はHD(1,280×720ピクセル)とSTD(640×480ピクセル)の2モード。どちらもフレームレートは30fps。HS動画は6モードあって、120fpsならVGAサイズで記録できる。スペックとしては1,000fps動画が面白いが、記録画素数が少ないので画として見られる被写体を探すのが難しそうに思う。

HD動画 / 1,280×720ピクセル / 30fps / 約77.9MB

 

SD動画 / 640×480ピクセル / 約30fps / 約20.6MB

 

・そのほか

スーパーマクロ時はレンズ前1cmまで寄れる
3,648×2,736 / 1/400秒 / F6.1 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 10.1mm(57mm相当)
地面をおおいつくす銀杏の葉。オートホワイトバランスだと黄色みが抜けてしまうので太陽光モードで撮った
3,648×2,736 / 1/400秒 / F4.4 / -1EV / ISO100 / WB:太陽光 / 4.6mm(26mm相当)
木の幹にからみつくツタも赤く色づいている。画面周辺部は少しアマさが見えるが全体的にはシャープで良好な画質だ
3,648×2,736 / 1/80秒 / F4.3 / -1EV / ISO100 / WB:太陽光 / 35.1mm(198mm相当)
シャドー部の階調性がいいのは、裏面照射型のメリットなのではないかと思う
3,648×2,736 / 1/640秒 / F7.5 / -1EV / ISO100 / WB:オート / 22.6mm(128mm相当)
サギがエサを探しているところを連写で撮ったうちの1コマ。この水しぶきは頭が水面から出てくるときのもの
3,456×2,592 / 1/1000秒 / F4.5 / -1.7EV / ISO100 / WB:太陽光 / 92mm(520mm相当)
池の水面に映った黄葉。マイナス補正で空の青さを強調してみた
3,648×2,736 / 1/320秒 / F3.6 / -1.3EV / ISO100 / WB:太陽光 / 7.9mm(45mm相当)
西新宿の新名所(?)。新宿御苑からもよく見える
3,648×2,736 / 1/500秒 / F4.4 / -1.3EV / ISO100 / WB:太陽光 / 4.6mm(26mm相当)
外壁のパターンが解像力のチェックに最適だったりする
3,648×2,736 / 1/400秒 / F6.8 / -0.7EV / ISO100 / WB:太陽光 / 29.6mm(167mm相当)
高倍率ズーム機なら望遠で寄れば少しは背景もボケてくれる。でも、ボケの感じはちょっと硬め
3,648×2,736 / 1/20秒 / F4.6 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 59.8mm(338mm相当)
520mm相当で1/30秒でもブレないのだから手ブレ補正の効果はけっこう高いほうではないかと思う
3,648×2,736 / 1/30秒 / F4.5 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 92mm(520mm相当)
暖冬なせいか、12月っぽい感じはまだあまりないが、街のあちこちがクリスマスになっている
3,648×2,736 / 1/20秒 / F4.3 / 0EV / ISO100 / WB:太陽光 / 32.6mm(184mm相当)




北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2009/12/17 14:17