【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-FX60

〜25mmレンズ搭載の薄型スタイリッシュモデル
Reported by 本誌:折本幸治

 パナソニックのFX2桁系といえば、コンパクトな筐体に広角ズームレンズを組み合わせた定番モデルとして知られる。女性向けカメラとしての性格も強く、最新機能の採用にも積極的だ。そんなFX2桁系の新製品が、今回紹介するLUMIX DMC-FX60になる。

 実勢価格は3万8,000円前後。本体色は、ノーブルバイオレット、ラベンダーブルー、リュクスゴールド、プレシャスシルバー、カクテルピンク。LUMIX CLUB限定でエクストラブラックも用意する。


よりスリムな見た目になったボディ

 従来モデルのLUMIX DMC-FX40から大きく変わった点は3つ。本体のスリム化、AFの高速化、手ブレ補正の性能向上だ。

 スタイリングは従来のFX系らしいテイストを維持しながらも、大幅なスリム化に成功。奥行きがDMC-FX40の21.5mmから19.4mmへと2.1mm薄くなっただけだが、液晶モニターの段差を無くし、背面をフラットな形状にしたのが効いている。数値以上に薄くなった印象だ。

 さらに液晶モニターは2.7型へと大型化。これまでは旧態然とした2.5型だったので、旧モデルからの大きな買い替え理由になり得るだろう。日中屋外での見やすさも損なわれておらず、視認性は高い。

 試用したノーブルバイオレットの表面は、深い色合いを持つグロス仕上げ。滑りにくい表面仕上げなので、手にしているときの安心感は高い。各部の質感も高く、女性向けとはいえ低価格入門機とは一線を画するところは、従来のFX系と同じだ。

 操作系に大きな変化はない。電源のオン/オフや、撮影/再生モードの切り替えはスライドスイッチで行なう。露出補正メニューは十字ボタン上を押すことで表示できる。ISO感度、ホワイトバランスといった変更頻度の高そうな設定は、Q.MENU(クイックメニューボタン)からのショートカットから呼び出すことが可能だ。全体的にボタンは小さいものの、押しづらいと感じたことはなかった。

液晶モニター部がフラットになり、すっきりした見た目になった従来通りクイックメニューを装備
記録メディアとバッテリー充電器は従来と同じ小型タイプが付属する

AF速度が向上

 今秋のコンパクト系LUMIXのうち、主要な機種はおしなべてAF速度の向上を謳っている。これまでコンパクト系LUMIXのAFは、ライバル機に対して決して速い方ではなかったので、速度アップに期待している人もいるかもしれない。実際使ってみると、確かに合焦までの速度向上が感じられる。数多くの条件を試したわけではないが、低輝度時も含め、これなら他社モデルと同等の感覚だといえるレベルだ。近距離でもそこそこ速く、ストレスは少ない。スナップ派はもちろん、多くのユーザーにとってうれしい改良点といえるだろう。

動く被写体だけでなく、マクロ域で使いやすい追尾AFも継承する

 手ブレ補正の性能向上も、今秋の主要モデルの特徴だ。こちらはもともとパナソニックの十八番ともいえる分野なので、従来機種の性能でも大きな不満はなかった。今回からは低周波の大きなブレにも対応したとのことで、夜景などでの効果が期待できる。

 撮像素子、レンズとも前モデルからスペック上の変化はない。撮像素子は有効1,210万画素の1/2.33型CCD。レンズは広角端25mm相当からの光学5倍ズームで、望遠端は125mm相当までカバーする。開放F値は2.8〜5.9。手の中に収まるボディに25mmレンズの組み合わせは、本シリーズのよき伝統になりつつある。超広角好きにとっての常用カメラとして、魅力的な選択肢だろう。

強烈な効果を誇る「ハイダイナミックモード」

 HD動画記録も本機の魅力のひとつ。いわゆるフルHDではないものの、1,280×720ピクセルでの記録が可能だ。圧縮方式はMotion JPEG。圧縮率や画質の面からも、LUMIX DMC-ZX1をはじめ、同じLUMIXで徐々に採用が進むAVCHD Liteへの対応も期待したい。

側面にHDMI端子(左)を備える

 新機能で面白いのは、「ハイダイナミックモード」だ。いわゆる階調補正を行なう機能。LUMIXにはすでに「暗部補正」があるものの、条件が整わない限り作動しないため、思った通りの効果を得るのが難しかった。その点はハイダイナミックモードは、「スタンダード」、「アート」、「白黒」のいずれかを強制的に適用できる。効果は派手ではっきりしている。

 輝度差のあるシーンで白とびや黒つぶれを何とかしたい場合に使うのがひとつの手だが、かなり極端な効果が得られることから、「見た目を再現する」という方向は暗部補正にまかせて、こちらは一種の表現手法として深めていくのも面白そうだ。

ハイダイナミックモードはシーンモードの一種という位置付けスタンダード、アート、白黒から効果を選べる

 そのほか従来からある機能では、ズームマクロの使い勝手が良い。一般的にコンパクトデジタルカメラは望遠マクロが苦手だが、本機もマクロモード時に広角端で3cmまで寄れる一方、少しでもズームさせると被写体に近づけなくなってしまう。ズームマクロを使うと、近寄れる限界からさらに3倍までデジタルズームできるので、小さな被写体をちょうど良い画角で収めたいときに便利だ。デジタルズームなのでもちろん細部の描写が緩くなるものの、精細感よりもパースペクティブをつけたくないときや、背景を入れたくない撮影で有効だろう。ブログに載せる料理写真なら、十分こなせる。

 背面液晶モニター周りがすっきりしたことで、よりスリムな見た目になったDMC-FX60。AF速度が向上したこともあり、目立った弱点がなくなった印象だ。定番モデルとしての存在感は今作でも高い。

 ただし今季からLUMIXには、奥行き26mmで光学8倍ズームレンズを搭載したDMC-ZX1が存在するため、性能重視のカメラ選びを考えると、少々分が悪い面もある。とはいえ望遠撮影に興味がなく、広角端25mmクラスでなるべく小さいモデルを探しているのなら、やはり本機が筆頭候補に上がりそうだ。

作例

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・画角

広角端
DMC-FX60 / 約6.4MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 4.5mm
望遠端
DMC-FX60 / 約6.5MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 22.5mm

・歪曲収差

広角端
DMC-FX60 / 約6.6MB / 4,000×3,000 / 1/125秒 / F3.2 / 0EV / ISO80 / WB:日陰 / 4.5mm
望遠端
DMC-FX60 / 約6.6MB / 4,000×3,000 / 1/40秒 / F5.9 / 0EV / ISO80 / WB:日陰 / 22.5mm

・ISO感度

ISO80
DMC-FX60 / 約6.4MB / 3,000×4,000 / 1/40秒 / F4.6 / 0EV / WB:晴天 / 10.8mm
ISO100
DMC-FX60 / 約6.5MB / 3,000×4,000 / 1/50秒 / F4.6 / 0EV / WB:晴天 / 10.8mm
ISO200
DMC-FX60 / 約6.2MB / 3,000×4,000 / 1/100秒 / F4.6 / 0EV / WB:晴天 / 10.8mm
ISO400
DMC-FX60 / 約5.5MB / 3,000×4,000 / 1/200秒 / F4.6 / 0EV / WB:晴天 / 10.8mm
ISO800
DMC-FX60 / 約5.1MB / 3,000×4,000 / 1/320秒 / F4.6 / 0EV / WB:晴天 / 10.8mm
ISO1600
DMC-FX60 / 約4.6MB / 3,000×4,000 / 1/400秒 / F5.6 / 0EV / WB:晴天 / 10.8mm

・ハイダイナミックモード

暗部補正
DMC-FX60 / 約4.1MB / 4,000×3,000 / 1/320秒 / F4 / 0EV / ISO125 / WB:晴天 / 4.5mm
ハイダイナミックモード:スタンダード
DMC-FX60 / 約4.1MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F4.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 4.5mm
ハイダイナミックモード:アート
DMC-FX60 / 約4.2MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F4.5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 4.5mm
ハイダイナミックモード:白黒
DMC-FX60 / 約3.7MB / 4,000×3,000 / 1/400秒 / F5 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 4.5mm

・ズームマクロ

広角端
DMC-FX60 / 約5.1MB / 4,000×3,000 / 1/25秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mm
ズームマクロ
DMC-FX60 / 約3.3MB / 4,000×3,000 / 1/30秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:オート / 4.5mm

・自由作例

DMC-FX60 / 約6.6MB / 3,000×4,000 / 1/320秒 / F4.6 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 10.8mmDMC-FX60 / 約7.0MB / 3,000×4,000 / 1/160秒 / F4 / 0EV / ISO80 / WB:曇り / 4.5mm
DMC-FX60 / 約4.6MB / 3,000×4,000 / 1/13秒 / F3.9 / -0.7EV / ISO400 / WB:晴天 / 8.3mmDMC-FX60 / 約6.8MB / 4,000×3,000 / 1/15秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO400 / WB:晴天 / 4.5mm
DMC-FX60 / 約6.7MB / 3,000×4,000 / 1/40秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 4.5mmDMC-FX60 / 約6.7MB / 3,000×4,000 / 1/125秒 / F4 / -0.3EV / ISO80 / WB:晴天 / 7.2mm
DMC-FX60 / 約6.1MB / 3,000×4,000 / 1/60秒 / F3.3 / 0EV / ISO80 / WB:晴天 / 6.3mmDMC-FX60 / 約5.2MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F4.5 / 0EV / ISO125 / WB:晴天 / 5.2mm
DMC-FX60 / 約4.9MB / 4,000×3,000 / 1/100秒 / F2.8 / 0EV / ISO80 / WB:曇り / 4.5mmDMC-FX60 / 約4.5MB / 4,000×3,000 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO100 / WB:晴天 / 6.3mm

【2009年9月17日】「よりスリムな見た目になったDMC-FX40」という誤表記を「よりスリムな見た目になったDMC-FX60」に改めました。

 





本誌:折本幸治

2009/9/16 20:24